優柔不断は切り捨てろ:周りの美少女は全員他人のモノ 作:エルサイズ
―――――――――――主人公視点
夕暮れ時の帰り道。スーパーで茜を拾って帰路に就いている。
3500ccV6ハイブリッドの滑らかな駆動音がかすかに響く車内にて彼女と2人きりの穏やかな時間だ。
「それにしてもアルバイトか...」
「...不安?」
「まあな...茜はしっかりしてるから仕事に関しては何も心配してないけど、人間関係がちょっと不安だな」
「大丈夫よ。別に人見知りというわけじゃないもの」
そういう意味での人間関係は心配していない。今まで酷い環境で苦労してきた彼女はあまり物怖じしない。だから初対面の人ばかりのアルバイト先でもうまくやっていけるだろう。
...心配なのは男女関係だ。
茜は絶世の美女と言っても過言ではない容姿なのだ。それに...あの破壊力のあるスタイルに、無自覚のうちに振りまいている色気。そんな彼女に狂ってしまう男が現れても不思議では無い。
「まあ、その点については心配してないさ。問題なのは...君に言い寄る男が何人も現れそうだからそれが心配なんだよ」
「私なんかに言い寄る男が居るの?美咲さん...えっと、小井川くんの彼女が居るのだけど、その子の方がよっぽど可愛いわよ」
...茜は自己評価が低いのだ。それが問題にならないか今から心配だ。
夕華の場合は自分の容姿に関して鼻にかけているわけでは無いが、自分がかなり目立つ容姿であることは自覚している。茜は今までの環境のせいでその認識が甘いのだ。....心配だ。
「茜...君は可愛いんだぞ?少なくとも、今すぐアイドルなりモデルなりすれば一躍有名人になれるくらいだと俺は思ってる」
「そ、そんなことないわよ...」
ちらりと横目で彼女を見ると、真っ赤になってうつむいていた。
...そういう愛らしい面も魅力的なところだぞ。
「まあ、とにかく何かあったときはすぐに相談するんだ。まずはお店の責任者に。そして必ず俺や夕華に相談する事」
「...ありがとう。ちゃんと相談するわ」
「良い子だ」
そう言って茜の頭を撫でた。
「...ふふっ」
嬉しそうな声を上げる彼女が愛らしかった。
「ところで...その美咲さんって子はそんなに可愛いのか?」
「...気になるの?」
ほんの少し...ティースプーン半分程度の不満が籠った茜の返事。
「あ...まあな。茜がそこまで可愛いっていうならちょっと気にはなるよ」
「ふーん...」
彼女の疑惑の感情は払拭されていないようだ。
「...大丈夫だ。浮気なんてしないから」
「...既に夕華と恋人なのに私の心も身体もめちゃくちゃにしたじゃない」
...それを言われると否定できないな。
「悪い...」
「ふふっ...冗談よ。その...私も愛してくれるなら良いわよ」
「勿論。茜も夕華も愛してるよ。2人とも...誰よりも、何よりも大切だ」
「...ありがとう、先生」
ふわりと微笑んだ茜。その穏やかな表情に心が安らいだ。
「それで...美咲さんだったわね。彼女、同じ中学校だったのよ」
「ということは夕華にとっても後輩になるのか」
「ええ。昔からすっごく有名だったのよ。可愛いって。でも、当の本人は小井川くんに夢中だったみたい」
「まあ、小井川はイケメンだし良い奴だからな」
サッカー部のエースで気の良い奴だった覚えがある。成績はいまいちだが、真面目で教員からの信頼も厚い。
「そうね。彼女も素直で良い子だったわよ。ふふっ...お似合いのカップルよね」
そう言って微笑む茜。その表情は穏やかで優しかった。
「今度行ってみたら是非とも見て見たいな。茜が働いている姿も見たいし」
「...来るの?」
「そのつもりだぞ?」
「...ちょっと恥ずかしいわね」
普段は見せない面を見られるのが恥ずかしいようだ。
「ちなみにいつから出勤なんだ?」
「あ、まだ正式に決まったわけじゃないのよ。土曜日に簡単な面接と研修があって、その後にシフトに入るみたい」
「そうなのか?じゃあ履歴書とか書かないとな」
「ええ。履歴書ってどこで買えるの?本屋さん?」
まあ、文房具を扱っているお店であればどこでも買えるだろうが...
「ネットでダウンロードした書式で良いんじゃないか?」
「あ...そうね。...パソコンって学校でしか触らないから思いつかなかったわ」
そういえばそうか。今までの環境だと触れる機会は少なかっただろうな。
と、いつの間にかマンションに到着していた。
「到着、と」
「ありがとう、送ってくれて」
「いえいえ。じゃあ行こうか」
車を降りて後部座席からカバンと買い物袋を手に取った。
「あ...持つわよ」
「気にするなって」
通学カバンを片手に持った茜。もう片方の手が空いているので手持ち無沙汰のようだ。
「でも...」
「じゃあ...その空いた手には別の仕事をしてもらおうかな」
そう言って俺は茜の柔らかい手を取った。そして指を絡ませてしっかりと握った。
「これが君の役目だ」
「あ...ふふっ...♡」
嬉しそうに微笑む茜。...それで良いんだ。
そして、ポストの中身を確認した後に俺たちは手を繋いだまま玄関の前までやって来た。
「茜、鍵を開けてくれないか?」
「ええ」
カバンから鍵を取り出して開錠する茜。玄関を開くと部屋の中に籠った空気があふれ出てきた。
「...ん?」
「あ...」
廊下に入った途端感じる臭い。....それは、濃厚な男女の性臭だった。
「あー...」
「...結構この臭いって残るわよね」
昨夜、何度も何度も茜を犯した結果だろう。その事を思い出して再び股間が硬くなりそうになった。とはいえ玄関をいつまでも開けているわけにはいかない。...こんな臭いが籠っているのだから。
玄関を閉じて、茜がカギをかけた。そしてそのままリビングに入って荷物を置いた。
「とりあえず換気するか」
「そうね...あ、でもその前に...」
茜は静かに俺の胸に縋りついて瞳を閉じた。そしてゆっくりと顔を近づけて...
「んっ...」
「ちゅ...」
その柔らかい唇が重ね合わされた。
彼女は小さな水音を立てて離れた。
「お帰りなさい...先生」
「ああ、ただいま。それと...お帰り、茜」
「ふふっ...ただいま、先生...♡」
ふわりと微笑む茜。この短い言葉でどれだけの幸せを伝えることが出来るのだろうか。
「さて、もうすぐ夕華も帰って来る。夕飯の準備をしようか」
「そうね。あ、今日は私が作るわよ」
「お?茜の手料理か...楽しみだな」
「そんなに期待する程じゃないわよ...」
少し頬を染めたままキッチンに向かう茜。
しかし、何かを探すようにきょろきょろしている。
「どうした?」
「あ...その、なにかエプロンの代わりになりそうなものが欲しいのだけど...なにかある?」
「代わりと言わずにエプロンでいいだろ。ちょっと待ってろ。確か、夕華が使ってないエプロンがあったと思う」
リビングに茜を残して寝室に向かった。
「っ...」
寝室の扉を開くと、より濃厚な性臭が籠っていた。
今朝は少し寝坊したのでロクに片づけないま出発したのでベッドも酷い有様だ。
片付けの事は一旦忘れて、クローゼットの中を物色することにしよう。
「えっと...確か此処に...あったあった」
赤い生地にハートマークが散りばめられたファンシーなエプロン。勢いで買ったけどあまりにも可愛すぎるデザインだったので、夕華が似合わないからと言って使わなかったのだ。...夕華でも似合うと思うんだけどな。
寝室を出てリビングに戻ると、何故か茜は俺のジャケットを抱きしめていた。
「あっ...こ、これは...ちが...っ...」
彼女は何故か真っ赤になって動揺している。
「うん?」
「な、なんでもない!なんでもないのよ...」
ふと、茜の頬に糸くずが付いていることに気が付いた。
「茜、少しじっとしてろよ」
「えっ...?」
その糸くずを見つめて茜に一歩近づくと、ビクンと身体を震わせて彼女は硬直した。
「せ、先生...?」
「すぐ終わるよ」
「っ...!」
何故か目を閉じる茜。...少し怖がらせてしまったか?
彼女の柔らかい頬にそっと手を添えて糸くずを取った。
「終わったぞ。ごめんな、怖かったか?」
「........え?」
何故かキョトンとしている茜。そしてみるみるうちにその可愛い顔は紅潮していった。
「それにしてもなんでこんなところに糸くずが...?」
「っ...!」
「あ...」
思い起こされるのは俺のジャケットを抱きしめた茜。
「ひょっとして...?」
「そ、そうよ...その...先生の匂いが...したから...」
嗅いでいたのか...
....ここ最近、茜の可愛らしさが加速しているな。
そして、もう一つの疑問の答えにも見当がついた。
「ひょっとして...キスされると思ったか?」
「うぅ...」
真っ赤になる茜。...ダメだ我慢できない。
「茜...」
「...?ひゃっ...んっ...ちゅ...」
俺は我慢できずに小柄な身体を抱き寄せて唇を奪った。
「ん...」
「んぅ...ふふふっ....♡」
腕の中で歓喜の声を漏らす茜。すりすりと胸板に額を擦り付ける様子は、小動物的な愛らしさがあった。
「よしよし...」
思わず抱きしめて後頭部を撫でてしまった。
「あ...ふふっ...♡」
これまた嬉しそうな様子の彼女。
その後、しばらくの間俺たちは抱き合っていた。
「茜...?」
「なあに?」
甘ったるい声の返事が返って来た。
「そろそろ夕飯の準備をしないか?」
「...もう少し」
ぎゅっと胸板に顔を
....しかし、いつまでもそうしているわけにはいかない。このままでは腹を減らして帰って来る男子高校生(女子)の夕華の不満が色々と爆発してしまう。
「茜、続きはまた後にしようか」
「...そう...ね...」
まるで今生の別れの如く切ない表情で離れる茜。
その表情に再び抱き寄せてしまいそうになる衝動を何とか防ぎ切った。
「じゃあ...夕飯の準備するわね」
「ああ。あ、そうだ。ほら、このエプロンで良いなら使ってくれ」
「ええ。ありが....とう」
そのあまりにも可愛らしいデザインに一瞬だけ固まる彼女。
早速身に着けるのものの、夕華のサイズで購入したので少し丈が長いようだ。とはいえ良く似合っている。
「えっと...その、このエプロン...可愛すぎない...?」
「そんな事ないぞ。似合ってるよ、すごく」
「そ、そう?...それならよかった」
少し照れている茜。緩んだ口元は笑顔が隠しきれていなかった。
「ふふっ...♡」
少し零れる笑い声。明るい表情のままキッチンに向かう彼女はどこまでも魅力的だった。
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トントントン...軽快なリズムを奏でながら料理をこなす茜。
俺も夕華もそれなりに料理はできるのだが、彼女ほどスムーズには出来ない。
自分では特技なんて無い、と言っていたのだが、その鮮やかな手つきは料理が特技といっても差し支えないだろう。
「なにか手伝おうか?」
とは言っても邪魔になるだけかもしれないが。
「そうね...じゃあ、パスタサラダを作るからパスタを茹でてもらえる?」
「ああ、任せろ」
大鍋を取り出して水を張る。そして火にかけて沸騰するまで待つ間にパスタを適量取り出した。
「あ、ちょっと柔めになるように少し長く茹でてもらえる?」
「そうか、サラダ用だったな」
「ええ。お願いね」
そう言って自分の作業に戻る茜。ポニーテール姿で料理する茜は、普段とはまた一味違って魅力的だった。
「...?ふふっ...なあに?」
視線に気づかれてしまったようだ。
「あ...いや、何でもないよ。ポニーテール似合ってるよ」
「ふふっ...ありがとう♪」
上機嫌でボウルの中身を混ぜる茜。
「ん?」
何を作っているのだろうか?...何やらボウルに卵やバターを混ぜ合わせていた。
「茜、それは何を作ってるんだ?」
「あ、これ?買って来た卵が余ってたし、冷蔵庫の中に中途半端に残ってたバターがあったからクッキーの生地を作ってるのよ」
なるほど...確かに開封して中途半端に残っていたバターの使い道を考えていたところだった。それに薄力粉も中途半端に残っていたはずだ。
「おお...!」
「ふふっ...お夕飯の後に間に合うように焼くから楽しみにしてなさい♪」
「ああ。楽しみにしてるよ」
その後もテキパキと夕食の準備を進めていく茜だった。