継母の連れ子が元カノだった、いまは僕の父親とヤってる 作:大中小太郎
【六夜目】
人は父親や母親から、最初の異性というものを学ぶ。
男性にとって最初に出会う異性は基本的に母親であり、女性なら父親だ。
こうして生まれるものを、マザーコンプレックスやファザーコンプレックスという。
心に構築される最初の異性像。その後の人生で異性と関係を構築するために必要な下地だ。
一般には『親から心理的に自立できない状態』とされているけど、本来は否定的な意味ではなく、人の心において必要なパーツなのだという。
物心つく前に母と死に別れた僕には、たぶんそれが足りない。
そういう意味で、父親の再婚相手である由仁さんとの出会いは、大きな変化だった。
最初は、由仁さんの連れ子が元カノの結女だったことで、頭がいっぱいだったけど……
思えば僕には、記憶にある限りでは初めての『母親』ができたのだ。
だから、つい先日の母の日、結女と一緒にカーネーションを送ったときも、僕なりに誠意を尽くしたつもりだ。
あのとき、泣いて喜んでくれた由仁さんのことを、素朴で可愛らしい人だと思った。
僕の家に来た日、産みの母の仏壇へ真摯に手を合わせてくれた由仁さんを、誠実な人だと感じた。
結女と義理のきょうだいになったのは不愉快だけど――由仁さんとは、よい親子になれればと願っている。
それが、伊里戸由仁という女性に対して抱く、僕の心証だ。
自覚できる範疇の、僕の感情だ。
――では、自覚できないところでは?
意識することが及ばない、故に『無意識』と呼ばれる、心の奥底では?
母という最初の異性を知らずに育った僕は――由仁さんという女性をどう思い、何を望んでいるのだろうか?
◆
そして今夜も、夢を見る。
夢が始まると、現実では忘れていた、夢の世界の出来事を思い出す。
元カノの結女と、父の峰秋が、セックスをする仲になっていること。
僕は視覚と聴覚だけの浮遊霊めいた状態となり、それを傍観し続けたこと。
現実世界とはまったく異なる、不可解で理不尽な物語が、また始まる。
「ああ、またか……」
またこの悪夢が始まったのだと理解したのは、夢の中に描かれた僕の部屋だった。
窓の外を見ると外は暗い。時間帯は夜らしい。
結女と父は、この家にいるのだろうか。恥も知らず、どこかでまぐわっているのだろうか。
「ったく、今夜はどんなプレイを――」
見せつけられるのやら、と言おうとして、僕は気付く。
(っ!? 喋った!? 体がある!?)
口があって、声が出た。慌てて確認すると手足があり、僕は部屋に両足で立っていた。
「どう、なって……」
突然のことに唖然とする。
普通なら驚くことじゃないんだろうけど、これまで浮遊霊だった僕はいま、実体を持っている。
何があった? 何が原因で、いまさらこんなことになったんだ?
(どう、する?)
体があるという当たり前の事実に、なぜか戸惑った。
実体がある。それはつまり、誰かの視界に映り、声を届かせ、触れられるということ。
昨日までそれができないことを死ぬほど恨んでいたのに、いざ叶うと、なにをすればいいのか分からなかった。
「そうだ……いまなら……」
思い出すのは、今日まで目にしてきた結女と父の情事だった。
これまで、指をくわえてみていることしかできなかった。でもいまは違う。
そう、実体があるいまなら、僕も結女と――
(っ! 違うだろ!)
一瞬、頭に浮かんだ汚らわしい欲求を、理性で追い払う。
なにを考えているんだ伊里戸水斗。僕がいますべきことは、
(結女を……助ける! あんなこと止めさせるんだ!)
結女と父のセックスを止めさせる。
いまなら詰め寄って説得することもできるし、物理的に阻止することもできるじゃないか!
そうと決めた僕は、部屋を飛び出した。
心のとこかで――いまさらそんなことをしても遅いのかもしれない、と思いながら。
◆
僕は足音も荒くリビングを目指した。
なぜかは分からないけど、そこ以外に人の気配を感じなかったからだ。
実体があるといっても夢の中のこと、なにか現実と異なる感覚があるのかもしれない。
かくして駆け込んだリビングに居たのは――
「あら、水斗くん? どうかしたの?」
「……由仁、さん?」
父親の再婚相手、由仁さんだった。
茶髪を結い、春物のトップスとロングスカートという地味な格好で、棚に手を伸ばしている。
「ちょうどよかった。お茶でも入れようかと思ったんだけど、水斗くんも飲む?」
「ああ、えっと……」
僕は肩すかしをくらった気分で、生返事を反した。
同時に、由仁さんの容貌に見入る。
(由仁さん、こんなに若かったっけ……?)
僕の知る由仁さんは、結女のような年の子供がいるに相応の年齢の女性だ。
漫画のママキャラみたいに不自然に若いなんてこともなく、僕の父親と同等に年を食っている。
それがどうしたことか――若い。
十歳くらいは若返ってるんじゃないだろうか、最近まで女子大生でしたという肌の色艶。
均整の取れたスタイルを地味な服装で包んでいることが、また人妻感をただよわせている。
路傍の花とでも言うのか、女優やモデルとは違う系統の、素朴な色香すらあった。
(まあ、夢だし……)
現実なら仰天するけど、ここは夢の中だ。
思い出せば親父も若返っていたし、僕に至っては生霊めいた状態にすらなった。
いまさら由仁さんが若く見えても、そういうものなんだろうと納得はできる。
(結女に、似てる、な……)
例えば結女が十歳くらい年を取って大人になったら、こんな風になるんだろうか。
僕は――自分でも気付かないうちに、そんな由仁さんに見とれてしまっていた。
「水斗くん?」
小首を傾げる由仁さんに呼ばれて、僕は我に返った。
「そうだ。結女と父さんは?」
「二人ともちょっと出かけてるわよ? 結女が学校に忘れ物したみたいで、峰くんが車で送ってくれてるの」
当初の目的を思い出した僕の問いに、由仁さんは微苦笑するような顔で答えた。
結女と、父が、二人で出かけている?
僕はそう聞いて、二人がなにをしているのかを確信した。
アイツらが、ただ忘れ物を取りにいっただけで済ませるわけがない!
「追いかけないと……」
「水斗くん!? どうしたの急に? 別に追いかけなくても――」
家を飛び出そうとした僕を、由仁さんが呼び止める。
二人の関係を知らない由仁さんからすれば、確かに追いかけるほどでもないかもしれないが……
(いや、違う)
知らないなんてことはない。
前回の夢、僕は夢から覚める直前、由仁さんを見た。
父と結女のセックスを見て呆然としていた由仁さんの姿を見て……何かを感じた気がする。
その感情を思い出したとき、僕の意識は、結女のことではなく、目の前の由仁さんに集中した。
「由仁さん……知ってますよね?」
「え? な、なんのことを?」
由仁さんは戸惑っている風だったが、どこか図星をつかれたような動揺も見えた。
「結女と父さんの関係についてです」
「っ」
誤魔化せない顔色だった。
やっぱり、由仁さんは知っている。
もしかすると『前回の夢』と『今回の夢』は、連続性のない『別の夢』かもと思ったけど、そうではなかった。
「み、水斗くん……どうして……」
「僕がなんで知ってるかなんてどうでもいいんです!」
僕は由仁さんを怒鳴り散らした。
今日まで結女と父の情事を目にして堪っていたストレスが、爆発してしまったのかもしれない。
「どうして止めなかったんですか! 父さんはあなたの再婚相手で、結女は……っ!」
僕は由仁さんに詰め寄った。
もっと前から見ていた僕が言えた義理ではないかもしれない、でも由仁さんは、あれを止めるべき立場の人だ。
自分の娘が再婚相手に襲われていたなら、夫を刺してでも止めなきゃいけない人だろうと。
「ご、ごめんなさい……水斗くんには、ショックよね……」
僕の剣幕に怯えてか、由仁さんが後退して、冷蔵庫に背中をぶつける。
それより、『水斗くんには』ってなんだ?
由仁さんにとってはショックじゃないのか?
「由仁さん……いや、いい。なんにせよ僕が止めさせます。それこそ父さんをぶっ殺してでも……っ!」
口にしてみて、割と本気であると実感した。
そこのキッチンから包丁を持ちだして、帰ってきたところを――と。
夢の中のことだ。人を刺して死ぬということはないのだろう。だからこそ、ハードルが低かった。
そうすればこんな悪夢は終わらせられるだろうという考えに、思考が染まっていた。
「だ、駄目! 落ち着いて水斗くん!」
凶器を探し始めた僕の腕を、由仁さんが抱きしめるように引いた。
「っっっ!」
そのとき――腕に感じた由仁さんの柔らかさに、僕の思考が吹き飛ばされた。
指の感触、腕の感触、そして胸の感触。
服なんてないかのように、互いの素肌が直接触れたかのように、鮮明に『女体』を感じていた。
僕は失念していた。
恐らく結女がそうだったように、この夢の中ではそういう感覚が過敏になるのだと。
夢では現実の束縛から解放され、本能的なものが表に出るという。たぶんそのせいなのだろう。
その影響は、僕の胸中に渦巻いていた義憤を吹き飛ばすほどに大きかった。
「違うの、水斗くん。その……おかしなこと言うようだけど、これは夢なのよ?」
「それは……」
たしかにそうだ。由仁さんにもそういう自覚があるらしい。
というかこれが夢なら、ここにいる由仁さんも、僕のイメージした由仁さんに過ぎないはずだ。
何かの超常現象で、複数の人間が同じ夢を見ていたとしても、現実ではないことに違いはない。
「だからって! 結女が、父さんに!」
思考が千々に乱れた僕は端的に訴える。
しかし由仁さんは――こう返答した。
「あの人は――峰くんじゃないと思う」
…………は?
峰くん? 伊里戸峰秋、僕の父だ。
そうではないって、どういうことだ?
由仁さんから見て、あの父さんは、伊里戸峰秋ではないと?
「なに……言ってるんですか?」
「その、変な言い方になるけど、結女としているあの人……見た目は峰くんなんだけど」
正確な言葉が見つからない様子の由仁さんを見て、僕は眩暈がした。
「峰秋くんとは、別の人だと思う。なんとなくだけど、分かるの。妻だから」
……なにを言ってるんだ? この人は。
どう見たって父さんだったじゃないか。
見た目が若返ってはいたし、らしからぬ言動が多かったけど、他に該当者なんていないだろう。
それともなにか? キツネやタヌキが化けているとでも言うつもりなのか?
「いい加減に……っ」
正気なんですか? と聞こうとして、僕は気付く。
本当に、正気なのか?
「ね? 水斗くん、だから落ち着いて。こんなの全部、ただの悪い夢なんだから」
僕に微笑みかける由仁さんが、正気であるようには見えなかった。
いやむしろ、正気を保っている方が不思議なくらいじゃないだろうか?
(ああ、そうか……)
そもそもここは夢の中、大前提からして異常事態。
結女も、父も、あるいは僕も、今日まで正常な思考を保てていたとは言い難い。
父は再婚相手の連れ子を襲い、結女は母親の再婚相手に抱かれ、僕はそれを見て自慰をした。
ある程度の現実感は持ちながらも、現実では決してしない選択を繰り返している。イカれている。
(この人も、とっくに……)
夢の中で、夫と娘が不義密通をしているという光景を見て、おかしくなったんだ。
たぶんそれに対する精神の防衛作用か何かで、父さんを「夫ではない」と思い込んで……
そう考えると……途端に、目の前のこの人が哀れになった。
「水斗くん? ほら、大丈夫よ」
由仁さんが不意に僕を抱き寄せた。
「っ!!」
体の正面から僕を包む女性の感触。
細い手に頭を抱かれ、胸板に由仁さんの胸が当たり、顔は肩に埋めさせられた。
「よしよし。こうしていれば安心だからね。悪い夢はすぐ終わるから」
まるで稚児をあやすように、由仁さんは僕の後頭部を撫でる。
おばけを怖がる子供を慰めるように、夜泣きした赤ん坊を相手するように。
深い慈しみと、母性のようなものを感じた。
ああ、この人はいま、錯乱している義理の息子を、慈愛をもってなだめすかしているんだ。
そうだと分かっているのに……
「水斗くん?」
――僕は、勃起していた。
目の前にある女体、密着している女体、香り立つ女体、触れられる女体。
連日あんな夢を見せつけられたせいか、僕は、目の前にある由仁さんに欲情していた。
「……すみません、由仁さん」
この人はいま、必死に僕の『母』であろうとしてくれているのに……
いま僕が欲しているのは、そんな生温いものじゃなかった。
「もう、いい。訳が分からない。もう限界だ……」
由仁さんの両肩を掴んで、その顔を見据える。
僕がどんな顔をしていたのかは分からないが、由仁さんの驚いた様子を見るに、相当ギラついた目をしていただろう。
どうやら……正気じゃないのは、僕も同じだったようだ。
◆
強引に、由仁さんの唇を奪った。
「んぅ……!?」
突然のキスに目を剥いた由仁さんは、反射的に僕を押しのけようとする。
なんて非力なんだろう、女の人は。こんなの抵抗されたうちに入らない。
僕は由仁さんの首の後ろに手を回して、彼女の口の中に舌を入れた。
「ふぐっ……やっ! 水斗くんっ、んんんっ!?」
由仁さんが苦しげな声を出す。
僕は構わず由仁さんを貪った。
由仁さんとの初めてのキスは、味らしい味もしなかった。
ただ鋭敏になった唇と舌が、電流のような快感を走らせ、受け取った脳が性欲を昂ぶらせる。
「うっ……ぷぁ!」
やがて由仁さんが息継ぎのために口を離したので、今度はこっちから塞いでやった。
「むぐうっ!!」
再び由仁さんが暴れ出すが、それでも僕の手は緩まない。
もっと深く、もっと激しく。目の前の女を貪りたい。
そんな欲求だけが脳内を満たしていた。
「ちょ、ちょっと待って!! 水斗くんダメっ、落ち着いてっ!」
由仁さんの制止に構わず、僕は由仁さんの両手を掴んで冷蔵庫に押し付けた。
「お願いだから聞いて……私は、あなたの……ねえ、止めて……っ」
由仁さんの顔は怯えているように見えた。
それと同時に、頬は上気しており、体は火照っているように見えた。
その本心を確かめるために、僕は由仁さんの首筋に吸い付く。
「あっ……」
小さく漏れた甘い吐息は、紛れもなく女のものだった。
由仁さんが本気で拒んでいるわけではないと確信すると、僕はさらに行為を続ける。
「水斗く、んあッ♡」
首から鎖骨へ、そして胸へと、口づけをしながら下っていく。
「だ、だめぇ……やめて……」
由仁さんが懇願するが、もちろん無視する。
片手を伸ばして、服の上から、由仁さんの胸を掴んだ。
「んん……っ♡」
柔らかい感触が手に広がる。
その感触は電流となって、腕を貫くように駆け巡り、脳まで突き刺さった。
すごい、女の人の胸だ。乳房だ。僕はいまそれに触れている。
その感触に、男の本能的な部分が、猛烈な歓喜を訴えていた。
女性を抱いたことのない僕に、それを我慢するのは不可能だった。
「え? いや、待って……ひゃうんっ♡」
上の服をまくり上げると、真っ白な肌とブラが見えた。
「お、お願い、本当にダメ……これ以上は、許して……」
由仁さんの懇願は逆効果だった。
もう僕の耳は、脳は、由仁さんの声を興奮材料にしかしていない。
「由仁さん……ごめんなさい」
僕は謝罪を口にしながらも、由仁さんのブラを引き剥がす。
ホックの外し方なんて分からなかったけど、夢であるせいか、軽々と外れてくれた。
形のいい乳房が、女体の双丘が、目の前に現れる。
エロ動画や、なんならこの夢では結女のものを何度も目にした。
それでも、いざ自分の手が届く場所にそれがあると、男の思考は本能に支配される。
「ふああっ♡」
由仁さんの乳首に吸い付いた。
頭上で聞こえた由仁さんの声には快感がある。それを恥じるように、息を殺している。
両手は僕の頭を遠ざけようとするが、頭を撫でるに等しい抵抗だ。
実質、ただ顔を背け、声を殺しながら身をよじるだけだった。
「水斗、くん……んっ♡ だめ……こんなの……あっ♡」
舌先で転がしていた突起を甘噛みする。
美味い。美味しい! 味覚ではなくその感触が、舌と口に幸福感をもたらした。
授乳以外の目的では初めて口にした女の乳首は、経験のない男を瞬く間にケダモノにする。
僕は夢中で由仁の胸にしゃぶりつき、舐め回し、吸い上げていく。
「やっ……だめぇ……あんッ♡」
喘ぎを漏らしながら、必死で首を振っていた。
しかしそれは、拒絶というよりも快感による悶絶のように見える。
自宅のキッチンで、夫の連れ子に襲われて、冷蔵庫を背に乳首を吸われる人妻。
いまの由仁さんは、そういうドラマの主役だった。
「お願い……これ以上は、しないで……落ち着くまで、こうさせてあげるから……」
驚いたことに、由仁さんは僕の頭を撫でながら、胸を吸うことを許可した。
僕が必死に乳首に吸い付く姿に、母性でも刺激されたんだろうか?
それとも、義理の母に襲い掛かる僕を、哀れに思ったんだろうか?
「違う……っ」
そんな上から哀れむような態度に、僕は理不尽な怒りを覚えた。
僕は由仁さんのおっぱいから口を離すと、彼女の腰を抱いて、強引に引き寄せる。
「きゃう!?」
突然の行動に驚き、由仁さんは悲鳴を上げた。
僕はそのまま、由仁さんをリビングのソファーまで連れ込む。
「ちょっと待って!」
焦ったように制止する由仁さんを、僕は無視して押し倒した。
「僕は、甘えたいんじゃない! 慰められたいんじゃない!」
由仁さんのスカートを捲り上げる。
黒のストッキング越しに見える下着は、既に濡れているように見えた。
「やっ、お願い止めて! 水斗くんっ!! いい加減に――」
「うるさい!」
「ひぅ……」
僕の怒鳴り声に、由仁さんは怯えた表情を見せる。
その勢いのまま、僕は由仁さんのストッキングを破く。
布生地の抵抗なんてまったくない。生地が自ら裂けるようだった。
そして現れたショーツは、やはりぐしょ濡れになっていた。
「へえ……」
「み、見ちゃダメ……っ」
「何言ってんですか。こんなに濡らしておいて」
「ち、違っ、そうじゃなくて――」
言い訳しようとする由仁さんを無視して、黒タイツとパンツを同時にずらす。
とろりと糸を引く淫靡な光景を目の当たりにして、それ以外のことを考えられなくなった。
「いやぁっ!!」
指を挿入すると、由仁さんは激しく身をよじらせた。
「ああっ、だ、だめぇ……♡」
由仁さんは甘い声で喘ぎながら、僕の腕を掴んで引き抜かせようとするも、無駄だった。
膣内は熱くて、柔らかくて、ヌルついていた。そして、キツイくらい締め付けてくる。
処女膜らしいものはない――当然か、前の夫がいて、いまは父さんと再婚しているのだから。
この女も、父さんに抱かれていたのだ。
そう気付いた途端、僕の頭は強い嫉妬心に支配された。
「奪ってやる……あいつから、奪ってやる……っ!」
うわごとのように呟きながら、僕は由仁の脚を持ち上げ、正常位で犯す体勢になる。
「ひっ、やめて、お願い許して!」
由仁さんは涙を浮かべながら懇願するが、僕は構わず挿入した。
「あああぁぁぁっ!」
甲高い絶叫が響く。
由仁さんの中はとても気持ち良かった。
温かくて、ぬるっとしていて、まるで生き物みたいに絡み付いてくる。
「くっ、あぁ……」
思考は消し飛んだ。
僕はいま、女に挿入している。女を抱いている。
その達成感だけが全てだった。
一方で、頭のどこかで、疑問が湧く。
当初は、こんなことをする予定じゃなかった。
なにか、もっと別のことをしようとしていたような――
「やめっ、おねがいっ、もぉ止めてぇ……! 私っ、峰くんのっ、あなたのお父さんの――」
「あいつのことを言うな!!」
怒りに任せ、僕は由仁さんの首を掴んだ。
人がせっかく気持ちよくなっているのに、なにを言ってるんだこの女は!
「くはっ!?」
そのまま両手に力を入れると、彼女の首が絞まる。
由仁さんは苦しそうな顔で僕を見た。
「なんであんなやつとするんだ! 僕のっ、僕の女だったじゃないか!!」
自分でなにを言っているのか分からなかった。
「あいつより、僕の方がずっといいだろう!?」
この言葉は……由仁さんじゃなく、他の誰かに言いたかったような……
そう考えたら、由仁さんの首を絞めていた僕の手から、力が抜けた。
彼女は荒い息をしながら、怯えた目でこちらを見る。
「水斗くん、ごめんなさい……私が悪かったから……乱暴しないで……っ」
そんな由仁さんの姿は扇情的だった。
まくり上げられた上着が鎖骨と腕だけを隠し、下は脱がされ、僕の逸物と結合している。
ああそうだ……セックスだ。僕はいまこの女とセックスをしているんだった。
「謝らないでくださいよ」
僕は薄く笑い、腰の動きを再開する。
「あぅっ♡」
いま、由仁さんが感じた。
僕はいま、女を感じさせているんだ!
本来なら別のことを考えるべき頭が、そんな原始的な感動に支配される。
「ほら、あなただって悦んでるじゃないですか!」
「ちがっ、違うの……これは……っ!」
「あなたが言ったんじゃないか! これは夢だって! だったらいいじゃないか!」
僕は夢中になって腰を振りまくった。
由仁さんの負担や機微などなにも考えない、童貞丸出しの、夢中の抽送だ。
「ふぐっ♡ んっ♡ くぅぅっ♡」
由仁さんはそれでも、快感を堪えるように顔を歪め、声を殺している。
「してやるっ! 僕の女にしてやる! 僕のものになれよ!」
口が勝手に言葉を紡ぐ。
女を手に入れたい、よがらせたい、僕の頭にあるのはそんな獰猛さだけだった。
少し前にも、同じことがあった気がする。
このリビングで、誰かが、欲望のままに女を襲っていたのを見た。
じゃあ、僕が同じことをしても、別にいいんじゃないだろうか?
漠然とそんなことを考えながら、僕は由仁さんに覆い被さり、ひたすらに腰を打ち付けた。
「水斗、くっ……んんっ♡」
いつの間にか、由仁さんは僕の頭を抱き寄せていた。
受け入れられたのだと解釈した僕は、ただ由仁さんの膣内を楽しむように、腰を踊らせる。
ペニスを全方位から包む女肉の感触が幸せだった。自慰なんて比べものにならない幸福感だった。
「水斗くん、落ち着いて……」
まだそんなことを言うのか――と思ったら、由仁さんは、僕に向けて微笑んでいた。
「許して、あげるから。いまだけ、許してあげるから……」
その微笑みは、僕とのセックスを受け入れて喜んでいるというより――
「もう、泣かないで?」
かんしゃくを起こした子供を包むような、優しさだった。
慈愛、哀れみ――犯されているのに、そんな感情を、僕に向けていた。
まるで……母親のように。
「…………っ!」
僕は言葉を失った。
そして縋りつくように、由仁さんの胸に顔を埋めて腰を振り続ける。
情けないことに、絶頂の瞬間はすぐに訪れた。
「ダメッ♡ 中は……ぁっ、ああっ♡」
ビクビクと痙攣するのは僕の腰だった。
過去に類を見ない絶頂感が、僕の思考を真っ白にする。
由仁さんが感じたかどうか、イったかどうかなんて、頭の片隅にも考えていない。
ただ、女の膣内で射精したという、本能的な達成感だけがあった。
世間ではこういう体験を、大人になったと例えるけど……むしろ、童子のように無心だった。
「はぁ……はぁ……っ!」
荒い息をつきながら、僕は由仁さんに覆い被さったまま、ぐったりと脱力する。
意識が薄れる……射精と同時に魂まで抜けてしまった気分だ。
「水斗くん……」
僕の背中を撫でる由仁さんの声――
(違う……僕は……こんなこと、するつもりじゃ……)
いまさらのように降りかかる罪悪感。
それを最後に、僕の意識は、どこかへと落ちていった。
◆
目が覚めると、僕は深夜のリビングにいた。
(夢から、覚めた? いつの間に、リビングで寝てたんだ?)
僕はソファーの上で起き上がり、時計を確認しようとして――
(っ!!)
体が無いことに気付いた。
視界はある、耳は聞こえる。
でも動かそうとした両腕がなく、立ち上がろうとする脚がない。
(なっ、なんで……!?)
まただ、またこんな、生霊か何かのような状態に。
(まだ、夢か……でもどうして、僕は、由仁さんと……?)
さっきまで、僕はこのソファーで、由仁さんを抱いていたはずだ。
そのまま意識を失って……また実体を失った?
いいや、理屈なんて考えても分からない。それよりも……
(由仁さんは……いやそれに、結女や父さんは……っ!?)
寒気がした。
体験上、僕がこういう状態になったら、起きることは決まっている。
それを肯定するように――僕の視界は、勝手にリビングから動き始めた。
(どこに……)
向かう先は、僕の部屋でも、結女の部屋でもない。
父母の寝室――父さんと由仁さんの寝室だった。
「……っ♡」
甘い声が、僅かに開いた扉から、廊下に零れ出ていた。
僕の視界は、僅かな隙間から虫が侵入するかのように、寝室へと入り込んでいく。
そこでは――
「由仁さん、いいだろう?」
「やっ、だめ……んあっ♡」
父が、由仁さんを、ベッドに押し倒していた。
僕の体は、その光景を前に、凍りついたように動けなくなる。
「やめて……あなたは、峰くんじゃ……」
「なにを言ってるんだい?」
「んんっ♡」
父は由仁さんを抱き締めると、再びキスをして、それから――
「ああぁっ♡」
乳房を鷲掴みにした。
「最近はご無沙汰だったからね。またこうして君を抱ける日を楽しみにしてたんだよ」
由仁さんの寝間着が脱がされていき、裸体が露になっていく。
「うそよぉ……あなたは、結女と……あんっ♡」
「だから、こうして奥さんを抱きに来たんじゃないか。寂しくさせてすまなかったね」
身勝手に極まることを言いながら、父は由仁さんの秘所へ手を伸ばす。
「あぁぁぁっ♡」
指先が割れ目をなぞっただけで、由仁さんは背筋を仰け反らせながら悶えた。
「すごい濡れてるじゃないか」
「ちがっ、違うの……これは……」
「何が違うって言うんだ? 夫に抱かれることの何が恥ずかしいんだい?」
父は由仁さんの唇を奪いながら、淫裂の間に指を滑り込ませ、音を立てて弄ぶ。
「んんっ♡ ふぅっ♡ っく、ぁぁぁっ♡」
由仁さんは息を荒げながら身を捩るが、父が逃すはずもない。
「すっかり火照ってるじゃないか。僕が帰ってくる前に自慰でもしていたのかな?」
「違い、ます……もう、やめてぇ……っ」
膣口で暴れる父の手に悶えながら、由仁さんは父を拒もうとする。
由仁さんが言うには、あれは父さんではないらしい。
その真偽は分からない、ただ由仁さんは父に抱かれるのを歓迎していないようだ。
しかしその一方で、体の反応は顕著だった。
「気に入らないな……誰が旦那様なのか思い出させてあげよう」
父はそう言って由仁さんの乳首に吸い付き、形を組んだ指で陰核と陰唇を同時に責め始める。
「ひあっ!? そこ、ダメェッ♡ あっ、あぁぁっ♡」
クリトリスを摘まれ、由仁さんはビクビクと体を震わせる。
僕は呆然と立ち尽くす。
先ほど、僕に抱かれていた女性が、いまは父の手で激しく喘がされていた。
「ほら、もっと感じてごらんっ。いつでもイっていいんだよ? ほら!」
「だめっ! こんな、強くされたら……んあぁっ♡」
父は由仁さんの股間に顔を埋め、舌先で淫芽を舐め回している。
同時に二本の指を蜜壺に差し入れ、掻き回すように動かしている。
両手で父の頭を押さえながら、顔は淫らに歪み、枕の上で顔を左右に振っている。
やがてその顔が天井を仰ぎ、顎を上げて喉を反らす。
「ぁぁぁあああ♡ イクぅぅぅっ♡」
絶頂を迎えた瞬間、由仁さんの体が跳ねた。
父も体を起こし、ベッドの上に座る体勢になる。
由仁さんは肩で息をしながら、余韻に浸るように脱力していた。
「こんなに敏感になって。いま挿れられたらどうなるんだろうね?」
父は嗜虐的な笑みを浮かべながら、股間の巨根を由仁さんの入口にあてがう。
「だ、だめ……待って……」
「待つわけが、ないだろう!」
由仁さんに、父の下腹部が叩き付けられる。
一気に奥まで突き込まれたことが、傍目にも分かった。
「んぁぁぁぁぁっっっ♡♡♡」
由仁さんの絶叫が寝室に響き、ベッドが震えるほど全身を痙攣させた。
凄まじいイキかたをしていることが見て取れる。
「入れただけでそれかい? 相変わらず淫らな人だな! そういうところが大好きだよ!」
父は気をよくして腰を振り始める。
両手は由仁さんの腰を掴み、お腹に形が浮くほどペニスを突き上げた。
そのたびに結合部から飛沫が上がり、肌を打ち付ける音が響く。
「あひぃっ♡ だめっ♡ それだめぇっ♡ ふあっ♡ あああぁぁぁっ♡」
僕は、目の前の光景に釘付けになっていた。
(由仁さん……あんな風に、乱れるのか……)
先ほど、僕としたときとは大違いの反応だった。
強引にされていることは同じであるはずなのに、明らかに乱れ方が違う。
「待って、峰くんっ、ゆっくりぃ……っ♡」
「旦那様に向かってなんだい? その呼び方は!」
父は高圧的なことを言いながら、由仁さんの体を反すと、バックから腰を打ち付ける。
「ふあっ♡ ごめんなさいっ、旦那様……っ♡」
由仁さんの声に、媚びるものが表われてきた。
抵抗を諦めたのか、それとも快感のせいか、峰くんではないと言っていた男に身を預け始めた。
そんな由仁さんの尻を軽く叩きながら、父はピストンを加速させていく。
「ほら、気持ちいいだろう? 奥を突かれるの好きだろう!」
「んあああっ♡ まってぇぇ♡ そんなにっ、奥っ、届かせちゃっ♡ ああぅぅぅっ♡」
ベッドに顔を埋めながら、由仁さんは小刻みにイキ続けていた。
あれは本当に……由仁さんなんだろうか?
だって、僕が襲ったときとは、あまりにも違いすぎる。
僕としたときはあんな声は上げなかったし、そもそもイってない。
(ああ、そうだ……)
そもそも、僕は由仁さんに対して、セックスと呼べるようなことはしていない。
レイプしただけだ。
それも、由仁さんをろくにイかせることなく、身勝手に射精して気絶した。
少なくとも由仁さんにとって、それはセックスと言えるような体験じゃなかっただろう。
そんなもので……父から由仁さんを奪ったなんて、どうして思っていたんだろう?
「んおっ♡ らめっ、いまおっぱいらめだからぁっ♡」
対して、父に背後から乳首を弄られて嬌声を上げる、あの姿はなんだ。
由仁さんにとって、セックスとはああいうものなのか。
「ほら、イってばかりいないで答えなさい、由仁。君は誰のものだ?」
「んんっ♡ 峰くんの……旦那様の、ものですっ♡」
首を振り返らせた由仁さんは、父と舌を絡め合わせる。
由仁さんがいま自分を抱いてる男をどう認識しているかは分からないが、屈服しているのは確かだった。
さっきの僕のように、道理を忘れて、目の前の快感に無我夢中となっている。
「いい子だ。可愛い奥さんだ。思い切りイかせてやるからな!」
「はいっ♡ お願いしますっ♡」
父は由仁さんを仰向けに寝かせると、覆い被さるように抱き締める。
由仁さんは足を絡めながら、両手を背中に回していた。
「んっ、ちゅぷっ♡ はむっ、れろぉっ♡」
キスをする口の端からよだれが垂れている。それを拭うこともせず、由仁さん自身が腰を動かす。
父も汗を流しながら腰を振り続け、ベッドを激しく軋ませた。
「ほらっ、どうだ由仁っ、気持ちいいか!?」
「きもちいぃですっ♡ 旦那様のっ♡ 太くて硬いのがっ♡ 私の一番奥まで届いてますっ♡」
……由仁さんは、現実でもああなのだろうか?
息子である僕には知る由もないが、父とはああいう風に乱れるのだろうか?
夫に屈服させられて、雄々しく支配されることに、悦びを感じるタイプの女性だったんだろうか。
あるいはそういう願望があるから、この夢でそれを満たしているんだろうか。
いずれにせよ――
もう、由仁さんの中に、僕の付けた匂いなんて、欠片も残っていなかった。
「あっ、だめぇっ! またイっちゃうぅ~っ♡♡♡」
一際大きな声で叫んだ直後、由仁さんは全身を痙攣させた。
同時に膣内が収縮し、父が歯を食い縛るのが見えた。
やがて由仁さんの中から肉棒を引き抜くと、精液がこぼれ出る。
「はひっ♡ ふぁぁぁ♡」
絶頂語の余韻に浸る由仁さんが、微笑んでいる。
僕はその光景から目を逸らすことができなかった。
あの、僕を優しく受け入れてくれた由仁さんが、あんなにも淫らに乱れた。
そこに……僕と父の、男としての格の違いがあるような気がした。
「さあ、綺麗にしてくれ」
「はぁい♡」
ベッドの上で膝立ちになった父が、由仁さんにお掃除フェラを要求している。
由仁さんは喜んで従い、父の下腹部に顔を埋めた。
その姿を見る僕の視界が――徐々に後ろへと下がっていく。
気圧されるように。まるで、本能的に負けを悟った動物が、すごすごと去って行くように。
(っ!)
視界が部屋の外に出ると、予想外のものを見た。
「はぁ……♡ お義父さん……っ♡ お母さん……」
結女だ。
扉の隙間から部屋を覗き込み、父と由仁さんの情事を見ていたのだろう。
色っぽいネグリジェの上から、自分で乳房を揉み、下腹部に指を這わせている。
「邪魔しないから……私、ちゃんと待つから……だから、捨てないでぇ……♡」
結女の目に、やはり僕は見えていない。
自分の母親を抱く父を、あるいは義父に抱かれる母を、羨望と情欲の目を向けていた。
彼女の心は、相変わらず、父に囚われたままだった。
(結女……)
そんな結女を通り越すように、僕の視界は部屋から離れていく。
視界が狭くなっていく。
夢の終わりが近付いていることを、感覚で理解した。
(はは……僕は、なにをしてたんだ……?)
最初は実体があった。
最初はそれで、父と結女の関係を終わらせようと勇んでいたのに、僕はなにをした?
ちょっと由仁さんと体が触れただけで欲情して、何もかも忘れて、義理の母をレイプした。
結女を奪われた腹いせに、父から由仁さんを奪ってやろうと。
それすらも、叶わなかった。
由仁さんは一度も絶頂せず、そんな僕の醜態を許して告発もせず、傷跡にすらしなかった。
そして父は妻である由仁さんを抱き、結女は何も変わらずそんな父を求めている。
(なにも……変えられなかった……)
なにか、千載一遇の好機を、無為に終わらせてしまった気がする。
そんな後悔に引き摺り込まれるように、視界が暗く染まっていく。
消えかける我が家の光景。
扉の前で覗いていた結女が、よろよろと立ち上がり、扉を開いていた。
少しして、部屋から伸びてきた父の手が、結女の肩を抱いて部屋に連れ込む。
結女の姿が隠れた後、伸びてきた結女の腕がドアノブを掴み、自らの手で扉を閉じた。
ご一読いただきありがとうございました。
寝取った、寝取られたに続く、NTRの第三意――寝取れなかった。
番外編くらいの気持ちでしたが、妙に長くなってしまいました。
ていうか由仁さんいいよね、地味で純情で旦那さん大好きで。
なんかエロさを感じないなぁって思いながら書いてみたら、
思ったよりも筆が走ったよ。