優柔不断は切り捨てろ:周りの美少女は全員他人のモノ 作:エルサイズ
―――――――――――圭介視点
「ふぁ...」
思わず欠伸が出てしまう程の時間。...最近は一人で登校することが多い。
まだ誰も乗っていない田舎の路線バス。いつもはもう少し遅い時間に登校するんだけど、今日は何となく早起きしてしまった。昨日は...ある意味身体を動かしたので疲れて早くに眠りに就いたせいだろう。
「一瀬さん...」
思い起こされるのは昨日のホテルの出来事。
目の前に広がる彼女の白い肌。小柄で細身な身体なのに豊かな乳房。
その全てに酷く興奮したものだ。
まあ...お金が無かったから半分くらい一瀬さんに出してもらったのは申し訳なかったと思う。...今度何かお返ししないと。
「アルバイトしようかなぁ...」
この辺りは高校生も募集しているアルバイトが案外多かったりする。...まあ、若者が少ない町だから仕方ないのかもしれない。
しかし...今通っている塾の他に時間が取れるだろうか。でも、このままお金が無いままのダメ男のままでは居たくない。お兄さんみたいに頼れる男になりたい。
...悔しいけど、一瀬さんのお父さんに襲われたときのお兄さんはカッコよかった。あんなに頼もしい男になりたいものだ。
「あ...」
少し遠くに見えてきたコンビニエンスストア。
学校の最寄のコンビニなので、ここで昼食や朝食を買っていく生徒も居なくはない。
まあ、学食も購買もあるのでどちらかというと先生がよく利用していると聞いたことがある。
「...あれ?」
駐車場に停まっている大きな白いセダン。あれは確か...
「あっ」
やっぱりそうだ。お兄さんと...あれ?夕華も居る。そして....一瀬さんも。
「そういえば...夕華の部屋に今は住んでいるんだっけ...」
でも、どうしてお兄さんの車で来ているのだろう。こんな朝早くに。
...気になった僕は、降車ボタンを無意識のうちに押していた。
「えっ...?」
次の瞬間、先生が一瀬さんを強く抱擁していた...!
どうして...?
あの2人は何か関係があるのだろうか...?
「あ...」
次は夕華とも強く抱擁していた。
...これは...あれだ。
...妹が兄に甘える類と一緒だ。.....そうに違いない。
僕は自分にそう言い聞かせながらICカードで降車の手続きを済ませた。
そして、僕がバスを降りると同時にお兄さんの車は走り去って行った。
「...おはよう、2人とも」
「...っ..!お、おはよう。斉川君」
「圭介おはよー」
いつも通りの夕華と、何故か少し動揺している一瀬さん。
...聞きたい。先程の抱擁の理由を聞きたい。
でも...そんなに根掘り葉掘り探りを入れるというのもどうだろう?女々しい男だと思われないだろうか?
「圭介もコンビニ?」
「あ...ううん。今日は...学食のつもりだった」
「あ、そうなんだ。じゃあ今日は一緒に食べられないね」
別に学食にお弁当や食べ物の持ち込みは禁止されていなかったはずだけど...特に気には留めなかった。
「あ、あの...一瀬さん」
「...何かしら」
少し機嫌が悪そうだ。...何かあったのだろうか?
「昨日は...ごめんね。僕が無計画で...」
「....そう」
短い返答だった。
「...早く学校行こっか」
その後...特に会話が弾むことも無く学校への道のりを歩いたのだった....
.......
「...」
「...」
「...」
生徒どころか人通りも疎らな田舎の通学路。誰も口を開かない、何とも気まずい空間。
「ひゃっ...!」
その静寂はかわいらしい悲鳴に破られた。
「茜?どうしたの?」
唐突に立ち止まってしまった一瀬さん。何故か顔を真っ赤にして固まってしまった。そんな彼女を見て心配そうに駆け寄る夕華だった。
「一瀬さん?」
もちろん僕も心配になった。
しかし...何故か彼女は僕には全く反応せずに夕華にだけ耳打ちをした。
「(ね、ねえ...先生に
「(あー...垂れてきちゃった?)」
「(う...うん...今までナマでされたのなんて先生が初めてだし...そのすぐあとに学校に行くなんて...こんな経験初めてよ...)」
「(...お兄ちゃんがここに居なくて良かったね...お兄ちゃんって、自分が
「(...怖いような嬉しいような...)」
「(茜って...やっぱりドMだね。それにお兄ちゃんの事好きすぎでしょ)」
「(う...うぅ...まあ...そうだけど)」
あいにく...会話はほとんど聞こえない。というか、全く聞こえない。
.....聞こえてはいけない気がする。
「大丈夫?」
「え?あー...うん大丈夫。圭介が気にするようなことじゃないよ」
「...っ」
なんとなく気まずそうな夕華と、まだまだ顔が赤い一瀬さん。
「そうなんだ...?」
「うん。あと、私たちコンビニでちょっと買い忘れたモノがあるから圭介は先に学校行ってて」
「え?それなら一緒に行くよ」
「...はぁ」
「ごめん。ちょっと男の子には見られたくないから先に行ってくれる?」
少し冷たい態度の2人。...何となく察することが出来た。いわゆる生理用品の類だろう。
「...わかった。じゃあ先に行くね」
「ええ。さようなら」
「...?」
一瀬さんの別れの言葉。特に深い意味はないのだろうけど、言い回しが少し引っかかった。再び学校で会うのにさようならとは...なんだか違和感がある。
―――――――――――――
4限目の授業も終わり、昼食の時間がやってきた。
生徒たちは各々の食事の為に移動を始める。
...今日は夕華も一瀬さんも居ない。気づけば姿を消していた。
「おい、圭介。今日は学食だろ?一緒に行こうぜ」
悪友...
「そうだね。じゃあ行こうか」
「おう」
男同士、肩を並べて廊下を歩いていると、なんとも視線に違和感を感じる。注目されているのではなく、寧ろいつも感じている視線が全く感じられない。
...ああそうか。今日は夕華が居ないからだ。
学校では夕華と一緒に過ごす機会が多かった。そして、夕華が居なければ一瀬さんと一緒だった。2人とも目立つ容姿なので彼女たちに視線が注がれていたのだろう。
「なんだか男2人ってのも久しぶりだな」
「そうだね。いつも夕華たちとお弁当だからね」
「たまには俺にも構ってくれよ」
けらけらと笑いながら冗談を交わしあう。...こういう距離感の友人は良い。気を使わなくても良いので楽だ。
そして、体育館の下にある食堂に辿り着いた。ちなみに、すぐ隣には購買もある。
「この学校って不思議だよな」
「そう?」
何が不思議なのだろうか?
「いや、学食って人で溢れてるイメージなんだけど...この学校の学食ってそんなに混んでないだろ?」
「まあ、確かにそうだね。購買もあるしコンビニもそんなに遠くないし、そもそもお弁当持参の人が多いからじゃない?」
「そんなもんかね。ところで、購買やコンビニ飯の連中ってどこで食べてるんだろうな?」
それに関してはコレという答えは無い。今日みたいに天気の良い日は校庭のベンチや屋上だったりするし、廊下の一部の歓談スペースや教室で食べる人も多い。
「まあ、好きなところで食べてるんじゃない?」
「そうだろうな。あっ、そういえば思い出したけど...橋本さんと一瀬さんって、今日はどこで食べるのか聞いてるか?」
「いや...知らないけど...」
たまにではあるが...夕華の事を僕に聞いてくる人はいる。
このように昼休みの彼女の所在地や、放課後の予定など。大抵は彼女とお近づきになりたいと目論む男子生徒や、告白を計画している生徒だったりする。
...しかし、翔太はそのような素振りを見せなかったはずだけど...
「そうか...」
「誰かに聞かれたの?」
「いや...そういうわけじゃないんだけどさ。あの二人...コンビニのビニール袋もって職員室に行ってたからさ。珍しいところで昼ごはん食べる奴もいるんだなって思ったんだよ」
「えっ...」
脳裏をよぎるのは今朝のコンビニでの抱擁。深い意味は無いと思いたいのだが、どうしても気になってしまう。そして今の話だ。2人して職員室に行くなんて...
「圭介?」
「あ...ううん何でもないよ。先生に用事でもあったんじゃない?」
「あー...そういえば橋本さんも一瀬さんもうちの副担と仲良かったな」
夕華がお兄さんに懐いているのは周知の事実だったけど、最近は一瀬さんもそういう話が聞こえ始めた。
...仮にも恋人なので少し面白くない話ではある。
そう話していると、いつの間にやら料理の受け取りの順番が来ていた。...今日はチキンカツ定食だ。
「こうすれば旨いんだよな」
そう言って翔太は一味唐辛子をふりかけて、その上からウスターソースを垂らした。
「それ美味しいの?」
「ああ。辛いの平気なら結構いけるぞ」
試しに同じようにアレンジしてみた。...少し楽しみだ。
そしてお盆を持って適当な席に向かい合って腰掛けた。
「いただきます」
「いただきます」
まずは一切れ...
「ん...コレ結構おいしいね」
「だろ?」
ウスターソースの酸味と甘み、そして一味唐辛子の刺激。それらがチキンカツの旨味と絶妙にマッチしてご飯が進む。
「ほかにも結構アレンジ飯があるんだぜ。だからたまには俺に付き合えよ」
「わかったよ」
案外寂しがりの翔太さんだ。...ちなみに彼は同性に興奮するタイプではない。他校ではあるものの、ちゃんと彼には恋人がいる。それに、結構可愛らしい女の子だったのを覚えている。
「そういえばお前...最近一瀬さんとも仲良いよな」
にやにやしながら語りかけてくる翔太。
...僕は彼女との関係を自慢したくてしょうがなかった。
「...まあね」
「お?何か含みのある言い方だな...お前、橋本さんとも仲良いのにズルいぞ」
「ズルいって...夕華は幼馴染だよ。それに翔太は彼女いるでしょ?しかも他校の年下の子」
名前は...何だったかな。
「まあな。俺には美咲が居るからその気は無いけど...他の連中からは嫉妬されてるぞ、お前」
美咲...ああそうだ。
しかし...嫉妬か...確かにそれはあるかもしれない。
「実は...一瀬さんと僕、付き合ってるんだよね」
「えっ!?お前マジかそれ!」
「しっ!...声が大きいよ」
周囲の視線が一瞬だけ集まるものの、すぐに食堂の喧騒に注目は溶けていった。
「...まじかよ...お前凄いな。とりあえず...おめでとう。これは餞別だ」
そう言って彼はチキンカツを一切れ僕のお皿に入れた。
「ありがとう...とりあえず、ここではあまり話せないから後で話すよ」
「おう」
僕たちは、心なしか速いペースで食事を終え、他人の視線が無い場所へと移動した。
――――――――――――――――
「とりあえず屋上で良いか?」
「まあ、屋上なら人はそこまで多くないだろうからね」
最近は屋上が封鎖されている高校が多いらいしけど、うちの高校は落下防止対策を十二分に取られた上で開放されている。...とはいえあまり学校側はその情報を表に出さないので下級生は先輩に聞かない限り開放されている情報を得る手段が無い。
故に、昼休みに屋上を利用する生徒は限られているのだ。
翔太は屋上の扉に手を掛け、重い鉄扉を押した。
「あれ?」
しかし、扉は中途半端に開いてそれ以上開かなくなってしまった。何か引っかかっているようだ。
「何かあるな...」
と、その時、バタバタと足音が聞こえてきた。
「ご、ごめんごめん...私の荷物が...ってあれ?」
背の高い美少女。ヘーゼルブラウンのロングヘアが美しいその女子生徒は...夕華だった。
「あ、夕華。ここでお昼ご飯食べてたんだ?」
「う、うん!二人ともどうしたの?」
何故か少し顔が赤く、制服も乱れている彼女。
...お昼寝でもしていたのだろうか?
「ちょっと男同士の内緒話だよ。橋本さんは一人?」
「あー...ううん違うよ」
「そうなんだ...一瀬さんも一緒?」
「う、うん!でも、茜がちょっと体調悪いから休んでたの。だからその...」
「どうしたの?」
夕華はどうして欲しいんだろうか?このままでは入れないんだけど...
「あーそうだったのか。悪いな。こっちは別の場所にするよ。一瀬さんにもよろしく言っておいてくれ。行くぞ、圭介」
「え?あ...う、うん」
「...ありがとう、小井川くん」
夕華は翔太にだけ礼を言い、再び扉を封じた。
...僕もよくわからないまま翔太に促されて屋上を後にしたのだった。