優柔不断は切り捨てろ:周りの美少女は全員他人のモノ 作:エルサイズ
――――――――――――――主人公視点
「と、とにかく...話せる範囲でいいから、君の話を聞かせてくれるか?」
若干冷たい視線を向けられていたが、めげずに美咲さんの瞳を見つめた。
「...わかりました。お兄さんなら信頼できそうなので...全て話します」
なんとか信用してもらえたらしい。
そして...彼女の口から全て説明された。
辛いだろうに、涙目になりながらも最後まで話してくれた。
「...ありがとう。話してくれて」
「っ...いえ...大丈夫、です...」
茜に抱き締められ、夕華が頭を優しく撫でている。
しかし、夕華も茜も表情はかなり険しい。
...恐らく、俺も同じような表情を浮かべていたことだろう。
「ねえ...お兄ちゃん」
「...ああ。小井川に関しては多少の同情の余地もあるが...他は許せないな」
少し...知り合いに手伝ってもらうか。
「あ、あの...翔太さんは悪くないんです...私が...悪いんです...」
それなりにひどい事をされているというのに...まだまだ小井川を庇うのか。
「確かに小井川に大きな過失は無い...ように見える。でも、だからといって君が悪いことにはならない」
辛そうな表情の美咲さんを真っすぐに見つめた。
「それに...彼氏なら、本当に恋人を信用しているのならば...目の前の事象をありのままに受け入れず、真実を見抜いて判断するべきだ。あの薬物を使われた女性を見たことがあるけれど...冷静になれば明らかに正気ではないことが分かるはずだ。その判断もせずに安易な快楽に逃げた小井川を...俺は信用できない」
「それは...」
言葉に詰まっている美咲さん。
まだまだ小井川の事が好きなのかもしれないが、彼女自身も思うところがあるのだろう。
「...小井川にも多少の罰は受けてもらう。あとは皆殺しだ」
「お、お兄ちゃん!さすがにそれは...」
「え?...あっ」
美咲さんの表情が強張っていた。
「...皆殺しは冗談だよ」
一部は、と脳内で付け加えた。
「そうですか...」
少し安心した様子だ。
「でも、酷い目には遭ってもらう」
「...はい」
迷いのない目つき。...本人が反対していないのならば...やり方は色々ある。
―――――――――――――――――
まず最初に情報を集めた。
「もしもし?」
『お疲れ様です、先輩』
低く、落ち着いた声色。電話の相手は..."知り合い"の一人だ。
「お疲れ様。ちょっと聞きたいんだけど...良いか?」
『ええ。...人探しですか?』
「そうだな。...この前聞いた話の件だ」
何故、俺が美咲さんに使用された薬について知っていたのか。それは...とある筋からの情報で、悪質な媚薬を使用した性犯罪を犯す輩と、その薬物を売りさばいている売人が居るという話を耳にしていたからである。
『...あの薬の売人の件ですね』
この電話口の相手の組織も、売人とレイプ魔を撲滅すべく動いている団体の一つだ。...噂では数多の公的な機関とも裏で取引をしているらしい。
「ああ。俺の身内の知り合い―――いや、俺の身内もヤられたんだ」
『...わかりました。情報はありますか?』
「買ったヤツの名前と住所は分かっている。名前は東阪健闘。ウチの近所のスーパーで店長をしている住所は―――」
こちらが知りうる情報を全て伝えた。
『...覚えました。買い手は一人だけですか?』
「ああ。不十分か?」
『いえ...それでも追えますけど、確実に追い込むにはもう少し情報が欲しいですね』
「そうか...」
買い手の情報か...
「...もう少し探ってみるよ」
『ご面倒をおかけします。売人をシメるのはこちらの仕事ですので。今後はこちらでも動きますので、逐一情報は共有しましょう』
「ああ。助かる」
『そのあたりで売っている連中に探りを入れて見ます』
「頼む」
そう言って電話を切った。
「....」
買い手の情報...美咲が話していた内容の中に一つ気になるモノがあった。
「花園...華織」
美咲の母親だ。
どうにも...継父との爛れた生活という現在の状況に違和感を感じる。
美咲と出会って日が浅いので判断は難しいが...今、彼女が置かれている状況は決して好ましくないにもかかわらず、本人の人間性はかなりマトモだ。
様々な要因があるとは思うのだが、一番はたくさんの愛情を受けて育ったことが大きいだろう。
本人も母親を慕っている。そんな母親が娘の事が頭からすっぽりと抜け落ちてセックスに溺れるだろうか?
それに...美咲本人もその男が与える快楽に溺れた、とのことだ。
男の方のセックスにおける多少の技術の差は有れど、無理やり犯されて頭がぶっ飛ぶようなイキかたをする女は....まあ滅多に居ない。
花園母娘がその少ない例外の可能性もあるが、どうにも腑に落ちない。
俺はスマートフォンで美咲に電話をかけた。
『もしもし?』
少し沈んだ声だった。
「俺だ。少し聞きたいんだけど...今、大丈夫か?」
茜と美咲には夕華が付いているので、今すぐに危険が迫るという事は無いだろう。
『はい...大丈夫ですよ』
「ありがとう。少し嫌な事を思い出させるかもしれないけど...大丈夫か?」
『...はい』
「いい子だ。早速だけど...君がお母さんの再婚相手に襲われたとき、何か違和感を感じなかったか?」
イヤな記憶を詳細に思い出させることになるので本当に申し訳ない気持ちになってくる。
『そう...ですね...』
特に感情に起伏の無い声色だ。
「肌への刺激や喉や鼻への刺激...臭いとか」
『臭い...そういえば、継父は寝室でアロマキャンドルを焚いていました。チャラついたオッサンのくせに珍しい趣味だと思ったのでよく覚えています』
...炙りで使用する場合もあるので有り得る。例の薬物は炙りと塗りが主な使い方だ。経口で直に飲まされると廃人になりかねない効き目らしいからな。
それに、女性に対して抜群の効果があるのだが、一応男性にも作用する。故に、レイプ犯の方はコンドームを使用するのだ。
これのやり方はもっと強力な...それこそ法で明確に禁止されている薬物で女を壊す際に用いられる方法だ。
コンドームに薬物をまぶして膣内に挿入する...経口摂取の何倍もの効果があり、一撃でシャブセックス中毒になるか、もしくは中毒症状で死に至るか...どちらにせよロクなことにならない。
今回の犯人たちが求めているのはそのような一撃の効果では無く、継続的に...まさか自分が薬物を使われているとは思わない女性を籠絡させることが目的なのだ。
「...ありがとう。それと、話していた通り君の家に入らせてもらうよ」
『はい。多分...この時間には誰も居ないと思いますので』
「了解。ありがとう」
電話を切り、スマートフォンをポケットに放り込んだ。
そして、古びたアパートの一室の玄関に可愛らしいキーホルダーが付けられた鍵を差し込んで...開錠。
古い丸形のドアノブだ。...俺は左利きだからこのタイプは好きじゃないんだよな。
...住戸侵入罪だな。まあその程度の話だが。
「...」
少し扉を開き、中の様子を伺う。
...人の気配はない。
目的は2つ。今回の事件の情報収集と、美咲の制服や通学カバンの類の回収。
...狭い部屋だ
玄関を開けてすぐに台所。その右手に浴室とトイレ。奥が2部屋に区切られており、片方が夫婦の部屋でもう片方が美咲の部屋...らしい。
「こっちだな」
狭い押し入れが有る和室が夫婦の部屋らしい。
部屋内に入り、まずは押し入れを開いた。
...違うな。
押し入れの中は空だった。...使わないのだろうか?
「次は...」
敷いたままの布団の周囲を探る。
...枕元に"それ"は置いてあった。
「...当たりか」
アロマキャンドルに偽装したモノと...手巻きのタバコだ。
見た目は普通のアロマキャンドルに見えないことも無い。タバコに関しては...見るからに怪しいが、手巻きのタバコは普通に売っているのでそれだけで規制の対象ではない。
しかし、部屋に僅かに残る甘い匂いと、キャンドルや手巻きのタバコを鼻に近づけると感じる刺激臭がその証拠だ。
継父が粉末を蝋に混ぜて自作したり、わざわざ手巻きタバコに混ぜるとは考えにくい。それに、出回っている薬物は塗り薬か炙り用の粉末が殆どであり、ローションや蠟に混ぜて販売するような器用な売人となると...数は限られてくる。
「さて...」
"知り合い"に連絡しておくか。"器用な売人"という検索条件が加われば"人探し"も捗ることだろう。
―――と、思っていたその時だった。
「!?」
ガチャガチャと玄関に鍵を差し込む音が聞こえた。
...帰って来たか。
俺は咄嗟に押し入れの中に身を隠した。
『はぁ...美咲...本当に何処に行ったのかしら...』
心配そうな様子の女性の声...恐らく母親の花園香織だろう。
『ったく...ガキじゃねえんだから大丈夫だろ』
乱暴な口調の男だ。...コイツが継父か。
『...あなたは心配じゃないの?血は繋がってないけれど...あなたの娘なのよ?』
明らかに怒気を孕んだ声。
『チッ...めんどくせぇな』
舌打ちと悪態。
...俺にも血が繋がっていない娘みたいな存在が2人いるが、同じような状況になれば血眼になって探し回る自信がある。
『何よその言い方...大体あなたが何回もスるから朝帰りになったのよ!?お金無いのにホテルの延長料金払う羽目になったし...』
『何言ってんだよお前...お前がバカみたいに腰振ってたんだろ?』
...小バカにしたような言い方が非常に癪に障る。
『それは...っ...』
言葉に詰まる華織。...恐らく、ホテルでも使用したのだろう。さすがにキャンドルを持参したとは考えにくいのでタバコだろう。
『全く...年甲斐も無くはしゃぎやがって。まあ、俺も気持ちよかったけどよ』
下品に笑う継父。
お母さんがこんな奴の何処に惚れたのか理解できないと美咲は語っていたが...それは美咲も体感したセックスが原因だろう。
美咲に詳しい話を聞く限り、華織の両親...つまり美咲の祖父母が亡くなった時期と、継父が華織に近づいた時期が近い。祖父母の死因は病気と老衰と聞いているので無関係だろうが、継父が前々から美人な華織を狙っていた可能性は高い。
『っ...』
さて...どうしたものか。
咄嗟にスマートフォンの電源は切ってしまったので助けを呼べない。
このまま夜まで待ってこっそりと抜け出すか...?
...仕方ない。その作戦で行くか。
『まあ...俺も悪かったよ。アロマ焚くから落ち着こうぜ』
『...そうね』
『ほら、水でも飲めよ』
『ええ』
...そういえば、コイツは店長と違って自分も摂取するんだな。
男女で効き目が違うとはいえ、自分もトリップしてしまうと思うのだが...
しかし、美咲の話では確実に毎回コンドームを使用していたとのことだった。...まさか、他にも何か薬物を使っていたのだろうか?それとも、本当にただの避妊のつもりだったのだろうか?
「っ...」
甘い匂いが押し入れの中にも侵入してきた。
教師が不法侵入した挙句薬でトリップして逮捕...低俗な日本のメディアが飛びつきそうな事件だ。
『んっ...ふぁ...』
色っぽい吐息が聞こえて来た。
『おいおい。娘が行方不明だってのに発情してんのか?』
心底バカにした様子の継父。
確かに...効果が出るのが早すぎる気がする。
『んっ...本当に...どうしてよ...っ...』
泣きそうな声を漏らしている華織。
自分でも制御できていないのは自覚しているみたいだな。
『華織...こっちに来い』
『...はい...♡』
明らかに声色が変わった。
正気を失う程...強烈な効き目が出始めたらしい。