※この作品はR-18です。

優柔不断は切り捨てろ:周りの美少女は全員他人のモノ   作:エルサイズ

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92:翔太編

――――――――――――――――――――翔太視点

 

先生と美咲が手をつないで公園を後にした。

 

その後ろ姿は恋人同士にしか見えず、手元には二人に身体の関係がある証拠まで握らされてしまった。

 

「...」

 

もう何も考えたくない。もう何も信じることが出来ない。

 

一度目は店長に激しく犯される美咲を見せつけられ、二度目は慰めてくれてセックスまでさせてくれた麻衣さんが俺を罵りながら他の男に中出しされている映像を見せられ、三度目は美咲の愛液と先生の精液が染み込んだティッシュペーパーを握らされた。

 

ズタズタに踏みにじられた男のプライド。

 

今までの人生でこれほど惨めな気持ちを味わう機会があっただろうか?一度も女の子に困ったことは無かったし、寧ろ可愛い子でも向こうから寄ってきてくれたというのに。

 

俺は女の子を泣かせる事はあっても泣かされることなんて無かった。それに、彼氏持ちの子や結婚してる人ともヤったことはある。寧ろ向こうから抱かれに来ていたくらいだというのに。

 

「うぅ...っ...」

 

でも...美咲は本気だった。美人で優しくて...あんなにも俺のことを愛してくれる。そんな彼女に俺も夢中になっていた。

 

もちろん、美咲と真剣に付き合っている間は浮気なんてしなかった。付き合い始めてから美咲以外とセックスしたのは麻衣さんだけだ。

 

「...」

 

ひとしきり涙を流すと、沸々と怒りの感情が浮かんできた。

 

...美咲はまだ高校生だぞ?そんな相手に手を出すなんて...教師がやることじゃない。

 

「それなら...」

 

まずは...そうだ、警察だ。

 

でも...何を話そう?何から話そう?

 

あ...そうだ。店長と美咲の話から話そう。

 

「とりあえず...」

 

今日は帰ろう。今から警察に行ってもまともに話など出来ない。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

翌朝、俺は学校に行くフリをしてそのまま所轄警察署に足を運んだ。

 

「えっと...」

 

きょろきょろと受付を見渡すが、どこに行けば良いのかわからない。

 

向かって右側には車庫証明と書かれているが...それは違う気がする。

 

左側は...拾得物?それも違う気がする。

 

その隣のご相談窓口...ここか?

 

とりあえず行ってみよう。

 

「あの...」

 

「はい。どうなさいましたか?」

 

白い制服を着た女性警察官が冷静な口調で答えた。

 

丁寧ながらその平坦な口調に少し気圧されてしまう。

 

「そ、その...ちょっと相談したくて...」

 

事の顛末を軽く説明すると、受付の警察官の人は二階の刑事課を案内してくれた。

 

廊下にて担当刑事を待つように指示をされたので、少し硬い古びたベンチに腰掛けて目の前の防犯ポスターを眺めていた。

 

「ドラッグ、ダメ、絶対...か」

 

あの店長はどうなったのだろう?薬物に手を出していたという話だから...今頃は逮捕されているのだろうか?

 

そんなことをぼんやりと考えていると、刑事課の札が掛けられている入り口からガタイの良い警察官が姿を見せた。

 

「小井川さんですか?」

 

丁寧な口調で尋ねられた。

 

「は、はい」

 

「婦女暴行と薬物の件について相談があるということで間違いありませんね?」

 

少し大袈裟かもしれないが、おおよそ間違いではないだろう。

 

「はい...間違いありません」

 

「わかりました。ではこちらへどうぞ」

 

屈強な警察官に誘導され、刑事課の中へと足を運んだ。

 

「...」

 

少し狭い通路の先にある扉を開くと、そこはTの字の通路になっており、右を向いても左を向いても扉が並んでいた。

 

「この部屋へどうぞ」

 

『第二取調室』と書かれている扉を開く私服警官。

 

「は、はい」

 

中は狭く、地味な事務机とオフィスチェアが設置されており、反対側には古いパイプ椅子が置かれていた。

 

「そちらへどうぞ」

 

「わ、わかりました」

 

緊張する。何か悪いことをしたわけでは無いが、なんとも居心地の悪い場所だ。

 

「それでは、お話を伺います」

 

目の前に刑事さんが腰かけ、聴取が始まった。

 

「あの...俺の高校の教師のことなんですけど―――」

 

そして...俺は一通り事の顛末を打ち明けた。

 

「...」

 

刑事さんは終始真剣に話を聞いてくれたのだが、後半になるにつれて...特に先生の名前を出した辺りから少し険しい表情を見せていた。

 

それが事件の重大性によるモノなのか、はたまた"別の理由"によるモノなのか。

 

「―――以上です」

 

赤裸々に打ち明けるには少し恥ずかしい事情もあるのだが、何一つ包み隠さずに話した。

 

「...わかりました。少々お待ちいただけますか?」

 

「は、はい」

 

険しい表情のまま、刑事さんが取調室を後にした。

 

そして、何も反応がないまま時間だけが経過する。

 

「...?」

 

何かおかしい。そう思うのだが、何となく...勝手に警察署の中を歩き回る気にはなれなかった。

 

そして、待つこと数十分。ようやく刑事さんが姿を見せた。

 

先ほどと違うのは、今度は警察官が二人だということ。

 

「お待たせしました」

 

「あ、はい。あの...そちらは?」

 

「ああ、お構いなく」

 

壮年の警察官はそれだけ口にすると何も言わずに窓際に立っていた。

 

「えっと...」

 

一体どうしたのだろうか?

 

「...小井川さん。今回の件、ご相談いただきありがとうございます。しかし、小井川さんは当事者ではありませんので被害届を提出することができません。また、事件の性質上、捜査状況もお伝えすることが出来ません」

 

「そう...なんですか?」

 

確かにそうだ。恋人が寝取られたとはいえ、立場的には第三者だ。

 

「はい。また、この件につきましては勿論捜査しますが、先ほど申し上げました通り、事件の性質上情報が公開できませんので他言無用にてお願いします」

 

「え...?」

 

言いふらすつもりはないが、そう言われると違和感がある。

 

すると、今度は壮年の警察官が口を開いた。

 

「...もし、この件が外部に漏れると―――」

 

壮年の警察官は音もなくこちらに近づき―――

 

「―――今度は別の立場で取調室(ここ)に来ることになるからね」

 

それは...明確な口止めだった。

 

「で、でも...そんなことが出来るんですか?」

 

俺は正義のはずだ。だというのに、俺が捕まる可能性があるというのだろうか?

 

「君は17歳だろう?...どうにでもなるさ」

 

「...っ...!」

 

鋭い目つきだ。助けを求めるように若い警察官に視線を向けるも、その表情から彼も味方ではないと悟った。

 

もし、これ以上逆らえば...今度とは言わずに直ぐにでも違う立場で聴取を受ける事になるのではないだろうか?

 

そう思った俺は―――

 

「わかり...ました」

 

―――と、答える他になかった。

 

「...相談は以上ですね?」

 

若い警察官の問いかけに、ただただ頷く事しか出来ない。

 

「わかりました。では、以上を相談として受け付けます」

 

パタンと大学ノートを閉じる警察官。...ちなみに、彼は一度もペンを握っていない。

 

「...失礼します」

 

本当に...この件を捜査してくれるのだろうか?素人的な考えだが、捜査するのであれば何かしらのメモは取るのではないだろうか?

 

「帰り道はお気を付けて。...寄り道はしないように」

 

壮年の警察官の言葉に見送られ、俺は刑事課を後にしたのであった。

 

................

 

「...」

 

陰鬱な気分のまま所轄警察署の裏口をくぐると、外は太陽が真上から地面を照らしている頃であった。

 

この後はどうしよう...どこかで昼食を採って家に帰るか。

 

そんなことを考えていたその時―――

 

「待ちな」

 

警察署の敷地を出た瞬間、くたびれたスーツを着た中年の男性に声をかけられた。

 

「はい?」

 

振り向くと、その男性は瞳だけを動かして俺を観察していた。

 

「お前...さっき、若いヤツと制服のジジイに脅されただろ?」

 

くたびれた風貌とは異なり、その目つきは鋭いものであった。

 

「なっ...!」

 

状況を正確に言い当て有れたので心底驚いた。

 

「まあ、落ち着け。とりあえず飯でも食いながら話そうぜ」

 

「え?ちょ...」

 

困惑していると、強引に肩を組まれて顔を寄せられた。

 

...俺はそのケがあるワケでは無いので、男に密着されてもあまり嬉しくはない。

 

「...いいから来い。俺も刑事の端くれだから安心しろ」

 

そう言ってちらりと警察手帳を見せてきた。

 

...バッジと顔写真は本物に見える。

 

「えっと...川元、さん?」

 

「ああ。川元だ。俺も刑事課の刑事だ。...窓際族だけどな」

 

鋭い眼光、中年ながら鍛えられた体躯...確かに現役の刑事なのかもしれない。

 

「でも...どうして...?」

 

しかし、警察官の中にも味方が居るかもしれないということが分かり、先ほどの陰鬱とした気分が晴れていく気がした。

 

「...ここでは話せねえ。だから着いてこい」

 

「...わかりました。」

 

俺は黙って川元刑事の指示に従い、白い軽バンの助手席に乗り込んだのであった。

 

――――――――――――――――――――

 

揺れる車内。川元刑事は警察署から少し離れた定食屋まで車を走らせているらしい。

 

「...」

 

「...ふぅ...」

 

自然な動作で胸元からタバコを取り出す川元刑事。

 

「ん?ああ、悪いな」

 

しかし、すぐに俺の視線に気が付いてタバコに火をつける前に耳にかけた。

 

「あ、いえ。別に平気ですよ、吸われても」

 

オヤジが家でバカスカ吸っているし、俺も先輩に誘われて吸ったことがある。というか...川元刑事には言えないが今でもたまに吸っている。

 

「そうか?それじゃあ遠慮なく...」

 

川元刑事は右耳に鉛筆のように引っかけていたタバコを手に取り、口にくわえて火をつけた。

 

「ふぅ...」

 

窓の外に向けて煙を吐いている。

 

「...」

 

タバコを吸っている姿を見たら俺も吸いたくなってきた。

 

「ん?吸うか?」

 

そう言いながらタバコのソフトケースをこちらに差し向けてきた。

 

「あ...どうも」

 

俺は無意識のうちに一本だけ飛び出していたタバコに手を伸ばしてしまった。

 

「...やっぱりな。お前、タバコ吸ってるだろ」

 

川元刑事は俺の手元を見ながらそう告げた。

 

「え?」

 

「そんな持ち方する奴は吸ったことがある奴だけだ。普通に受け取ってたしな。...まあ、俺も15の頃から吸ってるから人のことを言えねえけどな」

 

どうやら俺の喫煙を咎めるつもりは無いらしい。

 

「まあ、吸うなとは言わねぇ。だが、吸うなら自分で稼いだ金で吸うんだな」

 

「...わかりました」

 

一応、俺のタバコ代はバイトの給料で払ったことしかない。...親父のタバコを数本拝借したことはあるけど。

 

「ふぅ...」

 

ああ...気分が落ち着いてきた。

 

先ほどまで続いていた陰鬱な気分が晴れるようだ。

 

「オッサンみたいな吸い方する奴だな...」

 

「...親父がチェーンスモーカーなんすよ」

 

おかげで家計が苦しいと母が嘆いていた。

 

「なるほどな...」

 

などと言っている間に定食屋に到着したらしい。

 

「着いたぞ」

 

「あ、はい」

 

定食屋...というより少し古いレストランだろうか?

 

内外装は90年代のドラマで見たことが有る古いファミレスのようなモノだ。

 

「二人だ。喫煙席で頼む」

 

珍しい事にどうやらこのレストランは喫煙が出来るらしい。

 

俺たちは奥の方へと案内され、窓や入り口から一番遠い壁際のボックス席に腰かけた。

 

「ほら、好きなの頼め。俺の奢りだ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

とはいえ、メニューはそれほど多くない。

 

「それじゃあ...このハンバーグ定食で」

 

「ああ」

 

そして、川元刑事はボタンを押して店員を呼び、ハンバーグ定食を二つ注文した。

 

「さて―――」

 

店員が席から離れた頃を見計らい、川元刑事が再び鋭い視線をこちらに向けた。

 

 

 

 

 

 

「―――先生(やつ)の所業とやらを聞こうか」

 

 

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