一騎当千 VtuberReincarnation 作:宣伝部長
「今日の配信は・・・ここまでっと」
いつものように深夜配信を終えたオレは大きく背伸びをして時刻を確認した。
もう深夜の3時過ぎだ。
普通ならデイリークエストの残ったゲームの作業に入るのだが、今日は予定していた事があったのである。
「今日から一騎当千の小説を書く為に今から徹夜で最初から見直しますかねぇ~♪」
そう言ってエナドリを片手にパソコンの前に座ったのだが、不意にモニターが眩しいぐらいに光りだしたのである。
「ちょっ!?こ、これってどういう・・・・・!?」
気付いた頃にはその謎の光に吸い込まれるようにオレは姿を消していた。
「・・・・・んんっ?ここって・・・どこ???」
恐る恐る目を開いてみたが目の前に広がるのは海。
さっきまで自分の部屋に居たのだから訳が分からない。
いきなりの展開に頭がパニック状態に陥るがふとある事に気付く。
「なんか・・・違和感を感じる」
両目を開けているはずなのに左側だけ暗いまま・・・。
前髪も少し長い・・・と言うか紅色になってる・・・?
それにこの赤色のパーカーは見覚えが・・・ある。
胸もかなり大きなモノを・・・・・・・・・・・。
「な、なな、なんでオレにおっぱいがあるんじゃい!!!!!」
急に大声を出したせいで周りの視線に気付いたオレは慌てながらトイレを探す。
そして、トイレを見つけ男性トイレに入ろうとしたが自分は女性だというのに気付くがまだ確証もないから間を取って多目的トイレに入ることにした。
「ははっ・・・・・マジかよ」
鏡に映し出されているのは、
『鳳月焔』
自分が作り上げたVtuberの姿そのままなのであった。
「ゲームの世界・・・って訳じゃないよな?優柔不断なく動くし・・・胸の重みが一番リアルだしな」
胸を揉み上げながら馬鹿げた事を口にするがまだ頭の中はパニック状態で何故この体になってしまったのか理解出来ない。
それにこういった展開はよく聞く異世界転生モノだろうけど、Vtuberとして生涯を遂げるようなヤツが今までいたのか?
この状況を受け入れるしかないのは事実であり、避けられないのだとしたらまずは自分が何処に誘われたのかと言う事である。
「・・・・・まずはこの世界が自分が居た世界とは違うと言うのは理解出来る。この景色はつい最近アニメで予習済みだから間違いないにしろ本当にそうなのかと言う判断材料が・・・・・」
「ねぇねぇ!!そこの君!良かったら俺達と一緒にどっか行かない?」
「・・・・・んっ?あぁ・・・オレに言ってたのかそう言うのはめんどくさいから・・・パスで」
「おいおい!!俺達が誘ってんだから遊びに行くに決まってんだろぉぉっ?」
「やっぱDQNは昔からいけ好かねぇな・・・・・しかも、勾玉付きか・・・確定だな」
「何ごちゃごちゃ言ってやがんだこのクソアマァァァッ!!!!」
この世界は一騎当千の世界で間違いないだろう。
左耳に付けられている勾玉がその証拠である。
あの勾玉には、三国志・三国志演義の英雄・武将の魂が封印された代物と称されている。
しかし、見覚えのない顔ぶれだからモブ的な存在であろう。
色も緑色である事から一番下のEランク。
ランクは、E、D、C、B、A、特A、Sとあり、それぞれの英雄・武将たちの名前と継承者が一致する者が着用すると「闘士」と呼ばれている存在となる。
その武将に応じた力を最大限にまで引き出せると言うのだから一般人よりは強いはずだと認識しているつもりだ。
胸ぐらを掴まれてしまうと胸元のファスナーが降りると胸がぼろんと飛び出した。
その光景に男達は歓声をあげてはしゃいでいた。
普通の女の子なら悲鳴の1つや2つあげるだろうがオレは左右に首を曲げて骨を鳴らしてみせた。
「喧嘩・・・・・解禁じゃいっ!!!!」
開戦の合図と共に胸ぐらを掴んで来た男の股間を容赦なく蹴り上げた。
その強烈な一撃に男は失神・・・周りにいた男達もざわつきだす。
学生時代にイジメを受けていたオレは多勢に無勢のはずなのに1対5と言う状況にもかかわらず5人を病院送りにした過去がある。
相手が悪いのは学校も認めていて一目瞭然なのだが、病院送りにさせたせいか大好きな両親が奴らの親に頭を下げているのを目の当たりにした。
それ以降何をされても絶対に手を出さない事を誓って生きて来ていたのだ。
しかし、その枷はこの世界に来てしまった事により、砕け散ってしまったのであった。
「この世界じゃ生きるか死ぬか・・・決めるも己次第っ!!まずは自分の実力テストと行きますか?」
1人の女の子に対して残っていた5人の男達が挑む。
「うおぉぉぉっ!!」
1人が両手を上げて襲い掛かる。
「・・・シッ!ハァッ!!・・・・・次っ!!」
素早い足払いで体勢を崩した相手の顎を下から掌打で突き飛ばすと次のターゲットに視線を向ける。
「テ、テメェ・・・うぅっ!?」
「判断が・・・遅いっての!!」
わなわなと身を震わす相手に容赦なく前蹴りで鳩尾を貫くと倒れ込みそうになっている相手の横っ面を裏拳で殴った。
「この女・・・いい気になりやがって!!」
「・・・・・ふ~ん」
「いいぞっ!!そのまま抑えつけとけよっ!!」
羽交い絞めによって動きを封じ込められてしまう。
この好機に鉄バットを持った男がフルスイングの構えに入る。
「足元が・・・お留守なんだよっ!!」
「いでぇぇぇっ!?!?・・・がぁっ!!!!」
踵で思いっきり羽交い絞めして来た男のつま先を踏み抜く。
あまりの痛さに開放してしまったのと同時に男はフルスイングで胴を薙ぎ払われた。
「す、すま・・・んぐぁっ!?!?」
「はんっ!人の心配してる場合かってんだよ!!」
謝ろうとした男に容赦のない延髄蹴り。
意識を手放して顔面から倒れる男に対してオレは叫んだ。
「お、お前・・・何者なんだ!!??」
「そんなモノ教えるかってのっ!!!!」
最後の1人対して綺麗に脳天目掛けて胴回し蹴りを決めると大きな深呼吸をした。
「こっちの世界でのはじめての喧嘩にしちゃ~上出来だな。収穫もかなりあったな・・・女の身体になったから少し不安ではあったけど関係なかったな」
あんなに身体を動かしたにも関わらず、息切れ無し、身体に違和感無し、強さ申し分なし!!
しかし、考えたように自然に身体が動いたのには正直驚いていた。
学生時代から格闘技に興味があって知識や映像から我流で極めて来たのだが、ここまで気持ち良く身体を動かせたのは久し振りだった。
「・・・はぁぁ、身体動かしたら腹が減ってたな。こいつらからカツアゲして街に繰り出すか」
そう言って5人の財布から適当にお金を抜き取ると口笛を吹きながらオレは一度街の中へと消えたのであった。
「それにしても・・・んくんくっ・・・この世界が・・・・・はむっはむっ!・・・・・アニメ、漫画、ゲームどの時系列を辿っているかなんだよな」
ファミレスで料理を頬張りながらそう口にした。
そう・・・物語が微妙に違う点が所々ある為にかなり重要な内容となる。
「・・・・・待てよ、そもそもオレと言う存在がこの世界に来てしまった事でオリジナルな展開になってしまう・・・・・と言うよりも歴史を変えられるかもしれないと言う訳だ」
突然の発想に頭の中で色々な事が巡り巡っているがオレの中で阻止したい事が1つだけあった。
「もしかしたら・・・・・呂布奉先を救えるかもしれないんじゃないか???」
呂布 奉先。
緑髪のツインテールで小麦色の肌をしたコギャル。上半身はブレザーを直接着込み、下半身はミニスカートにルーズソックスを着用している。
つまりは・・・・・オレの推しの1人である。
原作では夏侯淵との戦闘後に病気が悪化して死亡。
アニメ版では董卓を道連れに自決。
死の運命から逃れられないようなエピソードに涙したのを覚えている。
しかし、今の自分にはその死の運命を打ち消せるかもしれない選択肢がある。
「だが、呂布奉先は難病に悩まされている設定だったし、それをなんとか乗り越えられたのだとしても・・・董卓をどうしたものか」
董卓 仲穎。
高1で関東一円を没落させ、多くの学校および闘士達を統率する実力者で、その異様さからは「魔王」と呼ばれ恐れられている。
簡単に言うなれば、序盤にしてラスボスとのご対面である。
オレの実力はまだ未知数。
一騎当千をご存知の方なら理解出来るはずだ・・・あの男の強さに・・・・・。
「南陽学院の力は借りる前提として・・・関羽・・・いや、彼女はあの子が関わらないと動かないから無理か・・・。だとすれば、他に有力な闘士は・・・・・あっ!!!!」
バンッと机を叩いて立ち上がったオレに視線が集中するのに申し訳なさそうにぺこぺこと頭を下げながら会計を済ませるとすっかりと暗くなってしまった街中を歩きながらとある闘士の存在を思い出す。
「あの情報が本当であったのならばかなりの戦力になるし、彼女なら呂布の為に力を貸してくれるのは当然だろうし問題はないはず。やる事は決まった・・・・・まずは今日の疲れを取るのに宿を見つけて早めに休んだ方が賢明だな」
自分の中で一段落したらいきなり疲れが出て来たらしくオレは近場のネカフェで一夜を過ごす事にした。
いきなりの異世界転生(?)。
まだ自分の中でもどうしてこうなったのかは理解が落ち着かないがオレはやりたい事をやろうと思う。
オレは色んな感情を胸に眠りについたのであった。