※この作品はR-18です。

ペットサキュバスの犯され学園生活~退魔師学園でエロスキル特盛の銀髪ロリ巨乳美少女サキュバスにTSしたダメ男が、性処理便所として犯されまくるようです~   作:クマノミの実

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EX 淫夜の――

 

 ――黄泉比良坂学園、特訓用異界。

 

「そこっ!」

 

「――ぁぅっ!」

 

 何もない真白な奇妙な空間の中で、鋭く細い銀光が宙を飛ぶ。

 その正体は、黄泉比良坂学園の教員の1人である、小鳥遊 凛が手に持った1本のレイピアによる鋭い突きであった。

 凄まじい勢いで放たれている突きの行く先は、小鳥遊の弟子?になったばかりの夜。

 魂装の励起状態(ドライブ)を発動させている夜は、既に臨戦態勢だ。

 よって防ぐか避けるかしなければならない筈だが、どちらも行えずレイピアの鋭い切っ先が、夜の華奢で小さな手に突き刺さった。

 普通に考えれば手に穴が空くが、いくら小さく頼りなくとも、腐っても退魔師、痛がってはいたが、外傷は見られなかった。

 ……最もこれは小鳥遊が意図的に威力を抑えているからであって、本気でやられていたら穴が空くどころか、体が消し飛ばされているが。

 

「集中力が足りていませんよ」

 

「ぅぅっ……。でも、その、俺の魂装は戦闘向きじゃない、って小鳥遊先生も……」

 

 一応、その言葉は真実だ。

 こうして模擬戦闘による訓練を始める前に、愛玩淫魔が性行為を除いてどのような事に優れているのかを簡単に調べている。

 結果として、戦闘能力はそこまでで、他者への強化や回復にそれなりの適性を持っている事が分かったのである。

 しかし、それはそれ。これはこれだ。

 

魔物(モンスター)はそんな事を考慮してくれませんから、強化役(バッファー)回復役(ヒーラー)も最低限自分の身を守れる程度には動けなくてはなりません。そもそも、これでもかなり加減している方です。もし仮に甘土さんが戦闘特化の魂装持ちでしたら、ギアをここから3段は上げています」

 

「ぅぐぅっ……」

 

 ド正論以外の何物でも無い言葉にやり込められて、夜が肩を落とした。

 その様子を見て、小鳥遊が心中で溜息をついた。

 

 

 ――これは、思った程では無いかもしれませんね。

 

 それは何度か特訓をともにした、夜への失望の心であった。

 当初は、これまでに無いタイプの魂装である愛玩淫魔に対する期待に溢れていた、小鳥遊であったが、今はそうでもなくなっていた。

 1つ誤解が無い様に言っておくと、愛玩淫魔()確かに凄かった。

 戦闘向きではないとは言ったが、全ての術の源になる霊力が日に日に増して行っているのだ。

 1度の性交で増加する量のカタログスペックは、普通の淫魔系統の魂装より少ないとは言え、力の略奪でない為に警戒も抵抗もされないが故、だ。

 魂装習得前の夜のデータを見比べると、彼女の霊力量は10倍以上に跳ね上がっているし、小鳥遊と訓練を始めてからの1週間程度の時間においても、目に見える程の変化量がある。

 これは実に凄まじい魂装と言うべきで、小鳥遊としては、それを一目しただけで見抜いた物見には、流石はかの【見眼(けんがん)】だと尊敬の念を抱かざるを得ない。

 しかし、だがしかしだ。

 その圧倒的なプラスを打ち消してなお余りある程に、魂装の所有者である夜がどうしようも無かった。

 

 ――何というか表面的にやる気のあるフリをしているのが、癪に触りますね。

 

 勉強でもスポーツでも仕事でもそうだが、見る人が見れば相手がやる気があるのか、やる気があるフリをしているのかは、大体分かる。

 そして小鳥遊の目から見て甘土 夜と言う人間は、分かり易い程に後者だった。

 その場、その場での指示は比較的素直に聞くものの、次にあった時に予習や復習などで自分になりに頑張っている様子がまるで見えて来ない典型的な指示待ち人間。

 勿論、慰労係&学園娼婦というのは極めて拘束時間が大きく、オマケに夜は僅かな隙間もなく抱かれ続けていて、その為に時間が余り取れないと言うのは斟酌しよう。

 実際、いきなり胸が爆乳になって顔を真っ青にして来た時は、小鳥遊としてもかなりの同情を覚えた物だ。

 しかしそれ以外――普通に抱かれている事に関しては流石は淫魔(サキュバス)と言うべきか、疲れる所か元気になってすらいるのだから、言い訳にはならない。

 

 これで夜が未だ、5級や、6級だったらのなら、小鳥遊としても此処までは思わない。

 世の中には、上へ上へと昇りたがる上昇志向の強い人間と、それなりの境遇で満足する安定志向の人間が居る。

 小鳥遊は典型的な前者であるが、だからといって後者の人間を馬鹿にする気も、無理やり努力させる気も無かった。

 だから夜が普通に5級くらいであったのなら、”折角、素晴らしい魂装を持っているのに勿体ない……”と思いはすれど、それ以上は思わなかっただろう。

 だが、8級。8級なのだ、夜の階級は。

 9級以下は、最早死ねた方がマシと言える程の目に遭う階級なので、実質的にもう後が無いのだ。

 汚い言い方をするなら、ケツに火が付いている――いいや、もう背中全体が火の海の様な状況と言っても過言ではなく、これで呑気にしていられる精神が、小鳥遊には信じられない。

 もし仮に自分が同じ状況であったのなら、それが有効かそうではないかは別としても、死に物狂いで足掻く筈だが、夜からはそんな気配が全く見られない。

 夜が駄目人間であることは、彼女の担任である物見から聞いていた、小鳥遊ではあるが、やはり百聞は一見に如かずと言う奴だろう。

 根がキッチリとしている小鳥遊には、ギャンブルで出来た借金をギャンブルで返そうとしたり、食費を削ってソシャゲのガチャに金を突っ込んで爆死するタイプのダメ人間である夜の事が全く理解出来ないのだ。

 

 愛玩淫魔の凄まじい性能も、これでは宝の持ち腐れ。

 馬の耳に念仏、豚に真珠、甘土 夜に愛玩淫魔だ。

 クズがチートを持った所で何とかなるほど、現実は甘くない。

 霊力の成長が凄まじいとは言ったが、それを所有しているのが夜である限り、どうとでもなる、と言うのが小鳥遊の意見だった。

 

 仮に夜の霊力が己の10倍になったとしても、何の問題も無く倒せる確信が小鳥遊にはある。

 それが、100倍だったとしても倒せる自信がある。

 例え、千倍、万倍と上がっていったとしても、封印なり、相打ちなりでどうにかして見せよう。

 迷いなくそう思える程に、甘土 夜と言う人間はダメだった。

 

「さ、特訓を続けますよ」

 

「……は~い」

 

 とは言え、夜に対する個人訓練を辞める気は、小鳥遊にはない。

 愛玩淫魔が希少で凄まじい魂装であるのは変わらないからである。

 ……ただ、期待していた程の成果にはならなさそうだな、と言うだけの話。

 

「では、精神を研ぎ澄まして私の攻撃に備えて下さい」

 

「わかりました」

 

 だから小鳥遊は、なんだかなぁ、と思いつつも先ほどと同じ特訓を繰り返そうとして。

 

 ――ふむ、少し試して見ましょうか。

 

 特訓に少しだけ遊び(・・)を入れてみようと思い立った。

 事前に確認した夜のデータでは、彼女が魂装に目覚めたのは、命の危機に陥った時だと言うのを思い出し、ならばそれを再現してみたらどうかと考えたのだ。

 

 次の突きに、当たれば一撃で死ぬような威力と、膨大な殺気を籠める。

 勿論、本当に殺す気も、傷つける気も一切無く、寸止めにするが、夜程度ではそれを見抜けぬ程に、真に迫らせる。

 如何なダメ人間とは言え、そこまで死を感じさせれば多少はマシな動きをするかもしれない。

 

「では……ふっ――!」

 

 そうして放たれる、裂ぱくの一撃。

 先ほどとは比べ物にならない程の威力と殺気を伴ったレイピアが宙を駆ける。

 まあ、一応やってみた物のどうせ九分九厘反応も出来ず、何も起こらないだろうな、という小鳥遊の思いをのせながらレイピアは進み、夜の体に極限まで近づいて。

 

 ――ここに奇跡(・・)が顕現した。

 

「なっ――⁉」

 

「ぅぅぅぅッッ――――‼‼‼‼‼‼」

 

 その時、何が起こったのか、言葉にするなら簡単だ。

 小鳥遊のレイピアが迫った途端に、夜が凄まじい勢いで後方に数十m飛び退った。

 つまりは、小鳥遊の予想に反して夜が攻撃に対応した訳である。

 

 そして、更なる異常は此処からだった。

 小鳥遊と距離をとった夜だが、その様子が明らかに可笑しいのである。

 何時もの間の抜けた雰囲気はどこにもなく、その紅い瞳を爛々と輝かせ、獣の唸りの様な声を出し、夥しいまでの戦意と殺気を小鳥遊に向けて迸らせている。

 その戦意と殺気と来たら、先程までのぬるま湯の様な物とはまるで違う、研ぎ澄まされた日本刀の如き鋭さ!

 

「――――――‼‼」

 

「む⁉」

 

 そして夜が動く。

 後方に退避した先とは正反対に、今度は小鳥遊に対して突撃を仕掛けた。

 上半身を地面につくのではないかと思うほどに下げ、勢いよく距離を詰めるその様は、這うように駆けていると表現できる。

 数十mの距離をやはり1瞬で詰め切って、夜は小鳥遊の足元に到達した。

 そして、右手を手刀の形にして、体を飛び上がらせながら突きを放つ。

 その突きの行く先は、小鳥遊の喉。一切の躊躇も見せない、完全に殺しにいっている一撃だった。

 

「甘い!」

 

 されど、それで呆気なく殺されるようなら、黄泉比良坂学園の教師など務まらない。

 小鳥遊は、体を僅かに横にそらし、夜の攻撃を一切の無駄なく回避してのける。

 

「――――!」

 

 しかし夜の攻撃はそこで終わりではなかった。

 地面から両足を離しての攻撃を回避されて無防備を晒していると思われた夜だったが、背中に生やした羽をバサッ!と動かすと、そこから急激な動きを見せる。

 弧を描く様に空中で体を動かし、小鳥遊の側頭部に目掛けて鋭い勢いの蹴りを放った。

 

「成程、悪くないです」

 

 けれどもやはり小鳥遊には当たらず、最小限の動きで躱される。

 渾身の蹴りを避けられた夜は、その勢いのまま、くるくると猫のように回転しながら後方に移動して着地し、再び距離を取った。

 依然として戦意は迸らせたままに。

 

「――!」

 

「ふむ、これは……」

 

 この一連の動きを見て、小鳥遊は感嘆の声を漏らす。

 躱しはしたものの、素晴らしい攻撃だった。

 鋭さも、霊力の籠め方も、これまでの皮だけ教科書通りに整えたゴミの様な物ではまるでなく、研ぎ澄まされた野生の動きとでも言うような代物である。

 完全完璧に異常事態。夜の身に、明らかに尋常ではない事柄が発生している。

 しかし、小鳥遊はその顔に笑みを浮かべた。

 

「さ、来なさい。まだ、動けるでしょう?」

 

「――――‼‼」

 

 失望から一転、楽しくなってきたと、夜の急激な変化を見定めるべく、迎え撃った。

 

 

 そして、10数分の時が経過した。

 その間、夜から小鳥遊に向かって容赦のない攻撃が加えられた訳だが……

 

「ふむ」

 

「――っ‼」

 

 かすり傷1つ負わずに余裕気に佇む小鳥遊と、納得いかな気で肩で息をしながら立つ夜を見れば、状況の趨勢は明らかだ。

 

「不思議ですか?どうして攻撃が届かないか」

 

 そもそも学園の卒業生で教師の小鳥遊が相手である。

 いくら不可思議な覚醒?をしたからとはいえ、夜が劣勢になるのは仕方が無い。

 それでも夜が納得していないのは、小鳥遊が力を抑えた上でそれを成し遂げているからだった。

 魂装を励起状態にすることも無く、霊力も一定以内に制限している。

 要は、圧倒的な力で上から制圧している訳では無く、技術のみで捌いているのだ――今の夜の凄まじい猛撃を。

 

「確かに今の貴方の動きは素晴らしい。今までとは比べ物になりません。しかし些か野生(・・)そのもの過ぎます。ハッキリ言ってその手の類の動きは、魔物(モンスター)相手で、慣れているのですよ。これを捌けないようであれば、この学園の卒業生を名乗る資格はありません」

 

「――――――」

 

 その絡繰りの正体は、奇妙奇天烈な何かではなく、唯の経験と慣れ。

 奇を衒った物では無く、普遍的な代物であるが故に、逆に崩しがたい大きな壁と化している。

 即ち、今の戦い方を続ける限り、夜に小鳥遊の防御を崩す事は限りなく不可能に近い。

 

「さて、それを聞いて貴方はどうしますか?諦めても失望はしませんが」

 

「――――‼」

 

 返答は、先ほどまでと似たような突撃だった。

 彼我の距離を素早く詰めてからの高速の一撃。

 相も変らぬ突撃ですか……、と小鳥遊が落胆しかけた時、その異常《・・》が巻き起こる。

 夜の攻撃が、小鳥遊の予測とは別の場所に放たれたのだ。

 即ち、体の重心や・視線の向き先・霊力の偽装――フェイントである。

 

「――なっ⁉」

 

 此処で初めて夜の攻撃が僅かに掠る。

 小鳥遊の着ているスーツの二の腕辺りが切り裂かれて、その下の肌に僅かな切り傷が加えられた。

 

「――――‼‼‼‼」

 

 そしてそのまま一気呵成と追撃が加えられる。

 今度は完全に躱してのける小鳥遊だが、余裕の消えたその表情を見れば、異常な事態が起こっているのは明白だった。

 

 ――これは、獣人系統の魂装持ちによく見られる戦い方⁉

 

 小鳥遊の心中が驚きに満たされる。

 彼女が、夜の一撃を避けきれなかった要因として、フェイントを織り交ぜられたから、と言う事を挙げるのは正確ではない。

 苦し紛れのフェイントなど、防げぬ小鳥遊では無いし、事実、先ほどまでにも何度かそんな機会はあったが、全て何の問題も無く対処していた。

 よって原因はもっと根深い所にある。

 ――それは夜の戦い方そのものが大きく変化したという事であった。

 

 先ほどまでの夜の戦い方を、獣の如き戦い方と評すのならば、今の夜の戦い方は、獣を模したもの(・・・・・・・)だった。

 一見酷似している2つであるが、その意味するところは全くの正反対だ。

 前者は、獣の本能にあかせた物で、後者は人の研鑽によって為される物だ。

 例えるのなら今の小鳥遊は、狼や熊に育てられた野生児少女が、いきなり流暢に言葉を喋り出して、数学の難問をスラスラと解き始めたのを見せられたのに等しい。

 それは意表の1つや2つ、突かれようというもの。

 しかし、異常はこれで終わりでは無かった。

 

「――『■■(■■■)』【■■■■■(■■■)】」

 

「っ⁉」

 

 夜が何事かを呟いた瞬間に、小鳥遊の腕に先ほど付けられた傷が、広がりだしたのだ。

 さながら、傷を起点としてその周辺が鮫に食いちぎられる(・・・・・・・・・)かの様に。

 明らかに、今まで夜が使った力とは一線を画している。

 咄嗟に、自分自身の手で傷の周辺の肉を削ぎ落とす事によって、対処した小鳥遊だが、その心中は穏やかではない。

 けれども、夜は更なる追撃を加え出す。

 

「――――‼‼‼‼」

 

「今度は霊術ですか!」

 

 再び距離を取った夜が、その小さな手を小鳥遊に向かってかざすと、そこから莫大な量の火炎が放たれたのだ!

 大きな轟音を響かせて、炎が走る。

 愛玩淫魔を手に入れてからの夜が同格域と比べて霊力量に優れていると言うのは先も話した通りで、それを用いて霊術を扱うのはおかしな話では無いが、問題なのはその練度。

 これまでの夜が使っていたへなちょこ霊術とは、文字通り大人と子供の差があって、思わず瞠目するのも仕方が無かった。

 

「はァッ!」

 

 迫りくる巨大な猛火に対して、小鳥遊がレイピアを突き出す。

 普通であれば自殺行為でしかないが、異能者の行動が普遍の範疇に収まる筈も無し。

 レイピアと炎が接触した途端、膨大な量の火炎が、レイピアの切っ先に収束しだし――そして消えた。

 見事な対処、だがしかし。

 

「また戦い方が変わって――」

 

「――――!」

 

 対処された途端に、またしても戦い方が切り替わる。

 再び、距離を詰めての接近戦。しかし今回は目に見えて動きが違う。

 軽やかなステップからの、高速の拳打。言ってしまえば、ボクサーの様な動きであり、やはりこれも練度が異様に高かった。

 

 ――まるで別の人間の戦い方を(・・・・・・・・・)使っている様な(・・・・・・・)

 

 夜の異様な戦い方に、小鳥遊が行った1つの考察。その正否は直ぐに示される。

 またしても動きが切り替わったのである。

 

「――――」

 

「これは……結界?いえ、攻性防壁⁉」

 

 夜の周辺を半透明の硝子の様な物が覆う。

 それは結界の霊術。しかし、普通の物ではない。

 小鳥遊が咄嗟に解析した所、その結界は多層構造になっており、かつ攻撃を加えられた場合、その1層が相手に対して散弾の様に降り注ぐ様になっているのが分かった。

 このようなタイプの結界を攻性防壁と呼ぶのだが、問題はその霊術自体ではなく、それを使って戦う生徒の1人を小鳥遊は知っていると言う事だった。

 一度7級まで堕ちてから、3級まで舞い戻り、2級にまで手をかけていると言う滅多にない経歴故に、教師の間でも注目された生徒。

 そう。攻性防壁とは、不動 明が好んで使っている霊術であった。

 次々と切り替わる戦い方に、他者が得意としている霊術。

 1つだけならば疑問の範疇だが、重なれば疑いようもない。

 

「成程、今の貴方は他人の力を扱えるという訳ですか……!」

 

 つまり、今の夜は関係を持った人間の力を扱うことが出来るのだ。

 細かい条件や、能力の詳細は分からないが、それはまず間違いないと見て良いだろう。

 完璧に再現できているという訳では無い様だったが、しかし猿真似、と切って捨てられるレベルで無いことは、実際に戦っている小鳥遊の目からは明白だった。

 

「――――――‼‼‼」

 

「くっ――⁉」

 

 小鳥遊の言葉に回答するかの様に、夜は最初に見せた自分自身の獣の如き動きを含めて計6つ。

 自分を抱いた男の戦い方を、くるくるくると万華鏡の様に切り替えて扱いながら、小鳥遊に猛然と襲いかかった!

 

 

「素晴らしい力でした――しかし後1歩足りませんでしたね」

 

「――――――」

 

 そして更に時間が経過して、小鳥遊は先程、腕に食らった1発を除けば、無傷のままだった。

 そしてそれはやはり、技術によって為されたものだった。

 勿論、容易い事では無かった。最初に、夜の獣の様な攻撃を捌いた時にはあった筈の余裕が、現在の小鳥遊には存在しない。

 けれどもやはり、教師の壁は厚かったという事だろう。

 研ぎ澄まされた練度によって、夜の攻撃は防がれきってしまったのだ。

 

「まだ……やりますか?」

 

「――――」

 

 小鳥遊の言葉に答える様に、夜の体から角や、羽、尻尾が消える――魂装の励起状態が解かれたのである。

 

 ――諦めた?…………いえ、これは――⁉

 

 けれども、小鳥遊は全身に張り巡らせている警戒の網を更に広げた。

 打つ手がなくなって佇んでいる様に見える筈の夜から、しかし本日最大の怖気を感じるのだ。

 何かとんでも無いことが起きようとしている様な……。

 

 妖しく蠢く淫靡な肉塊に世界が覆われた光景を幻視した。

 

「――『魂装(モード)』【淫夜の(ペット)――】」

 

「…………⁉」

 

 その声はカナリアの如く、美しく。しかしどこまでも無機質に。

 此処に真なる力が開放されようとして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――きゅぅ……」

 

「…………………………は?」

 

 可愛らしい声を出して、夜が倒れた。

 背筋に走る悪寒も同時に消える。それは戦いの終わりを告げていた。

 

 ――これは、成長が足りていなかったのです……か?

 

 夜が何かしらのとんでも無いことをしようとしていたのは間違いない。

 けれどもそれは発動には至らなかった。

 恐らく発動させるための力が足りていなかったのだと、小鳥遊は読んだ。

 なんとも締まらない結末である。

 

 

「ん……。ぉれ……?」

 

「ああ、起きましたか、甘土さん」

 

「ぇっと。小鳥遊先生?俺、一体どうして……?」

 

 暫くして、夜が目を覚ました。

 先程までの異様な様子は、どこにもなくいつも通りの夜に戻っている。 

 戦っていた時の記憶も無いようで、それを確認した小鳥遊は、穏やかに微笑んだ。

 

「私の攻撃に籠めた気迫にあてられて意識を失っていなのですよ。傷はついていませんので、安心して下さい」

 

「ぇぇっ……⁉ご、ごめんなさいっ!」

 

 その言葉が確かなら、当たってもいない攻撃にビビって意識を失ったと言うことで、夜は流石にバツが悪くなった。

 そんな夜に、小鳥遊は優しく言葉をかける。

 

「それなりにある事ですから、そんなに慌てなくて大丈夫ですよ」

 

「で、でも……」

 

「甘土さんの才能は素晴らしいですから、こんな事で落ち込むのは勿体ないです」

 

「ぇへへっ、な、なんですか先生。いきなりそんな事言われたら照れちゃいますよ」

 

「本心ですよ」

 

 ――本当に素晴らしい力でした。ええ、本当に。

 

 表向きは、穏やかに話しながらも、小鳥遊の心の中は他の教師や、生徒に先んじて、とんでもない才能を見つけることが出来た優越感に溢れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




TIPS

○【淫夜の■■】:発動不可。詳細不明。

○【他人の力を扱う力】:未完成。詳細不明。
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