蛍は何処へ 作:パリピブラゾール
相手を兄だと知っていたら、あるいはわかっていたら、自分は恋に落ちただろうか、と雪音は考える。
実際は逆である。主の環のことも計算にはあったが、この人になら自分の身を委ねたい、と結ばれたあとになって、彼が自分の兄であることを確信した。一般に畜生にも劣る許されぬ恋愛は、雪音の恋をただ激しく燃え上がらせる燃料でしかなかった。
ずっと慕っていた兄。いなくなった兄。それでも家族のことを、自分のことをいつまでも思ってくれていて、さらには自分の大切な姫様、環のことまで。まさに英雄と呼ぶにふさわしい相手が自分の兄で、最愛の人であることに、雪音は誇らしく、嬉しかった。
「鈴音も入りなよ」
ちゃぽん、と湯船を波立たせながら蛍夜環は天然の湯船から声をかける。濁った温泉の湯は火照る環の白い肌をほとんど隠してしまっていた。
その環はというと、伴部と共にこの浴場を堪能しつつも、年頃の男女としてやることをすでにやっていた。唇同士だけでなく、伴部は肩や二の腕など唇の先で挟み込んで愛撫していく。反射的に彼を遠退けながらも、まんざらでもない様子。
湯船の中から見えるように帯をほどき、白い裸体をさらせば、兄の喉が面白いくらいに上下するのが見えた。それでも頑張ってそ知らぬふりをして、環への愛撫を強める。するりと胸元を手でまさぐりつつ、腕の中に環を招く。湯に沈まないように気をつけながら体を預ける。伴部のごつごつとした指は湯の中に沈み、環の体の中心、太ももと太ももの内側を探り当てた。大きく跳ねる環の体を抱き締める兄の姿にさえ、嫉妬を隠せなくなる。何度抱き締めてもらっても、体は次の抱擁を、次の温もりを求める。寒村とはまた違う寒さは、肌と肌がふれあっていない限り、消えないような気がするのだ。
それはきっと、今愛撫されている環もそうなのだろう。目をとろんと鈍く光らせ、よだれもぬぐえない状況で、苦笑と共に拭いてやる青年の指を目で追って、無意識にぱくりと頬張っている。
「姫様、はしたないですよ」
口では言いつつも、これから臨む行為の方が、どれだけ淫らであるかは、言うまでもないのだが。
今一度、傷だらけの青年の体が、どっしりと湯を囲う岩場に預けられる。ゆったりと広げられた両腕には、それぞれ雪音と環を迎え、二人の女は青年の胸板に頭を寄せている。青年は交互に、啄むように二人の女の唇を軽く噛んでから、ぎゅっと抱き寄せた。環と雪音、主従の二人の顔がぐっと近寄り、どちらともなく口付けた。
「姫様......」
「もう、こんなときくらい、立場はなしにしてよ?」
いつも通りの環に、その場の空気に当てられたのか、すべすべとした腕を環の首に回して、口づけの嵐を降らせる雪音は、まるで環を自分のなかに取り込もうとしているかのように必死であった。
そんな二人を見守りながらも、青年はやるべきことを忘れない。環の後ろに回り込み、乳房を痛いくらい鷲掴みにして、下半身は湯船の中のまま、ぐい、と己の分身を突き立てる。んぎゅ、という奇妙な声が環の口から漏れ、雪音の口の中で反響する。腰を振る青年と、それに突き動かされる環の体、湯船が波立ち、気泡が水面で弾けていく。身をよじりながら、環は声をあげることも許されず、兄妹に翻弄されていく。
「んんんんん......っ!!」
そして、快楽が弾けた。脈動する男根が、生命の元を環の胎に注ぎ込んだことを告げる。環はぽう、とどこか焦点の合わない目でくたり、と雪音の胸のなかに崩れる。
「また、なかに出したんですね? 兄さん」
「うん、まあ......」
「じゃあ、私には必要ないですね?」
とたんに物欲しげな顔をする兄の幼い顔に苦笑しつつ、冗談です、と雪音は姫君を抱えたままそろそろと湯を掻いて兄の方へと体を寄せる。
「兄さん」
「ん?」
「兄と妹の子供って、どんな子供になるんでしょうか?」
そろそろと括れた腰に延びつつあった腕が、止まる。いえ、子供がほしくないというわけではなくて、と慌てて言うも、改めて倫理に反する事実に、後ろめたさが隠せない様子だ。自分のように興奮はしないのか、と雪音は少しがっかりするような安心するような、複雑な気持ちになる。
「......大丈夫だよ」
と、話を聞いていたらしい環が、雪音の腕の中で少しだけ持ち直す。
「どんな子供が生まれようと、伴部くんの子供なんだから」
環は笑みを浮かべて、湯の中へと手を差し入れる。青年の分身を撫で回すようにして、再び硬さを取り戻させたあと、禁じられた愛に身を焦がす愛しい従者に、笑みを向ける。
「だから......一緒にさ。育てようよ。一緒にお母さんになろうよ?」
「はいっ」
すぐに、兄の肉棒が、秘められた入り口を押し広げ、侵略を始める。酔ったような顔色で、雪音は支えを求め、仕える姫のもとへ体を投げ出した。少年のような笑みを浮かべた彼女は、つきだされるような形の胸を、固くなりつつある乳首を、楽しそうにいじり始めた。