スポーツTSっ娘は騙され、媚薬を飲まされ犯される 作:TSTS!
小山薫はTSっ娘だ。高校一年生の夏、彼は朝起きたら女になっていた。
もっとも、こういった事例は少ないながらも全国にあるらしい。
後天性性転換症候群。そう呼ばれるこの病気は、特に思春期の男女に発生する。患者は一日にして性別が変わり、容姿や体格などがガラッと変わってしまうようだ。
今のところ、治療法は見つかっていない。様々な学者や医者がこの問題に取り組んできたが、未だに病気の原因すら分かっていないのだ。
けれど、小山薫には諦めきれない理由があった。彼女は元々サッカー部だった。全国の舞台に立つことを目指し、毎日のように練習に取り組んでいた。
鍛え上げた彼の体は高校一年生にしては大きく、一年生ながらレギュラー候補に抜擢されるなど高く評価されていた。
しかし、それが今では全てが水の泡だ。女になった彼女に与えられたのは、身長150㎝未満の小さな体格に、丸みを帯びた体。走れば数十秒で息を切らし、ボールを蹴っても大した威力にはならない。当然男子のみのサッカー部からは退部を余儀なくされた。
絶望した。今まで自らの全てだと思っていたサッカーを取り上げられて、彼女は目の前が真っ暗になったような感覚を覚えたのだ。
けれど彼女は腐らなかった。いつか、自分が元の体に戻れる日が来ると信じて、小さくなった自分の体を鍛え始めた。
校外の女子サッカーチームに所属して、練習を重ねた。元より、彼女はサッカーが上手くなることに人生を捧げた人間だ。上達する日は、そう遠くなかった。
ドリブルすれば女子選手をごぼう抜きにし、放つシュートは正確無比だった。
しかし、足りない。男だった自分に比べれば、こんなもの児戯のようなものだ。彼女は本気でそう思っていた。どれだけ賞賛されようと、彼女は女としての自分の実力に興味などなかった。ただ、男に戻った日のためだけに、彼女は練習を重ねているにすぎないのだ。
同時に彼女は男に戻る手段についての情報収集も欠かさなかった。医者の発表する、後天性性転換症候群に関する論文。性転換手術の情報。ネットに転がる信ぴょう性の薄い情報。
それらを総合して、彼女は改めて自分が絶望的な状況にあることを悟った。彼女の集めた情報は、一つとして彼女に元の男の体に戻す方法を教えてくれなかった。
医者は後天性性転換症候群について「分からない」と繰り返すばかり。手術も、完全に元の体に戻るには程遠い。ネットの情報も、胡散臭いものばかりだった。
彼女は焦っていた。女としてサッカーの練習をし続けて早一年。彼女は高校二年生になっていた。このままでは、国立競技場に行くことなく高校生活が終わってしまう。練習時間について考えるなら、今すぐにでも男に戻りたいくらいだ。
焦りは冷静さを奪い、人を愚かにする。
胸を焦がすような焦燥に痺れを切らした彼女は、ついにネット上に転がる情報に縋ることになる。
それは、SNS上で情報収集していた時に見つけた一人の人物だった。
アカウント名が、「『後天性性転換症候群の民間研究家』熊谷敏夫」。プロフィールに「TSっ娘さんの悩みを解消します」と書かれていた。
リンクの乗っていたホームページを見て、彼女は驚くことになる。「患者さんを元の体に戻せます。料金応相談」と書かれていた。
これしかない。焦燥に目を曇らせた彼女は、熊谷敏夫に会うことにした。
「こんばんは。君が連絡をくださった小山薫さんかな?」
「はい。お忙しいところ時間を取っていただきありがとうございます」
礼儀正しく返事をしながら、薫は目の前の男を注意深く観察していた。ネット上で情報を見ていた時の怪しい、という印象は、少し裏切られた。熊谷は愛想のよい中年だった。人の良さそうな顔。小太りの体。小奇麗な衣服。
営業マン、と言われても驚かないような印象だ。
少なくとも、話くらいは聞いてもいいかもしれない。薫はバッグに潜ませた催涙スプレーから意識を逸らした。
「いやあ、こんな可愛い子が元男の子とはねえ。世の中分からないものだねえ」
愛想笑いを浮かべながら、熊谷は薫の容姿を褒めた。しかし、可愛い、と言われることがあまり好きではない薫は少しだけ眉をひそめるだけだった。
実際、女になった薫の容姿はかなり整っていた。くりんとした大きな目に、ぷっくりと突き出た下唇。高校二年生、と言うには少し幼い印象を受ける顔だが、アイドルでもしていてもおかしくないような可愛らしい顔だった。
夏服の制服に包まれた体の方は、よく見れば鍛えた跡が見える。ほんのりと日焼けした肌。引き締まった体。体幹がしっかりしているのだろう、立ち姿には隙がなかった。スカートから覗く足はほどほどに筋肉がついていた。
Yシャツに隠れた胸は、小さな体と同じくそこまで大きくなく見える。涼しげに開いた第一ボタンから覗く鎖骨が魅力的だ。
美味そうだ。熊谷は、舌なめずりしたい気分だった。
「それで、オレを元に戻せるっていうのは本当なんですか?」
「せ、せっかちだなあ。はは」
「こっちは、大事な高校生活がかかってるんです!」
薫は目の前の男と世間話をするつもりはなかった。一刻も早く、男に戻ってサッカーがしたい。その気持ちだけが、今の彼女を突き動かしていた。
そんな彼女の様子に、熊谷は愛想笑いを浮かべながら提案をした。
「君が望むなら、今日にでも戻せるよ」
「本当ですか!?」
薫は、ずい、と熊谷に迫った。制汗剤の匂いが、熊谷の鼻腔をくすぐる。
「うん。まあそれにはいくつか過程を踏む必要があってねえ。早速で悪いんだけど――ちょっと家まで来てくれないかな?」
その言葉を聞いた瞬間、薫は目を細めた。
「……どうして、家まで行く必要があるんですか?」
明らかに警戒度が上がった。やはり、警戒心の強い子だ。熊谷は第一印象が正しかったことを悟った。
極上の容姿をした、極上の獲物。しかし、食うのには苦労しそうだ、というのが熊谷の直感だった。
実際、家に来るように求められて少女は明らかに体を硬くしていた。よく見れば、その右手はバッグに添えられていた。ひょっとしたら、催涙スプレーでも仕込んでいるのだろうか。
あくまでにこやかに、熊谷は常套句を告げた。
「それがねえ、私の研究成果はとても外に持ち出せるようなものじゃなくてね。そもそも私は非認可で研究をしている身だから、研究成果をおおっぴらにするわけにはいかないんだよ¬」
「……本当に画期的な発明なら、大手を振って宣伝すればいいじゃないですか」
薫の鋭い指摘にも、熊谷はあくまで笑みを崩さなかった。
「公的な研究ってやつは、色々手続きに年単位で時間がかかるんだよ。実証実験とか色々ね。――でも、私が救いたいのは、今、苦しんでいる少年少女なんだよ!」
熊谷が口調を変えた。情熱的に、身振り手振りを交えて、彼は嘘の理想を語り出す。
「薬の安全性が確約できないと投薬できない? 再現性を確認しないといけない? そんなのはクソッタレだよ! 私が救いたい人たちは、今、ここで苦しんでいるのに!」
「……」
薫の視線がわずかに揺らぐ。しかし、手は催涙スプレーを忍ばせたバッグに添えられたままだった。
その様子を確認した熊谷は、トーンを落として次の言葉を紡いだ。
「でも、胡散臭いっていうのも分かるよ。ごめんね。わざわざこんなところまで来てもらって」
「いや、別に謝ることじゃ……」
熊谷の弱気は態度に、薫がわずかにたじろぐ。
イケる。熊谷は確信した。
「信用できないなら、今回はいいよ。でも、私はこれでも忙しい身だからね。患者さんが他にもいるんだ。次会えるのは……3年後かな」
薫は、高校生であるうちに男に戻りたいらしい。彼女の言葉からそう察した熊谷は、3年という期間を提示した。
「ま、待ってください!」
薫は、焦りと共に熊谷に声をかけた。目の前に可能性をぶら下げられてお預けされそうになった彼女は、もはや冷静ではいれなかった。
「う、受けます! 受けさせてください!」
熊谷が、口角をあげた。
「こ、こんな普通の家で手術できるんですか?」
「ああ、手術っていうより投薬がメインだからね。ただ、秘匿性のことを考えるとやっぱり自宅がベストなんだ」
辿り着いたのは、何の変哲もない一軒家だった。
一緒に歩いて熊谷の家まで行く間、薫はずっとバッグに手を添えたままだった。
警戒はしてるが、目の前の好機は見逃したくない、ということか。熊谷は、少女が思ったよりずっと精神的に追い詰められていたらしい、ということに気づいた。実に好都合だった。
「さ、上がって上がって」
熊谷が玄関の扉を開けると、薫は恐る恐る中に入った。同時にあたりをキョロキョロと見渡す。
特別おかしいところは見受けられなかった。物の置いていない廊下。小奇麗に整理されたリビング。
リビングに通された薫は、テレビの前に置かれたソファーへと座るように誘導された。
他人の家にいることに、少しソワソワとしながらどこかに行った熊谷を待つ。
警戒心は、まだある。熊谷が何かおかしな動きをしたら、すぐにでも催涙スプレーを吹きかけて逃げ出すつもりだった。
「お待たせー。早速だけど、この薬を飲んでくれる?」
薫の目の前に差し出されたのは、一粒の錠剤と水の入ったコップだった。
未だに警戒心のある彼女は、本当に大丈夫なのか、というように熊谷を睨んだ。
「……次の子もいるから、あんまり時間かけないでほしいかな」
熊谷は、初めて僅かな苛立ちを見せた。温厚だった彼のその態度に、自分が悪いことをしている気分になった薫はおずおずとコップを取った。
「ちょっと気分が悪くなるかもしれないけど、我慢してね」
錠剤を手に取り、眺める。ここまで来ても薫はまだ迷っていた。目の前の男を、本当に信じていいのか。
迷った薫の脳裏に思い浮かんだのは、男だった頃の楽しいサッカーの時間だった。思い通りに動く体。息切れしない心肺能力。鍛え上げたキック力。
もう一度、あの時に戻りたい。覚悟を決めて、薫は錠剤を水で流し込んだ。