継母の連れ子が元カノだった、いまは僕の父親とヤってる 作:大中小太郎
漫画やゲームやラノベを読んでいると、こういうシーンを目にすることがある。
その登場人物の暗黒面のようなものが姿を現して、自覚できなかった本性や悪感情に直面する――というものだ。
私はお前だ、お前は本当はこんなことを考えていたんだ! 違う、私はそんなこと思ってない! というあれだ。
そして自分の負の側面を認め、己の一部なのだと受け入れると、幻術が解けたり新技に開眼したりするやつ。
いつの間にか定番となったあれには、しっかりと心理療法的な根拠があるという。
これは、その実例だ。
――エリザーベト・フォン・Rという女性がいた。
彼女は両下肢の痛みを訴えるも病理は見つからず、かのフロイトから心理療法を受けた。
現代ほど洗練されてなかったが、フロイトは心理療法を通じてエリザーベトの心を解明した。
エリザーベトには姉がおり、姉にはよき夫がいた。
彼女はその義兄に対して、密かな好意と憧憬の念を抱いてしまった。
姉と違い独身で、父親の死後に病気の母を看病して暮らすエリザーベトにとって、義兄は自分が得られない女の幸福そのものだったのだ。
姉の夫に懸想する自分をひた隠し、自分でも忘れたその頃――彼女は下肢の疼痛を発症した。
そして、姉の訃報がその症状を加速させる。
姉のもとに駆け付けたエリザーベトは、その死を強く嘆いたが、同時にこう考えてしまった。
――これで義兄さんと結婚できる。
エリザーベトは、許されざる願望をひどく憎悪し、心の奥底に封じ込め、二度と考えることもしなくなった。
疼痛で済んでいた足の症状は、いつしか歩行障害にまで発展した。
彼女が症状から解放されたのは、忘れていた思慕や邪念を思い出してからのことだったという。
なるほどたしかに、フィクションで見聞きしたあれとよく似ている。
それはつまり、現実に生きる自分たちの心にも、起こりうる現象であるということだ。
受け入れられない、認めがたい、そんな願望や感情を、無意識の底に沈めて忘れていても、なにも不思議はないということだ。
そして、エリザーベトの症状を見るように、己の邪心を自覚できない状態こそ危険とも言える。
時に、自分の醜い一念を知り、それは人間なら当然なのだと、自分を許さなければならない。
あるはずがないと蓋をして病むより先に、あるのだと認めて過たない方が、ずっといい。
それが、苦痛であったとしても。
直面した自分の裏側面が、あまりに受け入れがたかったとしても。
あるいは、何らかの経緯で知り得た誰かの裏側面が、酷いものだったとしても。
人生でそういう瞬間が訪れたとき、物語の登場人物のように、気高い成長を迎えられるように。
○
――東頭いさな――
そして今夜も……私こと、東頭いさなは、淫らな夢を見る。
気がつけば、水斗くんの家の前だった。
(この服……)
私の服装は、現実でこの家に来たときに着ていた、白いブラウスとライトグリーンのロングスカート。結女さんや南さんに選んでもらって、水斗くんからもよい評価を得た、最新のお気に入り。
自分には無縁だと思っていた『お洒落』というものを、楽しいと思わせてくれた服だ。
もし、自分の宝物を幾つか挙げろと言われたら、たぶんこれが含まれる。
(私、どうして水斗くんの家に……ああ、そうだ……『本』を返しにきたんだ)
昨日、返せなかった一冊のラノベ。
手にしたそれを見ると、表紙すらぼやけて見えないけど、水斗くんから借りた本だ。
これを水斗くんに返すことで、内容について語り合える、私の心のイベントアイテム。
でも……いまこれには、別の意味が付与されている。
(私、昨夜……水斗くんの、お父さんと……っ)
思い出すと同時に、体にその感覚がフラッシュバックしてきた。
処女とは思えない快感、自分の体とは思えない絶頂、水斗くんに与えてもらえなかった女の悦楽。
体が震え、性感帯が火傷したように過敏になり、スカートの中は内股に、下着の中は湿潤になる。
(また……この家に入ったら……また、あんなことに……?)
そうとは限らない。
夢の内容が前日と同じことの方が珍しい。
今日は普通に水斗くんが現われて、「わざわざ返しに来てくれたのか」と笑って迎えてくれるかもしれない。
それとも、予感した通り、また水斗くんのお父さんが私を出迎えて……
「っ♡」
きゅんっと、下腹部の奥で子宮が引き絞られる。
水斗くんを思えば心が温まり、お父さんを思えば体が火照る。
『友達』としては水斗くんに会いたい。
でも……『女』としての私は……体で覚えてしまった男性を期待している。
水斗くんを望む純情な自分と、別の男性を期待する淫らな自分が、私の中で並んでいた。
(行かなきゃ……)
どちらにせよ、私に引き返すという選択肢はなかった。
どちらの男性が現われたとしても、私はきっと満足するだろうから。
このとき私は、自分の心のロジックに、自分で気付いていなかった。
いつの間にか、告白までした水斗くんと、私を犯した彼のお父さんが――等価になっていた。
「…………」
そして、呼び鈴を押す。
『どうぞ、上がって』
男性の声がインターホン越しに私を呼ぶ。
不思議と、この時点では水斗くんなのかお父さんなのか分からない。
親子で声が似るのは結構あることだけど、あの二人の声はこんなに似ていただろうか?
そして、私はなぜ、どちらなのか確かめもせず、玄関の扉を開いてしまっているのだろうか?
「お、お邪魔します……っ」
扉が開く、一度は足を運んだ伊里戸家の玄関が見える。
靴は男物が一人分だけ、家には『彼』しかいないらしい。
背後で扉が閉まる――ロックされたわけでもないのに、二度とここから出られない気がする。
退路を断たれた私の前に……リビングから『彼』が姿を現わした。
「やあ、いさなちゃん。また来てくれたんだね」
「ぁ……♡」
答えが出た。
今夜の私は、『友達』ではなく、『女』になった。
○
「あ、あの……わ、私……」
「うん、落ち着いて。急に襲ったりなんかしないから」
玄関口、お父さんの前で硬直する私に、お父さんは優しく声を掛ける。
どの口が言うのかとも思うけど、緊張を解きほぐす口調が水斗くんと似ていて、なぜか安心する。
「お、おじ、さま……その……ほ、本を! 本を……返しに……」
私は手にしていた本を、お父さんに差し出す。
どこか言い訳がましいと、自分で感じていた。
本を返しに来たのは事実だけど、私とお父さんの間で語るべきことはそれじゃない。
「うん、わざわざありがとう。面白かったかい?」
「え? あ、はい……その、面白かった、です」
まるで自分が貸したかのように受け取ったお父さんに、拍子抜けする。
前日はあんなことがあったのに、何事もなかったかのようで。
まさか全部、都合良く、無かったことにする気なんだろうか。
「それで? 用件はそれだけじゃないだろう?」
と思ったら、顔を寄せて耳元に囁かれ、背筋が震える。
その震えに嫌悪感が伴っていないことが、妙に恨めしかった。
「……き、昨日の、こと」
どもりがちになっている自分を嫌って、私は意を決して声を上げた。
「前の、ことですっ」
「うん、いさなは素敵だったよ」
顔を赤くして言い切ると、予想もしない褒め言葉に、耳まで赤くなる。
「そ、そうじゃ、なくて……っ。も、もう、あんな……」
言葉が、なぜか途中で止まった。
あんなことは二度としないでと、言うつもりだった。
明言することに羞恥があったからだ。そうに決まってる……っ!
「そうか、気に入ってくれたと思ったんだけどね」
「っっっ♡」
髪を軽く撫でられただけで、あのときの恍惚が瞬間的に戻ってきた。
おねだりするような言葉を口にしていた自分を思い出し、否定の言葉が紡げない。
こういうとき、同意したような発言を反故にしてレイプ被害を訴える図太さが、私にはなかった。
「本当に、いいのかい? 前の自分に戻っても」
「……え?」
予想と異なる角度の言葉に、顔を上げる。
もっとこう、快楽を手放せないだろう? みたいな方向で来ると思っていた。
そうであったら、きっぱり断る言葉の準備もしていた。
「水斗とは『ただの友達』なんだろう? 男女としては脈なしなんだろう?」
「そ、それはっ、別に嫌なわけじゃ――」
「でも、満足はしていない。結ばれたい人がすぐ傍に居るのに、『友達』だから結ばれない。
さぞやストレスだろう? でなければ君だって、こんな夢は見ていないさ」
衝撃を受けた。
お父さんが夢と明言したのも不思議だが、夢の原因が私の欲求不満だと指摘されたから。
「目を背ける必要なんてない、君だって立派な女性なんだ、セックスしたいと思うのは当然だ」
「…………」
立派な女性という言葉に、なぜか一抹の嬉しさを感じている自分がいた。
「なのに、夢の中でまで『現実と同じ』にしてどうするんだい?
現実では満たすことのできないものを満たせるのに、現実と同じルールに徹して自分を苦しめるなんて、僕にはナンセンスなことに思えるな」
ここが現実ではないのだと、改めて明言されると、私の思考もその方向に走り出す。
なるほどたしかに、現実じゃない。
私がこの人に抱かれた事実だって、現実の東頭いさなには記憶の片隅にすら残っていない。
だから、この人と関係したって困ることはないのだと……
「で、でも……水斗くんに、嫌われ……たく……ない……」
スカートを握り込んで、蚊の鳴くような声で言うと、お父さんはくすりと笑った。
「健気だね。君を振るなんて、あの男もバカなことをしたもんだよ」
そして、びっくりするほど優しく、私の頭に手を置いた。
顔を上げると、水斗くんによく似た顔立ちの男性が、包み込むような微笑を浮かべている。
私は思わず、その顔に見とれてしまった。
「いいのかい? 恋人にもなれない、かといってきっぱりお別れもできない。
そんな葛藤と、抱かれたい男に抱かれない寂しさを隠し続けるなんて、君が気の毒だ」
「……っ」
普通に考えれば、弱みにつけ込む口説き文句だ。
男性経験の乏しい私だって、悪い男の手口くらい、ひとつやふたつは知っている。
でも――この人の言葉は、親身に私の心を想ってくれているのだと、確信できた。
現実のルールとか、徳か不徳かとか、そういうものを全て後回しにして――私が辛いかどうかを見てくれている。
これは立派な愛情なのだと理解した途端、私の子宮がまた騒ぎ出す。
「も……もう……止め、て……ください……っ♡」
必死に言葉を絞り出す。
これ以上、私を『女』にしないで――と。
水斗くんが目覚めさせた私の『女』を、育てないで――と。
そうしないと、『友達』としての自分が、どこかに消えてしまいそうな気がした。
「そうか。なら、止めよう」
お父さんはそう言って、私の返したラノベを眺める。
「この本は僕から水斗に返しておこう」
安堵の吐息をついた私に、お父さんはこう続ける。
「最近、息子とも話せてないしね。これを気に、お互いの『近況報告』をするのもいいだろう」
その言葉の含みに気付いて、私はハッとした。
薄い笑みを浮かべているお父さんが、何を報告する気なのか、充分に伝わった。
「だ、ダメ!」
思わず、本を持つお父さんの手を掴む。両手で掴んで、土足で廊下に上がり込む。
「言わない、で……ください……っ。水斗くんには、言わないで……っ」
それだけは怖かった。
たとえ夢の中でも、このお父さんや水斗くんが、私の夢の登場人物だったとしても。
私とお父さんの間にあったことを知られたら、私と水斗くんは『友達』ではいられなくなる。
「君に手出しするのは止めるけど、息子と何を話すかまで、口を挟まれるいわれはないよ?」
どこか嗜虐的な薄い微笑を見て、こんなときだというのに、陰のある色香を感じてしまった。
そして彼の言う通り、秘密にするかどうかは、私だけではなく彼の意思も必要なことだ。
(まさ、か……)
こういう流れで、男に黙っていてもらうための定番がなんなのかは、私でも分かる。
分かってしまったとき――私の胸に浮かんだのは、恐怖じゃなかった。
「僕の口を閉じさせたければ、頑張って『説得』しないとね?」
いつの間にか、お父さんが私の隣に並び、腰に手を沿えていた。
手は私を家の中に導き、私は自然と靴を脱いで、足を前に進めている。
(脅され、てる……水斗くんを利用して、脅されて、求められてる……)
脅迫による、肉体関係の強要。フィクション以外では経験したくない出来事のはずだ。
なのに、いま正にそれが我が身に降りかかっているのに――
(脅されてるなら……)
なのに、私の心を支配しているのは恐怖ではなく――安堵だった。
(仕方ない……よね?)
脅された、という免罪符。
水斗くんとの『友達』を保ち、その裏に押し殺す『女』も満たされる。
どちらか片方しか選べないと思っていた、その水面下の葛藤を、両方とも満たす選択。
「さあ、いさな、扉を開けるんだ」
「あ……っ♡」
肩を抱かれて、声が零れた。
お父さんに導かれた先は、昨日たっぷり快感を教え込まれた、彼の寝室だ。
息を呑み、迷う。なにか他の選択肢があって、それを選ぶべきではなかったのかと。
「んっ♡ ふぅ……っ」
お父さんが背後から、私の両肩に手を置いた。
私を寝室へ押し込むように、肩を揉むように指を食い込ませて。
たったそれだけのことで、指の触れた部分から全身へ、快感の電流が駆け抜ける。
「どうした? 中に入りなさい。昨日、気が狂うくらい淫らになってしまったその部屋にね」
「は……っふう♡ んっ、あ……っ♡」
ただ肩に触れられただけなのに、脳天から爪先まで気持ちよさが広がる。
肩を揉まれたのは、つい先日、現実世界でもあった。
水斗くんにねだって肩を揉んでもらって、悪戯半分にエッチな声を上げてからかったっけ。
奇しくもそれと同じようなことをされている。
水斗くんと違うのは、お父さんの指が、本当に喘いでしまうくらい気持ちよいということ。
「開けないのかい? ならここでするよ?」
「あっ、だめ……っ♡」
脅しを追加された私は、仕方なくドアノブに手を伸ばす。
この扉の向こうに行ったら、また前回のようなことをされてしまう。
自分の意思で開けるという行為が、越えてはならない一線を越えてしまうような気がした。
「あまり時間を掛けると、水斗が帰ってきてしまうかもしれないなぁ?」
「っ!」
水斗くんに見られるかもしれない。知られてしまうかもしれない。
甘い声音の脅しが、また……私の中から、本来あるべき迷いを追い払う。
仕方なく……そう、脅されているから、仕方なく……っ!
私は……自分の手で、寝室の扉を開くのだった。
○
ベッドの縁に腰掛けたお父さんの前に、膝を付く。
目の前には、スウェットパンツの中心。棒状に隆起しているそこを、両手でそっと包み込んだ。
「フェラチオ、分かるね?」
「は、はい……っ」
鼻腔を満たす男の人の匂いに、頭がくらくらする。
心臓が早鐘を打ち、体が燃えるように熱くなった。
先日、何度もお腹の中に打ち込まれたこれを、体が思い出している。
十回や二十回ではなかった大小無数の絶頂を、全身が幾度も生まれ変わるような悦楽を。
「さあ、いさな。僕のモノを舐めてごらん?」
お父さんが、私の頭を押さえつけるようにして、腰を前に突き出してくる。
片手でパンツを引き下ろすと、びっくりするほど大きな男性の象徴が、眼前に現われた。
「っ♡」
グロテスクな男性器を見たせいか、全身に甘い痺れが広がる。
(こ、これ、が……私を、あんな風にした……っ♡)
思えば前回は、挿入はされたけど、こうして間近に見て奉仕することはなかった。
(口で、口でするの? 舌を、這わせて……駄目、なにかが、変わっちゃう気がする……っ)
「どうしたいさな? やっぱり止めるかい?」
お父さんに声を掛けられて、私は自分が脅されていることを思い出す。
「……っ、やり、ます♡」
答えた後で、ふと気になった。
私はちゃんと、脅されて嫌々やらされているような顔をしていただろうか? と。
「はぁ……っ!」
根元に手を添えながら、意を決して先端を口に含む。
「っっっ♡」
もっと――不快な感触だと思っていた。
舌先に感じる脈動に、舌が痺れて、電流めいたものが脳まで届く。
電流は脳から全身に広がり、最後に集約した子宮がきゅんきゅんとうずく。
平たくいうと――口の中で感じていた。
「っ、んちゅ♡ はっ、ふぅ……♡ じゅる……っ♡」
命じられてもいないのに、喉の奥深くまでくわえ込んで、吸い上げる。
「ふぅっ♡ んぅぅっ♡」
呼吸が苦しい――かと思ったら、ちっとも苦しくない。
夢の中で呼吸はいらないし、この夢の中に苦痛はない。
痛感した――いま私が宿っているのは、そもそも『肉体』じゃない。
触覚と性感だけを凝縮して人型にしただけの女体、セックスをするためだけにあるものだった。
「いい子だ……ほら、そのまま、続けて……」
お父さんの指が、優しく髪を撫でてくれる。
声音や口調が水斗くんに似ていく気がするのは、私がそう思い込もうとしているからだろうか?
そのせいか私は安心してしまって、口内に感じる男性器を、その感触と快感を、歓迎し始めた。
「んむっ♡ んぢゅるるっ♡ ずろぉっ……ぷぁっ♡」
フェラに関する女の知識を引っ張り出して、亀頭を舐め回し、カリ首に唇を引っかけて刺激する。
「そうだよ、上手じゃないか。どこで覚えたんだい?」
(っ、やだ、こんなので褒められて、喜んじゃだめ……っ♡)
気持ちよくなってもらいたい一心で、私は懸命に舌を動かす。
もとい、一秒でも早く終わらせるために、相手を感じさせる。
裏筋をなぞり上げればビクビク震えるのが、妙に可愛く思えるのも、何かの気の迷いだ。
「ぢゅぷっ♡んぶぅっ♡ れぇ、るっ♡」
(すごい、すごすぎるっ! なにこれ!?)
フェラチオなんてしたことなかったけど、想像以上に凄い。
自分の舌や上顎、喉奥や舌の根が、鋭敏な性感帯になっていく。
乳首や陰核といった主要な性感帯に、まったく劣らないくらい、快楽信号が脳に刺さる。
膣と比べて脳に近いせいか、頭から思考力や理性を奪う力は、他よりも強い気がした。
「んぐっ♡ んっ♡ んぶっ……♡」
(これ、ほんとうにダメかも……♡)
もう、自分が何をしているのかさえ曖昧になる。
いま銜えている逸物の持ち主が誰なのかさえ、明瞭ではなくなる。
水斗くんに似た男性であるという印象しか残らなくなり、それが私に抵抗感を捨てさせた。
「そろそろいいか……」
「っ♡」
顎を持ち上げられ、口内からペニスを引き出される。
唾液まみれのそれは、私の口から引き抜かれると糸を引いた。
「あ……♡」
「そんなに名残り惜しそうな顔をするなよ」
「っ、ちがっ、してませんっ!」
反射的に否定してから、すぐに後悔が押し寄せた。
もっと可愛げのあることを言った方がよかっただろうか? その方が興奮してくれるんじゃないだろうか?
そんなことを考えている自分に気付いて、内心かなりの衝撃を受けた。
「まあいいさ、こっちに来るんだ」
手を引かれ、ベッドに引き上げられる。
「あっ♡」
小動物のように軽々と持ち上げられた私は、気がつけばベッドで仰向けにされていた。
お父さんは私に馬乗りになっており、もう私のブラウスの裾を手で掴んでいる。
「やっ、待ってくださいっ。じ、自分で脱ぎます……っ」
「風情のないことを言うもんじゃない」
「ひゃうっ♡」
両手首を片手でまとめて押さえつけられ、もう片方の手で胸を鷲づかみにされる。
乱暴に揉まれているはずのなのに、痛みはなかった。
本来なら痛みとして届くはずのものが、快感に置き換えられていた。
「あんっ♡ はぁっ……♡ んんっ♡ んっ……ふっ♡」
「いい声だね。でも、昨日はもっと凄かったのにな?」
囁かれる言葉に、背筋がゾクッとする。
前日の自分が、このベッドで何を言っていたか、鮮明に思い出してきた。
『ああ♡ おじさまっ♡ もっと♡ もっとしてぇ♡』
『はひっ♡ はいっ♡ イきますっ♡ わたしと一緒にぃっ♡』
『あああああぁぁぁぁぁっっっっっ♡ いくぅぅぅぅぅっっっっっ♡♡♡』
まるで、残留思念が持ち主の体に帰ってきたかのように。
私の体が、あのときの状態を『ロード』した。
「ふぁぁぁっ♡」
気がつけば、胸に食い込むお父さんの指に、甲高い嬌声を上げていた。
いつの間にかブラウスはまくり上げられ、ブラのフロントホックも外されている。
「やだっ、優しく……きゃうんっ♡」
抵抗しようとした途端、両方の乳首を強く摘まれた。
痛いはずなのに、それさえも気持ちよくて、つい甘い声が出てしまった。
「大きいなぁ。せっかくだから、このおっぱいで気持ちよくさせてくれ」
そう言うと、お父さんは私のお腹に跨がるような姿勢となって、剛直を胸の谷間に置く。
「っ、そんなこと……でき……んんっ♡」
乳肉を左右から押し潰すように握られ、圧迫された乳房が悲鳴を上げる。
それ以上に、谷間に挟まった、お父さんの熱く脈動する肉棒が、私の意識を占領した。
(熱い……っ♡ うそ、胸の当たってるとこ、感じて……っ♡)
驚愕する私に構わず、お父さんは私のおっぱいを我が物顔で掴むと、肉棒を挟む。
使われている。
多くの男性が鬱陶しいくらい見てくる私の胸が、この人の快感のために使われている。
あるべき屈辱感が、心のどこを探しても、無かった。
「ほら、こうやって挟み込んで……そうだ。そのまま上下に動かすんだ。できるかな?」
「っ♡……はい……♡」
言われた通りに、両手で左右の乳房を寄せるようにしながら、上へ下へと動かし始める。
(熱い、大きい、太い、ドクドクってしてる……♡ 私、昨日、これを受け入れてたんだ♡)
こんな棍棒のような肉を、繊細なはずの女体で飲み込み、射精させていたのだ。
それを再認識したとき、私の胸に去来したのは、嫌悪感ではなく……達成感や優越感に似た何かだった。
「そう、首を曲げて、先端を口に含むんだ。僕が突き入れるのを舌で受け止めるんだよ?」
お父さんはそう言うと、より強く私の胸を掴み直して、胸骨と乳房のトンネルを作る。
それを膣壁に見立てるように、腰を前後させて肉棒を動かした。
「んっ……ちゅぱっ♡ れろぉ……♡ あぁ……♡」
胸を犯される感覚に、私は目を細めて喘ぐことしかできない。
信じられないことに、乳肉を乱暴に掴む手や、間を擦れる肉棒に、感じてしまっている。
この体、自分の意志ではどうしようもない、されること全てを快感として受け取るものに成り果てている。
「いいよ、いさなちゃん。すごく上手だ……」
「んんっ♡ ふぁ……♡」
荒々しい息づかいと共に褒める声が、ひどく色っぽく聞こえて、ビクビクと肩を震わせてしまう。
「ん……出すぞっ、全部飲め!」
「あっ♡ っっっ♡♡♡」
びゅるるるっという、音というよりも感触を、肉棒に触れた体で感じた。
口の中に吐き出された大量の精液が喉奥を叩き、思わずえずきそうになる。
(苦くて生臭い……でも……うそ、なんで……美味しい♡)
口内で溜めた白濁液で脳が痺れ、体に火がつく。
私の色っぽさで引き出した男性の子種かと思うと、なぜか勝利したような気分にさえなる。
男の本能が射精して孕ませることを求めるなら、女の本能は……ということなのだろうか。
「ん、ごくっ♡ ぷはっ♡ はぁ♡ はぁぁぁっ」
そして飲み干すと、なにかいけないお薬でも飲んでしまったかのように、体が騒ぎ始めた。
「いい表情だ。いさな、君、いますごく妖艶だよ?」
嬉々として言いながら、お父さんは私の服を脱がせていく。
妖艶だと言われたことが嬉しかったのか、もう抗っても無駄だと思ったのか、私は抵抗しない。
スカートと下着を脱がす手に合わせて腰を浮かせ、ブラウスを引き抜かれるときには腕を上げた。
ブラジャーも外され、ついに全裸になる。
お父さんは私を見下ろして満足げに微笑み、自分も服を脱いでいく。
(ああ……♡ 男の人の裸……♡)
引き締まった肉体美を前にすると、私の女体は勝手に反応して、秘所が濡れて蜜壺を作り出す。
己の淫靡さを自覚していると、お父さんは自分の指を舐め、それで私の陰唇を開いた。
くちゅり、と音がして、愛液が糸を引く。
「こんなに濡らしちゃって……そんなに僕のが欲しくなってるんだね?」
「っ……♡」
顔を背けたことが、ある意味で雄弁な返事だった。
この場合、否定しないことは、頷くよりも大きな肯定ではないか。
(もう、無理……自分を騙せない……っ♡)
体はもうすっかり、前回のことを思い出している。
恥も外聞もなく喘いで、おねだりまでしていた状態に、戻っている。
水斗くんに対して通すべき筋だとか、相手がそのお父さんであることへの呵責だとか、
そんなつまらない現実を全て忘れて、いまはただ――
(この人が、欲しい……っ♡)
自覚してしまった私は、両足を開いていく彼の手に、なんの抵抗も示さなかった。
「いさな、可愛いよ……すごく綺麗だ……」
お父さんは、私に覆い被さるようにして抱き締める。
首の後ろに手を回されて、顎を肩に乗せられる。
「んっ♡」
彼の背中に隠れて見えないところで、私の秘所に逸物があてがわれた。
ゆっくりと侵入してくる感覚に、私は小さく震える。
「大丈夫? 痛かったりするかい?」
「ううん……気持ちいいです……♡」
正直に答えたら、彼が笑った気配がした。
(っ、私、いま何を言って……っ!)
「そうか。それじゃあ、遠慮なく――」
我に返りかけた私は、下腹部の入口に割り込んできた剛直に、再び我を失った。
「っ!? あああああぁぁぁぁぁっっっっっ♡♡♡」
太く、長く、硬いそれが、私の膣内をいっぱいに満たす。
熱を帯びた亀頭が子宮口に迫るほど、脳が痺れて何も考えられなくなる。
絶頂していた。怒張が進む間ずっと起きる、引き延ばされたような絶頂だった。
「んんっ♡ はぁっ♡ はいってるぅ♡ 奥までぇ♡ あ、あぁぁっ♡♡♡」
根元まで突き刺さると、引き延ばされていた絶頂が、途端に甲高い衝撃へ変わる。
信じられない、知らなかった……『イク』って、途中でボリュームを変えるものだったんだ。
「はは、昨日あれだけしたおかげか、慣れてくれているね。好きに動いても大丈夫そうだっ」
「ひゃあっ!」
お父さんが腰を引いていく。肉棒が抜ける寸前で止まり、また押し込まれる。
「ふあぁっ♡ だめっ、これ、すごいぃ……♡」
まるで音量を上下させるように、快感の波が高くなっていく。
繰り返されるほどに波は高くなる。水面の揺れが徐々に大きくなり、やがて大波となるように。
「まだだよ、追加でおっぱいも気持ちよくしてやろう」
「えっ……んあぁっ♡」
両手で胸を鷲掴みにされ、そのまま揉みしだかれる。
乳首を摘ままれ、こねくり回され、弾かれながら、抽送が再開された。
すると、まるで胸と膣の快感が化学反応を起こしたように、双方の快感が爆発的に高まった……!
「っっっ、ひあああぁぁぁっ♡ ちくびっ♡ やっ♡ うそっ♡ 中もっ♡ 急にっ♡
あっあっあっあっあっ♡ あ"あ"あ"あ"あ"っっっ♡♡♡」
私は目を見開き、正気を失ったように嬌声を上げて、全身を反り返らせた。
「ああ、やっぱり。胸をいじめてやったら、途端に全身が敏感になったな。
慌てることはないよ、女の体には誰しもそういう『スイッチ』みたいなものがあるだけさ」
お父さんは私の頬を撫でて、猛烈な絶頂に震える私をなだめすかす。
そして再び、私の乳首に指を添えて、ゆっくりと捏ね始めた。
「ひぅぅぅうううっ♡」
体が勝手に震え、腰が踊り、奥に当たっていた亀頭に自分から子宮口を擦りつけてしまう。
(やだ、私の体っ、おっぱい触られるだけでっ、操縦されて……っ♡)
男の人の指先ひとつで全身を操られるような体験は、あまりに衝撃だった。
目の前にいる彼が、自分より圧倒的に上位の存在であるかのような気がしてくる。
(支配、されてるっ♡ この人にっ、私っ、簡単に操られてイカされちゃうっ♡)
また口から上がった嬌声すら、どこか遠くに聞こえた。
「いさな、もう一度だ。もう一度、僕の女になるんだ!」
昨夜と同じように乱れろという意味だと、直感で理解した。
「は、い……っ♡ なり……ましゅ……っ♡」
それを断るような気力が、もう私には残っていない。
もはや思考も、言葉も感情さえも、彼の与える快感に、操られるものだった。
○
床に脱ぎ捨てられた衣類、軋む音の鳴り止まないベッド。
ベッドの縁に引っ掛かっていたブラが、激しい揺れで床へと落ちる。
家に来たときは夕暮れ前だったのに、いつの間にか窓の外は紫色の宵闇だった。
「ああぁっ♡ おじさまぁっ♡ 気持ちいいっ♡ そこっ、気持ちいいですっ♡」
私はお父さんの背中にしがみつき、その激しいピストン運動を受け止めていた。
ベッドの上で体面座位となり、お互いの性器を結合させ、腰の動きで打ち合わせている。
「そうだ、自分の気持ちいいところは正直に教えるんだ。ほら、僕に胸を擦り付けてごらん」
「こ、こう? ……ふあっ♡ あっ、やだっ♡ やっぱりだめっ♡ 変わっちゃうっ♡
乳首こすれると全身の感覚変わっちゃいますっ♡」
体を上下すると共に、私の無駄に大きな乳房が、お父さんの胸板に擦れる。
すると乳首が刺激され、さっきも味わった化学反応めいた快感の急上昇に襲われる。
思わず逃げようとしても、お父さんが私の背中と腰をがっちり掴んで抱き寄せて離さない。
「動いちゃぁっ、うごいちゃだめぇっ♡ いくっ、またイっちゃ、イキすぎちゃうぅぅ♡」
「動いてるのは君だよ、いさな」
そう言われても、もう自分で自分が止められなかった。
膣内が痙攣し、愛液を吹き出しながら収縮するたび、お腹の奥まで快感が突き抜ける。
「ほら、イってる顔を見せて。どんな気持ちか言ってごらん?」
「イクッ♡ イッてるのぉっ♡ ずっとイってますっ♡ ああぁんっ♡ こんなのきもちよすぎて死んじゃうぅっ♡」
頭の中が真っ白になって、ただ気持ちよくて幸せだということしか考えられない。
「ああ、狂うほど奥イキするの慣れてきたみたいだね。これからもっと気持ちよくなれるぞ」
そう言って、お父さんが体位を変える。
今度はバックから、両手で乳房を掴んで上半身を持ち上げられ、膝立ち姿勢で突き上げられる。
パンッパンッパンッ! という、ひどく卑猥な音が、私のお尻から鳴り響いた。
「ひゃああんっ♡ これっ、すごっ、すごいぃっ♡ 子宮っ、押し込まれっ♡ あああっ♡ またイクっ♡ イグゥっ♡」
「もっとだ! イク感覚に逆らうな、そうすればもっと上の段階のオーガズムが来るぞっ!」
「はいっ♡ はひっ♡ わかっ、わかりましたぁっ♡」
この人の言うことに抵抗するという発想が、もう無かった。
従順でいればいるほど快感を与えてくれることを、体で理解してしまった。
「んぁぁっ♡ あああぁぁぁっっっ♡ ふおっ♡ ぉぉぉっ♡」
一突きごとに襲い掛かる絶頂にも、もう怖さがない。
現実なら全身の筋収縮でくたくたになってしまうオーガズムも、夢では快感だけ抽出されている。
結果、気が狂ってしまうような連続絶頂も苦痛なく受け入れてしまい、いつしかそれが癖になってしまった。
「いいぞ、いさなの一番好きなやつをしてあげよう」
そう言ってお父さんは、私をベッドに押し倒して正常位に持ち込んだ。
すると正面から腕を伸ばし、左右の乳首を抓んで捻りながら、高速で腰を前後させる。
「おっ♡ おおっ♡ お”お”お”お”っっっ♡」
雷に打たれたような快感に、私は獣じみた声で絶叫した。
お父さんの太い腰に足を絡め、乳房を揉み回す両手首を掴み、自分から引き寄せる。
「やっぱり、胸をいじめられながら奥を擦られるのが一番みたいだなっ!
ほら、他にも色んな刺激があるぞ? こうやって五本の指で乳首をくすぐるようにすると――」
「ふわっ♡ ちくびっ、それだめぇっ♡ あ、あっ、あぁぁぁ~~~っっっ♡♡♡」
乳首とポルチオの同時攻撃に、私の体は電気ショックでも受けたかのように跳ね上がる。
不規則なマシンガンのように起きる絶頂に、まともな思考が保てない。
(むねっ、色んなことっ、されすぎっ♡ 感じ方っ、色んなのっ、ありすぎてぇ♡)
指の腹で擦られたかと思いきや、乳首を押し込まれ、抓られたかと思ったら転がされる。
すると、機械が何かの『モード』を変えるように、同じピストンをされているはずの膣内が感じ方を変えた。
「予想以上の反応だな、聞こえてるか? 気持ちいいか?」
「はいっ♡ 気持ちよすぎるんですぅっ♡ ああっ♡ またイクッ♡ おっぱいとおく、いっしょにされるのすごすぎてっ♡ ああああくるっ、来るっ、またおっきいの来ますっ♡ だめっ、これっ、意識飛んじゃ――ぁぁぁぁぁあああああっ♡」
「おっ……おぉっ、締まるっ! いさな、もう……っ!」
お父さんが私の腰を掴んで、抽送を最高潮まで高めると、私の意識がどこかへ飛び立っていく。
色も形も認識できなかったけど、そこが天国に類する場所だと感じたとき、膣内に射精される感覚が追い打ちを掛けた。
「――――っっっっっ♡♡♡」
視界が真っ白に染まり、頭がスパークする。
体中の穴という穴から汗が流れ出し、体が溶けてしまうかのような錯覚に陥った。
「くはっ♡ はひっ♡ はぁぁぁっ♡ あぁぁぁぁ……はふっ♡ ふぁぁっ♡」
お父さんの動きが止まってからも、私は絶頂の揺り戻しで、小刻みに達し続けていた。
――どのくらいの間、そうしていただろうか?
悦楽の海が凪ぎとなり、心地よい海面に漂い続けるような、幸福感に溺れる時間だった。
(どうし、よう……私、こんな、幸せな気分に……水斗くんじゃ、ないのに……嬉しいっ♡)
ここまでとは思ってなかった。
ただ快感に流されて、それを好意と錯覚しているのだと思っていた。
それどころじゃない。
もし水斗くんとこういう関係になっても、こうはならなかったんじゃないだろうか。
私の中から逸物を抜いたお父さんが、ティッシュで各部を清めてくれることさえ、恥ずかしさと嬉しさを感じる。
(あ……あの、本……)
何気なく目を配ると、ベッド脇の小机に、ラノベが一冊あった。
お父さんが私の脅迫材料に使った、水斗くんに返す予定だった本だ。
それが――消えていく。
水に溶けるように、薄れて見えなくなっていく。
まるで、私の心の中で、役目を終えてしまったかのようだった。
もう、この家に来る『口実』なんて必要ないのだと。
「約束通り、水斗には内緒にしてあげるからね……もっとも、もう脅す必要もなさそうだけど」
頬を撫でるお父さんに言われて……そういえばそうだったと思い出す。
「はい……おじさま♡ 好き、好きです♡ 恋人に、ううん、愛人にしてください♡」
私の発言に、お父さんが少しきょとんとしている。
私自身、自然と口をついた言葉に、心の奥底で驚いている部分があった。
(なんだ……私、水斗くんじゃなくても、よかったんだ……)
もう振られてしまった彼への執着が、この人に塗り替えられていた。
私の心は、どうやら新しい恋を見付けたらしい。
びっくりするほど簡単に、水斗のつけた傷を、そのお父さんが埋めてくれた。
(『親友』だなんて言って、未練がましく、終わった恋を延長させるの、辛かったんだ……)
夢が、気付かせてくれた。
現実では意識もしなかったけど、どこかで水斗との関係に疑問を抱いていたんだろう。
振られた相手にべたべたして、自分からキープされに行って、これでいいのか――と。
恋の喜びを知ったなら、水斗のことは忘れて、誰か別の男性を愛してはいけないのかと。
その点――水斗に似ていて水斗ではない彼は、古い恋からの巣立ちには、理想的な相手だ。
そういう、現実とは異なる青春への憧れが、私にこの人を選ばせたんだ。
「いいとも、いさな――今日から君は、僕の女だ」
「はい、おじさま♡」
彼の手を握って満面の笑みを浮かべた頃――夢が終わりを迎える。
視界は薄れ、景色が遠のき、耳には外界の音が聞こえ始める。
現実の自分へ戻っていくに連れて、この記憶も剥がれ落ちていった。
きっと次の夢が始まったとき『ロード』されることだろう。
目を覚ませば自分はまた、水斗の『友達』に戻らなければならない。
それが嫌なわけじゃない。
ただ、そういう生活では得られない日々を、愉しさを、夢の中で別の男性と紡ぐだけだ。
現実世界の自分にさえ、ないしょの享楽。
一人の女としてそういう時間を過ごすのに、誰の許しが必要だったと言うのだろう。
だから明日も、これからも――
東頭いさなは、淫らな夢を見る。
【十夜目 了】
ご一読いただきありがとうございました。
いさなNTRの第二弾です。
『僕が先に好きだったのに』はBSS。
なら『僕のことを好きだったのに』はなんて言うんですかね?
未定義ならBKSと名付けよう。流行りませんように。