優柔不断は切り捨てろ:周りの美少女は全員他人のモノ 作:エルサイズ
――――――――――――――主人公視点
時刻はお昼休み。今日は昼食を職員室で摂った。
今は一瀬茜が職員室に来る予定なので待機している状況だ。
「....」
一瀬茜。昨日の夕華の話と、今まで聞いた良くない噂が頭から離れない。
...その噂というものは、援助交際を行っているというものだった。
勿論根拠のない噂だから注意するようにと言っていたのは生徒指導の担当である体育教師だ。
俺も信じてはいなかったのだが、夕華の話を聞いた後では少し不安になったのだ。
「失礼しまーす」
良く通る綺麗な声。彼女の声に抱いた最初の印象だった。
「来たな」
「...どうしましたか?」
あまりやる気のない様子でこちらを見ている。
「一瀬。ちょっとこっちに来い」
彼女を連れて職員室の隣にある和室に入った。
そして向かい合って正座した。
「それで?どうしてこんなところに連れてきたんですか?」
「少し聞きたいことがあってな」
さて...どう聞いたものか...
いきなり教師と寝てるのか?なんて聞きにくいぞ...
「その...最近大丈夫か?あまり人様の親御さんを悪くは言いたくないんだけど...その...」
何だか不器用な父親みたいな聞き方になってしまったな...
「...あんなの父親じゃないから大丈夫ですよ。まあ、前と変わらないです。飲んだくれでロクデナシなのは一緒。...ふふっ、先生の方がお父さんみたいですよ。不器用で接し方が分からないお父さんみたいです」
暗い瞳のまま優しい笑顔を見せる一瀬。年齢不相応に大人びた表情に胸が締め付けられた。
「...俺はお前の味方だからな。何でも言ってくれ」
「へぇ...味方...ね」
彼女の纏う雰囲気が少し変わった。
「じゃあ、先生は私が寂しいから抱いてって言ったら抱いてくれるの?」
「なっ...!」
いきなり来たな...
「...出来ないでしょ?」
ニヤリと笑う彼女だったが、どうにも悲しそうな表情に見えてしまう。
「だったら余計なこと言わないで」
「...同じ事を他の教師にも言ったのか?」
「ええ。言ったわよ。その人は答えてくれた。ふふっ...誰だか言わないけど」
「はぁ...やっぱりそうか」
「なに?知ってたの...?」
怪訝そうな表情だが、俺の耳には知って欲しそうに聞こえたんだけどな。
「ああ。風の噂でお前が教師と関係を持っていることを聞いた」
「そう...」
短く答えた一瀬。少し動揺しているようだ。
「誰かに言うの?」
「そりゃあ教師だからな」
「そう...結局あなたも一緒なのね」
諦めたような表情。そして次の瞬間...
「なっ...!?」
軽い衝撃。気づけば一瀬に押し倒されていた。
「ふふっ...どうせ男なんてこうすればいいんでしょ?」
挑発するような表情。
...彼女は...こうやって今までも対処してきたのだろうか。
「...一瀬」
「あれ...?シないの?」
不思議そうな表情。
「お前はその教師にも同じことをしたのか?」
「...どうでもいいでしょ?ほら、さっさとシましょうよ」
さわさわと俺の股間に触れる一瀬の手。
残念ながら反応はしている。
「ふふっ...やっぱり先生も期待してるじゃない」
「そりゃそうだろ。君は可愛いんだから」
「でしょ?...シてあげるから黙っててよ、このこと」
それが狙いか...
「...断るよ」
「えっ...?」
「キミが抱いて欲しいと心から懇願してきたら考えてやろう。でも、俺からは何もしない。さっさと降りろ」
わざと冷たく言い放つ。...演技がバレないといいけどな。
「なんで...」
俯いたままなので表情は伺えない。
「なんで押し倒さないのよ...」
「大人だからな」
「どうせ男なんて私の身体にしか興味ないんでしょ?だったらさっさと抱いてよ!」
他の人に聞かれたらまずいな...この会話...
「そんなことはない」
「違う!!」
「違わないさ。君の事が本当に心配な男もいる」
「居ないわ。結局、そう言って近づいてきた男も私にナニを突っ込んで腰振ったら満足して消えたわ。私の事をそんな風に思ってくれるのはお母さんと夕華だけよ」
夕華...君は凄いな。
「お母さんが居ないから今はもう夕華しか信じられない。ああ...でも...」
にやりと暗い瞳のまま口角を上げた一瀬。
「夕華はアンタの事信用してたわね...抱いてくれたら信じてあげる」
この子は...自分の身体に夢中になる男しか信用できないのだろうか。
よく考えれば、今まで彼女を無条件で愛してくれる男は居なかった。...そして、凄く嫌な想像が脳裏をよぎる。
「なあ、君の今のお父さんはひょっとして君の事を...」
「そうよ?私を養う代わりに対価をよこせって言ってきたわ。意味が分からなかったけど、ベッドに押し倒されたときに理解したわ。...凄く嫌だったけど、抱かれながらこう言われたの。お前は母親の代わりだ。断ると母親と一緒にこの家を追い出す、って。お母さんは病気だったからそれは困る。そう思って抱かれたわ。まあ、お母さんは結局助からなかったから、もうあんなヤツどうでもいいけどね」
なんという...悲惨な話なのだろうか。
「それなら...もう君は...」
「他の男に抱かれる必要は無いって?そんなわけないじゃない。どうせ誰も守ってくれないんだから。先生...ああ、あなたじゃなくて担任の方ね。あの人も結局頼りなかったし。まあ、いい人だとは思うけど、あのクソオヤジがちょっと怒鳴っただけで怯んじゃったし」
それは産休中の先生のことだろう。小柄な女性の先生だ。とても慕われている教師なのだが、いかんせん押しが弱い。俺が一緒に行った際も、無理やり入ろうとした俺が止められてしまったのだ。
「だから強い男に抱かれて自分を守ってるのよ。悪い?」
「ああ、悪いな」
「なっ...」
俺の即答が相当以外だったようだ。
「な、なんでよ!アンタに関係ないでしょ!?」
「関係ないわけないだろ。先生だぞ」
「だから何よ!何が悪いってのよ!!」
「...まあ、月並みな言葉だが、もっと自分を大切にしろ」
本当に月並みだ...もっと気の利いたことは言えないのだろうか。
「ふん...そんな言葉聞き飽きたわ。それに、私を抱きながらそんな事を言う男なんて何人もいたわよ。アンタは抱く度胸もないからそいつ等以下ね」
「おい。一緒にするな。俺は...」
その時、予鈴が聞こえた。
....とりあえずここまでか。
「話はまた後だ」
「ふんっ...」
心は開いてくれなかったが、少しこちらに感情的になってくれた。それに、情報も入った。
「とりあえず、このことは誰にも話さない。だが忘れるな。俺は君の味方だ」
「はいはい。そんな綺麗事は聞き飽きたわよ」
そこで会話は終了した。
...次の授業は夕華たちのクラスで社会科だ。
「お兄ちゃん!茜!」
教室が見えてきた頃、1人の少女が飛び出してきた。
「...っ...」
少し気まずそうに目を逸らす一瀬。
「夕華...」
飛びつかんばかりに駆け寄ってきた夕華を受け止めた。
「ねえ、大丈夫?なんのお話だったの?」
本当に心配だったらしい。....昨日、彼女の事を俺に話したので余計に心配したのだろう。
「今日の遅刻の事よ。全く、そんなに私が心配だったの~?」
一瀬は夕華のほっぺたを両手で挟み、すりすりと愛でていた。
「も、もうっ!本当に心配したんだからからかわないでっ」
「ふふっ...はいはい。じゃあ私は行くわね」
ふりふりと手を振って教室へ戻る一瀬。
夕華は上目遣いで俺を見つめていた。
夕華は俺の袖を掴んで物陰まで引いて行った。
「ねえ、お兄ちゃん。昨日の事でしょ?」
「ああ。状況は少し掴めたよ」
「良くないこと?」
「...ああ」
「だったら...!...んむっ」
夕華が大声を出しそうになったので口を手で塞いだ。
「大丈夫だ。俺に任せろ。必ず何とかする」
「...うん。分かった」
伏し目がちな夕華。親友の事が本当に心配なのだろう。
「ねえ、お兄ちゃん...」
「うん?...んむ!?」
少し背伸びした夕華は俺の唇に自らのそれを重ねた。
「ん...信じてるから。茜を...助けてあげて」
「...ああ。任せろ」
必ず俺が何とかする。そう思ったのだが、大事なことを聞きそびれたことを今更になって思い出した。
...援助交際について何も聞いていなかった。しかし...先ほどの話を聞く限り、あながち嘘だと否定も出来ない気がする。
...確かめる必要が有るな。