蛍は何処へ 作:パリピブラゾール
あと更新する度にお気に入りが減るのに泣いた。
伴部と呼ばれる青年と、この世界の自分ーー鬼月葵のまぐわいを見て、内心恐怖を抱いたのは隠しようのない事実だった。辺り一体に体臭を撒き散らしながら、床に引き倒し、全体重をかけて押さえ込む荒々しさ。幼い頃に妖に肉体を凌辱されてからというもの、人との距離を取り続けてきた鬼月葵にすれば、どうして相手に主導権を委ねることができるのか理解できない。また、互いの愛の証明としての体の関係が、いつもこれほどまでに激しいとすれば......鬼月葵の脳裏によぎるのは、いつだって己を弄び尊厳を破壊する妖の群れだ。
口ではいくらでも強がることができる。性欲を煩悩の証と切り捨ててしまえば安全地帯にいながら高潔な人物だと思わせることができる。だがそこにも虚しさがつきまとうのは、誰よりも自分がよく知っている。鬼月葵は、自分自身を騙せるほど馬鹿ではなかった。
散々に体を弄ばれ、欲求のままに貪られた、この世界の自分が畳に倒れこむ。い草がざりざりと擦れて、火照った肌が摩擦によって赤くなったようにも見え痛々しい。少なくとも、二人の行為を見守っていた鬼月葵はそう思った。荒くなった呼吸を整えても、だらしなく緩んだ顔はそのままだ。異なる可能性を歩んできた同じ人物同士の視線が絡み合う。一人は幸せそうに性を楽しむ、妖艶な女として。もう一人は、処女よりも過剰に性を恐れる強がりな少女として。
獣のような眼光に捉えられたと気づくより早く、鬼月葵はもう一人の自分と同じように、畳の上に押し倒されていた。横で余韻を味わっているもう一人の自分が嘲笑う。喉の奥からひきつったような声が出て、彼女は反射的に覆い被さってくる青年の体を遠ざけようとした。
厚い筋肉が、ぎゅっと少女の体を押さえつける。しかし、恐れていたような瞬間はいっこうに訪れない。一流の退魔士失格にも目を瞑っていた鬼月葵は、恐る恐る目を開いた。
頬に当たる青年の胸板。苦笑が小さな振動となって伝わってくる。鬼月葵は自分が押し倒されているのではなく、覆い被さる彼が強張った体を抱き締めてくれていることに気づく。青年の鼓動を聞いていると、体の緊張がほぐれていくのがわかる。おずおずと腕を回して、青年の体に腕を回すと、下腹部の辺りからじんわりと放たれる熱が、自分を溶かしていくのがわかった。意図せずに体が一度跳ねると、今度は腰が抜けた。青年は彼女の足と足の間に割って入ったものの、鬼月葵の中には入ってこない。自分の体温を伝えようとするかのように、親鳥が卵を温めるように、少女の体をじっと抱いている。
この経験したことのない懐かしさはなんなのだろう。鬼月葵は幼子のような戸惑いを見せて、青年の頬に手を添える。自分の熱は、青年に伝わっているだろうか。鬼月葵が初めて相手を想った瞬間であった。