※この作品はR-18です。

継母の連れ子が元カノだった、いまは僕の父親とヤってる   作:大中小太郎

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十四夜目・後編

 

 

 

その後、三人は部屋のあちこちで何度も交わった後、伊里戸家に帰っていった。

僕の視界もそれに引かれ、浮遊霊というより父の背後霊のように連れて行かれる。

以前、一度戻ってきたときは、浮遊霊のため扉も開けられなかったが、父の影として玄関を潜る。

 

もう僕は、なにもしない。

自慰すらする気にならない。

首でも釣ったように手足を降ろして、父を中心に喘ぐ結女たちを見下ろしていた。

 

「あひぃっ♡ お義父さんしゅごいっ♡ これしゅきっ♡」

「旦那様ぁ♡ 指きもちいいっ♡ 結女と一緒にイかせてぇ♡」

 

リビングのソファーで、結女が突かれ、由仁さんが手淫に喘ぐ。

 

「ふぅぅ♡ ぢゅぷっ♡ お義父様♡ 私のキス、上手になったでしょうか?」

「あんっ♡ あっ♡ パパぁっ♡ それっ、突きながら奥をごりごりってするの凄いっ♡」

 

いさなが父の顔を抱くように唇を重ね、その間にも南さんがバックで抽送される。

 

「んむっ♡ ちゅるっ♡ はぁ、はぁ……れろぉ、れるっ♡」

「ちゅ♡ じゅる、ずぞっ、んぶぅ♡」

「はうぅ♡ お義父様の体、美味しい♡」

「ちゅうっ♡ あは、男の人の乳首を舐めるの、けっこー楽しいんだね♡」

 

結女と由仁さんが母娘でフェラチオをして、いさなと南さんは父の乳首を舐める。

 

「あああぁぁぁいくいくいくっ♡」

「だめぇ♡ お母さん、そんなに激しくイかないでっ、釣られちゃうっ♡」

「お義父様ぁ♡ もっとおっぱい強くっ、握り潰しちゃってくださいっ♡」

「パパぁ♡ 次っ、次は私もっ♡」

 

僕はリビングの片隅に浮かび、固定された視点で、父と彼女らの乱交を眺め続けた。

五人は食事も取らず、水分補給もせず、気まぐれに順番と体位を変えて交わる。

日が傾いて夕日が差し込んでも腰を振り、外が昏くなっても髪を振り乱す。

夜が深まっても肉棒をしゃぶり、真夜中になっても乳房を揺らした。

 

「はぁっ、はぁぁっ♡」

「あぁ、こんなに、いっぱい……」

「もう、だめ……動けないです♡」

「はふぅ♡ みんな、パパの精液塗れになっちゃった♡」

 

いつの間にか場所を寝室に変えた彼女らの声が、リビングにまで届いてくる。

 

「…………」

 

そしてようやく――伊里戸家が静寂に包まれた。

結女たちがとうとう力尽きたのか、あるいは夢から覚めて現実へ戻っていったのか。

どちらにせよ、父や彼女らがリビングに来る気配はなくなった。

 

 

――――この瞬間を、待っていた。

 

 

「っ!」

 

実体を得た僕は、リビングの床を踏む。

案の定だ。

結女たちがそこにいる間、僕は浮遊霊になる。

それは僕の心が結女たちから逃げているからだが、逆に言えばいなくなれば、実体化する。

 

(上手く行った……やっとこの家に入れた)

 

僕は伊里戸家に戻りたかった。

もちろん、父や結女たちの情事に混ざりたかったという意味じゃない。

覗いていたかったという意味でもない。

もっと単純に、この家の中に侵入する必要があったのだ。

しかし浮遊霊の体では扉も開けられない。だから町で見かけた父の後ろをついて行った。

これまでの傾向から、浮遊霊状態の僕は父と結女たちのセックスに引き寄せられるから。

そうして自分を運ばせてリビングに入り、結女たちが精根尽き果てるのを待って、こうして実体化を果たした。

 

「いまなら……探せるっ!」

 

僕は居間のソファーを調べる。

精液や愛液を散々に浴びたソファーだが、夢の中のせいか、汚れも湿りも残ってない。

僕はそのソファーに対して目を皿にする。

思い出すのは――南さんの言葉だ。

 

『私なりに、なんとかしようと思ったんだけど……私じゃ、駄目だったよ』

 

あのビデオレターで、彼女はそう詫びていた。

言葉を信じるなら、南さんは、自分が巻き起こしたこの夢を、解決しようとしたのだろう。

結果として叶わなかったようだが、重要なのは、彼女がどう解決しようとしたかだ。

 

『本当はね、ちょっとした『おまじない』のつもりだったんだ』

 

全ての発端である『おまじない』を――解こうとしたんじゃないだろうか?

それができれば、この夢もまた、終わりを迎えるんじゃないか?

だとしたら、思い出すべきは、僕におまじないを明かしたときの、彼女の台詞だ。

 

『えっと、好きな人の名前を書いた紙を指定の順序で折りたたんで隠すの。

 それが誰にも見つからなかったら、おまじないは成功。

 伊里戸くんの家に行ったとき、リビングでそれをしたの』

 

そう――このリビングだ。

このリビングのどこかに、『好きな人の名前を書いて折りたたんだ紙』を隠すことだ。

それがおまじないの成功条件。

正確には『それが誰にも見つからなかったら』だ。

逆説――『隠した紙が誰かに見つかったら、おまじないは成功しない』――だったら、

 

(南さんが隠したものを見付ければ、この『おまじない』は解ける!)

 

南さんはそれをしようとしたんだ。

しかし南さんはこう言った――『私じゃ駄目だった』と。

あれは父のセックスに堕ちたという意味ではなく、もっとロジカルな意味だったのでは?

南さんには解けなかった……つまり、南さんには条件を満たせなかったのではないか。

だってそうだ。『誰にも見つからなかったら』という条件に、隠した本人が含まれたらおかしい。

南さん以外の誰かが、隠された紙を発見しないと、おまじないは失敗にならないのだ。

 

(どこだ、どこだ……っ!?)

 

僕はソファーの周囲をぐるぐると周り、入念に目を凝らす。

南さんの発言によれば、『おまじないの紙』を隠したのはリビングだ。

しかしリビングに限っても、ものを隠せる場所はそこそこ多い。

だから南さんは、あのビデオレターにヒントを残していた。

 

『居間のソファーとかで、いい夢見てね?』

 

あのときは、文脈からして、南さんの家のソファーかと思った。

でも、そうだとしても、あのときわざわざソファーに言及するのは不自然だった。

あれが、南さんの送ろうとした、本当のメッセージだとしたら?

『居間のソファー』とは、伊里戸家のソファーではないか?

そこで見る『いい夢』とは、この悪夢への対義語じゃないだろうか?

つまり――隠し場所は伊里戸家のソファー。

そこにあるものを僕が見付ければ――悪夢は終わる。

あれは家出した僕を煽る悪趣味なビデオレターと見せた、南さんのヒントだったのではないか。

結局は南さんも父との情事に染まり、自分の願望を叶えるこの夢を選んだけど、その前に――僕におまじないを解くための手がかりを残した。それは、南さんなりの罪滅ぼしと、僕への詫びだったのかもしれない。

その可能性に賭けて、僕はいま――

 

「っ!!」

 

床に頭を近付けて、ソファーの下に手を入れて探っていた手に、妙な感触を覚えた。

座面の裏側を探っていた手が、異物感を捉える。

平らだった裏面に浮いている、将棋の駒ほどの薄い『何か』。

指を引っ掛けると、セロハンテープの剥がれる感触があった。

 

「あった……っ!」

 

ソファーの下から引き抜いた手に、折りたたまれた紙があった。

正五角形になるよう畳まれた、無地の白い紙だ。

それを認識した途端――夢が、揺らいだ。

地震と似た、しかし別種の、目に見える景色が丸ごとブレるような揺らぎだった。

 

(これだ! 間違いない!)

 

手応えがあった。

長くこの夢を見続けて培われた直感めいたものが、この紙こそ悪夢の源泉だと確信する。

暗くてよく見えない。

僕は窓際に移動して、月明かりに紙を照らしながら、折られたそれを広げていく。

その折り目が伸びていく途中にも、夢の世界の鳴動が続いている。

これまで僕の精神を無茶苦茶にしてきた悪夢が、急所を掴まれて悲鳴を上げている!

それは正しく、勝利の手応えだった。

 

「……っ!」

 

五角形に畳まれていた紙が、二つ折りの状態まで広がる。

息を呑んだ僕は、最後の折り目を伸ばして、紙に記されていた名前を確認した。

 

『――伊里戸水斗くん――』

 

女の子らしい文字だった。

好きな人の名前を書いた紙を、折りたたんで隠す――南さんの語った『おまじない』の通りだ。

 

(これが……っ!)

 

これが、全ての原因。

これこそが、この悪夢の心臓。

これさえなければ、いままでの夢はなかった。

これさえ失われれば、この淫らな夢は終わりを迎える!

 

「…………」

 

息を呑む。

ためらうような思いが、否定できなかった。

この夢が終われば、僕はもう、父と結女たちの情事に悩まされることはない。

しかしその一方で、結女や他の女たちの痴態を覗き見ることはできなくなる。

そこに迷いを抱くほど、僕は、この夢に魅入られていたようだ。

 

「――終わらせるのか?」

 

背後から、声がした。

不思議と驚きはなく、僕はゆっくりと振り返る。

ソファーに……父が腰掛けていた。

 

「この夢、終わらせる気か?」

 

父が不満そうに僕を睨んでいる。

思えば、この夢が始まってから初めてではないか。父と話すのは。

不快だった。

この男は、結女を襲い、由仁さんを辱め、いさなを汚して、南さんも毒牙に掛けた。

正気を奪う夢の中でのことだ、責めるのも酷かもしれないが、それでも許す気はない。

だから――

 

「お前と話すことなんか無い」

 

会話そのものを拒絶する。

物語ではよくあることだ。大事な局面でだらだらとお喋りをして、逆転される。

そんなことが起きる余地すら与えないために、僕は父を一蹴して、紙を両手で強く抓む。

紙面に逆方向の力を加えると、紙の端に切れ目が生じた。

その瞬間、夢の世界の景色が、亀裂を走らせるように乱れる。

確信した。これが、『おまじない』を解く唯一の方法だったんだ。

 

「お前の夢は、これでお終いだ」

 

一息に破いた。

景色が崩壊した。

リビングの背景が、まるで絵画だったかのように、破れる。

おまじないの紙とリンクしていたかのように、夢の景色が引き裂かれる。

紙を念入りに細かく千切っていくと、景色も同様に千切れていった。

破けた景色の隙間からは、薄暗い空間が広がり、僕と父はその空間で対峙する。

 

「結局……」

 

小惑星のように景色の断片が浮かぶ空間で――父は溜息をついた。

 

「お前は最後まで、なにも分かろうとしなかったな」

 

意味深な言葉を最後に――父の姿は、景色の断片と共に、闇の中へ消えていく。

断片が小さくなっていく。僕の視界もまた、どこかへと解き放たれているようだ。

 

(ああ、やっと、終わった……)

 

安堵感と、一抹の喪失感。

解放された喜びに満ちる一方で、もう二度と見られないのだと残念がっている自分もいる。

 

(たいがい卑しいな、僕も……)

 

父が『分かろうとしなかった』と言うのはそのことだろうか?

お前も男なら混ざればよかった、とでも言うつもりだろうか?

 

(笑わせるな……僕は、お前みたいなことはしない……っ!)

 

夢から覚めて、現実が訪れるのを予感する。

今夜の出来事も、きっと忘れてしまうのだろう。

いつもなら翌日の悪夢で全て思い出していた。その悪夢も今夜が最後だ。

なら、二度と思い出すことはないのだろう。僕も、結女たちも。

元恋人が父親とヤってるなんていう、ねじ曲がった日々は終わる。

そして、継母の連れ子が元カノだったという、本来の日々に戻るのだ。

もし、そこに、この夢の記憶を、少しだけ持って行けるなら――

 

(結女に……声を掛けてみるか……)

 

少しだけ、彼女との距離感を、自分の心に正直なものにしよう。

どの程度の実現ができるかわ分からなくても、そう思うきっかけになれば……

きっとそれが、夢というものの、正しい役立て方なんじゃないだろうか?

 

 

○

 

 

――伊里戸水斗(現実)――

 

 

「ん……うぐぅ……っ」

 

うめき声を上げながら、目を覚ます。

夏の暑さが部屋に充満していて、寝苦しい。

熱中症対策で枕元に置いておいた水筒から、水分を補給する。

 

「ぷは……っ」

 

ベッドの上で周囲を見回す。

見慣れた部屋――足の踏み場に困るくらい本が置かれた、僕こと――伊里戸水斗の部屋だ。

 

(なんだ? なんか……すごい夢を見たような……)

 

人生に間々ある感覚の目覚めだ。

印象強い夢を見た後の、全容を思い出せなくて困る感覚。

思い出そうとして手を伸ばしても、掴みきれなくて逃げていくような、奇妙な口惜しさ。

 

(たしか……僕の名前が書かれたメモを破って……その前に父さんと睨み合っていて……

 ああ、女性の裸を見たような……あと、僕は浮遊霊みたいになっていて……)

 

――結論、わけが分からない。

いかにも人の見る夢というか、支離滅裂だ。

ただ、それを見ている間の僕は、その内容に無我夢中だったというだけで。

 

(寝汗がひどいな……)

 

気がつけば僕の思考は、そういう『現実的なこと』に占められていた。

思い出せない夢の内容なんかより、この寝汗をシャワーで洗い流すことを優先した。

 

 

○

 

 

昨日まで、色んなことがあった。

春先に父が再婚して、その再婚相手は僕の中学時代の彼女である、結女だった。

結女との日々は、表向きこそ大人しいけど、胸の内は波乱だった。

お互いに困ったり腹が立ったり、たまに昔を思い出して心が熱を帯びたり。

そんな日々にも慣れて、いさなに告白されるというイベントもあったりして、

つい先日までは父の帰省に付き合って田舎に行って、結女と祭りに行ったりもして……

なんというか、振り返って見れば、それなりに十代の青春らしいことをしている気がする。

 

(結女、か……)

 

元恋人で、いまは義理のきょうだい。

昔の恋が終わりきらず、むしろ再燃するような気配がある彼女。

なぜか今日の僕は、そんな彼女を思うと、複雑な心地になった。

会いたいような、逆に会いたくないような、感情の矛盾を覚える。

 

とりあえず――会ったら『おはよう』と言おう。

 

夢の世界が終わりを迎えた朝に最も相応しい言葉を、なぜか口にしたい気分だった。

そんな気分で、僕はとりあえず居間に向かう。

部屋から持ってきた水筒を流し台に置いておくためだ。追加の水分補給もしたい。

冷蔵庫の中の麦茶、まだ傷んでないだろうか? あれは以外と足の速い飲み物なんだよな。

 

そんなことを考えながら階段を降りて、リビングに向かうと――

 

 

 

「んっ、ちゅ……ちゅぷっ♡ んあっ、はぁ……っ♡ あんっ♡」

 

 

 

悩ましい、声がした。

 

艶やかで、水音が混じる、独特な声がした。

 

男の本能を刺激する、切なそうな女の吐息が、確かに聞こえた。

 

 

 

「ぷぁっ♡ はぁ……っ♡ お義父さぁん……っ♡」

 

 

 

結女の――声が――誰かを――呼んで――

 

僕は、あの声を、どこかで、嫌になるほど聞かされていたような……

 

 

 

リビングの前で、呆然と足を止める。

そして、聞き違いであることを願って――結女の声がするリビングに、足を踏み入れるのだった。

 

 

 

【十四夜目 了】




ご一読いただきありがとうございました。

ここで終わらせてもいいんですが、せっかくなのでもう少し。
次回から最終章に入ります。
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