蛍は何処へ 作:パリピブラゾール
徐々に、当初の目的が失われていくのがわかる。理由が失われて空っぽになってしまう。この世界の橘佳世に、自分と同じ絶望を与えてやろうとして、どこか懐かしい異なる世界へと乗り込んだのも、ずいぶん昔のことのように思われる。
実際、橘佳世を目の前で寝取って、絶望を味わわせたのだが、一方で、橘佳世は、彼女が相手をして来た男と、今回の下人が、まったく違う未知の存在であることを悟らざるを得なかった。佳世の数少ない反撃の機会は例えば情欲を彼女にぶつけて使い物にならなくなるそれの大きさや、相手の早さなど、相手が満足した瞬間に冷笑を浴びせてやることであった。ある爺を相手したときなど、その両方で嘲笑って見せたところ、胸を押さえてぽっくりいってしまったほどである。男というものは、自分を受け入れる女の快楽をも統制できるものだと信じこみ、そこで支配欲を発散させるものらしい。
だが、佳世が自分自身に突きつけた寝取りの直後、ずんと内側を押し広げる感触があって、久しく反応を示さなかった彼女の胎が、貪欲に男を求めていることに気づいた。慌てて振り返れば、先のは前座にすぎないとばかりに膨張した男の逸物が、ますます元気を取り戻して佳世の体を押し上げている。
逸物の大きさに恐怖を抱いたことなど、それこそ初めて純潔を散らされたのが最後だったが、あの時自信満々に見せつけてきた男のものより、この下人のものは三倍以上の大きさがあった。既に下腹部にしずみこんでいるにもかかわらず、これが暴れでもしたら自分の体は裂けてしまうのではないかと本気で考えてしまう一方で、母の血を色濃く継いだ体は、ようやく自分を満足させられるものを受け入れることができたとばかり、久しく熱を失っていた箇所が熱くなっていくのがわかる。
「な、なんなのよ。この下人は……」
「ともべさん……やっぱり大きい……」
佳世の動揺をよそに、橘佳世は歓声を上げんばかりであるが、じっと、動揺やまぬもう一人の自分を商人の目で冷徹に分析すると、胸の前で両手をうち、先程まで行かないで行かないでと泣いていたのが嘘であったかのように、伴部に身を寄せるようにして、唇を重ねた。
橘佳世に自分の半身を埋めたまま、顔だけ横に動かしてもう一人の少女の唇をむさぼる。下人に尻を向けた形の橘佳世は、痛いくらいに自分の胎が熱くなっていくのを感じた。吸収されていく下人の体液が、媚薬となって、冷めていた佳世の体と心を掻き乱す。耐えられず、橘佳世は畳の上に爪を立て、枕を抱いて口に押し付けた。
「……っ、下人! 少しでも動いてみなさい、そのときは……っ!」
続きを言うこともできず橘佳世は達した。全身が小刻みに揺れて、ぷしゅぷしゅと透明な液が秘所から噴き出す。下腹部の熱さが一気に頭頂まで貫き、彼女の視界は真っ白になった。しがみついていたはずの畳も消滅し、彼女はふわふわとした空を泳ぐような錯覚に包まれる。まさに、天にも上る気分であった。
これがまぐわう男女の終着点なのかと慄然し、それをまた求めている自分がいる。武器として体を使うようになっても、一度として得られたことのない快楽は、完全なる未知の奇襲であった。
「……げ、下人! 今すぐ抜きなさい! そう、お前ごときが橘商会の直系たる私を弄ぶなど許されないことだと……んんっ!?」
命令に対し忠実に撤退しようとした彼の身じろぎが、再び彼女を絶頂へ誘う。受け入れるのも一苦労だったそれの名残を惜しむように、きゅうきゅうと下腹部が収縮して、それが意図せずして主に暴力的な快楽を叩きつけているのであった。
ぷしゅぷしゅと粗相を繰り返しながら体を跳ねさせる橘佳世を前に、少女は損得を考える。この状況を利用して、どのような得が、伴部に与えられるだろうか。そして、自分もそれを得られるだろうか、と。
今男根を咥えこんでいるのは、いけすかない自分と同じ顔の女である。目の前で伴部をとられて動揺もしたが、自分の英雄たる伴部を手玉にとれるはずもないのだ。自業自得ではあるが、同時にこれは勝機でもある。
もし仮に、伴部が今示すような大きさを維持できるのであれば、橘佳世の体を交互に振り分けることで、伴部に橘佳世の体を知ってもらい、それ以外なにも考えられなくなるように誘導することも可能なのではないか? 伴部が自分だけの伴部でなくなることは業腹であるが、あちらの橘佳世は下人そのものに興味がないらしいから、体だけの関係以上に発展することはないと考えて良い。伴部に救われた橘佳世は、この橘佳世以外の誰でもないのだから。
橘佳世は、伴部を振り向かせるために、二人の橘佳世、二人の体を利用する。彼が離れがたく思うように誘導するのだ。
「だめ、下人! それ以上は………ああんっ!」
「伴部さん? 飽きたらいつでも交代して大丈夫ですよ? 私『たち』があなたに、どこまでもご奉仕しちゃいますから!」
数時間後、快楽に狂い、股座から絶え間なく白い液体を漏らし続ける、双子のようにそっくりな少女が、畳の上に身を横たえていた。とろとろと少女のからだから溢れる体液はどこまでもいつまでも畳を汚し、い草の中へ中へとに潜りこみ、独特の臭いを撒き散らしていた……。