優柔不断は切り捨てろ:周りの美少女は全員他人のモノ 作:エルサイズ
――――――――――――――――――――主人公視点
「昨日の話...か」
ギシ...と、スプリングを軋ませて美咲の隣に腰掛けた。
「...はい」
昨日の話...さて、どう詳しく話したものか。
事の経緯だろうか?プレイの内容だろうか?
...さすがに前者だろう。俺なら自分の親の痴態を詳しく聞きたくない。
「...昨日はたまたま君のお母さんに会ったんだ。アイスを買いに行ったお店がたまたま華織さんが居る居酒屋さんの近くでな」
「確かに昨日は会社の飲み会でしたね、お母さん」
当然のことながら、華織さんが飲み会で帰りが遅くなることは全員知っていた。
「ああ。それで...それで、だな」
要約すると、ホテル街で盛り上がってそのまま駅前のマンションに連れ込んでセックスした、という風にまとめることが出来るのだが...さて、どう伝えたモノか。
「それで...どうしたんですか?」
「...順番に話すよ。まず、2人で一緒に帰っていたんだ。車で、2人きりで」
「はい」
真剣な眼差しでこちらを見ていた。
「それで..."そういうこと"をする場所の近くを通り、ちょっと...お互いに"そのこと"を意識したんだ」
「そういえばあのあたりはラブホ街でしたね。私も行ったことがあります」
「そうなのか?」
最近の学生は凄いな...
「はい。勿論私服でしたけど、翔太さんとも行きましたし、その...店長とも行きました」
「...そうか」
少し表情に陰りが出てしまった。
「わ、私の事は良いですから」
「あ、ああ。その...ホテルには行かなかったんだけど、"そういう気分"にはなったんだ」
出来るだけ直接的な表現は控えた。
「それで...一度家に帰って来て、荷物を置いて...その後は俺が駅前に持ってるマンションで朝まで過ごしたよ」
「...わかりました。それで?」
"それで"?"それで"ってなんだ...?
「まさか...内容を聞きたいのか?」
「はい」
そう来たか...
「...聞いても面白いモノじゃないと思うよ?」
「構いません」
確固たる意志のようだ。
「...わかった。まずはリビングでキスをして―――」
その後、プレイ内容を事細かに口頭で伝えた。
キスをして、お互いに愛撫をして、正常位や後背位。窓に押し付けて立ちバックに、上に乗った華織さんに激しく責め立てられた騎乗位。最後は華織さんが気絶するまで責め立てたことまで。
お互いが夢中になって愛し合っていたことを...これでもかというほど事細かに教えた。
「―――という具合だ。それで、朝起きた後は2人でシャワーを浴びて、浴槽の中でもう一回シたよ」
「わ、わかりました...っ」
真っ赤になっている美咲。
...嫌がるというより恥ずかしかったらしい。
「えっと...別に楽しくなかっただろ?」
「いえ...その...想像以上に濃厚な話で...ちょっと恥ずかしくなっちゃいました。でも...安心しました」
そう言って微笑む美咲。
「安心?」
「はい。その...お母さんって惚れっぽい所があって、ちょっとカッコ良かったり、セックスが上手だったりしたら好きになっちゃうんです」
「...みたいだね」
それで失敗し続けたと聞いた。
「でも...今回はちょっと違ったんです。いつもはちょっと気になるな~とか、ちょっとカッコイイな~くらいの気持ちになって、それを相手の男の人に知られて...ほら、娘の私が言うのも変ですけど、お母さんって...スタイルも良いし、綺麗で可愛いじゃないですか?だから...相手の人が身体目的で寄って来るんです」
「あー...」
なんとなく、その状況が想像できた。
押しに弱そうで、尚且つ美人でスタイル抜群。そんな女性に興味を持たれると...男なら食らいつくだろう。
そして...美咲の存在を知って切り捨てるか、もしくは...あわよくば美咲も...と、母娘を狙って近づく男も居た事だろう。
「でも...兄さんの事は違いました。いつもなら男の人の写真を見せられて"この人が気になって~"みたいな事を相談されるんですけど、今回は...ずっとお母さんの様子が変でした。私がこんな状態だから精一杯優しくしてくれるんですけど...気が付けばずっと兄さんを目で追ってるんです」
...確かに、華織さんから視線を感じる機会は多かった。それに、憎からず思われている事は何となく察していた。
「月並みな表現なんですけど、まるで...思春期の女の子が恋愛してるみたいな...完全に恋に落ちちゃってる女の子になっていたんです」
「そう...なのか」
すると、あの溢れんばかりの愛情の正体は...
「これは私の予想なんですけど...多分、これがお母さんの初恋なんじゃないかと思うんです」
「初恋?」
彼女はもう大人なのでそんな事は無いと思うけれど...
「はい。初恋、です。だから...お母さんは恋する乙女に戻っちゃうくらい好きな人と。それも兄さんみたいな素敵な人に恋をしたという事が分かったので...安心したんです」
そこまでこの母娘に信頼されているとは...なんとも嬉しい限りだ。
「今までの事をお母さんが酔ってるときに聞いたことが有るんですけど、そのときは私の父親...血が繋がってる実の父親の事について話してくれました」
高校生の頃に華織さんを孕ませた男の事か。
「どんなことを聞いたんだ?」
「その男の人の事や...妊娠するまでの経緯や、居なくなったことまで、です。その人は...小学校からの付き合いの...所謂幼馴染だそうです。お母さんの方は特に好きでも無かったらしいんですけど、その男の人の方がお母さんに夢中だったみたいです」
それなのに...男の方から姿を消したのだろうか。何と無責任な。
「お母さんはその年まで恋愛経験が無かったらしくて、何となく...周りのみんなが経験してるからという軽い気持ちで付き合い始めたらしいです」
まあ、よくある事だろう。
「その男の人も初めての恋愛で...お互いによく分からないまま恋愛して...無計画に妊娠したらしいです」
「...」
残念ながら、それもよくある話だ。
「妊娠が発覚した時は...もう私に人権が認められる頃で、お互いに同意の無い行為でも無かったから堕ろせなかったみたいです」
「その時期ならそうだろうな」
年齢的にも、華織さんの体格や体力的にも出産そのものは順調だろう。しかし―――
「当然、私のおじいちゃんとおばあちゃんは激怒したそうです。お母さんにも、相手の人にも」
当然だろう。しかし、自分の娘にもきちんと叱る辺りは尊敬できる。
「相手方は終始弱腰だったらしいんですけど、なんだか違和感が有ったそうです。なんだか、息子さん...私の実の父親の事を庇っているような気配があったとか」
...そちらは看過できない。
「一応、お母さんは16歳を過ぎてましたし、相手ももうすぐ18歳になる頃でしたので、両家共に結婚させて両家で子育てをすることで同意していました」
それで済んでいれば...美咲の不幸は無かったかもしれない。
「その後、相手の男は...居なくなったんだよな?」
「はい。その後は前にお話した通りです。おじいちゃんとおばあちゃんに助けられながら育てられて、祖父母がどちらも亡くなった後は...」
「...そうか」
荒れた20代を過ごし、あの継父と出会ったのか。
「お母さんって...あんな爛れた関係ばかりを続けていたので、多分...本当の意味で恋愛を経験してないと思うんです」
「それで、初恋...かもしれないってことか?」
「はい。...まあ、その辺りは本人に聞かないと分かりませんけど」
それもそうか。
...しかし、華織さんがいつもより可愛らしく見えたのは、そのような理由が有るからかもしれないな。
恋する乙女は美しい。これは先人たちが証明してきた一つの事実だ。
「だから...お母さんの事、大切にしてあげて下さいね...?」
「もちろんだ。...でも、それは君も例外じゃないんだよ?」
華織さんが愛する一人娘。そんな彼女を守るのは当然のことだろう。
「え?ええっ!?そ、そんな...わ、私もですか!?」
頬を赤く染めて目を見開く美咲。
そこまで驚く事だろうか...?
「勿論。俺は君の事も大切なんだ。だから、君も華織さんと同じように幸せにしたい」
美咲の少し冷たい手を取り、真っすぐに瞳を見つめながらそう伝えた。
「えっと...その...あの...っ...た、確かに...兄さんの事は...そのっ...わ、私も...き、気になってますけど...でも...そんな...っ...!」
真っ赤になってしどろもどろになっている美咲。
...どうしたというのだろうか?
「美咲?」
手を握ったまま赤い顔を覗き込んだ。
「ひゃぁっ!?」
驚いて距離を取ろうとした美咲。
しかし、俺が手を握っていたのでバランスを崩してしまった。
「わっ!?」
そして、不安定な体勢と柔らかいマットレスという条件が重なり、幸か不幸か俺は美咲に覆いかぶさるように倒れ込んでしまった。
「ひゃっ!?」
可愛らしい悲鳴を上げる美咲。そして...ぎゅっと瞑っていた瞳をゆっくりと開いた。
「...ぁ...」
小さく声を漏らす美咲。
偶然にも...本当に偶然にも押し倒してしまった。
右手は美咲の左手を組み敷いており、左手は美咲の右手のすぐ脇についている。
「っ...!」
吐息がかかるほどの距離。
近くで見れば見るほど、美咲は華織さんにそっくりだ。優しい目元、白い肌、鼻筋の通った綺麗な顔立ち。
違うのは少し幼さが残るその表情だろうか?
「兄、さん...」
美咲は俺を押しのけるでもなく、静かにこちらを見つめていた。
「美咲...」
離れられない。
美しい瞳が俺を捉えてしまい逃げられない。
「...♡」
美咲は左手を滑らせて...ゆっくりと俺の右手に指を絡めた。
「...っ...!」
柔らかく、少し冷たい感触。
段々と...理性のタガが外れて行く。
「兄さん...お母さんばっかり...ズルい...です」
潤んだ瞳に甘い吐息。そして、少し膨らんだ頬の幼い表情。
「美咲...俺は...」
このまま...俺は―――
「先生?まだ終わらないの?」
茜の声がドアの向こうから聞こえて来た。
「っ...!!」
「ぁ...」
慌てて美咲から離れた。...その際、美咲は本当に切ない表情で俺の手を取ろうとしていた。
「先生?大丈夫?」
不思議そうな表情で茜がドアの隙間から顔を出している。
「あ、ああ。ちょっと世間話を、な...」
「...」
打って変わって、しどろもどろになっているのは俺の方だった。
美咲も一応は上体は起こしているが、その表情はぼんやりとしていた。
「そう...?」
なんとも腑に落ちない様子の茜だったが、特に言及はせずにリビングへと戻って行った。
「...美咲、とりあえず戻ろうか」
「ぁ...はい...」
まだ夢見心地のようだ。...このまま休ませた方が良いだろうか?
「よし。それじゃあ...ん?」
ベッドから立ち上がり、寝室のドアを開けようとした...その時だった。
後から手を引かれたかと思いきや、次の瞬間には―――
「...んぅ...♡」
「んっ...!?」
目の前に美咲の可愛らしい顔が迫り、柔らかい感触で唇が支配されていた。
「ちゅ...えへへ...♡」
可愛らしく微笑む美咲だった。
「み、美咲...」
「...やっぱり、お母さんばっかりズルいです...♡」
...この魔性の色気は...やはり華織さん譲りなのだろう。