蛍は何処へ 作:パリピブラゾール
自分が畜生に堕ちたのを知った。絶望は初めだけ。回数を重ねるごとに、自分を騙すのが上手くなる。
胡座をかいた膝の上で、裸の女が踊っている。細身の体に精いっぱいの余った肉を、肌と肌のぶつかり合いで精一杯震わせて。
ーー初めはびっくりしましたけど、でも、何か理由があったんですよね?
黙り込むこちらの罪悪感、知りもしないこちらの苦悩を慰撫しようと、手探りで雪音が言葉を紡ぐ。
ーーこんな風に求めてもらえるなら。あなたのような、兄のような人が相手なら。これがきっと人並みの幸せなんだろうって、私は思うんです。
天真爛漫な妹はもういない。背伸びして、こなれた、世間を一通りは知っていると言わんばかりの一人の女。理不尽を受け入れ、自分を騙して、少しでも幸せであろうとするのが痛々しい。
ある日唐突に限界が来た。戦いの中で変質した体のせいか、傷つくことにも傷つけることにも慣れてしまった心のせいか。
犠牲になったのは、妹だった。
妹の純潔を奪い、唇を蹂躙し、乳房を嬲った。すすり泣きもなく、甘い声もなかった。すべてが終わったあと、静かにため息をついて、我に返った男の頭をなでながら、
ーー姫様を守ってくださるなら、私は。
と。
奇妙な縁から繋がった仲で、築き上げた信頼関係が成せたとは、思えない。むしろそれをすべてぶち壊す愚行であり暴力だったはずだ。
ーーなのに。
許されたわずかな自由な時間に、顔を合わせるたびにこちらに向けてくる視線はなんなのか。さりげなく、こちらの胸板に手を当てて、肌の温もりを得ようとするのはなぜなのか。部屋に招き入れては、時に自ずから肌着を脱ぎ捨て、こちらの体に跨がってくるのはなぜなのかーー。
背中には、妹によって付けられた無数の爪の跡がある。口づけが、首回りの皮膚を赤く腫れさせた。子種を受けて、腹をさする。その仕草にはまだ見ぬ子供への慈しみがあるように見える。
細い体でかじりつき、力の限り足でこちらの腰を固定して、少しでも男を喜ばせようと本能的に没入していく。耳元で呟く兄さん、兄さんという喘ぎ声ともうわ言とも取れる言葉が、なおさら胸を締め付ける。押し付けられた乳房は、密着して潰れてしまう。
何もかもを振り払いたくて、床に引き倒せば、遊女のように股を開いて男の本能を誘う。太腿の付け根を撫でれば、びくりと体を揺らして、とろりとろりと蜜を漏らす。
兄さん、兄さん、とーーもう一つの名前、鈴を鳴らすような声で、男女は、残酷な世界の中で兄妹は肉欲に溺れていった。