蛍は何処へ 作:パリピブラゾール
「お母さんの代わりと思ってくれて、よいのですよ」
青年は嘲るように、かつて言われた言葉を噛んで含めるように繰り返し、冷笑をもって手を振り上げた。瑞々しい肌に赤い手形が並ぶ。
「俺の母さんが、お前みたいな阿婆擦れだって言いたいのかよ!」
「ちがう、ちがうのよ……あなたは、私の……」
「わたしの、なんだよ。初恋の人だったとでも言いたいのか!」
胡蝶は尻を突き出して、何度も何度も頷く。流れ落ちる涙は歓喜による。言葉の暴力と否定も、突き立てられる青年の分身が猛り狂う迫力を誤魔化すこともできず、興奮は興奮を呼び、暴力は暴力を呼び、二人の汗は増々混ざり合う。青年がどんな暴言を吐こうと分身をこの体から引き抜かないというのは、つまり本意ではないのだと胡蝶は都合よく解釈していた。
だから胡蝶は青年の言葉を、夢うつつに否定しながら、この状況を楽しみ、よがる。これも倦怠を避けるための刺激なのだと、経験に勝る胡蝶は知っていたから。
「俺があんたの想い人だったとして、だったら、なんで俺以外の男に股開いたんだよ!」
「いじめないで……おねがい、わかってちょうだいな。私は……」
「いい年こいて孫くらいの年と絡み合ってるような、年増が何を!?」
香が、霧のように室内を染め上げる。媚薬を混ぜたこの香りに、二人して酔ったのだろうか。橘商会に特注で作らせたこの南蛮風の衣装、念入りに編み上げられた布地に無理に男根を突き込んで、まだ一度目だというのにあちこちが裂け始めていた。
正面から見れば、馬と人とが合体した化物のように見えなくもない。膝立ちになった妙齢の婦人、兎の意匠の煽情的な洋服を着たまま、蝋燭の灯に照らされながら白い肌を産毛まで震わせて、華奢な体を全体重掛けて揺さぶりながら、物が抜けぬように腰のくびれをしっかりと掴み、互いの膝がぶつかるのも気にせず、荒い息遣いで肺一杯この澱んだ空気を吸い込んで、官能の渦に溺れていく。黒光りする衣装が白濁した青年の体液で濡れ、てらてらと光り、一部は南蛮風の黒い足袋に吸い込まれて影ができる。兎の尾を模した箇所には小さな穴があり、胡蝶は自分の不浄の穴を、青年に見せつけることで羞恥をますます高めていた。
「もう既に孕んだじゃねえか。産んだじゃねえか、俺以外の、俺の子供以外を!」
くそが、雌犬が、と普段とはまるで違う、立場をわきまえぬ口汚い罵倒を浴びせる青年に、妙齢の婦人は哀れにも懇願する。許して、なぐさめて、愛して。
「お母さんを、ゆるしてぇっ! あなたの子供を産むからっ!」
「俺が餓鬼が欲しいとでも思ってんのか! 糞婆、産みたきゃ勝手に孕んで産めよ! 自分で生んだ餓鬼にも股開くだろうよ、お前みたいな女はよっ!」
尻の肉にぎゅうと爪を立てられ、胡蝶は四つん這いに、自分の体重を支えていた腕を震わせ、一気に畳に顔から崩れる。雄々しく反り立ったままの男根が、互いの敏感な箇所に新たな刺激を押し付け合い、青年も胡蝶も、情けない声を上げながら達してしまった。
荒い息を吐き出しながら、胡蝶は畳の上を転がる。全身で振り返った彼女の体に、青年が真正面からのしかかった。先の放出もなかったかのように漲る一物を再び突き立てると、胡蝶は小娘のような悲鳴を上げて、全身を震わせながら迎え入れた。
「孕め、こら。孕め。孕めっつってんだろ、孕め。この糞婆、だらしなく股開いて喘いでろ、こら。孕めこら」
青年にはまともな意識もなく、怒気に任せ、この年上の女を喜ばせるような暴言を譫言のようにぶつけ続け、脚を抱え込まれた胡蝶は、青年の腰使いに合わせて畳の上を転がっていた。