※この作品はR-18です。

OVERLOAD 鈴木悟の消失   作:九折

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お久しぶりです。九折(つづらおり)です。
もうかなり前の投稿ですが、ずっとオーバーロード自体は好きで定期的に見続けているので、感想などで続きを期待してくださるコメントが多かったため急遽ずっとラフで寝かせていたものを清書して書き上げました。

また、申し訳ありませんが、今まではルビなどにも気を使っていたのですが、時間がないので省いています。気になった方はオーバーロードのwikiを見て脳内変換できるようになってから読んでいただけるとちょっとだけ没入感が上がるかもしれません。

いずれにせよ、楽しんでいただければ幸いです。



陶酔し耽溺する形而上学的粘液 〈ソリュシャン編〉

蝋燭が灯った薄暗い部屋。

荒い息遣い、慌てた様子の男はベッドに腰を掛けこちらを見つめる美しい女に興奮を隠しきれなかった。

この雌を確実に自分の”モノ”にする。

男は焦る手つきで腰紐を解こうとする。

 

「あらあら…、そんなに慌てなくとも逃げませんことよ?」

 

耳の中で響き渡り、心地よい気持ちにさせるその甘い声は男をしばし冷静にさせた。

ベッドに腰掛けた淑女。

服がほどけ、左肩が見え、ゆったりとした胸元から今にもこぼれ出そうになったその豊満な果実に、男は目を奪われる。

そうだ、自分は偉いのだから目の前のご馳走を楽しまねばならない。

しかし、そう思えば思うほど、まるで何かの魔法やスキルの類に侵されるように、早く無茶苦茶にしたいという男本来の欲求がせめぎ立つ。

 

「そ…そうだよな!いや、君があまりにも美しいものでっ…!」

 

彼は一貴族の長男だった。

先の戦争で精神を患った父に代わりなし崩し的に次期当主となっただけに過ぎない。

元々持っていた、長男であり家督を継ぐことが決定づけられていた自負と肥大した自尊心で家を率いることになったものの、成績は芳しくはない。

しかしそれも、あくまで家臣のせいであると切り捨て、愚鈍極まりない采配を下し続けていた。

結果として彼の一族は落ち目だ。

周囲の貴族から足元を見られ、譲歩も受けられず、さりとて歳費は増えるばかり。

 

しかし、そこから急転した。

 

彼はなぜか大きく勢力を伸ばし、金も湯水のように湧くが如く使い、力をつけていった。

そこに目をつけたのがナザリック地下大墳墓の諜報部門。

なぜ彼が急に一大貴族となり始めるに至ったのかを調査すべく、ナザリックが戦闘メイドプレアデスの三女〈不定形の粘液〉ソリュシャン・イプシロンが送り込まれて約2ヶ月。

 

「あらあら…嬉しいことを言ってくださいます…。」

 

ソリュシャンは手を伸ばし、男の頬に両手を添えた。

そのまま彼の頭を引き寄せ、男が見つめてやまない大きな乳房に顔を埋めさせる。

男は抵抗することなく顔を擦り付けた。

 

ぱふっ

 

男の酒臭い呼気が、ソリュシャンのつけている香水の混じり合い淫らな雰囲気を加速させていく。

 

「うふふ…気持ちいいですか…?」

「ああっ!君はすごい!」

 

男はズボンを下ろし、器用に上着も脱ぐと半裸の状態でソリュシャンを持ち上げてベッドに猛々しく押し倒した。彼女の種族レベルと職業レベルを合わせた合計レベルは57。けほども痛みは感じなかったが、ソリュシャンが演じる貴族の淑女に紳士がする行為とは思えない。

ギシッ…と軋んだ音がし、小刻みに揺れるベッド。

ソリュシャンの着ていたドレスを解きつつ、隙間から、少しでも早く触りたいと生乳へ手を伸ばす。

 

「あぁ…ん!」

 

雌の甘い声に精神が掻き立てられ、興奮がやまない。

 

「なぁっもういいだろ!?」

「そうですね…今夜はずっとお供させてもらいますので…いいですよ?」

 

許可が出た、と強引にソリュシャンの衣服を剥ぎ取る。

まさに獣のような杜撰な対応に、ただの生娘であれば恐怖したかもしれない。

しかしソリュシャンの顔には笑顔しかなかった。狂気を孕むような冷徹な笑顔。

男はそれに気づかず、ソリュシャンの乳房を吸いに行こうとした瞬間、口に指を当てられる。

 

「ねぇ…せっかくの楽しめる時間ですのに、すぐに貪るのも、野暮ではありませんか?」

 

お預けを食らってしまった男が不満そうにソリュシャンを見つめる。

しかし拒絶ではないことを悟り、意識を切り替えた。

 

「どっ…どういう、いや…確かにっ」

「ですから、こういうのはどうですか?」

 

ソリュシャンは身体を起こすと男の身体をベッド中央へ転がし、自分は身を翻して男を跨ぐ。

女性的でもちっとした臀部が男の眼前に見せつけられ、黒い淫靡な下着が、彼女の秘奥を包み隠して余計にエロスを掻き立てた。

いわゆるシックスナインの型で、ソリュシャンは男の陰部に触れる。

意図が伝わったのか、男は尻を鷲掴みにし、ソリュシャンのクロッチごと舐め回し吸う。

 

「うぐっおおっ!?」

 

にゅれろっ…

 

ねとっとした粘液と絡みつくぷりぷりとした触手のような動きが程よい暖かさで男性器を舐め回していた。

女性経験が乏しいことを隠し続けていた彼にもすぐに分かる。

自身は今、口淫されているのだと。

あまりの快楽にすぐに達しそうになるのを堪え、こちらも負けじと、黒い下着を指でずらして女性器を露わにし、遠慮なくしゃぶりついた。

 

美しく整えられた陰毛と、遊びなれていない綺麗な秘裂。

 

「あぁ…お上手…んっ!」

 

にゅくぷっ!ぷちゅるるっ!

 

彼女のよがりを聞いて、さらに硬度を増す己が剛直はすでにかなり限界にきていた。早すぎる。男が早漏ということもあるが、ソリュシャンの愛撫がそこらの売春婦とは比べものにならないほど丁寧かつ的確な刺激を与えてくる故だった。

だが、男としてこんな早くに果てることなどあり得ない。

優秀な男としての矜持がそれを許さない。

 

ぐちゅっじゅぞぞっちゅるっちゅっ!

 

女の濡れそぼった陰唇を舌で掻き分けながら、中に舌を突き入れ、舐め回す。

時折、陰核や尿道口を刺激し、吸引する。

 

一見、男は手慣れているようにも思えるテクニックではあった。だがそれもソリュシャン相手には霞む。

凄まじい愛撫。

竿を先端から根本へ、根本から先端へ、抵抗なく飲み込むそのストローク。そしてその最中にも、尿管を裏筋から強く圧迫し続けながら移動して、鈴口への舌先の愛撫。

いくら彼が耐え続けても、やはり彼女相手に限界は早かった。

 

「まっ…まっへくれっ!」

「あら…もうでちゃいそうですか…?」

 

カチンと来る言い方だが、事実は事実。

ここは会話で引き延ばそうと試みるが、それを防ぐようにソリュシャンの臀部が大きく男の顔面へ押し付けられる。

息はギリギリできるが、鼻の奥に充満する雌の匂いと、舌に広がる愛液の味で意識が朦朧とする。

 

「んぶぅっ!」

 

ぐちゅぷっちゅるっ!ぶぷちゅっ!

 

容赦ない愛撫が陰茎を襲い、睾丸が悲鳴をあげて、準備し始める。

男は悲鳴をあげる愚息に意識がいく前に、押し付けられ濡れそぼった蜜壺に舌を絡め、反射的に臀部を鷲掴みにして両中指で、ソリュシャンの尻穴を左右に開きこじ開ける。

 

「あんっ…あらあら、そちらがお好みですか…?」

 

ソリュシャンの低く甘い声が耳に届いているにも関わらず彼はこれから起こることを予想できずに不意にそれは訪れた。

男の尻穴に彼女の指が侵入し始める。

 

ぐにゅ…

 

「んっん゛ん゛~!?」

 

普段ならそんなところ、男側としては変態貴族どもの戯れでしか使わないところだと嘲笑っていた。女なら吐いて捨てるほどいて、使い放題なのに、男娼に執心しているバカ貴族を見下していた。

しかし、この状況、この場合に限り、何故か鈍い異物感とそれを有に超える多幸感が脳を支配した。

 

ソリュシャンの指が一点を捉える。

 

優しく撫でるように、コリッとした部分を腸内側から刺激されてしまう。

新感覚、いじったことのない部位を触られ、そして指で少し圧迫されるだけで陰茎の根本から上がってくる射精したいという反射運動。

彼の我慢は薄氷の上だ。

抵抗するように足を伸ばしたり曲げたりして、なんとかその襲い来る雄の快楽から逃げようとする。

性感の恐怖心と興奮が混ざり合って、ソリュシャンの愛液を飲み、嚥下し、まともな思考でいられなくなる。女の蜜がこれほど甘味だとは知らなかった。

 

「んふふ…そんなに暴れなくても…大丈夫ですよ?ほら…イかせてあげます。」

 

ぐりゅっ

 

「ぁん゛ん゛っ~!?」

 

男として、情けない悲鳴。

ソリュシャンの鋭い爪先で、腸壁を傷つけないギリギリの力加減で前立腺を押しつぶされる男。

精管の蠕動運動で精巣上体から集められた精液が一時的に蓄えられる精管膨大部に、前立腺が潰されたことで一気に圧力が切り替わり、強制的な射精運動が始まる。

もうこの段階で意識的に我慢することは不可能だった。

身体を大きく震わせて、ソリュシャンの口に自分から一気に腰を突き入れる。

膣や子宮ではない、意味のない射精なのに、その動きはまさに子孫を残すための反射という動きだった。

 

ぶびゅっ…ぴゅるっ……ぴゅっ!

 

人生で一番気持ちの良い射精、一番量の多い吐精。

尿道を駆け巡る精液が一気にソリュシャンの口内へと放出される。

 

…はずだった。

 

「え?」

 

薄れゆく視界の端で捉えたのは、ソリュシャンの腕が溶けて、半透明になった腕先で陰茎を包みこんで吐精を受け止めるところ。

状況のおかしさを分析できない。鈴口から漏れ出る精液が彼女の腕の中に消えていく。

多幸感と現実を受け止めきれない思考に対し忌避を示すその瞬間、彼に大きな激痛が襲う。

 

「うっぐあぁ!ああがっああっ!?」

 

肛門…腸…からじわじわと激痛が背筋を伝って脳に届く。

陰茎放つ快楽と尻穴の激痛が綯い交ぜになって押し寄せて、気持ちいいのか痛いのか、わからず冷や汗を垂らしながら笑顔になる。

 

「うふっあははっ!その顔です…その顔が見たかったの…!」

 

ソリュシャンは射精中の陰茎をより抵抗感のある肉襞に切り替えて強く愛撫し、より精液を搾り取るために刺激を強くする。

男の肛門から侵入したソリュシャンの触指がそのまま内側を溶かし、捕食し始める。

痛みとは裏腹に陰茎に集中した快楽はただただひたすらに精嚢から精液を運べと信号を与え、最早空になった精巣上体に追い打ちをかける。

陰茎が嬉しい悲鳴を上げる中、身体の消化器官が溶けることで絶望の悲鳴をあげていた。

 

「ほらほらもっとお射精しになって…?旦那さまぁ~?」

 

脂汗をかき、顔を青くした男が薄れゆく意識、霧がかった視界で最後に捉えた姿は、見目麗しい淑女の顔が作り物のようにぐにゃっと変形して、粘土遊びで作られた土人形のように不吉な笑顔で彼の顔を見続けている化け物の顔だった。

 

 

 

少しして。

 

愚かな青年の絶望をじっくりと楽しんだソリュシャンは、ベッドの横に裸で立っていた。

ベッドには血ひとつなく、男の汗のみで濡れたシーツが彼の最後のあがきを表すように乱れた状態であった。

ソリュシャンは無表情にそれを見下ろして、佇み、自身の右手をグニャグニャと元の形へ戻す。

静かな部屋にノックが響く。

元々示し合わせていた回数とタイミングのものだったのですぐにセバスであることを察知して、ソリュシャンは「どうぞ」と招き入れた。

セバスが入室する頃には、この部屋に入った当初のドレスに変身し、みだれた髪も濡れそぼった股ぐらも何もかもがなかったことのように綺麗さっぱりいつも通りの姿で迎えたソリュシャン。

 

「…首尾は。」

「はい。男の持っていた財産の差し押さえは終わっており、一族の他の者はみなデミウルゴス様が回収されました。また、この家が復興したきっかけのルートも抑えてあります。」

「よろしい。それで…男は?」

「…綺麗に処分させていただきました。問題でも…?」

 

もちろん処分することは確定しており、どのような処分方法にするかはシャルティアに確認を取っていた。曰く「死んでいればなんでもいい」とのことだったのでソリュシャンに一任されていた。

一応セバスも、聞かねばならぬことは聞かなければならないという上司の通例によって質問しただけで疑義があるわけではない。

 

「いえ、そこは疑っておりません。」

 

嫌味なく、淡々と受け入れたセバス。

彼にとって、無為に人を殺すのは憚られることではあるものの、ナザリック全体の利益を考えた時にいなくなってもらわねば困る者についてはそこまで同情する気もなかった。

もちろん慈悲のない遊ぶような殺し方は好かないが、そこまで深入りするほどのことでもない。

この家の次期当主とされた青年は実権を握った後、立場の弱い若い村娘たちを食い物にし何度も堕胎させては子供を殺し、悪辣の限りを尽くしていた。

因果応報、言ってしまえばそれまでだ。

 

「次のご命令はシャルティア様からなにか降りてきていますか?」

 

質問が悪かったのか、なにか思うところがあるのか、セバスはソリュシャンから一度目を逸らし、そしてまたまっすぐ彼女の虚ろな眼を見抜く。

 

「…シャルティア様からは、なにも。」

「からは…?」

 

含みのある言い方にソリュシャンは違和感を感じ、目で再度どういうことかを問う。

上司であれど、報告義務はしっかりとしてもらわねば全体に響くからだ。

 

「アインズ様から直々に連絡がありました。」

 

至高の御方、我らが忠義を尽くすべき、その御名前がでた瞬間、部屋の空気が変わった。

これは勅命。

セバスが、一度言葉を切るのも頷ける。

 

「…招集がかかっています。」

「…プレアデス全員ということでしょうか?」

「いえ、ソリュシャンのみです。」

 

ドクンっと、存在しない心臓が跳ねる。

きっとセバスも察したことだろう。先程直した股から液体が飛びかねない高揚。

いや、そうではない。

そうではないのだ。

確かにアインズ様からの勅命は信じられないほど嬉しくそしてとても光栄だ。同時に遂行できるかどうかの不安感も最高値に達するが、そこではない。

今現在二人が思考を同期させている要因はズバリ、先の『特別任務』だ。

 

「…具体的な内容は…おっしゃられて…いましたか?」

 

声が震えるソリュシャンに、セバスは同情した。

気持ちに対し、という意味ではなく、普段であれば毅然とした立ち振舞いで有名なあのソリュシャンをここまで動揺させているこの現実に向き合わねばならない今の彼女の状況に。

 

「詳しいことはなにも。復唱します。」

 

「『セバス…か。その、なんというかそのだな?うーむ…そこにソリュシャンはいるか?急いではないので、今やっている任務が一区切りついたら、私の元へ来るように…言ってほしい。その…あれだぞ?他の者へはなるべく漏らすんじゃあないぞ?わかったな?それとソリュシャンにはちゃんと支度というか…落ち着ける時間?いや、とにかくまぁ急がなくていいと伝えてくれ。走ってこられてもそれはそれで悪いしな。ではその…頼んだぞ?絶対…絶対誰にも言ってはダメだからな?』。」

 

部屋の天井を仰ぎ、目を瞑ったままソリュシャンは泣いた。

セバスは半歩下がった。

 

「…この事は?」

「…当然、至高の御方の勅命ですからシャルティア様にも非公開にしています。私のスキルで感知できない何かしらが使われていない限りは。」

「セバス様の感知をくぐり抜けるようなものがあるのであればそちらのほうが問題ですから、まずないと言っていいでしょう…。それで、いつ頃その連絡を受けたのですか?」

 

天を仰いだソリュシャンが顔をいつも通りに戻してセバスを見つめ直す。

 

「アインズ様もそろそろ終わる頃だろうと察していたのでしょう。つい先程です。」

「それは良かった。」

 

さすがはアインズ様。別件で忙しいにも関わらず正確にこちらの進行状況を把握している。それがどれだけ特異なことなのかは言うまでもない。

主を待たせるわけには行かない。

ソリュシャンは胸を撫で下ろし、踵を返した。

 

「しかし、困ったことがあります。」

「というと?」

「私たちは基本的にシャルティア様の《転移門》でナザリックへ帰還しているので、今からナザリックへ向かうとなると、時間を考慮すればやはりシャルティア様に協力を仰がねばなりません。」

「…ですね。」

 

しかし至高の御方はどうやらソリュシャンとセバスにしかこのことを明かしたくない様子。

もちろん、シャルティアの《転移門》が使えない場合の帰還方法は一応用意してある。

転移のスクロールがあるので、緊急時にのみ使用許可がでているが…果たして今回のことで使って良いのかは疑問である。

 

「一度、私がアインズ様に連絡をしてみます。ソリュシャンの仕事の区切りがついたことも添えて、移動方法などを相談してみます。」

「セバス様…ありがとうございます。」

「これもまた、アインズ様のお言葉ですからね。」

 

苦労人、というほどではないが、セバスもまた、アインズの『特別任務』に並々ならぬ興味があるようではあった。

彼としてはどんなことをやっているのかはさておき、デミウルゴスと秘密裏に事を進めている主に思うところはある。

デミウルゴス程度に唆されて仕損じることはないだろうが、万一のためにも『特別任務』がどういうものなのかを知っておきたい本音がある。

ただ、主があまり内容を知らしめたくないという意向なのであればそれに従い、抜擢された同僚たちにできうるだけ協力をしていく所存だ。

 

少なくとも、今回の件が片付くまではソリュシャンとセットで行動させられていた自分にも自由時間が割り当てられることだろう。

自然と足取りが軽くなる。

家に想い人がいる男というのはなかなか単純なものだなと思ってしまう。

もしかすると、主、アインズ様もまた案外単純な理由で夜伽をしているだけなのかもしれない。

セバスは自分がくだらないことを考えているな、と思考をシャットダウンして退室した。

背後で並々ならぬオーラが放出されていることはスルーした。

 

 

●

 

 

アインズはいつも通り、寝室で待機していた。

正座で。

 

「うーむ…どうしたものか。」

 

アインズが床でわざわざ正座している理由はいくつかある。

第一にまず先程までアウラとマーレがこの部屋にいたことである。

そもそも今回の発端として、なぜソリュシャンに連絡したのかというといくつか理由があった。

まずナザリック内の力関係に起因した問題。

アウラ、マーレ、ナーベラルの順番で自室に呼んだわけだが、ナーベラルはアルベド派というのが共通認識だ。

アインズ様正妻戦争では表向きアルベドとシャルティアが争っている形である。しかし現状はどちらも願望止まりであり、身体を重ねた事実はない。

『特別任務』のせいでお互いを牽制しつつヤキモキしているのが現状なのだが、アウラやマーレは同じ領域守護者として、第三勢力という位置づけにいるとしてもここに来てナーベラルがアインズに呼ばれてしまった。

ともすると、アルベド側にアインズの心が偏ったとも言えなくもない…が、実際のところはナーベラルも正妻戦争に立候補し始めたので勢力は傾いてない。

ただ、やはり表向きはアルベドがリードという感じで落ち着いている。

その事も踏まえた時、シャルティア側と仲の良いシャルティアではない某が必要になってくるので今回ソリュシャンが選抜された。

 

第二に、ナーベラルと同様、ソリュシャンもまたカルマ値が高い。

アインズの本心を語るには、あえて逆を行く方針を掲げたアウラの言説を採用し、人間に対しあたりの強い嗜虐心を持ち合わせたソリュシャンを攻略しようという思いつきだ。

 

第三に、デミウルゴスに任せているとある研究に付いて重要な進捗が見込めたが、やはりまだピースは足らない。そこでソリュシャン、というよりはスライムの特性などを参考にしたい旨があり、〈不定型の粘液〉である彼女にいくつか質問したいことが合ったというものだ。

 

ただ、いざ呼び出して、彼女がここに来る…となるとアインズはビビり始めていた。

ナーベラルの件から、もちろん彼女らが謀反を起こしアインズに危害を加えるなんてことはほぼほぼないことはわかっていつつも、万が一のことを考えればやはり怖い。

理屈ではない、鈴木悟としての残滓がそう囁くのだ。

ただまぁうじうじと煮えきらないアインズを叱咤するようにアウラとマーレにご奉仕をしてもらった(したのまちがいだろ)ので彼女たちのためにも頑張るぞ!という気持ちにはなっている。

 

「話すべきことは決まっているが…失望されて、あの冷たい目で詰られる…のはちょっと嫌だな。」

 

思い起こすのはヘロヘロさん。

彼はかなり労働環境が悪い場所で働いていたので、長くログインできる人ではなかったが、それでもかなりの戦闘IQの持ち主で、内容の整理や、物事の進め方など、所謂”できる社員”という感じだった。

 

「ヘロヘロさん…優秀な人って感じだったけど、時折語る性癖が、ボンデージを着たメイドにシバかれながら虐められたい…だったもんなぁ。」

 

鞭を持ったナーベラルはあまり想像できないが、ソリュシャンなら持ってそうというのが印象としてはある。的確にいじめ抜いてきそうなところが怖い。

サディストという言葉はまるで彼女のためにあるんじゃないか?と思えてならない。

(なおアインズはまだもうひとりの猫かぶりサディストがいることを知らない)

 

「というか…はぁ、なかなかに俺も終わってるなぁ。」

 

女性のことを考えるのにいつの間にか性癖の話を思い出して、妄想し始める。

本来、男性なら合って然るべきことではあるものの〈不死者の王〉になって強い情動は抑制されるようになった。

それなのにそういう想像をしてしまう、ということはそれが強い情動に判定されていない普通の状態ということ。

女性の妄想をすることが普通というのは些か脳内ピンクすぎる…なんて自重した笑いを浮かべるアインズだった。

 

「アインズ様、プレアデスが三女、ソリュシャン・イプシロン参上いたしました。入ってもよろしいでしょうか?」

「むっ…入れ。」

 

アインズは凄まじい速度で飛び跳ねてベッドにゆったりと座る。

この部屋の主は私だと見えるように。

 

大きな扉がゆっくりと開きソリュシャンが入室してきた。

戦闘メイド服ではなく、ナザリック内で仕事をするためのカジュアルメイド服。

こころなしかシワがなく、シミもない、完璧な仕上がりを感じる衣服に、普段よりも艶の良さが分かる髪、きめ細やかな肌、そしてギャップを入れるように冷めた目で笑ってアインズのもとまで来ると一定の距離を開けて跪く。

アインズはついその美貌に舐め回すように見てしまったが、ぷいっと目を逸らして頬をポリポリと掻く。

 

感触は悪くなさそうだ。

 

「…ソリュシャン、その…変な願いで申し訳ないのだが、横に来てくれ…にゃいか?」

「はい。」

 

ここが、ソリュシャンの良いところだ。

彼女はちょっとしたアインズが見せる支配者然としていない部分をそっと受け流してくれる。ソリュシャンだけでなく多くのものがスルーしてくれる部分ではあるものの、ソリュシャンは全く気にしていないという感じがある。

 

ソリュシャンは言われるがまま、横に来る。

普通なら他の守護者並びにプレアデスの場合恐れ多いと危惧し、拒否しかねない行動もすんなりと遂行してくれる機転の効く性格。空気を読む能力とでも言えるだろう。

アインズはふんわりと香水のいい香りが香ってくるのを感じて、たまに感じるベッドの匂いとはまた別の、良い匂いだなと思った。

 

「…。」

「…。」

 

黙るアインズをソリュシャンは横目で見つつも、決して不快感や嫌悪感を顕にしていない。アインズが抱いていたサディスティックな側面は感じられない。

頭にアウラやマーレ、ナーベラルが応援した姿を思い出す。

いずれは皆に伝えていくべきことであり、ここまで来たのだから帰ってくれなんて口が裂けても言えない。

疑問が尽きないだろうに、当然のように従ってくれている彼女に誠意をみせたい。

 

「その…だな?今回呼んだのは、主に面談と相互理解を育むためだ。」

「はい。」

「それでだな……うむ、まず以前からソリュシャンに謝りたかったことがあった。」

「私に、アインズ様が謝罪など…必要ありません。」

 

ソリュシャンは流石に固辞するように苦笑した。

しかしそれを手で制し、アインズはすっと立ち上がると、ソリュシャンへ向き直り、姿勢を揃えて斜め45℃まで腰を曲げ頭を下げる。

 

「っ!」

 

咄嗟にソリュシャンは主の過剰なる礼に更なる平伏をと動こうとするが直前で辞める。アインズがしようとしていたことを察し、ときには主人を立てるのもメイドの勤めである。

アインズの覚悟、それに対する自身の苦痛。どちらを優先するべきかは言うまでもない。

 

「ソリュシャン、以前、お前に渡すはずだった褒美にケチを付けて申し訳なかった。」

「…リ・エスティーゼ王国における長期の諜報活動に対する褒美の件でしょうか?」

「そうだ。あの時も軽く謝罪をしたが、私はお前が真に望む報酬を用意できなかった…いや違う、用意できたにも関わらず個人的解釈と配慮でそれを実行しなかった、その罪がある。」

 

アインズは頭をあげ、説明する。

ゆっくりと横へ座り直し、顔を彼女へ向けた。

 

「とある事情で、私はお前の褒美に対する要求と同程度の価値で、無垢な者の殺害を禁じる意向を持っていた。」

 

ソリュシャンは回りくどい言い方で説明された理由を考える。

おそらく、同程度というのは同じレベルの働きをしたものが無垢なものの殺害をやめるよう要求した、というよりはソリュシャンと同程度の重用度…つまりプレアデスの誰かが要求したことと相反してしまった可能性。

そこで最初に思いついたのは長姉だったが、彼女の性格からすればアインズがそうするとすれば多少不快でも気にはしないはず…と切り替える。

つまり別の者…ペストーニャとニグレドあたりが怪しいと踏んだ。

ただ2人は直接アインズ様に嘆願できるような立場にないので仲介として…とかんがえたところで「ああ、そういうこと」と、独りごちた。

だからセバス経由で自分に話が来たわけか、と納得する。

 

「それに私個人として、ナザリックに害意を持って攻めてきた者、己が分をわきまえなかった者、広義においての悪人などは甘やかす気はないが、無知な子供や赤子などはまだ利用できる価値がある。その点から見てもお前に無垢な者は与えられなかった。」

 

ペストーニャとニグレドに責を置かないように自身の考えもまた賛同するものがあったと注釈を入れて庇うアインズにソリュシャンは好感を持つ。慈悲深き王だと。

そしてだからこそ、以前から感じ取っており、そしてずっと黙り続けることを選んだあることに触れる。

 

「…アインズ様は人間が大切ですか?」

 

核心に届く一言。

アインズは口が半開きになる。直ぐに口を閉じ、咀嚼するように顎を動かす。

 

「…そうではない。ただ、そうだな…信頼か。」

 

独り言のように呟くアインズに何も言わず次の言葉を待つソリュシャン。

アインズが想起したのは先の3人に言われた言葉。

勇気を出すべき時だと、導く声が聞こえたような気がした。

 

「そうではない。私は、元人間だからな………。」

 

普段は鉄仮面…というよりは何も考えていないような表情で作った笑顔のソリュシャンが、この日初めて意図した表情ではない顔になる。

アインズは震える自身の右手を俯くように、見つめる。

そして語る。全てではない。しかし自身の弱みを。

自分がいかに支配者として足らない存在で今の位置にいるのかをわかりやすく伝わるように。

 

「私は、いや…お前たちが至高の御方々と崇め奉る誰もが、お前たちが嬲り殺してきた人間と同じ存在なのだ。」

「私も…そうだな、ヘロヘロさんも。…同じだ。」

「私たちは、普通の人間だった。」

 

思い出すように、遠い過去のように語る。

この世界に降り立つに至るまでの道程を。

 

「ユグドラシルとは遊戯のひとつで、この世界よりも進んだ技術で作られたもう一つの仮想世界であり、そこで遊ぶための素体がこの身体だった。」

 

こつこつっとアインズは自身の橈骨を弾く。

 

「…。」

「私たちはこの世界の普通の人間と同じように毎日労働し、金銭を稼ぎ、食いつないで、一時の隙間を使ってユグドラシルを旅する仲間だった。」

「だから私は元々人間で、あの日、ユグドラシル最後の日…つまりその仮想世界のデータがすべて消滅し消えうる日に、この世界へナザリックと共に転移し、この骨の身体に生まれ変わった…なかなか言葉にすると安直だな。」

 

自嘲気味に笑うアインズをソリュシャンはどのような顔で見つめるのだろう。

アインズは怖くて見られなかった。

しかし、彼の頬に無遠慮に手を添えて、顔をあげさせるソリュシャン。

彼女はいつも通りの顔をしていた。

こころなしか、いつもよりちゃんと笑っているような顔だった。

 

「…アインズ様、話してくださってありがとうございます。」

「…怒らないのか。失望しないのか…?」

 

「なぜ?」とソリュシャンは笑った。

 

「アインズ様。で、あるならば私の…いいえ、私たちの今までの在り方はアインズ様にとって不快だったのでは?いえ、そうではない…不快というより、悲しみを感じなかったのですか?」

 

その言葉はアインズの想定を超えていたし、アウラでさえ初見では導き出さなかった結論だ。

アインズは今度こそはっきりとソリュシャンの顔を見つめ、頬に添えられた手に己の手を重ねた。

 

「…悲しみ、はない。私はこの身体になってから多くの人間的感情が消え失せている。…ただ、まぁなんだ。倫理観の欠如はあったが、それでも仲間の顔を思い浮かべると、時折、罪悪感を感じるときはある。」

「罪悪感ですか?」

「ああ、今でこそ人間を殺しても何も感じない私だが、弱きものを助けるのは当たり前と言っていた”たっち・みー”さんや、無垢である子供を教える立場にあった教師である”やまいこ”さんは今の私を見たら『悪』だと非難するだろう。」

 

それは、否定しきれない事実だった。

ゲームの中で役割として演じる悪ではない。実際に人が死ぬという結果が残る悪だ。

そして、善性を持つ彼らだけではない。

 

「それに、そうだ…ヘロヘロさんはある意味で私とかなり仲が良かった。」

「まぁ!」

 

自身の造物主の話が出たことでソリュシャンが目を輝かせる。

 

「ヘロヘロさんはな、普通の人だった。私と同じ普通のな。」

「警官や諜報員、声優…まぁ特殊な仕事、驚かれるというような仕事ではない。ごく普通の会社員で、私よりも少し労働規則が厳しい場所に務めているようだったが、職種としては共通点が多かった。」

「せいゆ……サラリー…?」

 

聞き慣れない名詞にソリュシャンは困惑するが、説明するのもそれはそれで大変なので詳しくは後回しとする。

 

「まぁ内容としては事務方だ。書類の管理やスケジューリング、他社との商談や他いろいろ。言ってしまえば誰にでもできる仕事。凡百なものだと笑われる部類のものだった。」

 

アインズは楽しそうに話す。

 

「ヘロヘロさんは法令で定められた時間を超過するほどの労働で毎日疲れ切っていて、ゲームにログインすることがあっても、大抵は1時間もすれば寝落ちか退室だった。」

「そんな過酷なことを…至高の御方々はされていらっしゃった…。いえ、まさか…?」

 

ソリュシャンは相槌を打つように返事をしつつも考えを改める。

彼女らにとって疲れなどはあくまでデバフでしかない。いくらでも回復する余地はあるし、そもそもほとんど疲れるという概念がない。

話を聞くだけなら過度な労働をさせられていた、と聞こえるが、実体としてはまだ彼女らの視点では怠けている程度のものだろう。つまりそういう事を言いたいのではない。

その差異を彼女は柔軟に受け取った。

 

「そうだ。言っただろう?人間だ。」

「私たちは今のように24時間365日ずっとは動き続けられない。休憩も取らねばならないし食事も取らなければならない。排泄もな。だから私にはお前達の働きが時にヘロヘロさんのような過労者を産み出すのではないかと常々不安だった。」

 

アインズとしてはNPCの好きなようにさせたい。でも好きなようにさせるとずっと動き続けるので、落ち着かない。

ここでも価値観や世界観のギャップでアインズの悩みが発露していた。

 

「話を戻そう。つまり、ヘロヘロさんのことを考えれば考えるほど道徳や倫理の軽視は後に遺恨を残すと思っていた。私はもう〈不死者の王〉だからな。永遠に働くことも、無垢な人間を惨殺することも何も思わない。だがアンデッドではないものとしてこの地にかつての仲間たちが降り立つ可能性があるとして、彼らは無慈悲な私を、そして人間を憎悪し嬲り殺す私に付き従う臣下たちをみて、果たして…どう思うだろう。」

 

アインズは数秒、黙りこくった。

 

これは非難する言葉ではない、純然たるアインズの本音であり、彼の不安のひとつだ。

ソリュシャンは真剣に向き合うからこそ、安易に「では私たちが人を殺さなければよろしいのですね?」という提案はしない。それではNPCに不満が溜まるとアインズが苦しむ羽目になる。根本的な解決にはならないからだ。

だが、同時に我が主は、少し思い込みがあるな、とも思ってしまった。

 

「…アインズ様、話してくださってありがとうございます。」

「ですが、少しだけ冷たい言い方に聞こえるかもしれませんが…アインズ様。」

 

ソリュシャンはアインズの腰に手を回して、自分の体ごとベッドに倒れ込むように催促する。アインズに抵抗の意思は見られなかった。

二人して、ベッドの天井を除きながら呼吸を整える。

 

「アインズ様…アインズ様は少し決めつけが過ぎますね。」

「…え?」

 

割と無礼な物言いだった。

しかしアインズの反応は決してそれに対する苛立ちを持ってはいなかった。

 

「アインズ様、私は、私たちは確かに人間を嬲り殺します。それが楽しいから。」

「でも、決してそれがないと楽しくないというわけではありません。」

「だが…それでは我慢させてしまうだろう?」

「いいえ?私たちにはもっと楽しいことがあります。」

「…私の幸福だ、というんだろう?」

 

「ええそうですわ」と笑いながら言うソリュシャン。だがそこで「でも…」と言葉が続けられる。

 

「それだけじゃないです。私たち姉妹で朝食を囲むときはとても楽しいですし、外に出た時、時折露天商で見かけるアクセサリーで好きなデザインを見つけるのも楽しいですね。ナザリックには劣りますが、この世界の食べ物もゲテモノ含めてなかなか悪くはないです。」

 

ソリュシャンが饒舌に語る。

多くの発見、多くの幸福を。

 

「…つまり、他にも楽しいことがあるから、そこまで気にはならない、と。」

「はい、もちろんひとつでも楽しいことが増えるのは喜ばしいことですが、でもそうですね…。物事は表裏一体ですから。」

 

最後のニュアンスが含みをもたせるような言葉でアインズは困惑する。

 

「…主が、自分のために気を揉んでいる、というのもなかなかに悦に浸れる甘美なものですよ?」

 

妖艶な笑みを浮かべてアインズに身体を向けるソリュシャン。

ゆさっと大きな胸が揺れる。

確かに、アインズはソリュシャンのことをずっと気にかけていた。

褒美にケチをつけたこと、それに対する反感があるのではないかということ、ひとりの臣下に意識を向けすぎる。やはり、支配者としての器ではない。

 

「アインズ様は御身のことをなかなか軽視しているところがありますが、私…〈不定型の粘液〉にとって、それは少しだけ理解を示せます。」

「…。」

 

アインズの、部下の好き嫌いのために自分の道徳を軽視するという行いを嗜めつつ、共感を示すソリュシャン。

 

「私には中身がありません。創造主であるヘロヘロ様にいただいたこの身体と、ひとつの見た目にしか変身できないスキル。不定型だからこそ、時に自分があやふやであると感じるときはあります。」

 

自分にはなにもないのだと。

 

「一貫性を持たず、快楽を優先し、生きる様はスライムとしては正しいのですが、ナザリック地下大墳墓の戦闘メイド、プレアデスとしてはどうなんだろう?なんて思うこともあります。」

「それに、あの時。ナザリックが異常事態に見舞われた日の前日。ヘロヘロ様がログインなさっていたことは理解していました。」

「なに?」

 

アインズはソリュシャンの方をみる。

意図してではないが見つめ合うような姿勢になってしまった。

何故かソリュシャンはアインズの腕を優しく掴む。しかしその腕は些か柔らかい、というか骨がないようなブニブニとした硬度で、彼女にしてはどこか甘い硬度の変形だった。

リラックスでもしているのだろうか?

 

「私たちにはわかります。自分たちの創造主が近くにいると。」

 

アインズは変装していてもすぐに気づかれたことが何度かあることを思い出す。

 

「私はあの時、他の姉妹たちと同様にあそこで立ち止まり続けることが絶対でしたから、会いに行く、というようなことはできませんでした。しかし今思えば、お会いしたかった。」

「…。」

「会って何かを言いたかったわけではありません。それでも、いつもログインするたびに私の下へ来て「可愛いね」と呟いてくれたあの御方にひと目お会いして、忠義を伝えたかった。」

 

ソリュシャンは顔を歪ませて、少しだけ、ほんの少しだけ悲しそうにした。

 

「でもあの日、ヘロヘロ様は私のところにはいらっしゃいませんでした。」

 

…そう。あの時、もうサービス終了間近にログインしてきたヘロヘロに会ったアインズさえ、精々10分程度の邂逅だった。

ゆっくり思い出を馳せる時間もないまま彼はログアウトした。

 

「苛立つか…?」

「…いいえ。そんなことは。でも、寂しいものです。」

 

アインズはその言葉がすっと胸に入り込むのを感じる。

ずっと、自分もそう思っていた。

寂しい。

寂しいのだ。

 

「もし、私ではなくヘロヘロさんが最後まで残っていれば…と思うか?」

 

その言葉は失敗だった。

ずっと隠し続けていた本音。私でなければ、私以外のメンバーだったのならもっと正しくナザリックを導けたんじゃないか、という不安とも取れる自虐。

自己憐憫の延長とも言える言葉は、明確にソリュシャンを傷つけた。

 

「っ!」

 

ソリュシャンの顔が半分ほど溶けて、ベッドに染み込む。

彼女の溶けていない方の目からは濁った粘液の涙がこぼれていた。

スライムにとって意思に反して身体が溶け出すというのはどうにも恥ずかしいことであると聞く。普段からどんなときでも完璧な仕事を目指すソリュシャンにとってはなおさらだろう。

そんな彼女が溶けていた。そしてそこには涙。

アインズは驚き、そして自身が原因であることを察して震える手で彼女の顔に手を添える。

 

「…すまない。」

「…。」

 

何も言わない、それが最低限度の彼女の抗議の意思だと受け取る。

 

「ずっと…思っていた。私でなければもっとうまくできたんじゃないか、と。」

「私は、ただの会社員だ。ゲームに時間を注ぎ込めるくらいには木っ端で、ヘロヘロさんほど仕事ができるわけでもなかった。」

「たっち・みーさんなら…やまいこさんなら…って。いつだって俺は、自信がないんだ。」

 

アインズの弱音。

 

「アインズ様、色々思うことはお有りでしょう。それでもこれだけは理解してほしいのです。」

「私、ソリュシャンはたとえヘロヘロ様とアインズ様が敵対し、袂を分かったとしても、アインズ様に忠義を注ぎます。」

「…なぜだ。」

「理由なんてありません。強いて言うならば、私を、私たちを一番愛してくださった方を愛したいのです。」

 

そこに異形であることや元人間であることは関係がないと、ソリュシャンは付け加えた。

その言葉を聞いて、アインズは黙った。そして思う。

そうだ、と。

もし自信のない自分が唯一誇れることがあるとすれば、それはユグドラシルのログイン時間。それに比例して、つまりはナザリックに注いだ愛情の量。

それこそが唯一”鈴木悟”としての人生で誇れるところ。

仲間にも譲れない、一点だった。

 

「…ありがとうソリュシャン。」

「やっと、お礼を言ってくださいました。」

 

ずっと謝るだけがコミュニケーションじゃない。

会社員時代は謝罪ばかりの人生だったが、もっと多くの、多くの人に感謝をすればまた違った見方もできたのかもしれない…この状況を。

 

「…それで、ソリュシャン。何を…?」

「あら?夜伽の前座です。」

 

感動した話が終わって束の間、何故かアインズはソリュシャンの柔らかい乳房を揉まされていた。掴んだ手を強引に自分の胸に持って行くソリュシャンの笑顔は狂気を感じた。

 

「やっあのだな!?」

「あら…私では相手になりませんか…?大きさでは負けますが、ユリ姉さんやアルベド様より程よい柔らかさと物理的に沈み込む気持ちよさなどを提供できますが…?」

 

アインズはブンブンと手を振りつつも、今しがたまで感じていたソリュシャンの豊満な乳房の感触を思い出して赤面する(骨なのに)

 

「沈み込む…そうだ、相互理解の件なのだが。」

「…はい。」

 

今のやり取りがなかったことのようにスルーされて不満そうにするソリュシャン。

 

「スライムの特性を知りたいというのもあって、今日は呼んだのだった。」

「スライムの特性…ですか?」

「ああ。」

 

アインズはより自然体で会話し始める。

それに違和感なく受け入れるソリュシャン。半ば友達のような受け答えでトントン拍子に会話が進んでいくのは、つい不安思考に陥りやすいアインズにとっては気が楽だった。

 

「ソリュシャンの種族である〈不定型の粘液〉は広義でいうスライムだ。だが、スライムの特性で広く知られる様々な様相に変身できる特性はソリュシャンにはない。」

「スライムの上位種族である〈不定型の粘液〉になることで変身能力を失うデメリットがあるからですね。」

「私が気になっているのは、質量なのだ。」

 

アインズが手を顎に当てて物思いにふけるように動かす。

 

「質量…つまり私が飲み込んだ人間、その人間が着ていた装備などがどこに消えているのか?と言う話ですね?」

 

話がスムーズに進む。まさに潤滑油。

 

「それについては以前『元々自分の中身は空であり、特殊な魔法の効果が作用しているから』という結論をだしています。」

「それは聞き及んでいるのだが、そこからもう一歩踏み込みたい。」

「もう一歩?」

「仮説としては、ソリュシャンはソリュシャンの見た目をした”無限の背負い袋”と近い性質を持っているのではないか?ということだ。」

 

”無限の背負い袋”。ユグドラシルのアイテムで、総重量500kgまで収納できる魔法の鞄であり、ゲームシステム上はショートカット登録をしていれば瞬時に保管したものを呼び出せる。

 

「他になにかを飲み込んだ際にこんなふうだった、というようなことはないか?」

 

情報を集めるために問うアインズに思い出したようにソリュシャンが語る。

 

「…以前シャルティア様を体内に入れたことはあります。」

「ええっ!?」

 

どんな状況だ!?プレイか何かか!?という戸惑いが彼を支配した。

 

「もちろん溶かしたりなどはしていませんが…その際は、やはり見た目に変化は見られないものの、主観では多少の圧迫感を感じはしました。」

 

つまり、少なくとも何かしらの要素で制限はあるということだろう。

 

「であるならば、”無限の背負い袋”との差別化として、生物を保管できるという特性ははないだろうか?」

「確かに、私は人間を殺さずに体内に留めておけます。しかしそれはあくまでスライムに変形する身体を用いて無理矢理に生かすことができるというだけで、私の体内に収納したから生きれるというものでもない気もします。」

 

ソリュシャンは自身の身体をまるで見せつけるようにくねらせる。

ついつい彼女のムチッとした肉感ある身体に目が釣られるアインズ。

それを見て本当に心から楽しむようなソリュシャン。

これが交互に置きつつ話は進んでいく。

 

「…その、淑女に聞くのも野暮だが、消化はどのように行っているんだ?」

「お気になさらないでください。」

「消化と保存で確かに結果が変わるような気がします。今まで基本的に取り込んだ生物は保管せずに時間をかけて強酸で溶かしていました。強酸で基本的に溶かせないものはないのですが、例えば人間を溶かすときと、魔物を溶かすときとでは同じレベルの強酸でも溶け切るのに時間の差異が生まれます。」

 

「…つまり、それは情報量の多寡によって、処理能力が変わってくるということか。」

「おそらく。」

「まとめると…無限の背負い袋と異なり異空間に生物を保存できるが、その生物の保有する情報量によっては飲み込める容量に限界がある。どんなものでも飲み込むことは可能だが情報量次第で見た目にも影響が出る…といったところか。」

 

アインズはついついゲーム脳で分析したがる傾向にある。

ただ、ソリュシャンは自身に意識が向いてくれていることに喜びを感じ、もっと自分の身体のことを知ってほしいと自分よりも理解して独占してほしいという欲求が体の内側からせめぎ立ち始めていた。

そしてその結果、にへら…と顔がゆがむ。

 

「アインズ様…せっかくですから、私の身体を使ってみませんか?」

「へ?」

 

 

●

 

 

かぽーん。

と、誰もいないはずの大浴場に音が響く。

湯気が適切に立ち上り、全体的に湿度が高く設定された大浴場。

しかし、定期的に開催されている男性陣たちで行うお風呂会とは少々違う。

何故か構造が大きく変化した大浴場。内装がいい具合にこじんまりとしていて、普段よりも湯気が濃い。

 

「以前は風呂場の領域守護者がいたはずだが…。」

 

アインズが思い出すのは初めて男性守護者で集まってお風呂に浸かった時のことだ。あのときはたまたま女性たちもスパに来ており、そこでマナーを守らず入浴したアルベドに風呂場の領域守護者が反応して戦闘になった。

結果は言うまでもなくゴーレムは大破。しかしながらナザリックの施設としての側面があるので、金貨を使って修復することができた。

その際にスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンで戦闘行動は禁止とだけ書き加えたのだが…今回はあまり反応がない。

 

「アインズ様…お待たせしました。」

「う…うむ。」

 

声がする方へ軽く視線を持って行くが視界端にすぐ写ったのは、美女の裸体だった。

アインズは自身の腰掛けをほどけないように強く引き締め、身体を清めるためにシャワーの方へ行く。

もし仮にこの身体にイチモツがあったのなら確実に反応していただろう。

ふと視線先に赤く目をギラつかせるゴーレムがいることに気づく。

そのゴーレムはアインズを認識すると聞き覚えのある声で叫んだ。

 

「『男女で大浴場を汚すとはけしからん!これは誅殺である!…が、合意の上ならば認めよう!』」

 

と、いうだけ言って、ゴーレムはくるりと身を翻して柱の一部となった。

 

合意…合意…か?

 

アインズは首を傾げる。

ちらりと後ろのソリュシャンを見ると、うっとりとした表情でこちらを眺めている様子だった。ゴーレムに内心を読み取るスキルなどはないはずだが、少なくとも嫌がっているようには見えなかった。

いや、というよりも、そもそもこの状況こそ、ソリュシャン自身が提案したものなのだから、合意といえば合意だろう。

むしろ合意したか微妙なのはアインズの方ではあるのだが、アインズ自身、ソリュシャンのことをより深く知りたい気持ちも本当だし、後学のためにスライムの生態や特性も詳しく知って置けるなら何よりだ。

 

アインズはとりあえず、シャワーの前の座席に座る。

ふと思い出すのは男性守護者で集まった交流会。あのときはマーレが背中を流してくれたんだった。

 

「アインズ様、お背中お流しさせていただきます。」

「う…うむ。」

 

真後ろにソリュシャンが迷うことなくしゃがむ。

彼女の姿はとてもむちっとした体つきをしており、歩くたびに肉感ある部分が揺れる、そんな柔らかそうな身体で、隠すことなく、恥ずかしがることなく応対してくるので、目のやり場に困る。

 

アインズの身体に、ソリュシャンの指が触れ、手が触れ…身体が密着する。

アインズの身体は骸骨だが、人間で例えるとかなり大柄で骨太、長身だ。

必然的に背中をすべて洗おうとすれば、どこかしらが当たる。

 

むにゅっ…

 

背骨に、大きくて柔らかい物が当たる。

流石にそこまで無知ではないアインズは何が当たったのかを理解して、内心飛び跳ねながら我慢した。

アウラやマーレ、ナーベラルなど、そこそこな回数、女性の裸体を観察してきたが、ソリュシャンの肉体はまた違ったインパクトを持っていた。

 

柔らかく、しかし適度に硬いスポンジでゴシゴシとアインズの胸骨の隙間や肩甲骨などを丁寧に擦っていくソリュシャン。

痛みはなく、心地よい。

マーレにやってもらったときは、同じところばかりこすられたものだが、適宜場所を変え、泡立ちを一定にし、まんべんなく汚れを落とす様はやはりできる女、という感じだった。

 

「…ソリュシャン、諜報活動を通じて、感じたことはあるか?」

 

無言が苦しくなってきたアインズは、直近の出来事を思い出し、話題作りとして問う。

ソリュシャンは手を止めることなく、率直に答えた。

 

「貴族の茶会に誘われることが多く、庶民の食事も経験したことから比較して高貴とされる者が集まるところには砂糖などの高価な調味料が広く出回っているようです。」

 

アインズが求めている回答…というより、この世間話の趣旨は任務の報告ではなく任務以外から感じ取れる分析とナザリックに利益を齎すかどうかの話であると判断したソリュシャンが告げた。

 

「調味料を手に入れる方法として代表的なのは生産魔法と呼ばれるそうですが、さほど希少な魔法というわけでもないようなので、拉致した人間を家畜として調味料を生産させて魔導国内で流通させることで、お菓子や料理などに造詣が深い国であると知ってもらうのはどうでしょう?」

 

アインズは無い舌を巻く。

確かに、現状の魔導国は人民が少ない。人間の総数が少ないからこそ不安感が増すのだろう。つまり人間の数を増やせばいいわけだが、冒険者などの一時的な鎬はともかく、定住してもらうには市民に生活しやすいことをアピールせねばならない。

コストは少なく、粗利は大きい。

何より、アインズの『無垢なものでも利用価値はある』を率先して織り込んできた。無駄に人間を殺す必要のない政策だ。

 

「…流石だな。」

「光栄でございます。」

 

ふにょんっ

 

「っ!」

 

アインズの方にソリュシャンの大きな果実が乗っけられる。

唐突な、より大胆な行動にアインズは手を固まらせる。

後ろから抱きつかれるように、鎖骨付近をこすられ始め、やがて頚椎や頭蓋骨まで優しく撫でられ始める。

ドキドキと無い心臓が早まるのを感じるアインズ。

 

「ソリュシャン…あまり、くっつきすぎるのは…。」

「あら…お嫌ですか?」

「いや…そうではない…のだが…な…。」

 

少しでも反感をもたせたらいけない、と普段であれば離れるであろう。

しかしまるで弄ぶような態度に、アインズは興奮を禁じ得ない。

だが同時に、見返したい意欲もまた湧き上がる。

両手を後ろに回し、ソリュシャンのふくらはぎを握る。

嫌がる気配はない。

そのまま上へ手を滑らし、太ももを少し強めに握る。

 

大腿骨の存在を感じさせない柔らかさ。

指と指の隙間にめり込んでいくソリュシャンの皮膚が気持ちいい。

更に手をあげ、臀部を撫でる。

 

ぐにゅっ

 

「はぁっ…!」

 

身体の体重を預けるように、ソリュシャンが吐息の混じった声をあげてアインズの側頭部に自身の顔をこすりつける。

アインズの鋭い指先でも傷つくことのないソリュシャンの尻は、太ももよりも、もっと柔らかく適度に弾力があり、指先は彼女の正中線へ向く。

 

はっ、とアインズは手を離す。

己が暴走し始めていることを理解した。これは悪い癖だ。

 

「…そろそろ泡を流してくれるか。」

「…っはい…!」

 

ソリュシャンが戸惑うような、惜しいような声で返事をする。

彼女自身もまた、数時間前にした”捕食行為”とは比べるべくもないほどの快楽を生んだ御方の所業に戸惑いを隠せないようだった。

ソリュシャンは自分の体が自分のものではないようにだらしなく喜ぶ様を恥じた。

 

今まで感じていた、背後から伝わるほんのりと温かい肉袋の感覚が消え、お湯が全身を清め始めたことで洗体が終わったことを感じるアインズ。

身体を流し終えた後、アインズは立ち上がると、ソリュシャンの方を見ず、湯船の方へ向かう。

 

今しがた、自分は暴走した。親しき友であったヘロヘロさんの娘とも言える子を汚す行為だ。もちろん、すでに3人のNPCに手を出しているのだから、今更ではあるのだが、3人と違うのは、より如実に性欲を掻き立てられるということ。

母性愛や、庇護欲、嗜虐心、そういったものではない堕落的な肉欲とも言える。

アインズは湯船に入ると、考え事をしながら身を翻して、腰を下ろす。

 

覚悟を持って、前を見る。

 

そこには裸の美しい金髪の美女が自身の肉体を見せつけるように立っていた。

唯一、目だけは笑っていない。

その目は無気力なのか、諦観を孕んだ目なのか、それとも彼女の真の部分を表すなにかなのか。

大きな色白の乳房、その先の淡いピンク色の大きめな乳輪に、肥大した乳首。

スラッとした腹直筋、丘や溝を持った肉感ある腹部から、ムチッとした腰づき。

そしてその下、整えられた陰毛と、年相応にはみ出た陰唇を隠すことなく、大きな太ももに挟まれた分厚い肉厚のスリット。

 

「…。」

 

何も言えなかった。

目を奪われた。

 

ソリュシャンはゆっくりと湯船に入り、アインズの方へ歩みだす。

ちょうどアインズの眼前にはソリュシャンの下腹部が位置し、そのまま腰を落とし、アインズの肩に手を伸ばし、頚椎を両手のひらで抑えて体を支えると、アインズの大腿骨に座った。

他の守護者たちやプレアデスたちが見れば羨ましさを通り越して不敬だと処断されかねない大胆かつ無遠慮な行為だが、ソリュシャンはわかったうえでそれを楽しんでいるようだった。

何より、自分の行為がアインズを不快にさせていないことは明らかであったし、むしろそれで怒るならなおのこと自身のことを見ている証明なのだと、どちらに転んでも得がある体勢。

 

「…アインズ様、ご不快ですか?」

「いや…。」

 

ちょうど眼前にほおりだされるように惜しげもなくさらされた大きな乳房に目が釘付けになる。

 

「アインズ様…スライムの身体がどうなっているのかお知りになられたいとおっしゃられていましたよね?」

「あっああ!」

 

唐突に話が戻されて、驚くが、なんとか平静を保つ。

 

「…その…そうだな…。」

 

アインズは思考を強制的に切り替えようと頑張る。

 

「その、ソリュシャンの肉体は…中身が空だと言っていたが…。」

「…食べたものはどこに行くか…ですか?」

「むっ…。」

 

あまり女性に聞く話ではないだろう。

だが、質量保存の法則は一定レベルの根拠となりうる。何事においても。

 

「基本的に私は飲食が不要です。ですが、任務では当然食べることも多かったので、いっそのこと普通の人間と同じ体構造にしようとしました。」

「ほう…。」

「そのほうが怪しまれませんから。ほら…。」

 

ソリュシャンが、自身の身体を透明にしていく。

元の汚らしい粘液の色になるが、中身が透けてみえるようになった。

ソリュシャンの口から食道が繋がっており、胃と思われるものから小腸へと繋がり大腸まで…綺麗に人間の内蔵を再現していた。

 

「しかし、溶かせば良いのではないか?」

「そうですね。緊急時や余裕のない場合はそうしています。」

「そうでない場合は?」

「…私は”溶かす”ことが好きなので、どうせなら『消化』というものも楽しんでいます。」

 

強酸をだして瞬時に溶かすことも可能だが、胃酸でゆっくり溶かしドロドロになった内容物の味もまた楽しむ。

人間を身体に突き入れるようにするときはただ溶かし、その絶叫を楽しむが、時間があり余裕のあるときは丁寧に楽しむというのもまた一興だと笑う。

 

「溶かした食べ物や人間は私を構成する粘液に変換されますし、魔力として還元もされます。」

「ふむ。」

 

それはいいことを聞いた。

つまりソリュシャンを利用すれば、タンパク質などで構成された生物を分解して魔力へ変換できるということだ。マナポーションではない、力技の魔力回復も視野に入れることができる。

魔力で魔法を使い、水や火(プラズマ)、生活魔法などではなにもないところから砂糖まで作るのだから、質量を魔力に、魔力を質量に置き換えることはこの世界では当たり前の円環の理なんだろう。

 

「ですがこれは〈不定型の粘液〉の効果なのであくまで私にのみ還元されるものです。」

 

ダメだった。

 

「む…。」

 

真面目な話、というほど真面目でもないが、スライムの特性に理解を示している最中に、妙な粘りつきをアインズは手足に感じる。

そこでようやくソリュシャンの手足が溶け始めていることに気づく。

ソリュシャンのことだ、水を吸ったからとか、気分が緩んで、ということではないことは明白で、意図的にアインズの身体に絡み始めている。

 

胴体はそのままで腕や足先がアインズの骨と骨の隙間を縫って、身体を覆っていく。

 

「アインズ様、ひとつ…夢を叶えました。ありがとうございます。」

 

ソリュシャンはずっとスライム三助の三吉くんに対し、嫉妬していた。

そのことを知ったのは先程部屋でだったが、ずっとこういうふうにしたかったらしい。

元人間の作法で先程は体を洗ってもらったが、ソリュシャンの身体でスライム風呂をやってもらう。

 

「…たまに、お願いできるか。」

「はい!」

 

今日いちの返事だったかもしれない。

 

しかし、身体を女性に包みこまれるというのはなんとも心地よく、三吉くんにはなかったフェチシズムというか、癖を感じる。

人間の頃、孤独だった自分。誰かに力いっぱい抱きしめてほしいなぁなんて思ったことがあることを思い出した。

身体全体を余すことなく粘液で包み込み、眼前には美女が恍惚と言った表情で自身を見つめている。

 

心がざわつく。

 

アインズは、ゆっくりと湯船の中で立ち上がると、そのままソリュシャンを押し倒すような形で湯船に倒れ込む。

ソリュシャンの拘束が一部戻り、手先や足先がアインズにしがみついた状態で正常位のような体勢になる。

 

「ソリュシャン…触るぞ…。」

「はい…♡」

 

アインズの手がソリュシャンの乳房に触れる。

力強く握ることで、柔らかい乳房はそのままアインズの中手骨などを飲み込んでいきソリュシャンの胸部へ飲み込まれていく。

 

「はぁ…♡アインズ…さ…まっ!?」

 

最初、この行為自体に興奮していたソリュシャンは、生まれて初めて、いやこの世界に降り立ち自由を得て、初めて『快楽』を感じた。

アインズに触れられたから、そういう”関係性”の快楽ではない。

男性が陰茎に刺激を与えられ感じるように、女性が陰部を刺激され感じるように、性感という感じ方を初めて理解した。

 

なぜ…?と頭で木霊する。

 

結論は出ない。

しかし、気持ち良いんだからそれでいい。もっと、もっとほしい。

 

ソリュシャンは内蔵も骨も神経もない自身の身体が、今、生きていると強く感じ取る。

彼女が経験したものは『情報の厚み』。

鈴木悟がモモンガの身体に魂を宿したと仮定した場合、3次元世界から2次元世界へ膨大なデータの圧縮がされたことになる。しかしその2次元世界はその次元のまま3次元世界と繋がっていた。

圧縮されたデータがそのまま拡張され、膨れ上がる。

それが今のアインズだとする。

 

この世界の物質を情報とし圧縮し蓄えたり取り出したりできるソリュシャンの肉体に、おびただしい情報量のアインズの身体が取り込まれる。

同じNPCであったシャルティアを飲み込んだときとはわけが違う。

NPCとプレイヤーの差。

 

情報の厚みが大きすぎて圧縮できず、その圧迫された感触をソリュシャンの〈不定型の粘液〉としての魂が直接圧力を感じて快楽へと変換される。

痛みでもなく不快感でもなかったのは純粋に、アインズへの敬愛故。

 

難しく分析したがつまるところ、全身オナホのソリュシャンが出来上がったのである。

身体のどこからでもアインズの一部を取り込もうとすれば、それは途方も無いほどの快楽を産む。

 

「おぉ゛おっ♥」

 

ぶにゅっ

 

ソリュシャンの乳首が大きく勃起し、陰核がピクついた。

おかしい。外見だけの再現のはずが、まるで人間の女のように…とソリュシャンは朦朧とする意識の中で分析する。

 

「ソリュシャン…お前は美しいな…。」

 

耳元でアインズの言葉が紡がれる。

下腹部が熱い。子宮なんて無いはずなのに、雌雄などなく、交配できぬこの水袋の身体が、繁殖を感じ取る。

ソリュシャンの手や足が、無意識に溶け出し、制御不能になる。

湯船は汚れ始め、濁ることで、余計にソリュシャンの肉体が浮き彫りになっていく。

 

「アイ…ンズ…さま、しょ…ぅしょぉ…お待ちぉ…♥」

「ふふ…あれだけ私に身体を押し付けていたのに、今度は離れるのか?」

 

アインズは溶け出すソリュシャンの身体を強く抱きしめ始める。

曖昧だった肉体の輪郭が再構成され、ソリュシャンのもちもちの肉体が張りのある肉体へ変わる。まるで型に押し込まれたゼリーのように。

 

「ここは…どうだ?」

「へっ…ぁっ♥」

 

にゅくっ…

 

ソリュシャンの大きい臀部の割れ目、尻穴にアインズの細い爪先が、強引にねじ込まれる。

キュッと閉じられた疑似括約筋がこじ開けられ、アインズの細身だが骨太の手がソリュシャンの直腸へ遠慮なく侵入した。

 

にゅぶぷぷっぷっ!

 

「お…ほぉ…っ♥」

 

先程まで余裕を見せていた淑女の姿はなく、未知の快楽に溺れる雌が現れた。

本来であれば、どこまでも伸び、どこまでも飲み込める彼女の肉体が、アインズの強固な情報の壁でできた腕で貫かれる。

擬似的に作られた腸壁に、もし仮になにか別の普通のものを強く押し当てたところで、腸壁を貫通して、飲み込まれ、ソリュシャンにとっては何も感じないただの捕食となる。

しかし、アインズの腕を読み込むことが困難なソリュシャンの肉体は当然、普通の人間のようにこれ以上は入りませんと抵抗するしか無い。

 

予想だにできなかった相性。

唐突なフィストファックに、ソリュシャンは絶頂に至る。

捕食ができない、快感。

 

びしゅっ!びゅっ!

 

疑似陰核を勃起させ、彼女の意思に反して、膀胱にあった粘液が疑似尿道を通じて射出された。

レディらしからぬ無様な潮吹きは、なんとかお風呂場だったからバレずにすむが、アインズは気にせず手を抜き取る。

 

むりゅぐぶぷっぷりゅぶぽっ!

 

「お♥ぐっほぉ♥っう゛っ!?」

 

無理やり広がったケツ穴が一気に閉じる。

湯船のお湯と彼女の粘液、少量の空気が混じって、下品な音が鳴った。

 

「ふむ…宿便などはなくゼリー状の粘液が付着している。」

 

すっかりアインズはソリュシャンを気にかけることもなく知識欲に身を任せ、オナホを楽しむことにしたらしい。

ソリュシャンはまとまらない意識の中、自分がどれだけ今幸せで、それでいてできる女だとか淑女だとか、メイドとしてだとかくだらないことを考えていた自分を滑稽に思っていた。

この御方に支配されたい。

ヘロヘロ様ではなく、アインズ様こそ自身を的確に使ってくださる真の王。我が君。

 

「ソリュシャン…気持ちいいか?」

「…ひゃい…も♥うし…わけっ…お゛っ♥」

 

ソリュシャンが答え切る前に、アインズはソリュシャンの秘裂に手を添える。

全身が粘ついた粘液で、今にも溶け出しそうな状態なのに、ソコは一段と粘度が高い粘液を垂らしてくぱくぱと動いていた。

まるでおねだりするように。

 

ソリュシャンは困惑していた。

おかしい。今まで幾度となく人間の男を抱いてきた。なのにアインズ様との行為ではこんなにも興奮し、快楽を知り、あまつさえ身体の制御がままならない。

恥だ。

恥ずかしい。

でも幸せだ。

 

こんな無様な自分を使ってくださる♥

 

身体が、ところどころ半透明になる。

彼に、この御方に、いやこの雄にすべてを捧げたい。

腰が浮き、まるでさぁ触ってくださいと言わんばかりに、アインズの眼前に秘裂を差し出す。

 

「…すごいな…これは子宮か?」

「へ?」

 

ソリュシャンが視線を向けると、そこには、自身の透明になった腹部の奥にうっすらとみえる仔袋。その左右には小ぶりだがぷりっとした卵巣のようなものが見える。

あれ?そこまで作ったっけ?

ソリュシャンはまとまらない意識のなか、腰を震わせた。

 

アインズの左手が、すべすべとソリュシャンの下腹部を撫でる。

まるで女としての機能を労わるように。

これは自分のものだと言うように。

多幸感に全身が包まれる。

包んでいるのは自分のはずなのに。

 

アインズの右手が、ソリュシャンの大陰唇と小陰唇を掻き分け、膣口を広げる。

膣道まで半透明で見えるさなか、アインズの白い末節骨、中節骨が、ソリュシャンの膣道を掻き分けていく。

 

にゅぷぷっ…にゅっく…

 

「あ…ぉ……んっ…♥」

「よく飲み込むものだ…しかしきついな…!」

 

アインズの指の骨の表面、細かい凹凸一つ一つがソリュシャンの膣道のひだをひっかき、擦り上げていく。

とうとう、基節骨までソリュシャンの膣道に飲み込まれた時、アインズの末節骨にコリッとした部位が当たる。

 

ぐにっ…ぬっ…ぐっ

 

「んひっぐっ…♥」

「子宮口…だな?」

 

アインズの指先の骨の尖った部分が子宮頸部をこじ開け、押し込まれる。

子宮頸部は本来固く閉じられており、何かが入るような設計にはなっていない。それは人間を元に再現された肉体の彼女であっても例外はない。

しかし、彼女の今の状態、すなわち疑似酩酊状態において、高い弾性と形状記憶のハイブリット状態なわけで、必然、彼女の子宮はアインズの指を受け入れる。

フィクションじみた性的刺激。

 

「んぎっ…お゛っん♥」

 

ソリュシャンが普段からは想像もつかない汚い喘ぎ声をあげた。

普段の不敵な笑みはなく、ぐちゃぐちゃに歪んだ快楽に耐える雌の顔。

現実の女性なら激痛だろう。

だが、彼女の〈不定型の粘液〉という種族特性と疑似酩酊状態、情報の厚みにより、生み出された未知の快楽はナザリック地下大墳墓戦闘メイドプレアデス三女、ソリュシャン・イプシロンという品格を打ち砕くには十分だった。

 

ぶぴぃっぶっぶりゅりゅっ!

 

ソリュシャンの肛門から濁った粘ついたゼリーが吹き出る。

それはもちろん便ではない。彼女がもつ、魔力に変換する前の溶解液が固形化したものだ。

それは本来腸内にあるものではないが、今の彼女の身体には多くの誤作動が起きており、異空間へと収納されていたストックが意図せず吐き出された。

 

「もっもう゛♥しわけっぇ゛♥」

「よい…もっとだ。もっとだしてみせよ。」

 

アインズは膣道に入れた手をゆっくりと引き抜き、また突き入れる。

ソリュシャンの下腹部がフィクションのように大きく盛り上がり、子宮が押しつぶされた。

ボコッと飛び出た腹部が一気に張りのある身体へ戻り、また出っ張る。

子宮が潰れるたびに壊れた噴水のように尿道から粘液が吹き出し、時折、固形魔力が肛門から飛び出て湯船へ溶け出す。

 

ぐちゅぼっ!ぼちゅっ!

 

ダラダラと、ほんとうの意味での潤滑油として愛液を垂れ流し、アインズの手をくわえ込む膣道はまるで意思を持つように柔軟にくわえ込む。

ソリュシャンの限界が近い。

未知の快楽、絶頂するたびに減るマナによる疲労感、耳元で時折囁かれるアインズの甘い言葉と言葉責め、歯を直接突き立てられ甘咬みされる敏感に勃起した大きい乳首と、空いた手で絞られるように捏ねられる乳房。

 

にゅぷぷぼっ!ぶちゅん!

 

「んぉっ♥!?んっぎっ!」

 

アインズの手が早まる。

下腹部の子宮が嬌声をあげる。

膣道をこじ開け、子宮頸部をいじるアインズの手とは逆の手が、ソリュシャンの下腹部に突き立てられる。

 

まただ、また。

 

ソリュシャンの肉体が悲鳴を上げた。

またあの膨大な情報体を読み込む時が来た。

腹部を突き破った手先がそのまま進み、ソリュシャンの疑似子宮を外側から掴む。

そして尖った指先で、卵巣をごりっと押しつぶした。

 

「…逝け!」

「ん゛ん゛♥♥ふぐっん゛うぅっん゛♥」

 

びしゅっぶっ!!びゅわっ!

 

想像を絶する衝撃と情報の厚み…なにより性的刺激。

もう何も肛門からは出ることがなく、しかして息んだ結果大きく口を開いたままの尻穴に湯船のお湯とその他混合液が逆流する。

大きく勃起した疑似陰核が自己主張し、ソリュシャンですら理解していなかった、〈不定型の粘液〉の弱点であるコアが子宮の中で大きく痙攣した。

もし仮にアインズの手ではなく、他生物の精子が解き放たれていたのなら…言うまでもない。

 

ばしゃんっ!

 

ソリュシャンはいつもの冷たい目を限界いっぱいまで見開き、そして失神した。

特筆すべきは、一点、彼女の顔はいつもの作ったような笑顔ではなく、ただただ幸福そうな幸せを噛み締める笑顔だったこと。

ソリュシャンの肉体は何度も痙攣し、ぷるぷるんと揺れ、やがて湯船へ溶けていく。

 

その様子をアインズは静かに見つめた。

己の支配欲が満たされていく。それだけで、陰茎を持たない自身もまた絶頂するほどの興奮を感じていたとどこか他人事のように分析していた。

 

 

◯

 

 

翌日。

ナザリック地下大墳墓、玉座の間。

きらびやかな服を纏い、壮厳な杖を携えた死の支配者が座す玉座の前に、男女が跪いていた。

 

「セバス、ソリュシャン。今回も以前同様、よく頑張ってくれた。」

「ありがたきお言葉。」

 

セバスが深く頭を下げる。

その横でソリュシャンはいつものように冷たい目で笑っていた。

件のバカ貴族への諜報活動で、新たに大きな人身売買組織を2つ吸収できた。それによりデミウルゴスが進めている異種交配の実験も着々と進んでおり、近くに控える彼の表情もご満悦といった様子だ。

 

「なにか褒美を渡したいのだが、セバス申してみよ。」

 

アインズは詳しいことを理解していない。

デミウルゴスからの進言で、一旦褒めても良いんじゃないかという話になった。

それほど、実入りが大きかったんだろう。

もし次に守護者たちやプレアデスたちに褒美を渡す機会があったら、同じ轍を踏むことがないように、と考えていたアインズはすぐにそれが訪れたことで上機嫌だった。

 

「私共はあくまで当然のことをしたに過ぎません。アインズ様のために働けることこそ、何よりの褒美です。」

 

あくまで一度は固辞する。

それが通例となった褒美の儀だが、皆もすでに理解している様子で、デミウルゴスが視線でセバスへ促す。

良いから言え、と。

 

「…強いて言うのであれば、少々ひとりで外出させていただきたく存じます。」

「ほう…構わないが、褒美で強請るほどのこととは思えんな。」

 

些か具体的な物品の要求というものではなかったので残念な気持ちになったアインズだが悪くはない。

 

「監視をあまりつけないでいただけると助かります。」

 

その言葉にデミウルゴスがメガネをいじる。

ただこれにおいては、デミウルゴスとセバスの創造主同士の因縁関係なく、純粋に、少し怪しい物言いだと捉えられても仕方がない言い方だった。

だがアインズもまた会社員として、部下のプライベートまで詮索するということはしない。

 

「…いいだろう。ただし丸一日だけだ。」

「ありがとうございます。より一層の忠義に励みます!」

 

アインズが許可を出したのだから、と全員が黙る。

何より、真面目で勤勉なセバスのことだから、ツアレ関連の買い物だろうと当たりをつけてすぐに皆興味を失った。

次にアインズはセバスの隣、金髪の美女、ソリュシャンに目を向ける。

 

「ソリュシャンは、なにかあるか…?」

 

アインズはそれとなく、自然に問う。

なんとなくわかりきった答えが来るだろうな、と思っていたし、昨日の密会のこともある。一応趣旨は伝わっているはずだが、変なことを口走らない保証はない。

まるで浮気がバレないように気にする旦那の気苦労のように感じてアインズは自己嫌悪になりそうだった。

 

「…アインズ様の洗体をさせていただければこれ以上の褒美はありません。」

 

場が静まり返る。

横で伏せていたセバスでさえ、真横にいるソリュシャンの顔をガン見するほどに異常な発言だった。咄嗟に近くの参謀へ目を向けるセバスだがデミウルゴスは気にしていない様子だった。さもありなんといった様子に違和感を感じる。

しかし、それとは対照的にアルベドとシャルティアは騒ぎ始める。

 

罵詈雑言、とまでは言わなくとも、メイドの身分をわきまえなさいと口を揃えてアインズに却下するよう求めた。

ただ、動揺する一部の守護者たちを除き、アウラ、マーレ、ナーベラルは落ち着いた顔で静かにしており、謎の理解を示していた。

アインズはここですぐに許可を出すわけにはいかない、と即答しなかった。

 

「…洗体、か。」

「はい。もちろんやましいことはなく、あくまで御身のお体を清めるためでございます。」

「はいはい!じゃあ私でもいいでありんすよねぇ!?」

 

シャルティアが大きく手を挙げる。

その卑しさに幼さを感じてアインズは苦笑する。

 

「…シャルティアよ、ソリュシャンの褒美だ。」

 

アインズがたしなめるとシャルティアはすぐに手を下ろした。

わかっていたという感じではいるが顔が嫉妬したままだ。

 

「…ソリュシャン、その褒美は却下だ。」

 

当然でしょうとアルベドは胸を張り、シャルティアも「まぁそうでありんしょうね」と肩を下ろした。

だがそこでアインズが「だが…」と付け加える。

 

「最近、風呂場の領域守護者の件で大浴場が汚れてしまったからな…掃除をする予定だ。故に『特別任務』として浴場の掃除を頼みたい。」

 

それは…褒美なのか?

と正直誰もが思ったことだった。

もちろんアインズ、ひいてはナザリックのために働けるのだから、それは確かに褒美なのだが、今までアインズが渡してきた褒美とはだいぶ異なるもののように思えた。

実はこれには少しの思惑が重なっていて、アインズ側から『特別任務』として通常業務の範疇を指定することで、『特別任務』が決して夜伽ではないよ、と意識付けるためのものでもあった。

 

「…ありがとうございます!」

 

皆が驚く。

あのソリュシャンが目を含めて笑っている。

いや、見た目はやはり目が笑っておらず気持ちの悪い笑みなのだが、皆が感じ取ることができる何らかの感覚で彼女が心から喜んでいることを察知した。

 

「では、これにて褒美の儀は終わりとする。…アルベドこの後私の予定はどうなっている。」

 

早々に締めくくると、アインズはアルベドに自然な形で今日のこの後の予定を問う。

 

「はい、この後21時までは魔導国の法改正内容の草案を確認する事となっています。」

「そうか。」

 

アインズは少し考えるような動作を取った後、一瞬、誰にも気づかれない程度でソリュシャンへ視線を向ける。それはソリュシャンがじっとアインズを見つめていたからこそできた2人だけのアイコンタクトだった。

 

「20時までに終わらせる。その後2時間私は湯浴みをするのでソリュシャンはそれまでに掃除を終わらせておくように。」

「…かしこまりました。」

「?」

 

アルベドが首を傾げつつも了承する。

もとよりアインズが確認しなくてもどうとでもなる書類だ。あくまで形式上見るに過ぎない。

アインズはそう告げた後、足早に転移して消えた。

静まり返った玉座の間で、ソリュシャンはすっと立ち上がる。

なにか違和感を感じる守護者たち並びにプレアデスたちだったが、ソリュシャンが放った一言でそれは確信へと変わる。

 

「シャルティア様、私は今まで貴女様を応援する気でいましたが…今後は、勝ちにいかせていただきます。」

 

それが何を意味して、どういう言葉なのか、わからずとも魂に伝わる。

驚愕するシャルティアとアルベドを尻目に、アウラはやれやれといった表情で、マーレは負けないぞとガッツポーズをしており、ナーベラルはやってみなさいと不敵な笑みを浮かべていた。

 




というわけで、なかなか人を選ぶソリュシャン回でした。
どうにも書いてる最中、書き上げてからも、エロいと思えず、やはりブランクが有るな、と思っておりますが楽しんでいただければ幸いです。
R-18小説なのに、世界観や設定・解釈などに説明を大幅に割いているのそう感じるのかもしれませんが、好きなので、お許しください。

次は誰を書くか決めていませんし、いつの投稿になるかも未定ですが、まだまだ今後の展開といいますか、この竿なしアインズ様状態を一章として、二章の内容を温めているので、気長にお待ち下さい。
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