※この作品はR-18です。

蛍は何処へ   作:パリピブラゾール

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選択ミス(主人公、ヒロイン共に)。ちょっとしたいやみを拡大解釈したヒロインが伴部君を殺してしまうルートです。


ガンバレ伴部くん/Badend

 

すべてを諦めた顔があった。葵が見たこともない、見たくもない顔であった。

姫様、と静かに下人は言う。

 

「姫様は、私の死を望んだのですね」

「ちが……ちが、違うの。伴部」

「いえ……そう考えれば、筋は通ります。かつてあれほどの無礼を働いておきながら、のうのうと生きている私を、姫様が疎ましく思うのもごもっともでしょうから」

 

混乱する葵に、青年は畳みかける。

 

「我々下人は所詮使い捨ての道具です。気に障ったならば捨てられもしましょう。ですが、私は……もう少し婉曲にではなく、直接、姫様から死を賜りたかったものです」

 

どうしてこうなったのか? 地下水道から、無事伴部を救い出したまではよかった。いや、とても無事とは言えなかっただろう。実際、こうして葵がつきっきりで看病しなければ、そもそも傷の深さで命を落としたことだろうし、病状が安定した後も、人間かどうかも怪しい姿で、屋敷のものに殺される運命が待っていたはずだ。

 

無事に目覚めてくれた。しかし、伴部の心は、既に彼女から離れてしまっていた。

 

「しばし、一人にしてくださいますか。下人の、今生の望みですゆえ」

 

葵の視界がぐるりぐるりと回転し始める。眼が現実を拒絶しようとしていた。

葵は決断を迫られていた。苦渋の決断である。二択しかない決断である。既に伴部との華やかな未来は閉ざされてしまった。愚かな自分のせいで。

 

だがここで伴部にいかせていいのか……おそらく伴部は、下人の小屋にでも戻って自刃することだろう。前々から何かと目をつけられていたのだ。穢れを厭い、文句を言って使者を辱めながらも、鬼月の家は諸手を挙げて彼の決断を喜ぶであろう。

 

 

 

 

 

 

 

『行かせない』を、選択しました。

 

「え……」

 

伴部の腹部を、少女の抜き手が貫通していた。

 

「だめよ、伴部。いかせない。あなたを一人で行かせない。あなたが行くところ、そこがたとえどこであろうと、そここそが私のいるべき場所だもの。そうでしょう伴部。伴部。伴部ごめんなさい。私は、あなたに英雄になってほしかったの。私とあなたの間にある隔たりを、業火のごとき壁を、飛び越えてきてほしかったの。伴部。私には、あなたしかいなかったの……!」

 

葵はなおもぶつぶつと呟いていた。しかし、意識が遠のいた伴部にはそれを最後まで聞くことはできず、音もなく崩れ落ちる。

 

伴部にずっと渡していた短刀が転がり、葵は皮肉なことに寂しげにほほ笑んで、一息に喉に突き立てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『行かせる』を、選択しました。

 

病人、否、死人のような足取りでふらりふらりと出口へと歩み寄った彼は、戸をゆっくりと引いて、振り向きざまに、葵と目が合った。寂しそうに笑った彼は、深々と礼をして引き戸を閉めようとして、

 

唐突に、頭が弾けた。

 

「は……?」

 

葵の目の前で、ゆっくりと倒れていく伴部の後頭部は破裂していた。ぼとり、と大した音もたてずに転がった亡骸を前に、より重厚な何かが降ってくる。土間に突き立てられたそれは、巨大な錨であった。

 

「俺だけの、英雄を見つけたと思ったんだけどなぁ」

 

大して悲しそうなそぶりも見せず、鬼は血がべったりとこびりついた錨を掛け声一つで背負いなおし、けけけ、と笑った。

 

「でもダメだな。誤解からとはいえお姫様を見放して、しかも死のうとしてたなんて。そんなの英雄じゃねえよ。少なくとも、俺の求める英雄じゃないね」

 

引き戸一杯に血糊がぶちまけられ、やがてその飛沫がゆっくりと垂れて落ちていく。葵は小屋から転がり出て、愛しい人の体を抱き起した。頭部をごっそり失ったとはいえ、比較的顔は綺麗であった。しかしその人がもう息をすることはなくて……。

 




ゲーム「闇夜の蛍」の原作スタッフ、同人界隈の人々よりまともであると自負しております。もちろん性癖も。目を見ていただければわかります。
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