蛍は何処へ 作:パリピブラゾール
すべてが言い訳である。
女はきっちりと逃げ道を用意している。それも、結果的に転がり込んできたものだ。
粗末な小屋で、藁が盛り上がった場所がある。言わずと知れた伴部の住む小屋である。唐突ににょき、と生えてきた手が床を這い、やがて突っ張る。引き締まった体の上を滑っていく藁の中から現れた伴部は、さらにその下から現れた細い腕に絡み取られ、床の上に沈み込んだ。
床と伴部に挟まれて、胸も潰されるように押し倒されている鬼月葵の顔には涙の痕がある。昨夜散々伴部に責め立てられながら犯された、その結果が残っている。そしてそれは、最愛の青年と結ばれたことを喜ぶ歓喜の証でもあった。
青年はもはや、散々自分を苦しめてきた少女を責める言葉を持たない。その境遇を憐れみ、本心を見抜けずとも利用しあってきた仲である。
だがそれを認めてしまえば、彼が見殺しにし、また実際に手を下して殺した人々が報われない。
けれど、ゲームという大筋を知った上で最小限の犠牲として目を瞑ってきた人々は決して軽くない。今もなお肩に重くのしかかる。
そこに滑り込んできたのが鬼月葵という少女である。傲慢に青年を見下し、彼の命の価値を度外視していた少女である。そのくせ命を救われた途端に手のひらを返して彼を愛し始めた少女である。
その関係ゆえに、葵は彼の罪を引き受けることができた。憎悪によって結ばれることができた。
怒りと殺意は、最も嫌悪していた性欲を解放させるにはぴったりだった。自分の欲望を発散させながら少女には罪の意識と罰とを与えることができる。それがかろうじて彼の正気を保たせていた。
自然彼の、少女を扱う手は荒くなる。
藁を押しのけて、脚を抱え込む。無理矢理にこじ開けた花弁に突き立てる摩羅の勢いに閉じようとするその脚を、一旦押し上げて、我武者羅に体重をかける。さらに奥へ奥へと沈み込んでくる男根に押し上げられ、鬼月葵の体は大きく反り返る。めり込んだ男の分身が、少女の体の中でさえ自分の存在を主張していた。
「このくそアマ、売女が……」
精一杯罵倒の言葉を探して、結局似たり寄ったりの言葉に落ち着く。何よりそれが言い訳に過ぎないことは自分が一番よく知っている。
山の字に開かれた脚の間に、ハの字に開いた男の脚が圧し掛かっている。男が腰を打ち付けるたびにふぐりが大きく揺れるのがわかる。泡立った二人の体液が混ざり合って、刺々しく赤い二人の体の隙間から流れ落ちていく。丘のようになだらかな曲線を描く少女の腹は、ある一定の境界を描いた場所から大きく盛り上がる。双丘は男の胸板に潰された乳房である。男の喘ぎに従って、更なる獣欲を掻き立てんと彼の視界で上下に揺れる。それが男の癪に障る。
握りつぶすように指で挟み込んだ乳首が、すぐに赤黒くなる。脂肪の詰まった女のそれは、他に例えようのない誘惑の証だった。握りつぶすようにするのが、癖になる。
葵は唇を奪われた。男が生暖かい舌でぐいぐいと押しやってくる彼のものを、喜びながら吸い上げる。男という異物の侵入を、鬼月葵は喜び受け入れた。もっと月並みな反応でなく、常に男を滾らせられたら、どれほど喜ばしいだろう。贖罪のためなど、葵は考えていなかった。初めこそ意識していたかもしれないが、すぐに男によって屈服させられる喜びに変わった。男の額から滴る汗が、葵の顔を撫でる。ぶつかり合う肌と肌が意図せずに重なり合った時、じんじんと芯から肉を熔かすぬくもりとなる。
口の中を暴れ回る舌の傍若無人な侵攻はまさに快楽である。
荒い息遣いと鼓動が、痛みを感じる耳にずしんと響いてくる。痺れてきた両脚を無造作に片付けられ、葵は床の上を泳いだ。脚の付け根、太腿に爪を突き立てられる。絡み合う早さが変わった。体が上下に引き伸ばされ、浮き上がる体はまさにしわ寄せを受けていた。そっと触れる愛しい人、伴部の顔は貪欲に求める体とは逆にひどく辛そうに見えた。
この人は今も戦っている。自分の中の罪の意識と、それを葵に転嫁しようとする自分自身の弱さと。
そんなぎりぎりと締め付けられる状況にも、伴部は決して満足しない。
罪の元凶として振舞う以上わかっていたことだった。葵はわざとらしく体をくねらせ、大きな声で下品に喘いだ。たちまち青年の顔が険しくなり、行為のそれは激しくなる。
絶頂の果てになら、死んでもいい。
葵は青年に抱かれるたびに、何度も繰り返している。