蛍は何処へ 作:パリピブラゾール
橘佳世が二人いるという事実に伴部は困惑を隠せなかった。彼の自我は本来の場所よりもはるか遠くにあったが、納得するまでは不整合に気づいてしまうという、橘佳世らにとっては都合の悪いのもまた事実ではあった。
「何不満そうな顔をしてるのよ、下人のくせに」
ぷはっ、と息を吐き出して、剛毛に覆われた彼の一物をなだめていた橘佳世は、如何にも怜悧な目線を崩さずに言った。その顔には見覚えがあったがあくまでもゲームの中の話であり、転生し、現実に人物が躍動するこの世界では見たことのない顔だ。
「こうやって、ご奉仕をさせてるんだから、少しは嬉しそうな顔をしたら?」
「いえその……そもそも、なぜこのようなことに?」
「伴部さんがそれを聞いちゃいます?」
もう一人の橘佳世が頬を膨らませながら、伴部の背中に抱き着く。
「鬼月家から注文を受けたものを、伴部さんが受け取りに来たんじゃないですか。二の姫様の注文通りの品であるかどうか、こうして確かめてもらっているというのに!」
「つまりその……分け身のような道具なのですか?」
そうです、と橘佳世が頷き、伴部は前世の知識から首をひねる。そのようなアイテムが橘商会で売られていたか……まあ、元気になるお薬のようなヤバい薬も品出しできるくらいだ、似たり寄ったりの劇薬が存在していてもおかしくはない。
「しかし、それがこの状況に繋がるとは思えないのですが」
「いちいち五月蠅い男だこと」
下半身に顔を埋めた佳世は、口の中から陰毛を引っ張り出し、唾液と共に畳に吐き出した。
「別に品位は求めないけれど、最低限、情事の先導くらい心得てくれないかしら。それともまだ何か言って、この楽しみさえぶち壊しにしてくれるの?」
「……申し訳ございません」
「わかればいいのよ」
ふんと鼻を鳴らした橘佳世であったが、彼の分泌物を口に含めてから、出来上がり始めたのは同じ橘佳世からすれば一目瞭然であった。彼の大きな背中に寄り掛かって、後ろから悪戯するのも如何にも恋人らしくで楽しかったのだが、彼の体を知ってからは、早く貫いてくれないかと、まだまだ未知の快楽であるまぐわいに、どうしても舵を切ってしまう。
「それにしても、随分蒸れていること。下人、あんた少しは剃ったらどうなのよ?」
「そう言われましても、そのような道具を与えられませんので……」
「だったら私が整えてあげましょうか、伴部さん?」
どう答えればいいか言葉に詰まる。そうこうしているうちに橘佳世の体内から吸収された青年の体液は確実に女の体を火照らせていた。彼の背中に寄り掛かっていた橘佳世は少し離れて、もう一人の自分に圧し掛かった。突然のことに脚を振り上げながら橘佳世が後ろに倒れる。ばたばたと暴れる脚を掴んで、橘佳世は洪水というに相応しいその場所の蜜を人差し指で掬い上げると、いちいち指で擦りつけるようなまどろっこしいこともせず、下腹部と下腹部とが接木のようにしっかり噛みあうのに任せて、自分の秘所を近づけて、手早く自分の場所を潤わせた。脚を掴んで無理やり股を開かせて、押し付けるたびに奉仕をしていた橘佳世が声を詰まらせてよだれを垂らす。痙攣が、掴んだ脚からも伝わってくる。既にあふれ出ている蜜を塗りつけるだけでなく、相手の体に自分の体を擦りつけるのは、体の興奮を高めるのにも一役買っていた。お互いの体からあふれ出るものを擦りつけ、混ぜ合わせ、用を足すのを我慢する子供のように意識して下腹部に力を込めて、ただただ粗相をしないように構える。
「ふふ、これくらいでいいでしょうか?」
「……女とも平気でやるとか、あんた、頭どうなってんのよ」
「あら、そんなに物足りないのであれば、張型をお貸ししましょうか?」
「もう黙ってなさいよ、色狂い……」
疲れたように自分と同じ顔の少女をあしらう口ぶりには大分棘が消えている。白く細い腕を額に押し付けてため息をつく彼女から敵意が消えたのを見計らって、橘佳世は伴部を手招きした。
「お待たせしました、伴部さん」
「いえ、お待たせしました、と言われましても……」
「下人……伴部だっけ? あんたさぁ、ここまでしておいてまだ及び腰なの?」
「どういう意味でしょうか?」
「あんたは既に、私たちの純潔を奪ってるってこと。だったら今更躊躇う理由なんてある?」
「はい……!?」
記憶にない。当然のことである。事の重大さに真っ青になる伴部に対し、橘佳世はくすくすと上品に笑う。
「今更なにも恐れるものはありませんよ、伴部さん。だって……」
「だって、この世界はもう終わっているも同然だもの」
「は、え、しかし……え?」
大きなため息が橘佳世の口から漏れる。やさぐれた様子の彼女は先程のような失態を男には見せず、男の両肩に自分の手を置いて、勢いよく座り込んだ。あっという間に男の分身を飲み込んで、橘佳世は満足の吐息を漏らしてから、じっと下から青年の顔を見上げた。
「じたばたしないで、男らしく責任をとったらどうなのよ」
「責任……ですか?」
「そうよ。……その、体で」
どこか居心地悪そうに身をよじりながら、橘佳世は言う。もちろん、もう一人の少女にはすべてわかっていた。こうなるように一つずつ、もう一人の自分の懸念事項を片付けて、もはや情欲の権化である。爺たちが相手では決して開き直ることができなかった、性欲の追及。それを、この青年が相手ならば可能であると……裏を返せば、絆されるのも時間の問題であると、橘佳世にはわかっていた。
双子の姉に対してするように、彼女の背中に抱き着いた少女は、男も顔負けの大胆な手つきで桃のような乳房を揉みしだく。そこに青年の一物が加わり、すぐに喘ぎ声も殺しきれなくなる。後から後から溢れ出る蜜を、少女の背中や腰に擦りつけながら、橘佳世は期待にただただ頬を染めていた。