優柔不断は切り捨てろ:周りの美少女は全員他人のモノ 作:エルサイズ
――――――――――――――――――――主人公視点
美咲とキスをしたあの日から数日、その間は実に穏やかな日常が続いていた。
「行ってきます、先生」
「ああ。気を付けてな」
玄関先でアルバイトに行く茜を見送る。
今日は日曜日。夕華は部活で華織さんは仕事だ。
華織さんの職場はシフト制で、完全週休二日制ではあるのだが、交代で日曜日が出勤の日が有る。茜は普通に働くことが楽しいらしく、最近は昼間のシフトに入る機会も増えたらしい。
茜は礼儀正しく真面目で、頭も良くてあの可愛らしい容姿なので、昼のパートのおばさまからも気に入られて可愛がられているらしい。
それは美咲も同じだったとのことだが、現状では学校に通学するだけで精一杯の状況なので、復帰に関してはもう少し落ち着いてからという事で店舗側と調整している。
「さて...」
簡単に家事を済ませるか。
まずは洗濯から、と思い脱衣所に入ると―――
「ひゃっ!?」
「ん?」
洗濯籠を抱えた美咲と鉢合わせした。
丁度、彼女は脱衣所を出ようとしていたらしい。
「ご、ごめんなさい」
「あ、いや...俺も注意不足だった。ごめんな」
洗濯籠の中には洗濯を終えたであろう衣類が入っている。
「俺も干すよ」
「えっと...その...は、はい。ありがとうございます」
何処か様子がおかしい美咲。ここ数日...キスをした日からずっとこの調子だ。
嫌われいるワケではないと思うが...なんともやり辛い。
「...」
チラリと彼女の方を見た。
ゆったりとしたミントグリーンのワンピース。裾からスラリと伸びる細い脚。緩めの胸元は、かがんだ際に綺麗なお椀型の乳房がチラリと見えている。
胡桃色の髪は少し乱れており、寝起きでそのままというワケではないだろが...なんとも気楽な休日スタイルといった具合で可愛らしい。
「よいしょ...っと」
最後の洗濯物を干し終えた美咲。
すると、彼女はくるりとこちらに振り返って微笑んだ。
「終わった?」
「はい♪」
ある程度距離が有れば普通の反応なのだが―――
「籠、俺が持つよ」
「ぁ...は、はいっ...!」
手が触れ合うような距離に近づくと、このようにぎこちない反応を見せる。
「...」
さて...どうしたものか。
実のところ、俺も少し迷っている。
華織さんと関係を持った今、彼女の愛娘である美咲を守るというのは...男の責任として当然だろう。
そして同時に...俺の野蛮な獣性が目の前の雌を蹂躙しろと叫んでいる。
「あ、あの...兄さん...?」
「うん?」
洗濯籠を元の位置に戻した後で振り返った。
「っ...!」
狭い脱衣所。移動は制限され、下手に転べば危ない所。
そんな場所で、突然美咲は抱き着いてきた。
「み、美咲...?」
抱き止めながら尋ねた。
「ごめんなさい...やっぱり、我慢できなくて...」
胸元から聞こえるくぐもった声。
「我慢?」
優しく抱き返しながら尋ねる。
「はい...」
「...そうか」
細い身体は柔らかく、抱きしめると暖かく心地良い。
「昨日...お母さんとエッチしましたよね?」
「...ああ」
昨日は夜遅くに華織さんと晩酌しており、2人きりでお酒が進むうちに...という流れだった。
しかし、今日は華織さんが仕事の為、あまり夜が更けない頃には解散した。
「やっぱり...」
「案外分かるモノなんだな」
シャワーを浴びて入念に身体を洗ったはずだが...やはり同性の目は誤魔化せないか。
「はい。何となく...雰囲気でわかりました」
ちなみに、今は部屋数の関係上美咲と華織さんは同じ部屋で就寝している。圭介たちの引っ越しが近いのでそれまでの暫定処置だ。
「そうか...」
何とも上手い言葉が出てこない。
「ねえ、兄さん...」
「うん?」
胸元から見上げている美咲と視線を絡み合わせた。
「今日...暇ですか?」
「特に予定は無いよ。...どこかお出かけしようか」
柔らかく触り心地の良い髪の上から頭を撫でた。
「ぁ...は、はいっ」
ぱあっと明るくなる表情。愛らしいその笑顔を見る度に安心する。
「それじゃあ俺は着替えてくるから、美咲も身支度をしておいで。ゆっくりで良いから」
「はいっ♪」
明るい笑顔で返事をする美咲。...そこで、ちょっとした悪戯心が沸いてしまった。
「...」
「...?」
俺は着替えに行くと言いつつ、美咲を抱きしめたまま手放さなかった。
「あ、あの...兄さん...?」
美咲も困惑気味の表情だ。
「どうした?」
すっとぼけて聞き返した。
「あの...抱きしめられていると...その...嬉しいことは嬉しいんですけど...」
少し頬が赤い。...可愛い女の子が困っている様はどうしてこんなに愛らしいのだろうか。
「嬉しいなら良かった」
更に強く抱きしめ、後頭部を優しく撫でまわした。
「ぁ...えへへ...♡」
ふんにゃりと頬を緩める美咲。...可愛い。
「...じゃなくて...!」
はっと我に返る美咲。...そろそろ解放してあげるか。
「冗談だよ。ほら、行っておいで」
「ぁ...」
腕を解くと、美咲は少し残念そうな顔を浮かべた。
「美咲?」
「あ...い、いえ...行ってきます...」
美咲はとぼとぼと自室に戻るのであった。
「さて...」
俺も着替えることにしよう。
そう思い立ち、寝室へと向かった。
「えっと...」
濃い目のジーンズにシンプルなシャツ。明るい色合いのカジュアルジャケットを身に纏い、次は洗面台を目指す。
「...大丈夫そうだな」
先程、洗顔や髭剃りは済ませているのですぐにでも外出できる。
...男の身支度は手短で良い。女性の身支度の大変さを目の当たりにするとよく分かる。
今までの2人きりの生活では、ナチュラル美人で身支度が手早い夕華もそれなりに時間が掛かっていた。
茜と暮らすようになってからは、夕華の準備が手短を通り越して手抜きであったことを理解した。茜も美人なのだが、幼さを隠すメイクや、肌や髪のケアなどに掛ける時間が夕華と全然違ったのだ。
まあ、それでも夕華は天然で絶世の美女なので誰も気が付かなかったらしい。今では茜の指導のおかげで美少女に磨きがかかっているとか。
そのような事をぼんやりと考えながらリビングでソファに腰掛けていると、美咲の準備が完了したであろう物音が聞こえて来た。
「お、お待たせしました」
パタパタとリビングに掛けて来た美咲。
黒いミニ丈のプリーツスカートに、所々レースで装飾された白いブラウス。その上からクリーム色のVネックセーターを合わせてある。
清楚と活発さを併せ持つなんとも可愛らしいコーディネートだ。
「全然待ってないから大丈夫だよ。それに...その服、良く似合ってる。可愛いよ」
「ぁ...えへへ...♡」
袖口で口元を押さえていても、零れ出してしまう愛らしい笑顔。少しオーバーサイズのセーターなので袖口が余っている所がこれまた可愛らしい。
「それじゃあ行こうか。隣町に気になるイタリアンが有るから、ついでに観光でもしようか」
隣町は海に面しており、自然豊かで景色も良いのでこの辺りでは人気の観光地だ。
「はい♪」
美咲と指を絡め合いながら部屋を後にする。
幸い、駐車場まで誰にも会わずに来ることが出来た。
「さあどうぞ」
「ありがとうございます」
助手席のドアを開いて美咲を愛車に招き入れ、後部座席からひざ掛けを取りだした。
「良かったらコレも使ってくれ。カシミア製だから触り心地も良いよ」
運転席に乗り込み、美咲にひざ掛けを手渡した。
「え?」
不思議そうな顔でひざ掛けを受け取る美咲。
「この車、車高が低いからさ。...助手席だと見えそうになるんだ」
「え?....あっ」
言葉の意味が理解できたらしい。
俺が見る分には良いけれど他の男に美咲の脚を見せたくないという...ただの独占欲に近いのかもしれない。
「それじゃあ行こうか」
「はい♪」
可愛らしい笑顔に微笑み返し、俺たちはデートに出かけたのだった。
―――――――――――――――――――――――
「美味しかったですね~」
ニコニコとご機嫌な様子の美咲。
俺たちは今、隣町のイタリアンに来ていた。
海岸線沿いに建っているお店で、海が見える素敵なレストランとして雑誌で紹介されていたのだ。
「そうだな。他のメニューも美味しそうだったな。今度は皆で来ようか」
「それは...」
言葉が途切れ、美咲は足を止めてしまった。
「美咲?」
袖口を引かれたので振り返ると、美咲が小さく握っていた。
「わがまま...かもしれないですけど...」
何か懇願するような表情の美咲。
...俺は乙女心を理解していなかったらしい。
「美咲」
彼女に振り返り、柔らかい頬に手を添えた。
「兄さん...?」
「また今度..."2人きりで"来ような?」
微笑みかけてそう伝えた。すると―――
「ぁ...は、はいっ!...えへへ...♡」
―――緩んだ笑顔を見せてくれた。
どうやら、美咲は案外やきもち妬きらしい。
「この後はどうしようか?特に何もなければ適当にぶらぶらしようかと思うけど」
「あ、それなら...ちょっと気になるところがあるんです」
そう言って美咲はスマートフォンを取り出した。
「えっと...確か、クラスの友達が彼氏と行って来たらしいんですけど...あったあった」
美咲はスマートフォンの画面を見せてくれた。...どうやらSNSの投稿のようだ。
「ん?これは...」
投稿されていた写真は、なにやら海辺の岩のようだ。ただし、その岩の形が...
「このハートの形の岩、パワースポットらしいんです。詳しい事は聞きそびれちゃったんですけど...その...す、好きな人と行くと良い事が起きやすいらしくて...」
頬を赤く染めながら、美咲は言葉を続けた。
「だから、その...兄さんと行きたくて...だめ、でしょうか?」
不安げな上目遣いで尋ねる美咲。
俺は、そんな彼女の頭を撫でながら答えた。
「俺も行きたいな、そのパワースポット。一緒に行こう、美咲」
「ぁ...はいっ」
美咲の心底嬉しそうな笑顔に、俺も自然と顔がほころんでしまう。
.................................
車を走らせること数分。道路わきの駐車スペースにちらほらとファミリーカーが並んでいる箇所を見つけた。
恐らく、この辺りが例のパワースポットなのだろう。
「あっ!ありました!」
目が良い美咲が先に見つけたらしい。俺も彼女の視線の先に目を向けると、そこにはカップルや若い夫婦が複数人写真を撮っており、その被写体となっているのが...例のハート岩だった。
「おお...思った以上にハートだな」
「本当ですね...てっきり友達が加工しているのかと思いましたけど、想像以上に綺麗な形でした」
パワースポットの写真を加工するとは...なんとも効果が半減しそうなモノだ。
「俺たちも行こうか」
「はい♪」
美咲の手を握り、俺たちも写真撮影の列に並んだ。
とはいえ、それほど混雑しているわけでも無いので順番はすぐに回って来た。
「兄さん、撮りますよ。はい、ピース♪」
美咲のスマートフォンにて、ハート岩をバックに2ショットを撮影した。
「綺麗に撮れたね。美咲は写真が上手いな」
「えへへ...いわゆる現役JKですから♪」
...そういえばそうだった。
「流石です...ん?」
岩から少し離れた位置に、なにやらこの岩に関する逸話を記している看板を見つけた。
「兄さん?」
美咲も俺の視線の先に気が付いたらしく、一緒に看板を覗き込んだ。
「えっと...この岩は愛を育む岩とされており...愛する男女が訪れると、近いうちに子宝に恵まれ...っ!?」
...なるほど。そう言う意味のパワースポットか。美咲の友達カップルはさぞかし複数な気分になったことだろう。
「...美咲は欲しいのか?」
美咲を軽く抱き寄せ、おへその下を撫でながら耳元で囁いた。
「そ、それは...っ...!」
真っ赤になる美咲。
...ちょっとセクハラが過ぎたか?
「ごめんごめん。冗談だよ」
「...しい...す」
美咲は小さな声で呟いた。
「...え?」
聞き間違いだろうか?
そう思い、もう一度聞き返した。
美咲は...瞳を潤ませ、頬を上気させ、囁くような甘い声で、こう答えた。
「私も...兄さんの赤ちゃん...私も欲しいです...っ...!」