神聖戦姫ヴァルキュリア・ガーネット 作: 霜月ナル(元Hpinch_like)
元々、「某スタイリッシュアクションゲームみたいな変身ヒロインアクションゲーム作りてー」と妄想した作品でサブタイトルの名前付けにそれっぽさが出ます。
基本的にエロは敗北IFのみです。
初めてのオリジナル変身ヒロインなので楽しんで頂けたら幸いです!
20XX年3月26日 日本のとある地方都市
学生達が春休みに入り、気温も暖かくなってきた頃。
火神サクラは幼馴染みの七海アヤメと自身の誕生日を祝う食事会をしていた。
「誕生日おめでとう、サクラ」
「うふふ、ありがとうアヤメちゃん」
最近出来た高級ケーキカフェの個室で誕生日会プラン用のケーキを食べる二人。
二人とも裕福な家庭の育ちで、ケーキを食べる所作が美しい。
サクラはニコニコと微笑みながらケーキを味わい、アヤメは一見黙々と食べているがスプーンを口に運ぶスピードは速い。
対照的な二人だが、家族ぐるみの付き合いで不思議と馬が合い小さい頃から一緒に遊ぶ仲だった。
サクラはアヤメの姉『七海ヒオウ』とも仲が良い。
「ほんとはお姉ちゃんも来るはずだったんだけど、自宅のラボで急な仕事の作業中」
「ヒオウさん、お忙しい方ですから。なんでも新しい研究を始めたとか?」
「そう。ちょっと基礎理論を盗み見たけど面白そうだった」
あらあらと困ったように笑うサクラ。
七海姉妹は天才姉妹として有名で、数々の発見と発明を世に送り出してきた。
ヒオウが基礎理論を構築し、アヤメが発展/応用させ実現化する。
それぞれの才能を補完し合う関係性で理想的な姉妹だ。
最近ヒオウは国家機関へと所属するようになったらしく、忙しそうにしていた。
「そうそう、これ。プレゼント」
「今年もありがとうございます。今回は何でしょうか?」
「開けてみて」
ラッピングされた手のひらサイズの箱を開けると、中から出てきたのは指環だった。
大きな宝石が付いているわけでは無いが、薄く赤色にコーティングされている。
「ガーネットを溶かしてコーティングしてみた」
「え、アヤメさんの手作りですか!?」
コクコクと頷くアヤメ。
幼馴染みの誕生日とはいえ、手作りの指環を贈るというとまるで――
「――結婚指輪みたいですねぇ」
「――!?」
思わずサクラが呟くと、無愛想な表情のまま顔を真っ赤に染めるアヤメ。
アヤメはサクラに気づかれないよう、彼女が指環を眺めている内に水を飲んで心臓を落ち着かせていた。
「……ん、どうかしましたかアヤメさん?」
「な、なんでもない。そろそろ時間だし店を出よう」
「?そうですね、行きましょうか」
アヤメは会計を行うためレジへと向かう。
個室で一人になった後、サクラは微笑みながら指環を『左手の薬指』にはめて、店の出口へと歩いて行った。
店の外は夕暮れ時になり、街を赤く照らしていた。
「サクラ、待たせ――!?」
アヤメが会計を終え、店を出るとサクラの『左手の薬指』にはまる指環を見て固まる。
確かにアヤメは『そういうつもり』で指環を贈ったが、口には出していないし赤くなった顔を見られてもいないはず。
そう考え、冷静を装いながらアヤメはサクラに話しかける。
「わ、私の家に行って夕食の準備だよね?」
「ええ、料理はもう用意してあるんでしたよね?行きましょうか」
「う、うん」
二人は七海家へと向かって歩いて行った――
火神サクラは七海アヤメを愛している。
サクラの両親は彼女のことをとても愛していたが、出張が多いため家には殆ど高齢の使用人しかいなかった。
兄妹のいないサクラには遊び相手がいなく、日々勉強と武術を習うだけ。
生活に困らないが、特に楽しみの無い日々。
彼女の目に映る世界は灰色だった。
ある日、両親が帰ってきて友人家族を連れてきた。
『あら?アヤメったらどこに行っちゃったのかしら?』
『あの娘は自由だからなぁ~。すまない、娘が迷惑をかける』
『元気なことは良いことさ――』
両親達が話し込み始め、手持ち無沙汰になったサクラは家にある図書室へと向かった。
絵本から難しい本までそろっており、暇な時にはいつもそこにいた。
本を読んでいると時間が進むから。
しかしこの日は違った。
いつもなら誰も居ないが今日は先客がいたのだ。
黙々と本を読む少女。
読んでいるのは絵本ではなく、年不相応な科学の本。
一見無表情だが、本を読み進める目は輝いている。
(あの娘の周りだけ、世界が鮮やかに見える――)
『――ねぇ、あなたは誰ですか?』
『ん、アヤメ。七海アヤメ』
それから二人は一緒に遊び、学ぶ友達となった。
彼女のお陰でサクラの世界が鮮やかになった。
サクラにとってアヤメのいない世界など考えられなかった。
「ふふん♪」
プレゼントされた指環を撫でる。
アヤメからのプレゼントである指輪の意味と彼女の想いをサクラは理解していた。
しかし、敢えて気づかないふりをしている。
からかうとアヤメの表情がコロコロ変わり、可愛いからだった。
一見すると無表情でクールなアヤメだが、よく観ると口角が上がってたり頬が緩んでいたりする。
サクラはそんなアヤメを観察するのが好きなのだ。
ただ、サクラはそろそろ素直になる時が来たのかもしれないと思っていた。
誕生日という特別な日に指環を贈られたのだから。
「ね、ねぇ、サクラ?・・・・・・指環のことなんだけど」
「うん、どうしたの?」
七海家へと向かう途中、アヤメがおずおずと尋ねてくる。
サクラは気づかないふりをしながら微笑んで応えた。
アヤメは目を泳がせて、恥ずかしそうにしながらも意を決する。
「わ、わたし・・・・・・サクラのことっ!――え?」
「ん?アヤメちゃん?どうしたの?」
「あ、あれ――」
サクラはアヤメが指さす方へ視線を向ける。
そこは小さい公園で日が落ちた今は誰もいないはずだが、何か人影のようなものが見える。
サクラは目を凝らしてよく観てみた。
「何なんですか、あれ・・・・・・!?」
それは、まるでファンタジー世界から飛び出してきたような化け物。
緑色の肌で身長は子供ぐらい小さく、お腹が膨れている醜悪な見た目をしている。
所謂、ゴブリンとされる魔物にそっくりだった。
「な、何かの撮影とかでしょうか?映画とか?」
「い、いや、それにしてはリアルだしなにより存在感がある」
物陰からゴブリンらしきものを観察する二人。
よく映画などで使われるアニマトロニクスにしては動きがなめらかだし、駆動音もしない。
立体映像の可能性もあるが、輪郭はくっきりとしているし陰もしっかり落ちている。
本当に存在しているのだ、ゴブリンが。
「ど、どうします?つい、観察しちゃってますけど・・・・・・」
「とにかく、一度ここを離れよう」
アヤメの言葉にサクラは頷き、そろりそろりとその場を離れようとする。
その時、ドンッとサクラが何かにぶつかってしまう。
「あ、すみません・・・・・・って、えぇ!?」
「ギイャアアア!」
いつの間にか、後ろに別のゴブリンが立っていた。
明らかに友好的では無く、手に持っている棍棒を振り上げている。
慌ててサクラは棍棒を避け、アヤメと共に走り出した。
「他にもいるなんて聞いてません~!?」
「とにかく、逃げないと!!」
一体どこに隠れていたのか、ぞろぞろとゴブリンが現れて二人を追いかけていく。
二人は必死に逃げるが、体力の差なのか徐々に距離が詰められていった。
このままでは追いつかれてしまう。
「サ、サクラ!ここ行き止まり!?」
「そんな!?」
行き着いた先は行き止まりになっていた。
焦って逃げていて道の先をよく見ていなかった。
背後からはゴブリン達の足音が響き、こちらへと近づいてくる。
サクラは覚悟を決める。
近くのゴミ捨て場にあった鉄パイプを握り、構える。
このような時のために習った武術。
大切なアヤメを必ず守る。
「アヤメちゃんだけは・・・・・・アヤメちゃんだけは助けてみせます!」
「サクラ!?危ない!」
襲いかかるゴブリンに立ち向かっていくサクラ。
振り下ろされる棍棒をなんとか受け流す。
そして返すように鉄パイプでゴブリンを殴る。
ガン!と鉄パイプがヒットした音が鳴る。
「グギャァア!」
しかし、ダメージは殆ど無く、逆に鉄パイプの方が折れてしまっていた。
「そんな!?」
「ギィヤア!」
「きゃああぁあ!?」
怯んだ隙に横からもう一体のゴブリンが襲ってくる。
タックルを受けてしまいアヤメの元に吹き飛ぶサクラ。
骨などは折れていないものの、かなりの衝撃で立ち上がれそうもない。
それでも、サクラはアヤメだけでも逃がそうと這っていく。
「に、逃げてください・・・・・・アヤメちゃん」
「そんなの出来ない!サクラを置いていけない!!」
言い合いをしている内に二人はゴブリンに囲まれてしまっていた。
獲物をじわじわと嬲るようにゆっくりとゴブリンが歩み寄ってくる。
それでも、サクラは諦めなかった。
必ずアヤメを守る。
その一心で立ち上がり、アヤメの前に守るように立つ。
「サクラ!?」
「アヤメちゃんは私が、必ず守る!」
覚悟を決めたサクラに呼応し、プレゼントされた指環が輝く。
凄まじい輝きにゴブリン達が怯む。
暖かい光がサクラを包み込み、彼女の黒い艶やかな髪が赤く輝く髪へと変化し羽根飾りの付いたカチューシャが装着される。
そしてインナーの黒いレオタードが身を包み、腕に白いロンググローブ、足に白いニーソックスが着用。
胸と肩、背中と横腹を守る鎧が生成され、腰に赤いマントがふわりと現れる。
右手に両刃の大剣が握られる。
まるでサクラが大好きなアニメ「キューティーナイツ」のような変身ヒロインの姿となっていく。
突然の事に驚きを隠せないアヤメだったが、目の前で起こっていることは現実で、サクラが光に包まれて変身する様を呆然と眺めている。
「あの基礎理論、本当だったんだ・・・・・・」
信頼する姉のヒオウが作成した基礎理論でも、さすがにアヤメは信じていなかった。
『人の魂には秘められた力が存在する』
『そしてその力を解放すると、まるでおとぎ話のようなことが可能になる』
そんな非現実的な話をアヤメは信じていなかった。
ただ、サクラへのお守りにはなるだろうと基礎理論に書かれた術式?なるものを指環に刻んだのだ。
しかし、結果的にそのお陰でサクラは今こうして戦える。
ゴブリン達は戸惑っていた。
自分達が怯えている相手の正体が分からず、困惑していた。
今までゴブリンは人間に対して優位な立場にいた。
ゴブリンは女を犯し、孕ませることで仲間を増やす存在だ。
だからゴブリンにとって人間はただの餌であり、恐怖の対象ではなかった。
だが、今の状況は違う。
何か分からないが、恐ろしいものと対峙していることは本能的に感じ取れた。
しかし、彼等にもプライドがある。
このまま引き下がる訳にいかないと武器を手に取り、一斉にサクラに襲いかかった。
目を閉じていたサクラがカッと目を見開くと手に持つ大剣を一閃させる。
一瞬で数体のゴブリンを斬り捨てる。
「――アヤメちゃんを脅かす存在は許しません」
赤く輝く瞳をゴブリン達に向けるその姿はまさに戦姫と呼ぶに相応しかった。
ゴブリン達が恐れるのは何も知らないからではない。
サクラの持つ圧倒的な戦闘力。
そして何より、サクラから発せられる威圧感に気圧されていた。
先程まで優勢だったはずのゴブリン達の表情は青ざめ、ガクガクと震える者もいる。
「申し訳ありませんが、あなた達の命、斬らせて頂きます」
サクラは大剣を構えると、ゴブリン達に突っ込んでいく。
ゴブリン達は慌てて迎撃しようとするが、サクラの動きを捉えられない。
「はぁぁぁぁぁぁ!」
一閃。
ゴブリンが斬られ、その存在が霧のように消えていく。
消えた後から碧い光がサクラに取り込まれる。
その度にサクラの動きが最適化されていく。
逃げようとするゴブリンに剣を投げ、突き刺す。
剣を手放したのを好機とみたゴブリンがサクラの背後に飛びかかる。
しかし、投げた剣がまるで吸い込まれるようにサクラの手に戻っていく。
「はぁぁ!」
手に戻った大剣を下からすくい上げるように振るい、飛びかかってきたゴブリンを真っ二つにする。
そのまま勢いを殺さず、回転しながら別のゴブリンを切り伏せる。
ゴブリン達は自棄になり、残った全員でサクラに襲いかかった。
「――ふぅぅぅぅぅ」
腰を低くし、剣を後ろに構える。
そして力を剣に集中させるイメージをする。
すると、赤いオーラのようなものが剣に集まるのを感じる。
それを一気に放出するように横に薙ぐ。
「消し飛べ!」
次の瞬間、赤い炎が走り、サクラを中心に円を描くようにゴブリンが斬り刻まれる。
ゴブリン達は斬られた場所から消し炭となり、消滅した。
数十体はいたゴブリン全てがサクラによって瞬く間に倒された。
あまりにも圧倒的過ぎる光景にアヤメは開いた口が塞がらないでいる。
「――って、なんですかこの格好~!?」
戦いが終わり、冷静になったサクラはようやく自分の格好に気がつく。
まるでアニメに出てくるような変身ヒロインみたいな姿に顔を真っ赤にして悶え始める。
確かにサクラは変身ヒロインアニメ「キューティーナイツ」の隠れ大ファンだが、それとこれとは話が別だった。
「こんなの恥ずかしくて外歩けません~!!」
サクラは頭を抱えてしゃがみ込むと、今度は変身を解くことが出来ず、慌てふためく。
「ちょ、ちょっとアヤメちゃん!これどういうこと!?」
「――えっと、話すと長くなるんだけど・・・・・・」
アヤメはサクラにヒオウの基礎理論について話し始めた。
人の魂に隠された力、それを解放する方法について。
「――つまり、これが私に隠された力ってことなの?」
「そう。その人の性格だったり、趣向、あと前世が大きく影響するらしい」
「ということ、この格好は私が望んだ姿・・・・・・?」
「そういうことに・・・・・・なるのかも」
さらに顔を真っ赤にして頭を抱えるサクラ。
まさか自分が憧れていた魔法戦士のような姿になるとは思ってもみなかった。
嫌なわけではない、むしろ格好いいとすら思う。
ただ、想像以上に恥ずかしかったのだ。
特に体にぴっちりと密着したレオタードとか、カチューシャに付いた羽飾りとか。
アニメや漫画で見慣れているとはいえ、いざ自分が着るとこうも違うものなのかとサクラは思い知った。
「で、これどうやったら戻るんですか?」
「たぶん、指環に念じれば良いんじゃない?」
「テキトーに言ってませんか?」
サクラがジト目で見つめると、アヤメはぶんぶんと頭を横に振る。
とりあえず言われたとおり、指環に解除を念じてみる。
するとサクラの体が光り、一瞬で元の服装に戻った。
先ほどゴブリンから受けた攻撃の怪我も無くなっていた。
「――ふぅ、良かったぁ」
「ほんとにもどった」
「って、やっぱりテキトーだったんじゃないですか!?」
思わずアヤメに漫才のようにツッコんでしまうサクラ。
それで気が緩んだのか二人は大笑いし始めた。
ひとしきり笑った二人は路地から出る。
「しかし何だったんでしょう、あのゴブリン達は?」
「わからない。でもこの辺りにはもういないみたいだし大丈夫だと思うけど」
「そうだといいんですけどね」
周囲を警戒するも、先ほどのゴブリンの姿は見当たらない。
とりあえず一安心だと胸を撫で下ろす。
――と思ったのも束の間。
「な、なんですか!?」
「地面が揺れてる!?」
大きい地震が発生したように激しく地面が揺れる。
そして空の色が禍々しい紫に変化していく。
「アヤメちゃん、あれ!」
街に魔法陣のようなものが現れ、そこからゴブリン達が這い出てくる。
先程のゴブリンとは違い、鎧を身に纏い、武器を手にしている。
中には人間よりも大きな個体もいる。
その数は数百体以上。
ゴブリン達は走って街全体に散っていく。
あまりの数の多さに呆然と立ち尽くす二人だったが、すぐに我に返る。
数十体のゴブリンがこちらへと向かってきていたからだ。
「サクラ、もう一回変身して!」
「いやでもどうやって・・・・・・」
「解除と同じで指環に念じれば良い・・・・・・たぶん」
「だから、テキトーですよね!?」
そうこうしているうちにゴブリン達が近づいてくる。
サクラは覚悟決め、指環に強く念じる。
「えーと――変身!」
再びサクラの体が光り、戦姫へと変身していく。
変身を終えたサクラは大剣を構え、ゴブリン達を迎え撃つ。
「とにかく、ここを切り抜けないと!」
――火神サクラの長い一日が始まる。