神聖戦姫ヴァルキュリア・ガーネット 作: 霜月ナル(元Hpinch_like)
七海家から出発したサクラは森林公園へと向かっていた。
街はゴブリン達が暴れ回り、酷い有様になっていた。
車は破壊され横転していたり、店のウィンドウは割られ、ゴミが散乱している。
台風などの災害が通り過ぎた後のようだ。
「――ひどい・・・・・・」
中には人間の死体と思わしきものまで転がっている。
吐き気を催すサクラだったが、気合いを入れて我慢する。
その時、道を塞ぐ結界が現れ、ゴブリンの群れが出現する。
「邪魔をするなら斬るだけです!やぁぁぁぁぁ!」
飛びかかってきたゴブリンを斬り払う。
あっさり斬られたゴブリンは消滅し、青白い光がサクラに吸収される。
さらに愚直に突進してきたゴブリンを避け、炎弾で撃ち払う。
「グギャア!?」
流石に警戒したゴブリン達がサクラから距離を取る。
唸り声を上げ、サクラを睨み付ける。
「来ないならこちらから行くまで!」
素早いステップでゴブリンの懐に入り、下から斬り上げる。
ゴブリンは手に持つ剣でガードするも打ち上げられ無防備になってしまう。
すかさずサクラはチャージした破壊力の高い炎弾を放ちゴブリンを燃やし尽くす。
あっという間に消し炭となるゴブリン。
「――つぎぃ!」
それに目もくれず、次のゴブリンに攻撃を行うサクラ。
体を捻り、回転させながらゴブリンに向かって突撃。
回転で勢いの付いた斬撃でゴブリンの体が両断される。
「ゴギャアアア!!」
新しいゴブリンが現れる。
中には先ほど戦ったゴブリンナイトによく似た個体もいた。
サクラは警戒しつつも新たに現れたゴブリン達に立ち向かっていく。
ゴブリンナイトは素早くサクラに斬りかかる。
「グゥルァアァァ!」
サクラは鋭い斬撃を紙一重で躱し、お返しとばかりに連撃を喰らわせる。
「はぁ!やぁ!はぁぁぁ!」
斬り刻まれたゴブリンナイトはあっけなく消滅。
どうやら姿は同じだが強さは先ほどのゴブリンナイトとは全く違うようだった。
個体差だろうか。
残ったゴブリン達を蹴散らしていくサクラ。
あっという間に全滅させてしまった。
ゴブリン達が倒されたことで結界が解け、道が開ける。
「――ふぅ、片付きましたか」
一息つくサクラ。
大立ち回りをした割に疲労は見えなかった。
元々運動神経は良かったが、今はさらに強化されているためだろう。
「そういえば、敵を倒す度に青白い光を吸収してますけど、これなんでしょう・・・・・・?」
これまで特に気にしていなかったが、一体これは何なんだろうか?
そう考えたサクラはヒオウに聞いてみることにしてみた。
『恐らく敵から奪った魂のかけら、だろう』
「魂のかけら・・・・・・ですか?」
『生物が死んだ時、体から魂が抜けるわけだが大部分は輪廻転生の輪の中に戻り、引き継がれない記憶や力は残留する。幽霊が出現するのはこれのせいだ。んで、お前はその残留物を吸収して自分の力にしているんだ。意識して吸収したかけらを使えば力を強化する方向性を選べるはず』
「つまり、敵を倒せば倒すほど強くなると言うことですか・・・・・・って、幽霊って実在するんですか!?」
『サクラ、幽霊苦手だもんね』
「あれは、アヤメちゃんがあんな映画を見せるから・・・・・・!」
聞き流していた言葉を思わず聞き返すサクラ。
実はこんなに強いサクラだが、幽霊は苦手だった。
昔アヤメと観た『映像を見たら1週間後に死ぬホラー映画』のせいでトラウマになっているのだ。
アレを観た後、しばらくテレビの前で寝れなくなってしまった。
『ゴブリンとか魔物が実在するんだから今更だろう。聞いた話では残留思念を読み取って事件を捜査する探偵が横浜にいるらしいぞ』
「そ、そうなんですね・・・・・・」
『覚醒したお前なら今後ははっきりと視えるようになるだろうなぁ』
「や、止めて下さいよ!冗談でもない・・・・・・」
戦々恐々としつつ、森林公園へ向かうサクラであった。
森林公園に到着したサクラ。
普段は夜になると静かになるはずの公園にはゴブリンが溢れていた。
『部下からの情報では底にはゴブリンジェネラルが基点を守っているはずですわ』
「わかりました。――そういえば、先ほどは聞き忘れましたがシャルロッテさんの部下って・・・・・・」
『一緒に来たメイドですわ。わたくしの配下になる前は情報収集を行う隠密をしていましたの。直接戦闘を行うほどの力がないので、隠れて状況を確認させてますわ』
「なるほど、それは助かりますね」
『後ほど自己紹介させますのでお待ちくださいな』
「はい、楽しみにしてますね!」
通信を切り上げて、公園へ足を踏み入れるサクラ。
サクラに気がついたゴブリン達が駆け寄ってくる。
「グォォ!」
「グギャグギャ!」
剣を構え、迎え撃つサクラ。
「もう見飽きましたよ、あなたたち」
サクラにとってもはやゴブリンは敵ではなかった。
赤子の手をひねるようにゴブリン達を蹴散らしていくサクラ。
あっという間に付近のゴブリンは全滅した。
「さて、基点を探しましょう。多分奥にあるんでしょうけど・・・・・・」
ゴブリン達を倒して静かになった公園を探索するサクラ。
森林公園は広く、小学生の遠足やレクリエーションによく使われている。
少々道が入り組んでいるため道に迷いやすい。
「飛べたら楽なんですけどねぇ」
『飛行魔法は高等技術ですわよ。姿勢制御、重力や空気抵抗の計算等々色んな要素が絡む魔法ですから』
『へぇ、そうなんだ。でも確かに、空を飛ぶには計算すべき事が沢山ある。高度なマルチタスクが必要』
「はぁ、物事は簡単にいかないですね。――入り口の事務所に地図の付いたパンフレットがあったはずです」
少し道を戻って無人になった事務所に入るサクラ。
中は慌てて逃げたような跡があり、物が散乱している。
物を避け、机を片付けるとパンフレットを見つけた。
「ありましたありました。懐かしいです、小学生の遠足で来た以来でしょうか?」
『そうだね。多分あの頃から大きくは変わってないと思う』
「あまり覚えてませんが、ぱっと見た感じ変わってなさそうです。基点があるとしたら奥の広場ですかね?」
パンフレットの地図を見て、基点の位置を推測するサクラ。
スポーツなどを行うレクリエーション用の広場。
大規模なことを行うならここだろうと当たりを付ける。
『そうでしょう。ここまで大規模な術式を起動するには大きな魔法陣を敷かなければ無理ですわ』
「とりあえず広場を目指しますか」
内容を記憶し、地図をポーチにしまって事務所を出る。
ここから左手を進んでいけばレクリエーション広場に着く。
サクラは警戒しつつ小走りで道を進んでいく。
途中ゴブリンの襲撃が散発的にあったが、難なく排除。
このまま順調に目的地に付くかと思われたが、問題が発生した。
「あいたっ!」
突然、ゴンッと固い壁にぶつかったような痛みと音が走る。
ぶつけた頭を摩りながら目を凝らすサクラだが壁など見当たらず、道が続いている。
手を前に出して少し進むとペタと空中に張り付く。
「見えない壁・・・・・・?」
「それは結界装置から発生している物です。サクラ様」
「誰ですか!」
いきなり背後から話しかけられ驚くサクラ。
何の気配も感じずここまで近づかれることなど今までになかったため焦るように背後に振り向く。
そこにはメイド服に身を包む銀髪褐色肌の女性が佇んでいた。
「――!あなたはもしかして・・・・・・」
「はい、シャルロッテ様に仕えていますダークエルフの『クラウディア』と申します」
丁寧にお辞儀を行うクラウディア。
視界に入れていても気配が薄く、目を離したら気づかなくなってしまいそうだった。
情報収集の隠密をしていたというのが理解できる、見事な隠形だった。
「結界装置ってアヤメちゃんの家に設置してたのと同じもの?」
「少し形式は違いますがそうです。この公園内に設置されています」
「それを壊さなきゃ進めないのか・・・・・・あれ、中に入れないなら無理じゃないですか!」
通常この手の装置は、設置場所の中心から防壁を張っている。
つまり中に入れない以上、打つ手が無いと言うことだ。
頭を抱えるサクラ。
「ご安心ください、方法はあります」
「本当ですか!?」
「結界装置は一見完璧に思えますが、欠点があるのです。広範囲を包む関係上、防壁にムラが出来ることです。とくにこの装置は旧式な物なので必ず発生しているはずです」
「ムラ・・・・・・ですか?」
ムラと言われても目に見えないのにどう見つけるのか。
サクラは頭を悩ませる。
「覚醒したサクラ様なら魔力の流れを視る事が出来るはずです。眼に力を込めてみてください」
「そんなこと出来るんですか?ええと、こう、でしょうか?」
体内の魔力を眼に集中させてみるサクラ。
すると、いきなり目の前が光って眩しくなる。
「うわっ眩しっ!?」
「目の前に結界がありますから眩しいのは当然ですよ。魔力を調整してやれば眩しさを抑えられます」
「早く言ってくださいよ!?」
サクラは文句を言いながら、言われたとおり眼に送る魔力を調整する。
すると、眩しさは抑えられ直視できるほどになった。
結界がある場所を視ると、ドーム状に壁があることがわかる。
「へぇ、こんな風に視えるんですねぇ」
「これを使えば結界が脆い場所を見つけることが出来ます。そこを破壊してやれば穴を開けて中に入れます」
「教えてくれてありがとうございます!これで何とかなりそうです!」
「いえいえ、シャルロッテ様からサクラ様のサポートを頼まれていますので。ちなみにですが、これをつかうと霊体も視る事が出来ます」
「うぇっ!?なんでそんなこと言うんですかぁ!?」
「知っていた方が不意に視えてしまった時に驚かなくなるかと思いまして」
「それは――そうでもないですぅ!」
――閑話休題
「それでは私は情報収集を続けますので。物資なども持っていますのでこちらの印がある場所でお呼び頂ければすぐにでも駆けつけます」
クラウディアは花の模様が描かれた紙をサクラに渡す。
「ありがとうございます。それじゃ――ってもういない!?」
サクラが紙に目を移した一瞬のうちにクラウディアは姿を消していた。
まるで忍者みたいだなぁと思うサクラだった。
「じゃあ、結界の周りを歩いて綻びがあるところを探してみましょう!」
意識を変えて、歩き出すサクラ。
魔力を通した眼で結界を視ると、確かに光が強さの違うところがある。
そしてサクラは一番光が弱い場所を見つけた。
「――ここですね……ふぅぅぅぅぅ!」
剣に魔力を込めるサクラ。
込められた魔力によって剣が紅く輝いていく。
輝きが臨界点に達した瞬間、サクラが力強く剣を振るう。
「割れろぉぉぉぉっ!!」
結界の脆い場所に剣がぶつかりガラスの割れるような音が響く。
剣を背中に戻したサクラはぶつかった場所に手を入れてみる。
「――ぶつからない。これで通れるようになりましたね」
穴が空いている内に結界を通る。
これで後はレクリエーション広場に向かうだけだ。
結界を抜けて、先に進んだサクラはようやくレクリエーション広場にたどり着いた。
広場の中心には大きな魔法陣が光り輝き、そらへと紫の光りの柱が立ち上っている。
「あれが基点ですか・・・・・・」
思わず眼を奪われるが、アレのせいでこの事態が引き起こされているのだ。
破壊するために近づいていくと、魔法陣付近に守るように馬車のような物があるのに気がつく。
よく見るとそれには、でっぷりと太った小柄なゴブリンが座っていた。
「グギャグギャ!お前が俺たちの邪魔をしている女か!」
「あなたがゴブリンジェネラルですか!?」
「いかにも!次代の魔王からこの基点の守護を頼まれた偉大なゴブリンだ!」
馬車の上でふんぞり返るゴブリンジェネラル。
お世辞にも強く見えず呆れた表情を浮かべるサクラ。
「なんだか弱っちぃですねぇ。ジェネラルの名前に負けてますよ、あなた!立派なのはその腹だけですか!?」
「なんだとぉ!?いいか将軍はな、自分が強い必要はないのだ!バイコーンよ!」
ゴブリンジェネラルがそう叫ぶと馬車につながれた黒い馬『バイコーン』の手綱を動かす。
ヒヒィンと嘶いたバイコーンが戦闘態勢に移行する。
さらに馬車の後ろから大砲のような物が飛び出し、サクラへと向けられ、車輪からトゲが飛び出し凶悪さを増す。
馬車から戦車へと変化したのを見たサクラは驚いて目を見開く。
「ちょっと、そんなのありですか!?」
「戦いの場は何でもありなのだぁ!」
勢いよく走り出した戦車がサクラへと向かってくる。
同時に大砲から砲弾が放たれる。
「危なっ!」
戦車と大砲を慌てて躱すサクラ。
彼女に躱された戦車がスゴい速さでUターンして再度向かってくる。
これでは剣で攻撃するのは難しい。
そう判断したサクラは魔力で炎弾を作り出し、遠距離攻撃で様子を見て隙や弱点を探す時間を稼ぐことにした。
「当たれ!」
炎弾のいくつかが戦車やバイコーンに当たるが、そんなもの無駄とばかりに突っ込んでくる。
さらにゴブリンジェネラルが魔導銃を取り出しサクラへと発砲してくる。
魔導銃から魔力弾が放たれ、サクラへと襲いかかる。
「ふっ、ほっ、はぁ!」
サクラはステップを刻み、魔力弾を回避。
しかし、回避した先に砲弾が落ちる。
ゴオン!と砲弾が爆発し、破片がサクラに当たる。
「くっ!?」
剣でガードし致命傷は避けているものの、体に細かい傷が刻まれる。
さらに戦車が突っ込んでくる。
「ふはははは!喰らえぃ!」
「――!たぁりゃあああぁぁぁ!」
避けられないと悟ったサクラは一か八か、バイコーンを踏み台にして戦車を飛び越える。
「バイコーンを踏み台にしたぁ!?」
タイミングを間違えればサクラの体が吹き飛ばされ、敗北が確定する高いリスクがあったが、彼女はそれを気合いで乗り切った。
そして、戦車の上空に浮かんだサクラは炎弾を大砲の中に放つ。
炎弾の入った大砲は少し遅れて爆発。
「ギャァァァァァ!?」
「ヒヒイィィィィィン!?」
爆発に巻き込まれたゴブリンジェネラルは戦車から吹き飛ばされ、地面にグシャっと激突し、戦車を引いていたバイコーンは混乱し足をもつれさせ転んでしまう。
「そんな、馬鹿なぁ・・・・・・俺の戦車は最強なのだぁ・・・・・・ひぃ!?」
ゴブリンジェネラルは這いつくばり逃げようとするが、目の前にサクラが立ち塞がる。
もはや逃げられないゴブリンジェネラルは命乞いを始める。
「命だけは助けてくれぇぇぇ!?軍の情報を渡すから何卒、なにとぞぉぉぉぉ~!?」
「あなた、将軍なんですよね?」
「そうだ!重要な情報を沢山持っているぞ!」
「――例えば?」
「基点は4つあってだなぁ、場所は・・・・・・グギャ!?」
情報を喋りだしたゴブリンジェネラルの首を斬り落とすサクラ。
基点の場所などと言う既に知っている情報を聞かされた時点でゴブリンジェネラルが大した情報を持っていないことを見抜いていた。
というか、自分がトップならこんなおしゃべりなヤツに重要な情報を教えないだろう。
嘘の情報を教えられていてこちらを混乱させる可能性もあった。
そもそも、人々を襲い殺したゴブリン達に指示していたヤツを生かす価値はない。
一息つくと忘れていた傷の痛みが戻ってくる。
「――いっつぅ、思ったよりあの大砲効きましたね・・・・・・」
ポーチからポーションを取り出し服用するサクラ。
傷が消えていき、痛みも治まっていく。
シャルロッテが用意しただけあり効果は本物だった。
怪我が治ったのを確認したサクラは倒れたバイコーンにトドメを刺した後、基点に近づいていく。
「これを壊せば良いんですよね。はぁぁぁぁぁぁ!」
魔力を込めた剣を基点の中央に突き立てる。
凄まじい力の奔流が起こり、サクラの体が吹き飛ばされそうになる。
それを何とかふんばり剣をさらに押し込めていく。
「あぁぁぁぁぁぁぁ!!」
バキンッと割れたような音が響き、魔法陣が霧散していく。
同時に紫の光柱も消えていく。
これで4つの基点の1つを破壊できた。
「これがまだ3つもあるんですか・・・・・・?骨が折れますね・・・・・・」
はぁとため息をつくサクラ。
一旦戻るか、と考え広場を出るとヒオウから通信が入る。
「あ、ヒオウさん?森林公園の基点を破壊しまし――」
『それはわかっているんだが、緊急事態なんだ!』
「――なにがあったんですか!?」
『避難場所になっている市民会館を魔族が襲撃している!』
「なんですって!?」
市民会館は公園と同じ地区だが、ここからどれだけ急いでも30分以上はかかる。
途中に敵もいることを考えるともっとかかるだろう。
「一体どうしたら・・・・・・」
『クラウディアはそこにいますか!?その地区の基点を破壊した今なら、あの娘の転移魔法で近くまで飛べるはずです!』
「クラウディアさんですか?今は近くに・・・・・・」
「お呼びでしょうか?」
「ひゃぁ!?」
いつの間にかサクラの隣にクラウディアが出現していた。
驚いたサクラが飛び上がり、引いてしまう。
「そこまで驚かなくても・・・・・・それより、市民会館ですか?付近にマーキングを施したので今なら飛べます」
「そんなこと出来るんですか!?お願いします!」
「では、お手を拝借いたしますね」
クラウディアがサクラの手を握ると足下から光が溢れ、次の瞬間二人の姿が公園から消えていた。
新キャラ「クラウディア」が登場しました。
彼女はゲームでいうところのサポート&ショップ要員です。
書いている内にサクラちゃんへ幽霊嫌い設定や弄られ属性が盛られていく・・・・・・
自然とこうなってしまい、「これがキャラが生きているということなのだろうか」と考えていました。
ちょいちょい、ゲーム的要素が差し込まれています。
この作品を3Dスタイリッシュアクションゲームにしたらこうだろうなぁと妄想しながら書いてます。