※この作品はR-18です。

継母の連れ子が元カノだった、いまは僕の父親とヤってる   作:大中小太郎

19 / 32
十夜目(いさな視点のみ)(挿絵追加)

 

 

 

漫画やゲームやラノベを読んでいると、こういうシーンを目にすることがある。

 

その登場人物の暗黒面のようなものが姿を現して、自覚できなかった本性や悪感情に直面する――というものだ。

私はお前だ、お前は本当はこんなことを考えていたんだ! 違う、私はそんなこと思ってない! というあれだ。

そして自分の負の側面を認め、己の一部なのだと受け入れると、幻術が解けたり新技に開眼したりするやつ。

 

いつの間にか定番となったあれには、しっかりと心理療法的な根拠があるという。

これは、その実例だ。

 

――エリザーベト・フォン・Rという女性がいた。

彼女は両下肢の痛みを訴えるも病理は見つからず、かのフロイトから心理療法を受けた。

現代ほど洗練されてなかったが、フロイトは心理療法を通じてエリザーベトの心を解明した。

 

エリザーベトには姉がおり、姉にはよき夫がいた。

彼女はその義兄に対して、密かな好意と憧憬の念を抱いてしまった。

姉と違い独身で、父親の死後に病気の母を看病して暮らすエリザーベトにとって、義兄は自分が得られない女の幸福そのものだったのだ。

姉の夫に懸想する自分をひた隠し、自分でも忘れたその頃――彼女は下肢の疼痛を発症した。

 

そして、姉の訃報がその症状を加速させる。

姉のもとに駆け付けたエリザーベトは、その死を強く嘆いたが、同時にこう考えてしまった。

 

――これで義兄さんと結婚できる。

 

エリザーベトは、許されざる願望をひどく憎悪し、心の奥底に封じ込め、二度と考えることもしなくなった。

疼痛で済んでいた足の症状は、いつしか歩行障害にまで発展した。

 

彼女が症状から解放されたのは、忘れていた思慕や邪念を思い出してからのことだったという。

 

 

なるほどたしかに、フィクションで見聞きしたあれとよく似ている。

それはつまり、現実に生きる自分たちの心にも、起こりうる現象であるということだ。

受け入れられない、認めがたい、そんな願望や感情を、無意識の底に沈めて忘れていても、なにも不思議はないということだ。

そして、エリザーベトの症状を見るように、己の邪心を自覚できない状態こそ危険とも言える。

時に、自分の醜い一念を知り、それは人間なら当然なのだと、自分を許さなければならない。

あるはずがないと蓋をして病むより先に、あるのだと認めて過たない方が、ずっといい。

 

それが、苦痛であったとしても。

直面した自分の裏側面が、あまりに受け入れがたかったとしても。

あるいは、何らかの経緯で知り得た誰かの裏側面が、酷いものだったとしても。

人生でそういう瞬間が訪れたとき、物語の登場人物のように、気高い成長を迎えられるように。

 

 

○

 

 

――東頭いさな――

 

 

そして今夜も……私こと、東頭いさなは、淫らな夢を見る。

気がつけば、水斗くんの家の前だった。

 

(この服……)

 

私の服装は、現実でこの家に来たときに着ていた、白いブラウスとライトグリーンのロングスカート。結女さんや南さんに選んでもらって、水斗くんからもよい評価を得た、最新のお気に入り。

自分には無縁だと思っていた『お洒落』というものを、楽しいと思わせてくれた服だ。

もし、自分の宝物を幾つか挙げろと言われたら、たぶんこれが含まれる。

 

(私、どうして水斗くんの家に……ああ、そうだ……『本』を返しにきたんだ)

 

昨日、返せなかった一冊のラノベ。

手にしたそれを見ると、表紙すらぼやけて見えないけど、水斗くんから借りた本だ。

これを水斗くんに返すことで、内容について語り合える、私の心のイベントアイテム。

でも……いまこれには、別の意味が付与されている。

 

(私、昨夜……水斗くんの、お父さんと……っ)

 

思い出すと同時に、体にその感覚がフラッシュバックしてきた。

処女とは思えない快感、自分の体とは思えない絶頂、水斗くんに与えてもらえなかった女の悦楽。

体が震え、性感帯が火傷したように過敏になり、スカートの中は内股に、下着の中は湿潤になる。

 

(また……この家に入ったら……また、あんなことに……?)

 

そうとは限らない。

夢の内容が前日と同じことの方が珍しい。

今日は普通に水斗くんが現われて、「わざわざ返しに来てくれたのか」と笑って迎えてくれるかもしれない。

それとも、予感した通り、また水斗くんのお父さんが私を出迎えて……

 

「っ♡」

 

きゅんっと、下腹部の奥で子宮が引き絞られる。

水斗くんを思えば心が温まり、お父さんを思えば体が火照る。

『友達』としては水斗くんに会いたい。

でも……『女』としての私は……体で覚えてしまった男性を期待している。

水斗くんを望む純情な自分と、別の男性を期待する淫らな自分が、私の中で並んでいた。

 

(行かなきゃ……)

 

どちらにせよ、私に引き返すという選択肢はなかった。

どちらの男性が現われたとしても、私はきっと満足するだろうから。

 

このとき私は、自分の心のロジックに、自分で気付いていなかった。

いつの間にか、告白までした水斗くんと、私を犯した彼のお父さんが――等価になっていた。

 

「…………」

 

そして、呼び鈴を押す。

 

『どうぞ、上がって』

 

男性の声がインターホン越しに私を呼ぶ。

不思議と、この時点では水斗くんなのかお父さんなのか分からない。

親子で声が似るのは結構あることだけど、あの二人の声はこんなに似ていただろうか?

そして、私はなぜ、どちらなのか確かめもせず、玄関の扉を開いてしまっているのだろうか?

 

「お、お邪魔します……っ」

 

扉が開く、一度は足を運んだ伊里戸家の玄関が見える。

靴は男物が一人分だけ、家には『彼』しかいないらしい。

背後で扉が閉まる――ロックされたわけでもないのに、二度とここから出られない気がする。

退路を断たれた私の前に……リビングから『彼』が姿を現わした。

 

「やあ、いさなちゃん。また来てくれたんだね」

「ぁ……♡」

 

答えが出た。

今夜の私は、『友達』ではなく、『女』になった。

 

 

○

 

 

「あ、あの……わ、私……」

「うん、落ち着いて。急に襲ったりなんかしないから」

 

玄関口、お父さんの前で硬直する私に、お父さんは優しく声を掛ける。

どの口が言うのかとも思うけど、緊張を解きほぐす口調が水斗くんと似ていて、なぜか安心する。

 

「お、おじ、さま……その……ほ、本を! 本を……返しに……」

 

私は手にしていた本を、お父さんに差し出す。

どこか言い訳がましいと、自分で感じていた。

本を返しに来たのは事実だけど、私とお父さんの間で語るべきことはそれじゃない。

 

「うん、わざわざありがとう。面白かったかい?」

「え? あ、はい……その、面白かった、です」

 

まるで自分が貸したかのように受け取ったお父さんに、拍子抜けする。

前日はあんなことがあったのに、何事もなかったかのようで。

まさか全部、都合良く、無かったことにする気なんだろうか。

 

「それで? 用件はそれだけじゃないだろう?」

 

と思ったら、顔を寄せて耳元に囁かれ、背筋が震える。

その震えに嫌悪感が伴っていないことが、妙に恨めしかった。

 

「……き、昨日の、こと」

 

どもりがちになっている自分を嫌って、私は意を決して声を上げた。

 

「前の、ことですっ」

「うん、いさなは素敵だったよ」

 

顔を赤くして言い切ると、予想もしない褒め言葉に、耳まで赤くなる。

 

「そ、そうじゃ、なくて……っ。も、もう、あんな……」

 

言葉が、なぜか途中で止まった。

あんなことは二度としないでと、言うつもりだった。

明言することに羞恥があったからだ。そうに決まってる……っ!

 

「そうか、気に入ってくれたと思ったんだけどね」

「っっっ♡」

 

髪を軽く撫でられただけで、あのときの恍惚が瞬間的に戻ってきた。

おねだりするような言葉を口にしていた自分を思い出し、否定の言葉が紡げない。

こういうとき、同意したような発言を反故にしてレイプ被害を訴える図太さが、私にはなかった。

 

「本当に、いいのかい? 前の自分に戻っても」

「……え?」

 

予想と異なる角度の言葉に、顔を上げる。

もっとこう、快楽を手放せないだろう? みたいな方向で来ると思っていた。

そうであったら、きっぱり断る言葉の準備もしていた。

 

「水斗とは『ただの友達』なんだろう? 男女としては脈なしなんだろう?」

「そ、それはっ、別に嫌なわけじゃ――」

「でも、満足はしていない。結ばれたい人がすぐ傍に居るのに、『友達』だから結ばれない。

 さぞやストレスだろう? でなければ君だって、こんな夢は見ていないさ」

 

衝撃を受けた。

お父さんが夢と明言したのも不思議だが、夢の原因が私の欲求不満だと指摘されたから。

 

「目を背ける必要なんてない、君だって立派な女性なんだ、セックスしたいと思うのは当然だ」

「…………」

 

立派な女性という言葉に、なぜか一抹の嬉しさを感じている自分がいた。

 

「なのに、夢の中でまで『現実と同じ』にしてどうするんだい?

 現実では満たすことのできないものを満たせるのに、現実と同じルールに徹して自分を苦しめるなんて、僕にはナンセンスなことに思えるな」

 

ここが現実ではないのだと、改めて明言されると、私の思考もその方向に走り出す。

なるほどたしかに、現実じゃない。

私がこの人に抱かれた事実だって、現実の東頭いさなには記憶の片隅にすら残っていない。

だから、この人と関係したって困ることはないのだと……

 

「で、でも……水斗くんに、嫌われ……たく……ない……」

 

スカートを握り込んで、蚊の鳴くような声で言うと、お父さんはくすりと笑った。

 

「健気だね。君を振るなんて、あの男もバカなことをしたもんだよ」

 

そして、びっくりするほど優しく、私の頭に手を置いた。

顔を上げると、水斗くんによく似た顔立ちの男性が、包み込むような微笑を浮かべている。

私は思わず、その顔に見とれてしまった。

 

「いいのかい? 恋人にもなれない、かといってきっぱりお別れもできない。

 そんな葛藤と、抱かれたい男に抱かれない寂しさを隠し続けるなんて、君が気の毒だ」

「……っ」

 

普通に考えれば、弱みにつけ込む口説き文句だ。

男性経験の乏しい私だって、悪い男の手口くらい、ひとつやふたつは知っている。

でも――この人の言葉は、親身に私の心を想ってくれているのだと、確信できた。

現実のルールとか、徳か不徳かとか、そういうものを全て後回しにして――私が辛いかどうかを見てくれている。

これは立派な愛情なのだと理解した途端、私の子宮がまた騒ぎ出す。

 

「も……もう……止め、て……ください……っ♡」

 

必死に言葉を絞り出す。

これ以上、私を『女』にしないで――と。

水斗くんが目覚めさせた私の『女』を、育てないで――と。

そうしないと、『友達』としての自分が、どこかに消えてしまいそうな気がした。

 

「そうか。なら、止めよう」

 

お父さんはそう言って、私の返したラノベを眺める。

 

「この本は僕から水斗に返しておこう」

 

安堵の吐息をついた私に、お父さんはこう続ける。

 

「最近、息子とも話せてないしね。これを気に、お互いの『近況報告』をするのもいいだろう」

 

その言葉の含みに気付いて、私はハッとした。

薄い笑みを浮かべているお父さんが、何を報告する気なのか、充分に伝わった。

 

「だ、ダメ!」

 

思わず、本を持つお父さんの手を掴む。両手で掴んで、土足で廊下に上がり込む。

 

「言わない、で……ください……っ。水斗くんには、言わないで……っ」

 

それだけは怖かった。

たとえ夢の中でも、このお父さんや水斗くんが、私の夢の登場人物だったとしても。

私とお父さんの間にあったことを知られたら、私と水斗くんは『友達』ではいられなくなる。

 

「君に手出しするのは止めるけど、息子と何を話すかまで、口を挟まれるいわれはないよ?」

 

どこか嗜虐的な薄い微笑を見て、こんなときだというのに、陰のある色香を感じてしまった。

そして彼の言う通り、秘密にするかどうかは、私だけではなく彼の意思も必要なことだ。

 

(まさ、か……)

 

こういう流れで、男に黙っていてもらうための定番がなんなのかは、私でも分かる。

分かってしまったとき――私の胸に浮かんだのは、恐怖じゃなかった。

 

「僕の口を閉じさせたければ、頑張って『説得』しないとね?」

 

いつの間にか、お父さんが私の隣に並び、腰に手を沿えていた。

手は私を家の中に導き、私は自然と靴を脱いで、足を前に進めている。

 

(脅され、てる……水斗くんを利用して、脅されて、求められてる……)

 

脅迫による、肉体関係の強要。フィクション以外では経験したくない出来事のはずだ。

なのに、いま正にそれが我が身に降りかかっているのに――

 

(脅されてるなら……)

 

なのに、私の心を支配しているのは恐怖ではなく――安堵だった。

 

(仕方ない……よね?)

 

脅された、という免罪符。

水斗くんとの『友達』を保ち、その裏に押し殺す『女』も満たされる。

どちらか片方しか選べないと思っていた、その水面下の葛藤を、両方とも満たす選択。

 

「さあ、いさな、扉を開けるんだ」

「あ……っ♡」

 

肩を抱かれて、声が零れた。

お父さんに導かれた先は、昨日たっぷり快感を教え込まれた、彼の寝室だ。

息を呑み、迷う。なにか他の選択肢があって、それを選ぶべきではなかったのかと。

 

「んっ♡ ふぅ……っ」

 

お父さんが背後から、私の両肩に手を置いた。

私を寝室へ押し込むように、肩を揉むように指を食い込ませて。

たったそれだけのことで、指の触れた部分から全身へ、快感の電流が駆け抜ける。

 

「どうした? 中に入りなさい。昨日、気が狂うくらい淫らになってしまったその部屋にね」

「は……っふう♡ んっ、あ……っ♡」

 

ただ肩に触れられただけなのに、脳天から爪先まで気持ちよさが広がる。

肩を揉まれたのは、つい先日、現実世界でもあった。

水斗くんにねだって肩を揉んでもらって、悪戯半分にエッチな声を上げてからかったっけ。

奇しくもそれと同じようなことをされている。

水斗くんと違うのは、お父さんの指が、本当に喘いでしまうくらい気持ちよいということ。

 

「開けないのかい? ならここでするよ?」

「あっ、だめ……っ♡」

 

脅しを追加された私は、仕方なくドアノブに手を伸ばす。

この扉の向こうに行ったら、また前回のようなことをされてしまう。

自分の意思で開けるという行為が、越えてはならない一線を越えてしまうような気がした。

 

「あまり時間を掛けると、水斗が帰ってきてしまうかもしれないなぁ?」

「っ!」

 

水斗くんに見られるかもしれない。知られてしまうかもしれない。

甘い声音の脅しが、また……私の中から、本来あるべき迷いを追い払う。

仕方なく……そう、脅されているから、仕方なく……っ!

 

私は……自分の手で、寝室の扉を開くのだった。

 

○

 

ベッドの縁に腰掛けたお父さんの前に、膝を付く。

目の前には、スウェットパンツの中心。棒状に隆起しているそこを、両手でそっと包み込んだ。

 

「フェラチオ、分かるね?」

「は、はい……っ」

 

鼻腔を満たす男の人の匂いに、頭がくらくらする。

心臓が早鐘を打ち、体が燃えるように熱くなった。

先日、何度もお腹の中に打ち込まれたこれを、体が思い出している。

十回や二十回ではなかった大小無数の絶頂を、全身が幾度も生まれ変わるような悦楽を。

 

「さあ、いさな。僕のモノを舐めてごらん?」

 

お父さんが、私の頭を押さえつけるようにして、腰を前に突き出してくる。

片手でパンツを引き下ろすと、びっくりするほど大きな男性の象徴が、眼前に現われた。

 

「っ♡」

 

グロテスクな男性器を見たせいか、全身に甘い痺れが広がる。

 

(こ、これ、が……私を、あんな風にした……っ♡)

 

思えば前回は、挿入はされたけど、こうして間近に見て奉仕することはなかった。

 

(口で、口でするの? 舌を、這わせて……駄目、なにかが、変わっちゃう気がする……っ)

「どうしたいさな? やっぱり止めるかい?」

 

お父さんに声を掛けられて、私は自分が脅されていることを思い出す。

 

「……っ、やり、ます♡」

 

答えた後で、ふと気になった。

私はちゃんと、脅されて嫌々やらされているような顔をしていただろうか? と。

 

「はぁ……っ!」

 

根元に手を添えながら、意を決して先端を口に含む。

 

「っっっ♡」

 

もっと――不快な感触だと思っていた。

舌先に感じる脈動に、舌が痺れて、電流めいたものが脳まで届く。

電流は脳から全身に広がり、最後に集約した子宮がきゅんきゅんとうずく。

 

平たくいうと――口の中で感じていた。

 

「っ、んちゅ♡ はっ、ふぅ……♡ じゅる……っ♡」

 

命じられてもいないのに、喉の奥深くまでくわえ込んで、吸い上げる。

 

「ふぅっ♡ んぅぅっ♡」

 

呼吸が苦しい――かと思ったら、ちっとも苦しくない。

夢の中で呼吸はいらないし、この夢の中に苦痛はない。

痛感した――いま私が宿っているのは、そもそも『肉体』じゃない。

触覚と性感だけを凝縮して人型にしただけの女体、セックスをするためだけにあるものだった。

 

「いい子だ……ほら、そのまま、続けて……」

 

お父さんの指が、優しく髪を撫でてくれる。

声音や口調が水斗くんに似ていく気がするのは、私がそう思い込もうとしているからだろうか?

そのせいか私は安心してしまって、口内に感じる男性器を、その感触と快感を、歓迎し始めた。

 

「んむっ♡ んぢゅるるっ♡ ずろぉっ……ぷぁっ♡」

 

フェラに関する女の知識を引っ張り出して、亀頭を舐め回し、カリ首に唇を引っかけて刺激する。

 

「そうだよ、上手じゃないか。どこで覚えたんだい?」

(っ、やだ、こんなので褒められて、喜んじゃだめ……っ♡)

 

気持ちよくなってもらいたい一心で、私は懸命に舌を動かす。

もとい、一秒でも早く終わらせるために、相手を感じさせる。

裏筋をなぞり上げればビクビク震えるのが、妙に可愛く思えるのも、何かの気の迷いだ。

 

「ぢゅぷっ♡んぶぅっ♡ れぇ、るっ♡」

(すごい、すごすぎるっ! なにこれ!?)

 

フェラチオなんてしたことなかったけど、想像以上に凄い。

自分の舌や上顎、喉奥や舌の根が、鋭敏な性感帯になっていく。

乳首や陰核といった主要な性感帯に、まったく劣らないくらい、快楽信号が脳に刺さる。

膣と比べて脳に近いせいか、頭から思考力や理性を奪う力は、他よりも強い気がした。

 

「んぐっ♡ んっ♡ んぶっ……♡」

(これ、ほんとうにダメかも……♡)

 

もう、自分が何をしているのかさえ曖昧になる。

いま銜えている逸物の持ち主が誰なのかさえ、明瞭ではなくなる。

水斗くんに似た男性であるという印象しか残らなくなり、それが私に抵抗感を捨てさせた。

 

「そろそろいいか……」

「っ♡」

 

顎を持ち上げられ、口内からペニスを引き出される。

唾液まみれのそれは、私の口から引き抜かれると糸を引いた。

 

「あ……♡」

「そんなに名残り惜しそうな顔をするなよ」

「っ、ちがっ、してませんっ!」

 

反射的に否定してから、すぐに後悔が押し寄せた。

もっと可愛げのあることを言った方がよかっただろうか? その方が興奮してくれるんじゃないだろうか?

そんなことを考えている自分に気付いて、内心かなりの衝撃を受けた。

 

「まあいいさ、こっちに来るんだ」

 

手を引かれ、ベッドに引き上げられる。

 

「あっ♡」

 

小動物のように軽々と持ち上げられた私は、気がつけばベッドで仰向けにされていた。

お父さんは私に馬乗りになっており、もう私のブラウスの裾を手で掴んでいる。

 

「やっ、待ってくださいっ。じ、自分で脱ぎます……っ」

「風情のないことを言うもんじゃない」

「ひゃうっ♡」

 

両手首を片手でまとめて押さえつけられ、もう片方の手で胸を鷲づかみにされる。

乱暴に揉まれているはずのなのに、痛みはなかった。

本来なら痛みとして届くはずのものが、快感に置き換えられていた。

 

「あんっ♡ はぁっ……♡ んんっ♡ んっ……ふっ♡」

「いい声だね。でも、昨日はもっと凄かったのにな?」

 

囁かれる言葉に、背筋がゾクッとする。

前日の自分が、このベッドで何を言っていたか、鮮明に思い出してきた。

 

『ああ♡ おじさまっ♡ もっと♡ もっとしてぇ♡』

『はひっ♡ はいっ♡ イきますっ♡ わたしと一緒にぃっ♡』

『あああああぁぁぁぁぁっっっっっ♡ いくぅぅぅぅぅっっっっっ♡♡♡』

 

まるで、残留思念が持ち主の体に帰ってきたかのように。

私の体が、あのときの状態を『ロード』した。

 

「ふぁぁぁっ♡」

 

気がつけば、胸に食い込むお父さんの指に、甲高い嬌声を上げていた。

いつの間にかブラウスはまくり上げられ、ブラのフロントホックも外されている。

 

「やだっ、優しく……きゃうんっ♡」

 

抵抗しようとした途端、両方の乳首を強く摘まれた。

痛いはずなのに、それさえも気持ちよくて、つい甘い声が出てしまった。

 

「大きいなぁ。せっかくだから、このおっぱいで気持ちよくさせてくれ」

 

そう言うと、お父さんは私のお腹に跨がるような姿勢となって、剛直を胸の谷間に置く。

 

「っ、そんなこと……でき……んんっ♡」

 

乳肉を左右から押し潰すように握られ、圧迫された乳房が悲鳴を上げる。

それ以上に、谷間に挟まった、お父さんの熱く脈動する肉棒が、私の意識を占領した。

 

(熱い……っ♡ うそ、胸の当たってるとこ、感じて……っ♡)

 

驚愕する私に構わず、お父さんは私のおっぱいを我が物顔で掴むと、肉棒を挟む。

使われている。

多くの男性が鬱陶しいくらい見てくる私の胸が、この人の快感のために使われている。

あるべき屈辱感が、心のどこを探しても、無かった。

 

「ほら、こうやって挟み込んで……そうだ。そのまま上下に動かすんだ。できるかな?」

「っ♡……はい……♡」

 

言われた通りに、両手で左右の乳房を寄せるようにしながら、上へ下へと動かし始める。

 

(熱い、大きい、太い、ドクドクってしてる……♡ 私、昨日、これを受け入れてたんだ♡)

 

こんな棍棒のような肉を、繊細なはずの女体で飲み込み、射精させていたのだ。

それを再認識したとき、私の胸に去来したのは、嫌悪感ではなく……達成感や優越感に似た何かだった。

 

「そう、首を曲げて、先端を口に含むんだ。僕が突き入れるのを舌で受け止めるんだよ?」

 

お父さんはそう言うと、より強く私の胸を掴み直して、胸骨と乳房のトンネルを作る。

それを膣壁に見立てるように、腰を前後させて肉棒を動かした。

 

「んっ……ちゅぱっ♡ れろぉ……♡ あぁ……♡」

 

胸を犯される感覚に、私は目を細めて喘ぐことしかできない。

信じられないことに、乳肉を乱暴に掴む手や、間を擦れる肉棒に、感じてしまっている。

この体、自分の意志ではどうしようもない、されること全てを快感として受け取るものに成り果てている。

 

「いいよ、いさなちゃん。すごく上手だ……」

「んんっ♡ ふぁ……♡」

 

荒々しい息づかいと共に褒める声が、ひどく色っぽく聞こえて、ビクビクと肩を震わせてしまう。

 

「ん……出すぞっ、全部飲め!」

「あっ♡ っっっ♡♡♡」

 

びゅるるるっという、音というよりも感触を、肉棒に触れた体で感じた。

口の中に吐き出された大量の精液が喉奥を叩き、思わずえずきそうになる。

 

(苦くて生臭い……でも……うそ、なんで……美味しい♡)

 

口内で溜めた白濁液で脳が痺れ、体に火がつく。

私の色っぽさで引き出した男性の子種かと思うと、なぜか勝利したような気分にさえなる。

男の本能が射精して孕ませることを求めるなら、女の本能は……ということなのだろうか。

 

「ん、ごくっ♡ ぷはっ♡ はぁ♡ はぁぁぁっ」

 

そして飲み干すと、なにかいけないお薬でも飲んでしまったかのように、体が騒ぎ始めた。

 

「いい表情だ。いさな、君、いますごく妖艶だよ?」

 

嬉々として言いながら、お父さんは私の服を脱がせていく。

妖艶だと言われたことが嬉しかったのか、もう抗っても無駄だと思ったのか、私は抵抗しない。

スカートと下着を脱がす手に合わせて腰を浮かせ、ブラウスを引き抜かれるときには腕を上げた。

ブラジャーも外され、ついに全裸になる。

お父さんは私を見下ろして満足げに微笑み、自分も服を脱いでいく。

 

(ああ……♡ 男の人の裸……♡)

 

引き締まった肉体美を前にすると、私の女体は勝手に反応して、秘所が濡れて蜜壺を作り出す。

己の淫靡さを自覚していると、お父さんは自分の指を舐め、それで私の陰唇を開いた。

くちゅり、と音がして、愛液が糸を引く。

 

「こんなに濡らしちゃって……そんなに僕のが欲しくなってるんだね?」

「っ……♡」

 

顔を背けたことが、ある意味で雄弁な返事だった。

この場合、否定しないことは、頷くよりも大きな肯定ではないか。

 

(もう、無理……自分を騙せない……っ♡)

 

体はもうすっかり、前回のことを思い出している。

恥も外聞もなく喘いで、おねだりまでしていた状態に、戻っている。

水斗くんに対して通すべき筋だとか、相手がそのお父さんであることへの呵責だとか、

そんなつまらない現実を全て忘れて、いまはただ――

 

(この人が、欲しい……っ♡)

 

自覚してしまった私は、両足を開いていく彼の手に、なんの抵抗も示さなかった。

 

「いさな、可愛いよ……すごく綺麗だ……」

 

お父さんは、私に覆い被さるようにして抱き締める。

首の後ろに手を回されて、顎を肩に乗せられる。

 

「んっ♡」

 

彼の背中に隠れて見えないところで、私の秘所に逸物があてがわれた。

ゆっくりと侵入してくる感覚に、私は小さく震える。

 

「大丈夫? 痛かったりするかい?」

「ううん……気持ちいいです……♡」

 

正直に答えたら、彼が笑った気配がした。

 

(っ、私、いま何を言って……っ!)

「そうか。それじゃあ、遠慮なく――」

 

我に返りかけた私は、下腹部の入口に割り込んできた剛直に、再び我を失った。

 

「っ!? あああああぁぁぁぁぁっっっっっ♡♡♡」

 

太く、長く、硬いそれが、私の膣内をいっぱいに満たす。

熱を帯びた亀頭が子宮口に迫るほど、脳が痺れて何も考えられなくなる。

絶頂していた。怒張が進む間ずっと起きる、引き延ばされたような絶頂だった。

 

「んんっ♡ はぁっ♡ はいってるぅ♡ 奥までぇ♡ あ、あぁぁっ♡♡♡」

 

根元まで突き刺さると、引き延ばされていた絶頂が、途端に甲高い衝撃へ変わる。

信じられない、知らなかった……『イク』って、途中でボリュームを変えるものだったんだ。

 

「はは、昨日あれだけしたおかげか、慣れてくれているね。好きに動いても大丈夫そうだっ」

「ひゃあっ!」

 

お父さんが腰を引いていく。肉棒が抜ける寸前で止まり、また押し込まれる。

 

「ふあぁっ♡ だめっ、これ、すごいぃ……♡」

 

まるで音量を上下させるように、快感の波が高くなっていく。

繰り返されるほどに波は高くなる。水面の揺れが徐々に大きくなり、やがて大波となるように。

 

「まだだよ、追加でおっぱいも気持ちよくしてやろう」

「えっ……んあぁっ♡」

 

両手で胸を鷲掴みにされ、そのまま揉みしだかれる。

乳首を摘ままれ、こねくり回され、弾かれながら、抽送が再開された。

すると、まるで胸と膣の快感が化学反応を起こしたように、双方の快感が爆発的に高まった……!

 

「っっっ、ひあああぁぁぁっ♡ ちくびっ♡ やっ♡ うそっ♡ 中もっ♡ 急にっ♡

 あっあっあっあっあっ♡ あ"あ"あ"あ"あ"っっっ♡♡♡」

 

私は目を見開き、正気を失ったように嬌声を上げて、全身を反り返らせた。

 

「ああ、やっぱり。胸をいじめてやったら、途端に全身が敏感になったな。

 慌てることはないよ、女の体には誰しもそういう『スイッチ』みたいなものがあるだけさ」

 

お父さんは私の頬を撫でて、猛烈な絶頂に震える私をなだめすかす。

そして再び、私の乳首に指を添えて、ゆっくりと捏ね始めた。

 

「ひぅぅぅうううっ♡」

 

体が勝手に震え、腰が踊り、奥に当たっていた亀頭に自分から子宮口を擦りつけてしまう。

 

(やだ、私の体っ、おっぱい触られるだけでっ、操縦されて……っ♡)

 

男の人の指先ひとつで全身を操られるような体験は、あまりに衝撃だった。

目の前にいる彼が、自分より圧倒的に上位の存在であるかのような気がしてくる。

 

(支配、されてるっ♡ この人にっ、私っ、簡単に操られてイカされちゃうっ♡)

 

また口から上がった嬌声すら、どこか遠くに聞こえた。

 

「いさな、もう一度だ。もう一度、僕の女になるんだ!」

 

昨夜と同じように乱れろという意味だと、直感で理解した。

 

「は、い……っ♡ なり……ましゅ……っ♡」

 

それを断るような気力が、もう私には残っていない。

もはや思考も、言葉も感情さえも、彼の与える快感に、操られるものだった。

 

 

○

 

 

床に脱ぎ捨てられた衣類、軋む音の鳴り止まないベッド。

ベッドの縁に引っ掛かっていたブラが、激しい揺れで床へと落ちる。

家に来たときは夕暮れ前だったのに、いつの間にか窓の外は紫色の宵闇だった。

 

「ああぁっ♡ おじさまぁっ♡ 気持ちいいっ♡ そこっ、気持ちいいですっ♡」

 

私はお父さんの背中にしがみつき、その激しいピストン運動を受け止めていた。

ベッドの上で体面座位となり、お互いの性器を結合させ、腰の動きで打ち合わせている。

 

「そうだ、自分の気持ちいいところは正直に教えるんだ。ほら、僕に胸を擦り付けてごらん」

「こ、こう? ……ふあっ♡ あっ、やだっ♡ やっぱりだめっ♡ 変わっちゃうっ♡

 乳首こすれると全身の感覚変わっちゃいますっ♡」

 

体を上下すると共に、私の無駄に大きな乳房が、お父さんの胸板に擦れる。

すると乳首が刺激され、さっきも味わった化学反応めいた快感の急上昇に襲われる。

思わず逃げようとしても、お父さんが私の背中と腰をがっちり掴んで抱き寄せて離さない。

 

「動いちゃぁっ、うごいちゃだめぇっ♡ いくっ、またイっちゃ、イキすぎちゃうぅぅ♡」

「動いてるのは君だよ、いさな」

 

そう言われても、もう自分で自分が止められなかった。

膣内が痙攣し、愛液を吹き出しながら収縮するたび、お腹の奥まで快感が突き抜ける。

 

「ほら、イってる顔を見せて。どんな気持ちか言ってごらん?」

「イクッ♡ イッてるのぉっ♡ ずっとイってますっ♡ ああぁんっ♡ こんなのきもちよすぎて死んじゃうぅっ♡」

 

頭の中が真っ白になって、ただ気持ちよくて幸せだということしか考えられない。

 

「ああ、狂うほど奥イキするの慣れてきたみたいだね。これからもっと気持ちよくなれるぞ」

 

そう言って、お父さんが体位を変える。

今度はバックから、両手で乳房を掴んで上半身を持ち上げられ、膝立ち姿勢で突き上げられる。

パンッパンッパンッ! という、ひどく卑猥な音が、私のお尻から鳴り響いた。

 

「ひゃああんっ♡ これっ、すごっ、すごいぃっ♡ 子宮っ、押し込まれっ♡ あああっ♡ またイクっ♡ イグゥっ♡」

「もっとだ! イク感覚に逆らうな、そうすればもっと上の段階のオーガズムが来るぞっ!」

「はいっ♡ はひっ♡ わかっ、わかりましたぁっ♡」

 

この人の言うことに抵抗するという発想が、もう無かった。

従順でいればいるほど快感を与えてくれることを、体で理解してしまった。

 

「んぁぁっ♡ あああぁぁぁっっっ♡ ふおっ♡ ぉぉぉっ♡」

 

一突きごとに襲い掛かる絶頂にも、もう怖さがない。

現実なら全身の筋収縮でくたくたになってしまうオーガズムも、夢では快感だけ抽出されている。

結果、気が狂ってしまうような連続絶頂も苦痛なく受け入れてしまい、いつしかそれが癖になってしまった。

 

「いいぞ、いさなの一番好きなやつをしてあげよう」

 

そう言ってお父さんは、私をベッドに押し倒して正常位に持ち込んだ。

すると正面から腕を伸ばし、左右の乳首を抓んで捻りながら、高速で腰を前後させる。

 

「おっ♡ おおっ♡ お”お”お”お”っっっ♡」

 

雷に打たれたような快感に、私は獣じみた声で絶叫した。

お父さんの太い腰に足を絡め、乳房を揉み回す両手首を掴み、自分から引き寄せる。

 

「やっぱり、胸をいじめられながら奥を擦られるのが一番みたいだなっ!

 ほら、他にも色んな刺激があるぞ? こうやって五本の指で乳首をくすぐるようにすると――」

「ふわっ♡ ちくびっ、それだめぇっ♡ あ、あっ、あぁぁぁ~~~っっっ♡♡♡」

 

乳首とポルチオの同時攻撃に、私の体は電気ショックでも受けたかのように跳ね上がる。

不規則なマシンガンのように起きる絶頂に、まともな思考が保てない。

 

(むねっ、色んなことっ、されすぎっ♡ 感じ方っ、色んなのっ、ありすぎてぇ♡)

 

指の腹で擦られたかと思いきや、乳首を押し込まれ、抓られたかと思ったら転がされる。

すると、機械が何かの『モード』を変えるように、同じピストンをされているはずの膣内が感じ方を変えた。

 

「予想以上の反応だな、聞こえてるか? 気持ちいいか?」

「はいっ♡ 気持ちよすぎるんですぅっ♡ ああっ♡ またイクッ♡ おっぱいとおく、いっしょにされるのすごすぎてっ♡ ああああくるっ、来るっ、またおっきいの来ますっ♡ だめっ、これっ、意識飛んじゃ――ぁぁぁぁぁあああああっ♡」

「おっ……おぉっ、締まるっ! いさな、もう……っ!」

 

お父さんが私の腰を掴んで、抽送を最高潮まで高めると、私の意識がどこかへ飛び立っていく。

色も形も認識できなかったけど、そこが天国に類する場所だと感じたとき、膣内に射精される感覚が追い打ちを掛けた。

 

「――――っっっっっ♡♡♡」

 

視界が真っ白に染まり、頭がスパークする。

体中の穴という穴から汗が流れ出し、体が溶けてしまうかのような錯覚に陥った。

 

「くはっ♡ はひっ♡ はぁぁぁっ♡ あぁぁぁぁ……はふっ♡ ふぁぁっ♡」

 

お父さんの動きが止まってからも、私は絶頂の揺り戻しで、小刻みに達し続けていた。

 

――どのくらいの間、そうしていただろうか?

悦楽の海が凪ぎとなり、心地よい海面に漂い続けるような、幸福感に溺れる時間だった。

 

(どうし、よう……私、こんな、幸せな気分に……水斗くんじゃ、ないのに……嬉しいっ♡)

 

ここまでとは思ってなかった。

ただ快感に流されて、それを好意と錯覚しているのだと思っていた。

それどころじゃない。

もし水斗くんとこういう関係になっても、こうはならなかったんじゃないだろうか。

私の中から逸物を抜いたお父さんが、ティッシュで各部を清めてくれることさえ、恥ずかしさと嬉しさを感じる。

 

(あ……あの、本……)

 

何気なく目を配ると、ベッド脇の小机に、ラノベが一冊あった。

お父さんが私の脅迫材料に使った、水斗くんに返す予定だった本だ。

 

それが――消えていく。

 

水に溶けるように、薄れて見えなくなっていく。

まるで、私の心の中で、役目を終えてしまったかのようだった。

もう、この家に来る『口実』なんて必要ないのだと。

 

「約束通り、水斗には内緒にしてあげるからね……もっとも、もう脅す必要もなさそうだけど」

 

頬を撫でるお父さんに言われて……そういえばそうだったと思い出す。

 

「はい……おじさま♡ 好き、好きです♡ 恋人に、ううん、愛人にしてください♡」

 

私の発言に、お父さんが少しきょとんとしている。

私自身、自然と口をついた言葉に、心の奥底で驚いている部分があった。

 

(なんだ……私、水斗くんじゃなくても、よかったんだ……)

 

もう振られてしまった彼への執着が、この人に塗り替えられていた。

私の心は、どうやら新しい恋を見付けたらしい。

びっくりするほど簡単に、水斗のつけた傷を、そのお父さんが埋めてくれた。

 

(『親友』だなんて言って、未練がましく、終わった恋を延長させるの、辛かったんだ……)

 

夢が、気付かせてくれた。

現実では意識もしなかったけど、どこかで水斗との関係に疑問を抱いていたんだろう。

振られた相手にべたべたして、自分からキープされに行って、これでいいのか――と。

恋の喜びを知ったなら、水斗のことは忘れて、誰か別の男性を愛してはいけないのかと。

その点――水斗に似ていて水斗ではない彼は、古い恋からの巣立ちには、理想的な相手だ。

そういう、現実とは異なる青春への憧れが、私にこの人を選ばせたんだ。

 

「いいとも、いさな――今日から君は、僕の女だ」

「はい、おじさま♡」

 

彼の手を握って満面の笑みを浮かべた頃――夢が終わりを迎える。

 

視界は薄れ、景色が遠のき、耳には外界の音が聞こえ始める。

現実の自分へ戻っていくに連れて、この記憶も剥がれ落ちていった。

きっと次の夢が始まったとき『ロード』されることだろう。

 

目を覚ませば自分はまた、水斗の『友達』に戻らなければならない。

それが嫌なわけじゃない。

ただ、そういう生活では得られない日々を、愉しさを、夢の中で別の男性と紡ぐだけだ。

現実世界の自分にさえ、ないしょの享楽。

一人の女としてそういう時間を過ごすのに、誰の許しが必要だったと言うのだろう。

 

だから明日も、これからも――

東頭いさなは、淫らな夢を見る。

 

 

 

【十夜目 了】




ご一読いただきありがとうございました。

いさなNTRの第二弾です。

『僕が先に好きだったのに』はBSS。
なら『僕のことを好きだったのに』はなんて言うんですかね?
未定義ならBKSと名付けよう。流行りませんように。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。