優柔不断は切り捨てろ:周りの美少女は全員他人のモノ 作:エルサイズ
―――――――――――――――茜視点
「はぁ...」
困ったわね...
「一瀬さん...?大丈夫?」
大丈夫な筈が無い。
想定外の出費があった上に、ホテル代は完全に割り勘すれば何とか帰りのバス代くらいにはなった。
しかし、どうやら彼は金額の計算をしていなかったようだ。
この抜けているところを愛嬌として受け止めることが出来るほど私は大人ではなかった。
「そうね...帰りは別々にしましょうか。バス代は足りる?」
「あ、うん。何とか小銭をかき集めたら足りそうだよ」
あははと笑うその顔に思い切り平手打ちしたい気分だった。
...ここから先生のマンションまではそれなりに距離があるのよね...歩いて帰れないこともないけど...まあいいか。
「じゃあここでお別れね。じゃあまた明日」
「あ、うん。またね」
ふりふりと手を振って待機していたバスに飛び乗った斉川君。
「はぁ...」
斉川君と交際を続ける。そう宣言したばかりなのに初日で心が挫けそうになった。
「...私もそんなに食べ方綺麗じゃないのに」
彼の箸の持ち方は...まあ、見苦しいほどではないにしろ少し違和感のある持ち方だった。
「はぁ...」
また、ため息を吐いてしまった。
駅前から一歩出ると田園風景の田舎道だ。月の無い夜に広がる星の海を散歩することになる。その長い距離を歩くうちに心も晴れてくれるだろう。
明日からどうしよう...先生にお願いしてお金を借りようかしら...
...ダメね。住まわせてもらっているのにそんな厚かましいお願いなんてできないわ。
「バイト...探そうかしら」
真っ当にお金を稼ぐ。今ならそれをする余裕がある。
「バイト...良いわね」
少しワクワクしてきた。一歩ずつ。少しでも真っ当な人間に戻れるような気がする。
「ふふっ...」
先生も夕華も...喜んでくれるかしら?
「先生...夕華...」
愛しい彼らの笑顔が脳裏に浮かぶ。
「...」
無意識のうちにスマートフォンを開き、電話帳で彼の名前を探していた。
『もしもし?茜?』
「え...?」
気づけば画面は通話中になっていた。
『茜?もしもし?大丈夫か!?』
何も言わない私に先生の声が焦りの色を見せていた。
「も、もしもし!?ご、ごめんなさい!」
『うおっ!?大丈夫なのか!?』
私の大声に少し驚いたようだ。
「だ、大丈夫...その...いつの間にか掛けちゃってたみたい...」
『そうか...今帰りか?』
「あ...うん」
『あ、ひょっとしてバスの中だったか?』
「ううん、大丈夫よ。歩きだから」
あ、しまった。
『歩き?駅から?』
「えっと...その...」
『...まだ駅は近いか?』
まだ駅が見える程の距離だ。
「え、ええ」
『すぐに行くから明るいところで待ってろ。できるな?』
「...うん。ありがとう」
何も言えなかった。
先生に...会いたい。その気持ちに素直に従った。
無意識のうちに軽くなっていた足取り。ここまで来た時間より、駅まで戻る時間の方が体感的にも実際にも短かった。最後の方は駆け出していたのかもしれない。
「はぁ...はぁ...ふふっ」
駅のロータリーにバタバタと駆けて来て肩で息をしながら笑っている私は、さぞ滑稽に映ったことだろう。
まだまだ冷える春の夜。少しだけ冷静になってバス停のベンチに腰掛けていたら、パールホワイトの大きなセダンが駅のロータリーに入って来た。
「...!」
軽くクラクションを鳴らして知らせてくれる。
私はスキップしそうな程軽い足取りで先生の車に向かった。
どうしてこんなに上機嫌になっているのかしら...
助手席の扉を開けて乗り込むと、革の匂いと一緒に先生の匂いがふわりと香ってきた。
「お待たせ、茜」
「ううん。来てくれて本当に嬉しい...ありがとう、先生」
優しく微笑んでいる先生。しかし、すぐに真剣な表情に変わった。
「茜、夕華から遅くなるとは聞いてたけど...どうしてバス代まで使ってしまうことになったんだ?」
「それは...」
斉川君とホテルでセックスしていたらお金が足りなくなってしまいました。なんて言えるわけない。
さっきまで心が躍るような思いだったのに、ホテルでの痴態を思い出すと先生への罪悪感で心が押しつぶされそうになる。
「あの...斉川君があまり持ち合わせが無かったのよ」
「それで茜が殆ど出したのか?」
「あ...ううん。割り勘だけど...少し私が多いくらい」
それを聞くと先生は小さくため息を吐いた。
「あいつ...デートくらいカッコつけろよ」
「え...?」
「まあ...学生だから厳しいのかもしれないけど、少し多めに出すくらいの甲斐性を見せて欲しいよな」
「えっと...」
そんなものなのかしら...
「それと...茜。ホテル行ってただろ?」
「っ...!」
ビクンと身体が震えた。
イヤだ...別に今更他の男に抱かれていた事なんて恥じるような人生を送っていないのに....先生に知られるのが....すごくイヤだ。
「やっぱりな...それでホテル代を圭介が持ってなくて殆ど文無しになったんじゃないのか?」
「...ええ」
察しが良い先生の事だ。私がいくら隠ぺいしようとしても無駄だろう。
「あの野郎...ふざけやがって」
「...!」
先生が乱暴な言葉を使っている...
乱暴な言葉遣いの男性は苦手なはずなのに...彼のその言葉が自分に向いた時のことを考えると、少し股の間が湿ってくるような気がした。
「あ...ごめんな。茜を怖がらせるつもりはなかったんだ。でも...自分でヤりたがっておいて金が無いなんて...同じ男として情けないと思ってさ」
少し鋭くなる先生の目つき。運転中なので視線は前を向いているのだけど、そのせいで横顔が余計に....その...
「素敵...」
「え?」
「あ...な、なんでもない...!」
思わず口に出てしまった。
普段は優しい彼が時折見せる“雄”の部分。
そんな一瞬の姿にドキドキしている自分がいる。
「?」
でも...不思議そうに首を傾けている姿も...なんというか可愛らしくて、これはこれで夢中になる。
“お兄ちゃんって可愛いんだよ”という夕華の言葉を思い出していた。彼の魅力の一つは、雄の部分から少し抜けた可愛らしい姿までのギャップの大きさだろう。
ドキドキして彼の顔を見れないでいると、いつの間にかマンションに到着していた。
...もう終わりなんだ。
2人きりのドライブが終わるのが少し寂しかった。
ピタッと一回で駐車して、先生は一息ついた。
「ふう...茜、これからはバス代を残して遊ぶんだぞ」
「...はい」
「よし。じゃあ部屋に行こうか....ん?茜?」
何となく...まだこの時間が終わって欲しくなくて...気づけば彼の袖を握っていた。
「あ...こ、これは...」
慌てて先生の顔をみると...その顔に戸惑いの色は無かった。その代わりに....
「茜、こっちを見ろ」
「...っ」
先生の強い言葉に胸が高鳴ってしまう。
その代わりに...彼は笑っていた。
その笑顔は...斉川君と待ち合わせをしている直前に見た笑顔だった。
「せ、せんせ...っ」
彼の暖かい手が私の肩を抱いた。
優しい手つきなのに...絶対に逃げられないと理解させられるほどの力加減で。
「茜...」
段々と先生の顔が近づいて来た。
「あ...っ...」
反対の手が私の雌の部分に触れた。
くちゅり...と粘質の音が静かに響く。
「まだ何もしてないのに...これはなんだ?」
「あぁ...ごめんなさい...」
「謝って欲しいなんて言ったか?」
「ふあ...っ!」
ぐっと抱き寄せられて、今にも唇と唇が触れそうになった。
「茜...思い出しちゃったんだよな。彼氏とデートの待ち合わせの直前まで...何をされていたのか」
「あぁ...っ...」
デート中もずっとそのことを考えていた。
斉川君に抱かれている時も、何とかそのことを思い出しながらアソコを濡らそうとしていた。
「立てなくなるまでぐしょぐしょにされちゃったもんな」
「ごめんなさい...ごめんなさい...っ!」
「だから誰に謝ってるんだ?」
彼の優しい声が優しくない言葉を囁く。
下着の上から私のアソコをイジメてくる彼の硬い指。
身体の奥から愛液が溢れ出しているような感覚だ。もう下着は大変なことになっているだろう。
「ごめんなさい...先生...夕華...っ...」
「何がごめんなさいなんだ?」
「他の人に抱かれて...ごめんなさいっ...!」
耳元で囁かれて、彼に必死に許しを請う...その行為にゾクゾクと背筋が震えて更に興奮した。
「よしよし...よく言えました」
「あ...あぁ...っ...ありがとうございます...」
「茜...こっちを見ろ」
「...?...んっ...」
唇が重ねられた。
ああ...やっぱり斉川君に唇を許さなくて良かった...
ただただ唇を重ねただけ。
それだけなのに、彼から愛情が流れ込んでくるような気がした。
「ん...いい子だ」
「うん...」
「じゃあ...続きは部屋に戻ってからだ」
「...はい...♡」
斉川君と交際を続ける、夕華から先生を奪いたくない、そんな思いはトロトロに蕩けさせられた身体の火照りで灰になってしまった。
私は...先生と夕華の所有物なんだ...♡
逆らう権利なんて最初から無かったんだ...♡