優柔不断は切り捨てろ:周りの美少女は全員他人のモノ 作:エルサイズ
――――――――――――――美咲視点
金曜日の夕暮れ時。珍しいことに今日までは穏やかな日常を過ごすことが出来た。
店長に身体を求められることも無かったし、継父に犯されることもなかった。...その代わり、翔太さんは部活が忙しかったから会えなかったけど。
「バイトも無いし~」
鼻歌交じりで居酒屋に向かう。
今日は夜のバイトメンバーで懇親会だ。
高校生組はもちろん仲良しだし、他の大学生組の人たちも女子ばかりなので関係は良好だ。
別々にご飯を食べに行ったり遊びに行くこともあるけれど、全員が一緒というのはかなり珍しい。
翔太さんも居るからなおの事楽しみだ。...それに、他の人も一緒なら店長も手出ししてこないだろう。
「ココかな?」
スーパーから少し離れた場所に位置している、わりと大きな居酒屋チェーン店。
「いらっしゃいませー!」
威勢のいい店員さんに迎えられた。
「あの、予約していたんですけど...」
「あ、団体のお客さまですね。お二階へどうぞ!」
奥の階段を案内されて、二階の個室部屋へと案内された。
「こちらです!」
「あ、はい。ありがとうございます」
案内された部屋に入るとそこには―――
「待ってたよ、花園さん」
―――店長だけが座っていた。
「て、店長...」
少し身構えてしまった。
こんな大衆の面前で手出しはしないとはおもうけど、気を張っていなかったので酷く動揺してしまった。
「ほら、そんなところに立っていたら邪魔になるよ?」
入口を塞いでいる私に対して...それは真っ当な指摘だった。
「...はい」
私は席に着いた。
...店長から一番遠い席に。
「...全く」
店長はため息を吐いて立ち上がった。
「っ...!」
身体が強張ってしまう。
(...まさか...今日は誰も来ないんじゃ....)
嫌な想像が脳裏をかすめる。
「時間が無いから手短に言うぞ」
いつの間にか店長はすぐ隣まで近づいていた。
「...っ...」
怖い...凄く怖い...
「そんなに怯えなくても、今は手を出さねえよ。...今はな」
含みのある言い方だった。
「...どういう意味ですか?」
そう尋ねると、店長はにやりと笑って...耳打ちしてきた。
「...宴会が終わったら...店の裏で待ってろ」
「...はい」
私は...この男に逆らえない。
「...良い子だ」
それだけを伝えると、店長は自席へと戻っていった。
「...っ...」
今日の宴会を...私は楽しめる気がしなかった。
その後、普通に他の人たちは集まり始めた。そして...懇親会は開かれた。
――――――――――――――――――――――
宴もたけなわではございますが、と店長が言い始めた頃。
良い感じにお酒が入ってご機嫌な様子の大学生組と翔太さん。
...ちなみに翔太さんは飲んでいない。場酔いというものだろう。
私たち学生は休みだけど、社員さんは仕事だからと言ってそろそろ切り上げることにした。
「本当にごめんなさい...この後、私帰らないといけなくて...」
「大丈夫だってば。俺も他の人と遊びに行くから気にしないで?」
翔太さんに嘘を吐いてしまった。
でも、誰と遊びにいくんだろ...こんな時間から高校生が出歩くとまずい気がするけど...
...まあ、私も人の事は言えないか。
「...それじゃあ、私はこれで」
茜先輩は短い挨拶を告げてくるりと向きを変えた。
先輩が向かう先には...大きな白いセダンが停まっている。
「あ...」
その様子を見ながら斉川先輩が小さく声を上げた。
「?」
斉川先輩の視線は茜先輩とお兄さんに向けられていた。何とも言えない表情を浮かべている...ひょっとして、茜先輩の事が好きだったのかな...面接も同じ日に受けてたし。
「へへへ...」
「!?」
しかし、次の瞬間には気色の悪い笑みを浮かべていた。
...気持ち悪いというより、普通に怖い。
「あ...私も行かなきゃ...」
まあ、それはどうでも良いことだけど、今はとにかくお店の裏に行かないと。
「...?」
そういえば...いつの間にか翔太さんが居ない。
それに...大学生組の人たちも人数が少ない気がする。
疑問は尽きなかったけど、時間が無いのでコソコソとお店の裏へと回った。
「...」
薄暗い裏路地で待っていると、スマートフォンに着信が入った。
「あ...」
空いては店長だった。
「...もしもし?」
『もしもし?今、一人か?』
辺りを見渡す。...当然、誰もいない。
「一人ですけど...」
『よし。それじゃあ...今から住所を送るから、そこに来い』
「...わかりました」
すぐに通知音が聞こえてきた。
『届いたか?』
メッセージアプリの通知だった。
耳からスマートフォンを話して画面を確認すると...ほど近い場所の賃貸マンションの住所が記載されていた。
「はい。...ここに行けば良いんですか?」
『ああ。そこの204号室に来い』
部屋番号を伝えると、一方的に電話を切られた。
ああ...今夜も犯されるんだ。
今日は遅くなることを連絡しているけど、さすがに朝までには帰らないとお母さん心配するだろうなぁ...
そんなことを考えながら歩く。
やがて住宅街へと景色が変わり、アパートが数棟立っている敷地に入っていた。
「えっと...4号棟だから...ココかな」
住所に示されていた棟に向かい、204号室のチャイムを鳴らした。
『空いてるぞ』
中から聞こえてきた店長の声。
「...お邪魔します」
一応、最低限のあいさつを述べた。
「来たな。とりあえず...シャワー浴びて来い」
部屋は...殺風景だった。
生活感は有るけれど、大きなモニターが複数並んでいるPCデスクと、部屋の割に大きなベッド以外は特に特徴が無い。
「...わかりました」
早々に満足してもらって帰してもらおう。
私は手荷物を玄関の近くに置いて部屋に上がった。
「...」
浴室に入り、鏡の前に立った。
「...酷い顔」
全てを諦めたような...暗い瞳。
覇気のない青白い顔。
こんな表情でも...若いからという理由で身体を求められるのだろうか。
「...」
翔太さんや茜先輩、お母さんや学校のみんなの事を思い出しながら...笑顔を作ってみた。
でも...長くは続かなかった。
やっぱり...気分が落ち込んでいると表情は作れない。
「はぁ...」
熱いシャワーで身体を洗い流しながらため息を吐いた。
覇気のない表情でも、どうせあの怪しげなローションを使われると...きっとはしたないメスに成り下がるだろう。
媚びるような嬌声を上げながら肉棒で貫かれることだろう。
だから...理性が飛ぶ前に、心の中でいろんな人に謝った。
ごめんなさい...翔太さん。あなたの彼女は...薄汚い女です。
ごめんなさい...茜先輩。心配してくれたのに...結局誤魔化しちゃいました。
ごめんなさい...お母さん。私は...あなたの為にいろいろな嘘を吐いています。
私は...バスタオルだけを巻いて浴室を出た。
「遅かったな」
既にベッドで待ち構えていた店長。
しかし、何故かパソコンの電源を入れている。
「何、してるんですか?」
「ああ、これか?」
画面には何かの映像が流れていた。
いや...違う。これはビデオ通話の画面だ。
しかし、相手の画面には誰も映っていない。家具の色遣いからして女性の部屋に見えるけど...
「まあ...後でわかるさ。今はとりあえず...こっちに来い」
店長に手を引かれ、私はベッドに押し倒された。
ああ...今日はもういきなりするんだ...まだ濡れてないけど...大丈夫かな...
バスタオルを乱暴に剥ぎ取られながら、そんな事をぼんやりと思ったのだった。
――――――――――――――翔太視点
「ほらほら翔太くん、こっちよ」
俺は今、大学生アルバイトのマイさんに手を引かれていた。
「ま、マイさん...他の人は...?」
大学生組でカラオケに行くからと誘われたけれど...どうにも様子がおかしい。
先程から誰とも合流しないまま、夜間営業しているカフェに連れてこられてしまった。
「ふふふっ...ごめんね、翔太くん。本当は...カラオケってのは嘘なの」
いたずらっぽい笑みを浮かべているマイさん。
...アルバイトの中でも指折りの美人である彼女の笑顔に思わず見惚れてしまった。
「う、嘘ってどういうことですか?」
「分かるでしょ?君とお話したかったのよ」
そう言って腕を組んできたマイさん。これくらいでは動揺しないけど、ノースリーブニット越しの豊満な乳房が惜しげも無く押し当てられているので...少し得した気分だった。
「...少しだけですよ?」
だから...許してしまった。
「やった♪ほら入ろ?」
マイさんに手を引かれ、お店の中へ連れていかれた。
そのまま店員さんに案内され、一番奥の席に向かい合って腰掛けた。
小さなテーブル越しに向き合っているので、ほんの少し手を伸ばせば触れられるほどの距離だ。
「私は...ソイラテにしようかな。翔太くんは?」
「それじゃあ...抹茶ラテでお願いします」
「よしよし。お姉さんが奢ってあげる♪」
そして、飲み物が来るまでの間...そして飲み物が届いてからも、何気ない会話で盛り上がった。
バイトの話、マイさんの大学の話、俺の部活の話...
....しかし、定番の色恋の話にはならなかった。
「あはは。やっぱり翔太くんって面白いね」
「そんな事ないっすよ」
楽しげに笑う彼女に...思わず見惚れてしまう。
....ダメだ。俺には美咲が居るのに。
「でも、私と翔太くんって相性良いと思うんだよね。あ、もちろん浮気するつもりじゃないよ」
「それは...」
何て答えれば一番丸く収まるのだろうか。
「ふふふっ...ごめんね、困らせて。でも、翔太くんって...実は年上好きでしょ?」
...否定出来なかった。
実は、今までの彼女は先輩ばかりだった。なので、年下の彼女は美咲が初めてだ。
「...っ...」
「あ、やっぱり♪でも...美咲ちゃんみたいに可愛くて良い子に告白されたら、誰でも断れないよね~」
何も言えなかった。先程から全て言い当てられている。
「でも...今は...!」
「ふふっ...わかってるってば。今は美咲ちゃんが一番なんでしょ?」
優しく微笑みながらマイさんはそう言った。
「...はい」
「良いね~青春だね~」
ひとしきり笑った後、不意にマイさんは寂し気な表情を浮かべた。
「私は..."君"みたいな甘い青春を送ってこなかったからなぁ...」
「マイさん...?」
急にトーンダウンした先輩が少し気になった。
「...ねえ、話は変わるんだけどさ、店長の噂...何か聞いてる?」
突然話題が変化したので、少しだけ困惑した。
「店長の噂...?」
一体なんだろう...?
「うん。あんまり良くない噂なんだけどね...」
マイさんは身を乗り出して、俺に耳を寄せるように手招きした。
「っ...」
近くで見ると...本当にマイさんは綺麗だ。
「店長って...バイトの女の子に無理やり関係を迫ってるんだって」
「え...?」
漫画ではよくある話だけど...まさか本当にする人が居るのか...
「結構信憑性の高い噂らしいんだ。こっそりと社員さんにも聞いたんだけど、店長って昔から女好きで手が早いんだって。しかも、店長ってイケメンだしセックスが上手だから女の子の方も満更でも無いから今まで問題になってないらしいの」
タチの悪い話だ。
でも...あの人の良い店長がそんなことをするとは思えない。
「まあ、あくまでも噂だけどね。今日も誰かを連れ込んでたりして」
そう言いながらケラケラと笑うマイさん。
「そう...ですね」
俺は気が気でなかった。
「...ちょっと、電話かけてきますね」
「え?あ、う、うん」
一度、お店の外に出て電話帳を開いた。
「美咲...」
電話をコールし続けるも、美咲は電話に出ない。
嫌な予感がドンドン膨れ上がっていく。
「それなら...」
もしもの時の為に、一応美咲のお母さんの電話番号を登録しておいて良かった。
「...」
4回、5回とコールする。
『はぁ...はぁ...も、もしもし...っ?』
8回目のコールが終わる頃、ようやく美咲のお母さんが電話に出た。
しかし、何故か息が荒い。
「もしもし、小井川ですけど...すみません、こんな遅くに。...あの、美咲、帰ってますか?」
『あ、小井川君...っ...こんばん...ふあっ...』
時折苦しそうな声が混ざっている。
『美咲なら...っ...今日はバイト先の宴会って聞いた...っ...けど...一緒じゃない...のっ...?』
「えっ...家には居ないんですか...?」
嫌な予感がどんどん膨れ上がる。
『ごめっ...なさ...私っ...今...家に居なく...あああっ...!!』
大きな声が聞こえて、電話は切れてしまった。
「...なんだか悪いタイミングで電話かけちゃったかな」
しかし...不安はどんどん蓄積していく。
何も解決しないまま、再びマイさんの目の前に腰掛けた。
「大丈夫...?」
心配そうな様子のマイさん。
「あんまり大丈夫じゃないかもです...」
「ひょっとして...店長の事?」
店長...確かにそうかもしれない。
俺は小さく頷いた。
「そっか...ということは、ひょっとして美咲ちゃんが...?」
「わかりません...でも、連絡が取れないんです」
「そっか...」
マイさんは何か考えている様子だ。
「ねえ、私...店長の家の住所知ってるんだけど...今から行ってみない?」