継母の連れ子が元カノだった、いまは僕の父親とヤってる 作:大中小太郎
――伊里戸水斗――
……夢が始まると、現実世界が恋しくなった。
僕の現実世界は平和すぎる。
父と結女が懇ろになっていたりしない。
僕が眠っている結女をレイプして、侮蔑の眼差しを受けたりもしていない。
そんな今日までの夢の記憶をロードしただけで、僕は硫酸を飲んだような心痛を覚えた。
(図書室、か……)
結女に拒絶されて終わった前回の夢、その後に迎えた今日の夢は、学校の図書室からだった。
一度は、いさなとの接触を断つために遠ざかった場所だ。
この夢でいさなと接点を増やしたら、伊里戸家の淫らな呪いに巻き込むかもしれないからと。
なのにいま、僕は図書室に来ている。
たぶん、傷ついた心を癒やし、自分の失態を忘れさせてくれる場所として、ここを選んだのだ。
(体は……無い、か)
僕はまた、視覚と聴覚だけの浮遊霊だった。
その原因はもう悟ってしまった。
僕が他者との関わりを拒絶するとき、夢の中の僕はこうなる。
自分の意思ではどうにもできない。
これはもっと心の深い部分で、僕の性根が正されなければ解消されないのだろう。
そしていま、僕はこの浮遊霊状態を歓迎していた。
いまなら誰にも見つからない、誰にも自分の所業を糾弾されない。
一時は何の呪いかと恨んでいたこの状態が、いまは神の慈悲かというほど安心する。
なるほど……この『心地よさ』が手放せないから、僕は透明人間になったんだな。
(いさなは……いないのか)
図書室を見回すと、いつも本を読んでいる東頭いさなの姿がない。
いまは孤独が愛おしいこともあり、僕はいさなの行方をあまり気にしなかったが……
(……なんだ? この本)
一冊の本が、図書室の机にあった。
他の本はタイトルがぼやけて見えない『背景』でしかない。
なのにこれだけが、視界でくっきりしている。
(たしか、いさなに貸した本だ)
そう直感した。
タイトルや表紙を正確に認識したわけじゃない、概念が先に来たように直感した。
夢にはしばしば心理を象徴するオブジェクトが現れるという。これはその類だろう。
だからだろうか――浮遊霊の体でも、その本を手に取ることができた。
(いさな……)
更に直感する。
これは僕といさなの『繋がり』だ。
オタク仲間、ラノベ談義を常とする僕らの関係を形にするなら、これ以外の物品はないだろう。
妙に安心する。
いさなだけは――僕の中で汚れていない。
性の汚濁に塗れていない、清い存在として、僕の内にある。
結女との出来事に傷ついていた僕の心は、そんないさなとの思い出に癒やしを感じていた。
それを求めて、僕はその本のページを捲る。
『○月××日』
『今日もおじさまと沢山セックスできた』
凍り付いた。
内容がラノベではなく日記であったことなど、疑問に思うこともなかった。
『水斗くんの家に行くと、今日もおじさまが迎えてくれた』
『抱き付いてキスをするだけで全身が甘い軽イキを迎える』
『抱きしめ返された腕が気持ちよすぎて、背中を撫でられるだけで腰が抜けそうだった』
なん、だ……? この、内容……
いさなの一人称で記述された文章が、僕の目から脳へと強制的に流れ込む。
受け取った脳は、その情景を、録画映像を再生するように思い浮かべていた。
『舌と唾液を交換しながら、お尻を揉まれる』
『それだけで子宮がきゅんきゅんとうずいて止まらない』
『私の体、おじさまに触られるだけで無条件に感じるようになってる』
『それが嬉しくて、おじさまの胸板におっぱいを押しつぶすのが止められない』
思い浮かぶ。
伊里戸家を訪れたいさな、出迎える父、抱き合って濃密なキスを交わす二人。
糸が引くほど舌を絡めたいさなの、頬を紅潮させて当然とした、メスの顔。
一瞬で頭に叩き込まれた一ページ分の文章が、情景を加速させる。
『おじさまは私を後ろ向きにして、壁に手を付かせ、お尻を突き出させた』
『そのままスカートの中に手を入れてショーツ越しのおまんこをいじくり回される』
『水音を立て始めたら、パンツを脱がされて直接クリトリスを摘ままれた』
『私は子犬のようにきゃんきゃん鳴いて、それを聞いたおじさまが興奮してくれた』
『興奮してくれるのが嬉しくて、私はいつしか声を我慢することを忘れてしまう』
『おねだりも沢山する、エッチに見えるようにヒップを揺らす。
だって、おじさまが興奮するほど、私も気持ちよくなれるから』
僕はいま図書室にいるはずだった。
なのに、まるで我が家の自宅にワープしたかのように、その光景が見える。
父が、壁に手をつかせたいさなに、背後から手淫する光景が。
いさなにしては露出の多いブラウスと膝丈のスカート、大胆な下着。
僕の知るいさなより、ずっと女の子らしくて、大人びてすらいる。
それが……僕に告白したはずの彼女が、僕の父に痴態を晒して媚びていた。
『指だけで何回のアクメをしたんだろう。細かいのを数えたら十回は超えている』
『腰が抜けてしまった私は、気持ちよくしてくれたお礼に、フェラチオをしてあげた』
『いいや、してあげたなんて言い方はおこがましい。だって私のお口も気持ちいいから』
『男性をイかせてあげる行為なのに、口が過敏な性感帯になって、イってしまうから』
『だから夢中で、おじさまのモノを呑み込んだ。
顎が外れそうになるくらい、根元までしっかりと、唇で締め付けて』
『そうしたらおじさまは、私の頭を掴んで乱暴に動かした。
それでまた気持ちよくなってしまって、何度も絶頂を迎えさせられた』
『私の体はもう、イラマチオだけで、気絶するほどイってしまうようになっていた』
嘘だ。
なにかの幻覚、たちの悪い妄想だ。
だって、いさなだぞ?
僕と同種のオタク系で、女の子らしさなんて養われてなくて。
最近、何の気の迷いか僕に恋をして、少しだけお洒落を身に付けた程度の子だぞ?
それが……僕がほんの数日、結女の背を追っているうちに……
『気がついたらベッドの上に運ばれて、服を脱がされていた』
『ブラを外された胸に息が掛かるだけで、私は嬌声を上げた』
『おじさまの愛人になって以来、おっぱいの敏感さが留まることを知らない』
『乳首を甘噛みされながら吸われると、それだけで正気を失ってしまう』
『私の反応を見て気をよくしたおじさまは、もう片方の手でおまんこをいじめてきた』
『クリとGスポットを同時に。私は獣のような声で喘ぎながら、おじさまの頭を掻き抱いた。
おっぱいも、もっと舌や歯でいじめてほしい。
その逞しい腕で揉みくちゃにして狂うほどイかせてください』
『思っていただけか、実際に口に出していたのかも、自分では分からなかった。
どちらにせよ、おじさまはその通りにしてくれた』
『私は陸に打ち上げられた魚のように全身を跳ねさせ、意識が飛ぶまで叫んだ』
『気持ちいい、気持ちいい気持ちいい気持ちいいきもちいいきもちいいきもちいいっっっ♡♡♡』
――そこで、僕の視界は図書室に戻ってきた。
目の前には手に取った本、無意識のうちにページを捲ろうとしていた指が見える。
どうやらこのページに込められた出来事は、もう過ぎ去ったらしい。
つまり僕には、ここで本を捨てるという選択肢があった。
こんな幻覚、夢の中の悪意ある演出として放り捨てればいい。
それでも……もし、真実だったら?
それを確かめるために――どこか言い訳のようにそう念じながら、僕はページを捲った。
『あれだけオーガズムを味わって、もうこれ以上なんてないと思っていた』
『なのに、おじさまの逸物を受け入れた途端、前戯とは段違いの強烈な快感に襲われる』
『これが現実だったら発作を起こすんじゃないかというくらいの大絶頂が、入れられただけで』
『私は自分が何を言っているかもわからないまま、ただひたすらに快楽を求めた。
もっともっと激しくしてほしくて、子宮口をノックされるたびに達してしまう。
私が自分から腰を振るようになると、おじさまもそれに応えてくれた。
激しいピストン運動に脳髄を焼かれる。私の口からは間抜けな声と懇願が飛び出す』
『体が第二段階に入っていた』
『普通に刺激を受けて達してしまうのが第一段階とすれば、第二は達していて当たり前。
絶頂時の悦楽が常に体にあって、更に刺激を受けるとより絶頂が高まり、天井にぶつかる。
その時点で天国なのに、おじさまのおちんぽに突かれるほど天井がひび割れていって――
天井を突破すると、私はもう、人体の限界を超えたようなオーガズムの世界に放たれていく』
『あの快感はもう言葉にできない。言語に絶している』
『言葉にできるのは、そのときおじさまに何を言って、何をしたかくらいだ』
いさなが語ろうとしていることには、覚えがある。
結女が父とのセックスで味わっていたのと、同じものだろう。
理性を失ったケダモノになるほどの悦楽、無限に増大する快感に気が狂っていく様。
いさなが、僕の家で、あの父と、そうなっていたと――この日記には書いてある。
『私は赤ん坊が泣くような喘ぎ声を上げながらおじさまにしがみついた』
『おじさまは私を抱き上げ、正常位から対面座位の姿勢になった。
おっぱいに触れてもらえないけど、胸板に潰れるのも気持ちよくてイってしまう。
体位が変わると快感の質も変わる。楽器が変わるかのように別のセックスになる』
『おじさまは達人の演奏家だ。私の体を巧みに奏でて、私を絶頂に震わせ続ける』
『すごい、素敵、格好いい、尊敬、崇拝、おじさまは私を気持ちよくする神様だった』
『おじさまのためなら、こんな胸が大きいだけの体なんて、いくらでも捧げられる。
捧げた結果、得られるのが無上の快感なのだから、捧げるなんて言い方も卑怯だ』
『抱いて、犯して、滅茶苦茶にして。何をされても気持ちいいから、おじさまの好きにして。
おじさまを気持ちよくするための使っていいの、そうされるのが気持ちよすぎて幸せなの』
『そう訴えると、おじさまは「可愛い」「大切にする」と言って、腰を打ち付けてくれる』
『おじさまが私の体に溺れている。私の体で気持ちよくなっている。
私はそれが嬉しくて、幸せで、何度も何度も天国の上空に舞い上がった』
『やがておじさまの動きが激しくなり、射精の気配を感じる』
『おじさまの精液を注いでほしい。いっぱい出して、お腹の中をおじさまの色に染めてほしい。
私はおじさまの首筋に吸い付きながら、そんなお願いをした』
『するとおじさまは、射精のためのラストスパートを始めた』
『この瞬間、私はもう快感以外の何も認識できなくなる。
意識は宇宙の果てまで飛ばされるように、延々と続くオーガズムの連打に吹き飛ばされる』
『突かれたら絶頂して、絶頂が終わらなくて気絶して、また絶頂を追加され叩き起こされて。
輪唱する発狂ものの大絶頂を、十重に二十重に追加されて、魂まで快感に砕かれていく』
『月で一頭の獣になって遠吠えするように、私はおじさまの射精を受け止めながら叫んだ』
気がつけば、本を床に落としていた。
頭に叩き付けられた情報量に、眩暈がする。
短時間に圧縮されたイメージの弾丸に、頭を撃ち抜かれた気分だ。
(落ち着け。まだ、僕の頭が作った妄想って線もある……ある、はず……)
自分に言い聞かせながら、それを信じ切れなかった。
現実的に考えれば妄想なのだが、この夢の中では逆だ。
以前、僕は伊里戸家で過去の情景を垣間見た。
夢の中では時間も空間も大した意味を持たない。
この『本』という象徴を介して、いさなの見た『夢』が再生されても、いまさら驚かない。
「…………」
落としてしまった本が見当たらない。
役目を終えて消えてしまったかのように。
(……確かめよう)
いさなが、いまどこで何をしているのか、確かめなければならない。
万が一にも本当だったら――というよりも、何かの間違いであるという一縷の望みに縋るように。
確かめる方法は分かりきっている。
あの家に……決別したつもりの我が家、伊里戸家に行くことだ。
○
そう決意すると、僕の視点はいつの間にか、自宅の前にあった。
見慣れた我が家だ。
およそ数日ぶり。昼夜がころころ変わる夢の中では、そういう曖昧な日数しか出せない。
何日にせよ、僕が結女を追う選択をしてから、いさながどうしていたのか、僕は知らない。
でも、もし僕の知らない数日間、いさながこの呪われた家に来ていたら?
そう思うと、見慣れた我が家が、まるでホラー映画の洋館か何かに思えてきた。
(……この体じゃ、ドアも開けられないな)
僕の意思に応じて、視点が家に近付いた。
しかし実体がないのでドアノブに触れられない。
僕のこの浮遊霊状態は、恐らく僕の深層心理によるもの。
それだけに、意識や気合いひとつではどうにもならない。
念じるだけで性根が変わるなら、誰でも悟りを開いている。
(窓から……中を覗くしかないか……)
自分の家だというのに、なぜそんなことをしなきゃいけないんだろう。
そう思いながら、僕は普段なら通らないルートで庭に周る。
あるのはリビングの大窓、ソファーとダイニングとキッチンが見通せる場所だった。
そこでは――
「んっ……ふぁ、れろぉ……ちゅぷ♡」
女の声と、水っぽい音がした。
カーテンの隙間から目を凝らすと、父がソファーに座っているのが、正面から見える。
父はふんぞり返るような姿勢で、足下を見ていた。
正確には――足の間で頭を上下させる、女を見ていた。
「じゅる、れるぅ……ぢゅぽッ! ずぼ、ぐっぽ!」
その女の頭は激しく上下していた。
床に膝を付いた後ろ姿なので顔は見えないが、父の逸物を呑み込んでいるのは分かる。
キャミソールとホットパンツという……ホラー映画のお色気枠みたいな露出過多の服装。
フェラで感じているのか、白い内腿を擦り合わせながら、ホットパンツの尻を揺らしている。
「ああ、気持ちいいよ。ほら、遠慮しないで、口で引き抜く勢いでしゃぶってごらん?」
父は気持ち良さげに吐息を漏らすと、女の後頭部に手を置いた。
その手に強要されたというより、待てを解かれた犬のように、女の頭がより深く沈み込む。
「んぐぅ♡ じゅぷぷぷっ♡ んぉっ♡ ふっ♡ ぢゅぷっ♡ ぢゅぷぁ♡」
一心不乱に、息継ぎもしない、男根を貪るような、自発的なイラマチオ。
淫らさを極めた女にしかできないことを、自らの快感を追い求めるように繰り返している。
「くっ、出るぞ……っ」
「~~~~っ♡」
びくん、と父の腰が震えると同時、それが伝わったように女も震えた。
口内射精を受けても口を離す気配がないどころか、搾り取るように顔を沈める。
口から背中、尻から太股、足の爪先までも、絶頂したように跳ねていた。
「っぷは……♡ はーっ、はーっ♡ おじさまの精液、濃くて美味しいです♡」
顔を上げた女の髪は、短めだった。
結女のような長い黒髪でもないし、由仁さんのように結ってもいない。
何より……二人は父のことを『おじさま』とは呼ばない。
「ああ、ありがとう。気持ちよかったよ――いさな」
パリン――と、僕の中で、氷が砕けるような感覚がした。
砕けた氷は冷水となって、心の隅々まで広がっていった。
「さあ、お膝においで。後ろ向きだよ」
「はい、おじさま♡」
意図してではないだろうが、父がその女を、僕にも顔が見える向きで膝に座らせる。
こちらに向いた女は、紛れもなく――東頭いさな。
少し前に、僕に告白をしたはずの、野暮ったいけど純粋な、親友の女の子だった。
(いさ、な……)
図書室で見た日記が、嘘ではなかったことが、一目で分かった。
頬を紅潮させて陶然と微笑み、口の端から精液を垂らした顔が――
彼女ならまず買わないだろう服と、それを内側から圧するむちむちした肢体が――
父の膝に座り、腕を後ろに回して首を抱き、胸に伸びてくる手を受け入れる姿が――
「あぁっ♡ おじさまっ、はやくっ♡ いつもみたいに、お願いしますっ♡」
その台詞が――とっくに父の女となっていることを、物語っていた。
すぅ……っと、始めから透明だった僕の体が、より薄れた気がする。
僕の心が目の前の光景を拒否して、現実逃避しようとしていることが、体の感覚も同然に分かる。
それでも視覚と聴覚だけは、より鋭敏に、父といさなの交わりを捉えていた。
「あっ♡ そうっ♡ おっぱい♡ もっとぉ♡ 強くっ、たくさんいじめてくださいっ♡」
父はいさなの巨乳を、背後から鷲掴みにする。
以前Gカップだと暴露していたが、この夢ではより大きく誇張されて見えた。
「ひゃうっ♡ 服ぅっ、服なんていらないっ♡ おじさまっ、脱がして直接っ♡
破けちゃってもいいですからっ、おじさまのお手々、素肌で感じさせてっ♡」
男に向けて自ら脱がせるよう懇願したいさなは、当然、僕の存在に気付かない。
彼女が振り返るように見ているのは僕の父だけ。きっと僕に実体があっても結果は同じだった。
「まったく、欲しがりな子だな。いいよ、いさなの敏感おっぱい、僕の手で捕食してやる」
父の手がキャミソールをまくりあげると、ノーブラだったいさなの乳房がぽろんと踊り出る。
その半球の大きさや、先端で尖る乳首に目を剥く間もなく、父の五指が乳房に食い込んだ。
「んぁぁぁぁっ♡ きたっ♡ おじさまっ♡ むねっ、それっ、気持ちいいっ♡」
まるで別の生き物のように暴れ回る肉塊。
指の間からこぼれるほど柔らかく、張りのある肌。
その先端にある突起は、触れてもいないのに硬く尖っている。
「こんなにガクガクするほどイっちゃって。胸を揉まれるだけで達する体になっちゃったな」
「だってぇ、おじさまが仕込んだから♡ おっぱいで沢山イかせてきたからぁ♡」
「おや、僕のせいかな? 普通の愛撫しかしてないんだけどなぁ。こういう風に――」
父の指が、いさなの乳首を軽くつまむ。
すると、いさなは喉を反らして天井を仰いだ。
「ひゃうんっ♡ 乳首イクっ♡ すぐイキますっ♡ おっぱいイグっ♡ いぐぁぁぁっ♡」
まるで獣みたいな声を上げながら、いさなは胸の刺激だけで絶頂していた。
なんだ……あの……淫らな女は。
いさなだ。いさなだけど、あまりにも、僕の知るいさなじゃない。
元々スケベというか、エロネタを振るところがあったけど、あれはそういう次元じゃない。
あの日記に書いてあったように――快楽のリミッターを外されたメスの痴態だった。
「どうだい、そろそろ欲しいかい? それともおっぱいだけで気絶するまでイキたいか?」
「おじさまのっ、おじさまの好きにしてぇ♡ どっちも、同じくらいっ、好きですからぁ♡」
現実の彼女よりも、ふざけたことを言う。
いさなには、膣内の挿入されることと、乳房を弄ばれることは、同じくらい快感らしい。
あの豊かすぎる半球と乳輪に乳首が、Gスポットやポルチオと同等の性感帯だということだ。
快感が無限に昂ぶるこの夢で、いさなの体は、そんな風に変えられてしまったのか。
「そうか、なら両方してやるっ」
父はそう言って、いさなのホットパンツを剥ぎ取ると、胸を掴んだまま逸物をあてがう。
いさなは背面座位で両足を開き、自ら父のペニスを導き、濡れそぼった膣口へと迎え入れた。
「ふぁっ……♡ はいってくるっ♡ おじさまのおちんちんっ♡ ゆっくり、奥まできてっ♡
やっ、おっぱい緩めちゃだめぇ♡ もっと、子宮の奥と一緒にっ♡ ぐりぐりってしてぇ♡」
いさなは、少しずつ膣道を上ってくる逸物に、もどかしそうな顔をする。
最奥部に到達する前に止め、胸への愛撫も浅くしていた父は、そうして焦らした後――
「ひぁぁぁうぅぅぅっ♡」
急に子宮口を突き上げ、胸を握り潰すように揉み始めた。
いさなが絶頂しているのは、声と顔と、噴き出す愛液で分かる。
「すごいっ♡ これすごぃいいっ♡」
「ほら、これで全部入ったぞ」
父が腰と手を動かす。
いさなの口から悲鳴じみた喘ぎが漏れる。
「ひゃあん♡ おくっ♡ しゅごいのぉ♡ おっぱいもしゅごいっ♡ 一緒にされるのだめぇっ♡
同時にっ、交互にっ、何度もイっちゃうっ♡ 気持ちいいのどんどん増えて止まんないのぉ♡」
父が激しく抽挿を繰り返す。
そのたびに、いさなの大きな尻が波打ち、肉付きの良い太腿が揺れ動く。
「あはぁイクッ♡ またイくのっ♡ おまんこイク♡ おっぱいイク♡ もう無理っ♡
おじさまぁっ♡ おじさまぁっ♡ もっとっ、このままっ、飛んじゃうまでしてぇ♡」
僕が知っている、純情だったいさなは、どこにもいない。
あの日記の通り、彼女は豹変してしまっていた。
口から涎を垂らして、体を蹂躙されることを悦び、細腕で父の首を抱いておねだりする。
ほんの数日ほど見なかったうちに――彼女は、淫らに媚びる父の愛人となっていた。
「あっ、あああぁぁあぁぁぁっっっ!!」
大きく仰け反り、ガクンガクンと痙攣する。
ソファーに両足を突っ張って腰を浮かせると、父の巨根が抜け出た。
「やれやれ、僕はまだイってないのに」
「はひっ♡ はぁぁ♡」
いさなは父の腕の中で、半ば意識を失っていた。
父はそんないさなを、ソファーで横向きに寝かせる。
そして片足を持ち上げると、側位の姿勢で再び挿入した。
「んぁぁぁっ♡」
また挿入時に達したらしい。いさなが嬌声と共に目を覚ました。
右足と左足を垂直にするような側位での挿入で、横たわった上半身の乳房が揺れる。
「ああんっ♡ おじさまっ♡ まだっ、わたしっ、イった、ばっかりぃ♡」
「何を言ってるんだ、まだイけるだろう? ほら、自分でおっぱい吸ってみるんだ!」
「は、はいぃっ♡」
いさなは両手で自分の胸を掴み、唇で乳首を吸いながら乳輪ごと口に含む。
「ちゅぱっ、ぢゅるるる♡ んんっ♡ ぷあっ♡ やっ♡ おじさまっ♡ そんな突いたらっ♡」
「ほら、口を止めない。おまんこは突いてやるから、休まず自分で胸をいじめるんだっ!」
いさなは命令されるがまま、口で片方の乳頭を吸い、もう片方の乳首を指で抓る。
「ふぅーっ♡ んっ、んっ、んっ♡ じゅるるるっ♡ くぅううんっ♡」
「ははは、凄いな。本当に胸が好きなんだな! それじゃあ、こうするとどうなるかな?」
「えっ……きゃううううっ♡」
父がいさなの背中側に寝転ぶと、背面側位で突きながら、腕を回して乳房を掴む。
ちょうど僕の視界では、横たわったいさなが、背後から膣と胸を犯される様がよく見えた。
「あっ、あぁっ♡ すごぉい♡ これ、すごいっ♡」
「そうか、ならペース上げるぞ。そろそろ僕をイかせてくれっ」
「はいぃっ♡ いさなのおまんこ使ってくださいっ♡ おっぱいでお手々も気持ちよくなってっ♡
んんっ♡ あんっ♡ 奥っ♡ 来てますっ♡ そこっ、もっとぉ♡ 乳首と一緒にぃ♡」
いさなは自分からも尻を突き出し、結合部を擦りつけるように動かしていた。
ソファーの上で身もだえしながら、一秒ごとに嬌声を高めていく彼女に……僕は見入る。
気がつけば手は股間に伸びており、肉棒をしごこうとしていた。
寸前で思い留まる。
いさなで、他でもない僕の意思で振った女でまで自慰をしたら、また何かが終わってしまう。
必死に堪える僕に構わず、いさなの嬌声は最高潮に達していた。
「あ”あ”あ”あ”あ”♡ いいぐうぅぅぅっ♡ いっでりゅのにぃ♡
もっとぉ、上にぃっ、イカされっ♡ お”お”お”お”お”っ♡」
「よし、出すぞっ……ぐっ!!」
いさなの腰が跳ね上がり、痙攣する。そのたびに彼女の秘裂からは愛液が噴き出していた。
父さんは長い射精を終え、いさなの身体を抱いたまま脱力した。
いさなは父の腕に手を重ね、幸せそうな表情で目を閉じている。
その姿は紛れもなく、愛し合う男女のものだった。
『――好きです! 水斗くんの、彼女にしてくださいっ!』
勇気を振り絞ったようにそう言った彼女を、いまでもしっかり覚えている。
大人になって十代の頃を振り返ったとき、必ず思い出すだろうというくらい。
振っておいて不誠実だけど、いさなが告白してくれたことは、男としての自信だった。
誇らしかった。恋人になりたいと言ってくれる子がいて、誇らしかったんだ。
「えへへ♡ おじさま、まだ、おっきいですよ?」
「ああ、次は向かい合ってしような」
僕は、彼女の告白を断った。
だから、彼女にはその権利があった。
つまり、僕以外の男性と恋人になる正当な理由が。
失恋したのだから、新しい恋を探す。その節目を与えたのは、ある意味で僕だ。
「あああぁぁぁおじさまぁぁぁっ♡ 腰っ、こし止まんないぃぃっ♡
私の、体っ、踊らせちゃだめぇっ♡」
歯噛みしている自分を、もう一人の自分があざ笑っていた。
悔しいとか、そんな風に思うのは、筋違いだと。
自分の父親と姦通していることに義憤を覚えるというなら、まだいい。
でも『僕以外の男と結ばれていることに怒りを覚える』のは――違うだろう。
いさなを振った自分が、いざ他の男と関係しているのを知って悔しがる。
もうそれは、身勝手を通り越して滑稽だ。
その滑稽な怒りが、自分の中にあるという事実が――不愉快すぎた。
自分で振った女に、自分の女であるかのような独占欲を持っていたなんて。
この光景が僕に突き付けるのは、そういう……自分でも気付かなかった、醜い心の一面。
結女のときに、もう出尽くしたと思ってたのに。
どうして僕の心からは、こんなに次から次へと、認めがたいものが出てくるのだろう。
「可愛いよ、いさな。動物みたいに腰を振ってるの、エロくて可愛いよっ。
思いっきり抱き付いていいから、僕のおちんぽ好きに使ってごらん」
「あぐっ、あぁぁっ♡ ちがっ♡ これ違うのっ♡ 自分でっ、動かしてないっ♡
からだ、勝手にぃ♡ おじさまの、でっ、自分でっ、子宮っ、いじめてりゅっ♡」
だからだろうか、僕の体はいまも透明だ。
いさなに視認されないことを望んでいる。結女に対してそう思うのと同じように。
理由は、僕自身の心が知っていた。
あの場所にいるのは、現実のいさなとは別のいさなだ。
結女と同様に、父さんに抱かれた女――『僕しか男を知らなかった彼女』ではない。
僕と父を比較して、父を選んだ女だ。
いさなに視認されて、『父と見比べられること』を、僕の心が怖れているからだ。
「そろそろ僕も動くぞ」
「はひっ♡ ひぁぁっ♡ らめぇっ♡ もぉ、イキっぱなしなんですっ♡
いまっ、突き上げちゃっ♡ あぁっ♡ あああっ♡ あああああぁぁぁぁぁっっっ♡♡♡」
僕の覗き込む窓が、いさなの絶叫で震えていた。
体面座位で腰を振り続け、父が尻を掴んで突き上げたら、再び天国に到達してしまったらしい。
「おじしゃまぁ♡ わたひ、まら、まらできまふ……♡」
「はは、無理は駄目だよ。お風呂で一休みしてからにしよう」
「もう、本当に休ませてくれるんですか?」
父はいさなを抱き抱えて、リビングを出て行く。
思えば父が座っていたあの場所は、僕がよく読書をしている場所だった。
現実の僕が、よく漫画やラノベを読んでいる場所で――
夢の中では、父がそのいさなを抱いて、喘がせ、虜にしていた。
あの場所はもう、僕の座る場所じゃなかった。
(……帰ろう)
自然とそう思った後に、なにを言ってるんだかと自嘲する。
ここは僕の家だ。立ち去るというなら、言葉が逆だろうに。
ここはもう僕の家ではないから、帰る先がここではないことも、また事実だけど。
そんなことを考えている間に、僕の視界は伊里戸家から離れていた。
ワープとも高速移動ともつかない視界の揺れを経て、ふと気がつけばそこは――
(図書室、か……)
最初の場所に戻っていた。
艶やかな声が響いていた伊里戸家と比べて、あまりに静かな、夕暮れの図書室。
ともすれば、いままでの光景は幻覚だったのではと思える。
でも、僕だけの妄想ではないことは分かっている。
目に焼き付いた、喘ぐいさなの姿が、そう確信させた。
(っ、あの本……)
ふと気付くと、窓際に一冊の本があった。
現実の放課後、僕といさなが図書室で落ち合うときの、いさなの定位置に。
表紙もない純白の文庫本が、ぼんやりした夢の景色で、くっきり浮いている。
触れれば、また『日記』を見せられるのかもしれない。
そう不安に思う一方で……『あれは別物だ』とも感じていた。
なんというか、いさなと父との情事が刻まれていた最初の日記とは、雰囲気が違う。
夢の中で長く過ごして第六感が磨かれたのか、疲弊した心があらぬ希望に縋っているのか。
僕の手は無意識のうちに、その本を手に取った。
『○月××日』
『今日は、水斗の家へ遊びに行った』
『水斗に、結女さんも加わって、一推しのアニメ映画を見た』
これは……
普通に文字だけの日記だ。
『水斗は気に入ってくれたようだった。着眼点が私と違っていて面白い』
『こんな風に、好きなものについて語り合えるだけで、とても楽しい』
『膝枕、さも気にしてない風におねだりしてみたら、してもらえた。内心嬉しかった』
その内容は、現実でもあった出来事だ。
夢の中で同じようなことをした記憶はない。
これは現実の出来事を記しただけの、いさなの『日記』だ。
『結女さんが結構怖い目で睨んでいた。
意外とヤキモチ焼きというか、ブラコンなところがあって尊い』
『眠っちゃった水斗を膝枕してあげられなかったのは、ちょっと残念だったけど……』
『寝顔、すごく可愛かった。いまでも、思い出すだけでニヤけちゃう』
ああ、そうだった、たしかにあの日、僕は寝落ちしてしまったんだっけ。
そうか……僕が眠った後、いさなは僕の寝顔を見て、そんな風に思っていたのか。
『彼女になれなかったのは、残念だったけど、いまの関係もいい』
『この先も、できれば卒業した後でも、この関係を失いたくない』
『大人になっても、別の進路に行っても、気軽に連絡をとって、
どちらかの家に気軽に上がって、アニメを見たり、お酒を飲んだり』
『友達なんて居なくていいと思っていた頃もあったのに――いまは、そんな未来がいい』
指が震えた。
これは、たぶん、いさながこの夢に毒される前のものだ。
僕との友達関係を大切にしてくれていた頃の、いさなの気持ちだ。
「あ……」
その本が、僕の手中から、薄れて消えていく。
これは、どういう意味なんだろうか。
いさなが、僕と出会うこの場所に、置き手紙のように残していったのだろうか。
それとも、いさながその気持ちを捨てていったことを意味しているのだろうか。
あるいは、両方か。
いさなはもう、男と言えば僕しか知らなかったような、純朴なオタク系女子ではない。
相手が僕の父親なのはさておき、男を知って、女の悦びを知って、大人になったのだ。
「…………」
きっと、いさなはもう、この夢で図書室に来ることはないだろう。
この場所が象徴する、僕との友達関係、ラノベのことを話すだけの日々。
それらから、いさなという女は、巣立ってしまったのだ。
この夢の中に限り、現実とは異なるいさなとして羽化して、旅立ったのだ。
言うなれば『昔の男』である、僕を残して。
彼女は振られた男への執着を忘れて、新しい男と関係を結び、大人になっていく。
だとしたら僕は、そんないさなを……邪魔してはいけないのかもしれない。
だって――『友達』なのだから。
恋人になることを選ばなかったのだから。
(もし、あの時、結女を追わなかったら……)
この図書館で、僕を探していた結女を追わず、いさなの傍にいれば。
あるいは、いまとは違った夢になっていたのだろうか。
僕は、そんなことを考えていた。
なにも起きずに日が沈んでいく図書室で、やがて真っ暗になった図書室で。
起きなかった未来を想像して、自分を慰めるように。
夢が終わるまで――ずっと、ずっと、考えていた。
【了】
ご一読いただきありがとうございました。
いさな編、ひとまずこれで一区切りです。
原作「連れカノ」には文学好きが多いので、
とある文豪のスケベな名作にあやかり『日記』を活用しました。