一騎当千 VtuberReincarnation 作:宣伝部長
「・・・・・遅い」
あの後のメールで時間指定までされたのに左慈の姿はまだない。
今日の服装は甘寧のままだが、黒色のマスク、腰にはトンファー、両手には黒色のグローブを装備している。
あまり素性を晒すのは後々面倒だと思い、色々と詰め込んだらこの格好になった。
「待たせちゃったかな?甘ちゃん♪」
「・・・・・出会って早々に胸を揉まないでくれないか?」
背後からしれっと胸を鷲掴みしながらウインクしてくる左慈に対して目を瞑ったまま注意する。
「とか言っちゃって~甘ちゃんの身体はどう思ってるのか・・・なぁっと!?」
胸から手が下に進もうとした時に左慈の目の前にトンファーが突きつけられていた。
「本物の甘寧が死んだと言うのに貴方は何もオレに問わないんだな。それとも董卓に言われていた南陽弱体化が達成されたから万々歳って感じかしら」
「どうして甘ちゃんがその事を・・・・・?」
「貴方には関係ない・・・先を急ぐ」
トンファーを元に戻すと無言で階段を登り始める。
すると左慈も頭をくしゃくしゃとしながら後に付いて歩き出す。
「・・・ってか、本物の甘寧の勾玉はどうしたの?」
「禁じ手を使った・・・最初は利用しようかと思ったが勾玉に飲み込まれる可能性もあるから破壊した」
「へぇ~・・・それで、本物の甘寧がこの世を去り、可愛らしい甘ちゃんが誕生した・・・と」
「殺したくはなかったが未来を見据えたら邪魔な存在になるかもしれないんだ」
「その言い方だと甘ちゃん・・・君には何処まで先が視えているんだい?」
左慈の問いかけにピタッと足を止める。
「すべてだよ・・・だからオレはオレにしか出来ない事しかやらない・・・・・いや、やれないんだ」
「そうなると甘ちゃんの前ではすべてが曝け出されているのか・・・いやぁ~考えただけで体が震えちゃうねぇ~」
「思ってもない事をあまり口にしない方がいいぞ」
「・・・・・それじゃあさ、オレの事は止めなくていいの?」
見つめ合う2人。
お互いに視線を外さなかったが、オレは今回の作戦内容を思い出す。
「貴方を止める理由はない・・・貴方は最初からオレに止めて欲しいから呼んだんじゃない・・・そうでしょ?」
「ふ~ん・・・じゃあ甘ちゃんはなんでオレの誘いに乗ってくれたのさ?」
「オレはこの洛陽学院に用があるだけだから・・・じゃっ!!」
階段を登り切ったら振り返りもせずにオレは洛陽学院へと向かった。
「な~に考えてんだろうなぁ~甘ちゃん」
後ろ姿を見送った後に真剣な表情に戻るとスイカ畑へと入っていった。
「だぁ~!!こうやって潜入したのはいいけど、洛陽学院の内部はぜんっぜん知らないのよね」
キョロキョロと廊下を歩きながら溜め息まじりに探索をしていた。
しかし、あまり知らない洛陽学院に対して半分迷子状態であった。
「そこの貴女、どうかしたんですか?」
「あぁ~怪しい者じゃありませんよ!ただちょっと道に迷っちゃっただけなんですよ!!」
「道に・・・?それにあまり見ない風貌ですし、良かったらお顔を見せて頂けないですか?」
「・・・・・陳宮さん?」
聞き覚えのある声にゆっくりとフードを脱いで顔を晒すと目の前には心配そうに顔を覗かせる陳宮の姿があった。
推しの登場に感極まってぶわっと涙が溢れてしまう。
「えっ、えぇ・・・!?ど、どうかしたんですか!?」
「い、いやいや、ただ急に泣きたくなったので涙が・・・・・」
「は、はぁ・・・器用な方なんですね」
「えぇ、よく言われます」
いきなり泣き出すオレに少し引き気味の陳宮。
そりゃあいきなり泣き出す奴が目の前に居るのだから当然の反応だろう。
必死になって泣き止むとオレは彼女に伝えたい事を口にする。
「そんな事よりもオレは呂布さんと陳宮さんを救いに来たんです!!」
「私達を・・・ですか?」
「このままだと最悪な未来が2人を待ち受けているんです。まぁ、いきなり現れたオレの言葉を信じれないのは百も承知ですけど・・・」
「その話は貴女の言ったように容易に信じれませんね・・・貴方の言葉には信頼性が少ない」
「・・・・・呂布さんが難病を患っているのが原因でもある・・・っと言ってもこの話を信じられませんか?」
「・・・・・っ!!!???」
オレの衝撃的な一言に陳宮の表情に緊張が走った。
「それは本当・・・なんですか?」
「オレを信用出来ないのでしたら直接呂布さんに聞いてみてください。その後呂布さんと相談されてからオレの事を信頼出来る人間だと思われたらココに連絡を下さい。その時はすべての事をお話いたしましょう」
「・・・承知しました」
「・・・・・それでは」
陳宮の悲しげな表情に心痛む所ではあるが、今はこの場をから逃げ出そうとした。
しかし、ハッと思い出したようにとある問い掛けをしてみた。
「あの・・・この洛陽学院に誰かが幽閉されてるって噂知らないですか???」
オレは必死にとある場所に向かっていた。
陳宮から聞いた話によると洛陽学院のずっと奥に謎の祠が存在すると言う。
しかし、ごくわずかの闘士にしか内容は知らされておらず、陳宮は一度も関わった事がないと言う。
オレはその内容に自分の知識を信じてその場所へと辿り着いた。
目的地にはあからさまに怪しい祠があり、警備として1人の闘士が居た。
しかし、警護をしていた闘士の顔を確認した瞬間にオレは殺意と共に臨戦態勢に入っていた。
「(アレは・・・李傕!!陳宮を傷モノにする悪漢!!)」
「んっ?止まれ、ここはお前のような勾玉の無いヤツが来るような場所じゃ・・・」
「問答無用っ!!」
推しに危害を加える者には問答無用とばかりに両手にトンファーを握り締めて突撃する。
しかし、すんなりと躱されるが李傕の頬には切り傷が浮かび上がる。
「テメェ・・・今の攻撃、本気じゃねぇか」
「当然だろ?オレはそこに用があるんだから邪魔者には消えてもらわないと」
「はんっ!ちょうど体も鈍ってるみたいだからかかってきな」
「言われなくてもそうさせてもらう!!」
慣れないながらもトンファーでのリーチを活かして間合いを取りつつ、様子を見る体勢に入った。
「(感情的になるな・・・オレ!!コイツの戦闘スタイルは未知数・・・しかも、闘士と闘うのは初陣ときたもんだ。ここは相手の出方を視てから行動した方が良さそうだな・・・)」
だが、その思惑を読み取ったかように李傕は半ば強引に間合いを詰めて来た。
「おせぇんだよ!!」
「はやっ・・・があぁぁぁっ!!??」
懐に迫られて体が反応するよりも先に腹部に手を置かれると気を放たれ吹っ飛ばされてしまう。
初めての気での一撃に腹を抑え、ふらつきながら立ち上がる。
「おいおい、まだ一発しか打ってねぇのにもうグロッキー状態か?」
「うぶっ!?・・・それがどうした・・・・・」
吐血しながらもまだ諦めない眼差しで睨み返す。
「Eランク以下の雑魚には相応しい格好だなって思っただけだ!!」
「・・・はっ、言っとけや三下」
「なぁっ!?コイツ、わざと弱ったフリを・・・っ!?」
「見様見真似っ!!馬蹄崩拳っ!!!!」
「ごあっ!!??」
左手で攻撃を受け流しながら相手の体勢を崩し、その一瞬の隙に全身全霊の崩拳を叩き込んだ。
油断もあったのかクリーンヒットした李傕はズルリッと崩れ落ちる。
「わざとなわけ・・・かはぁっ!!・・・・・ねぇんだよ」
必死の一撃だったのを痛感させるようにまた両手を付くと吐血していた。
打撃に関する痛みは喧嘩である程度理解出来るが、こう言った気を扱う喧嘩は初めてだったのでかなりのダメージが内部に残っているみたいだ。
オレは満身創痍ではあるものの入口を塞ぐしめ縄をくぐって中へと進んだ。
祠の中は薄暗いものの両壁には松明が灯っている為に先に進むことが出来た。
「これでお目当ての人物が居なかったらオレの苦労は・・・」
「おい、そこに居るのは誰だ?董卓・・・って訳じゃなさそうだけど・・・・・」
ハッと声をした方に目を向けると牢屋の中に胡坐をかいてこちらを睨む女性の姿があった。
彼女の名前は、貂蝉。
董卓の手によって長らく幽閉されているとゲームでのみ噂されていた人物である。
本来なら呂布が亡くなった後に彼女を生き返らせるべく活躍すると聞いている。
だからオレは彼女に協力を仰ぎに来たのだ。
「貴女を救い出しに来た者ですよ・・・ゴホッ・・・」
「おいおい!!そんななりになってまでアタシを救おうなんてとんだバカ野郎だな」
「へへっ・・・呂布さんの為ならお安い御用って訳でさ」
「・・・奉先っ!?お前、奉先の為にアタシを救いに来たのか!!??」
呂布と言う名を聞いて貂蝉は立ち上がり、驚いたように声をあげていた。
董卓にどのように言われて幽閉されていたのかは不明だが、貂蝉も呂布を慕っている人間の1人なのである。
史実上でも呂布と貂蝉は惹かれ合う存在だ・・・オレが語るほどでもない。
「えぇ・・・このままだと勾玉の運命によって命を落とす事に・・・・・」
「そ、それを阻止出来る手立てがあるからお前はアタシを頼って救いに来たってのか?」
「貴女が呂布さんを慕っているのは知っていますのでお力添えいただけないか・・・と」
「・・・・・お前、そこにある大剣をアタシに寄越せ」
近くにあったのは身の丈ほどある大剣・・・そう、貂蝉の愛剣である。
オレは満身創痍の身体に鞭を打ちながら大剣を牢屋の中の貂蝉に手渡した。
すると彼女は呼吸を整えたかと思うと一瞬にして牢屋をぶち壊したのである。
「・・・・・し、信じてくれるんですか?」
「はんっ!そんなにボロボロになってまでアタシに会いに来てそんな事言うヤツを信じない訳にはいかないだろ」
「あ、ありがとう・・・おわっ!?!?」
大剣ついでに反対の肩に軽々と担がれてしまう。
「それで・・・今から鬼退治に行くのか?」
「い、いえ・・・まだ機が熟していないので今はこの場から逃げましょう」
「逃げるって・・・奉先はどうするんだよ!?」
「まだ死んだりはしませんし、呂布さんの方にも先に手を回しております」
「へぇ~・・・やるもんだな、アンタ」
「えぇ・・・オレにしか出来ない事を全力でやるだけですから」
2人は祠から出るが貂蝉は倒れている李傕に目をやった。
「(コイツ・・・まさか、李傕をやったのか?奉先よりは劣るにしてもまがいにもAランクの闘士だったはず・・・それを勾玉のないコイツが倒したってのか?・・・・・不思議なヤツだ)」
「貂蝉さん・・・オレの顔になにか付いてますか?」
「あぁ・・・きたねぇ面してたもんだからな!」
「必死だったんですから仕方ないじゃないですか!!」
「だぁぁぁっ!!耳元で叫ぶんじゃねぇよ!!それで、目的地は何処なんだ?」
「この場所に向かってください・・・・・えっと・・・あぁ・・・協力者がいますので!!」
「わかったっ!!」
そんなこんなで2人はとある目的地に向かうのであった。
その目的地とは・・・・・。
「は~い、どちら様ですか・・・って、本当にどちら様ですか!?!?」
選ばれたのは、周瑜 公瑾の家でした。
「あはは・・・どうも、周瑜くん」
「君は・・・あの時の!?どうして僕の家がわかって・・・」
「そんな事よりもちょっと訳ありなんだ・・・今日だけでいいんだ泊めてくれない・・・かな?」
「えぇっ!!??」
何かを言いたげな周瑜ではあったが、不意に後ろから誰かが来たみたいである。
「どったの?公瑾」
「伯符か・・・別に君には関係のない事だから・・・・・」
「あぁっ!?この前私を襲って来た・・・・・人じゃないみたいだね。ってか、ボロボロじゃん!!家に上げてあげなよ!!」
「はぁ~・・・・・わかったよ、こうなった伯符はもう何を言ってもキリがないからな・・・2人共どうぞ上がって下さい」
「なんにもない所だけどゆっくりしていってね!!」
「伯符が言わない!!」
「コイツらが本当に協力者になるのか?」
「あはは・・・大丈夫ですよ。心強い味方ですから」
目の前でコントのようなやり取りを見て呆れる貂蝉に対してオレは力強く頷いて見せた。
「大闘士大会は単なる闘士どうしの潰し合いなんですか!?」
「洛陽学院は反董卓軍殲滅を図っている様子だ」
「そんな・・・これじゃあ董卓の思う壺じゃないですか!!」
「このままだとそうなってしまうがオレには策が・・・・・」
「公瑾、おかわりっ!!」
真剣な話し合いのムードをぶち壊すように元気いっぱいの孫策が割って入る。
「伯符・・・今、大事なところなんだからおかわりくらい自分で入れなよ」
「だって、だって!!2人が難しい話を始めるのが悪いんじゃん!!」
「この話はかなり重要なんだ!僕達は董卓に踊らされているんだ!!」
「へぇっ?私踊ってなんかないよ・・・?」
「・・・おかわり貰うぞ」
「あぁ・・・どうぞ」
馬鹿な発言に場が凍り付くも貂蝉はしれっとおかわりをしていた。
オレも空腹には勝てない・・・がっつくように食べながらさっきの続きを話す。
「さっきの事は・・・んくんくっ!・・・他言無用にしてもらえるかい?」
「どうしてです?この事を他の学校にも流せば反旗を翻す一手に・・・・・」
「そうなる前に・・・はぅはぅっ!・・・董卓に気付かれてしまえば、先に手を打たれてしまって・・・もぐもぐっ・・・すべてが水の泡になる可能性がある」
「確かに・・・じゃあどのようにすればいいんですか?」
「さっきも言ったでしょ?オレにはちゃんと策があるってね♪」
ご飯を食べ終えるとおちゃめにウインクをして見せた。
「それでぇ~・・・しばらくの間泊めて頂きたいなぁ~と思っているんですけど~・・・・・」
「はぁ~・・・この一件が決着するまで・・・ですよね?」
「えへへ~・・・何から何まで本当に申し訳ないです」
「別に構いませんよ、あの時の縁でもありますし、女性に野宿なんてさせられないですからね」
「なんて優しいんだ!!周瑜く~ん!!」
「だぁぁぁっ!!??当たってる!!当たってますってぇぇぇ!!!!!」
と言う訳で宿泊先をゲットする事に成功した。
女の体で良かったとこの時だけそう思う事にした。
オレと貂蝉は離れ家で並んで寝る事になった。
久し振りの布団に秒で夢の中に落ちたはずだった・・・のだが、急な熱さに飛び起きてしまう。
「あづっ!?・・・はぁ・・・はぁ・・・・・」
「ふあぁ~・・・何かあったのか・・・って、どうしたんだその目はっ!?」
「・・・・・目?」
恐る恐る両目を触るが、自分ではなにが起きているのが理解出来なかった。
「貂蝉さん・・・オレの目どうなってるんです?」
「えっと・・・眼帯してた方の目に炎が浮かび上がってやがったんだ」
「・・・・・炎・・・ですか」
まだ自分自身があまり解らないのもあって他に変化がないか服を脱ぐと立ち上がる。
「おい!いきなりどうしたんだ」
「いえ、他に変化がないか見てもらおうかと・・・・・」
「・・・・・ないっ!!」
「あはは・・・そうですか」
強めに言い放たれた言葉にいそいそと服を着直していたが、自分自身しか解らないある事に気付いた。
腹部にあったはずの痛みが完全になくなっているのである。
あの初体験とも言える気での一撃を受けてずっと気持ち悪いのが残っていたはずなのにその違和感自体が完全に消えているのである。
オレはその事について立ったまま考えていたが、ハッと貂蝉の視線に気付いて布団に潜り込んだ。
「あはは・・・お、お騒がせしましたぁ~」
「おい、聞いてなかったが明日はどうするんだ?」
「とある学校に一時的な同盟を持ち掛けに行こうと思います」
「へぇ~・・・何処に?」
「許昌学院と成都学園です」
「その2校だけか?」
「えぇ・・・その2校が重要なんです。ちなみに貂蝉さんはお留守番です」
「それはどういう事だっ!?」
「当たり前じゃないですか!幽閉されていた貴女を探して洛陽学院の連中が動いている可能性もあるんですよ!・・・ですから周瑜くんにお願いしてこの場に身を隠す事が出来ているんです!呂布さんを救う為にもじっとしていて下さい!!」
「お、おう・・・わかった」
こう強くは言ったものの本当に実現出来るのだろうか・・・。
架空の戦いと呼ばれていた・・・『虎牢関の戦い』を・・・。
董卓を唯一退けたと言われている戦い・・・・・。
その為にも3校共闘を計れるように尽力しなければいけない。
そして、退ける戦いではなく・・・絶対にヤツを倒さなければならない。
諸悪の根源と化した・・・董卓を・・・・・。
「いきなり大事な話があるから2人っきりで話がしたい・・・って、もしかして夜のお誘いかしら?ねぇ・・・陳宮」
月明かりが照らす公園のブランコに呂布と陳宮が座っていた。
呼び出された呂布は少し楽し気な雰囲気ではあったが、陳宮は俯いたまま暗い表情であった。
「呂布さん・・・貴女が難病を患っていると言うのは本当の事なんですか?」
「・・・・・その話、誰から聞いたの?」
「名前は知りませんが・・・今日知り合った女の子からです」
「・・・・・そう」
「やっぱり本当なんですね」
2人の間に長い沈黙が続く・・・。
すると陳宮はふと思い出したように紙切れを呂布に手渡した。
「・・・・・コレは?」
「この秘密を教えて下さった女の子の連絡先です。彼女が言うには私と呂布さんを救う為に洛陽学院に来ていたと言っていました。私は彼女を信じる事にしました・・・後の事は呂布さんにお任せします」
「そうね、一度会ってみないといけなさそうね」
紙切れを胸元に入れると黄昏るように自分達を照らす月を見上げるのであった。