ヤドリギの支配者 ~女を堕として拠点も落として愉しい街を作ろう!~ 作:伊井君七味
話は一週間ほど遡る。
悪夢搾精機のトラブルをした後、俺とフォーは今後の方針について話し合った。
『マスター、以前お話しいただいたプランに変わりはありませんか?』
「あぁ。計画に変わりはない。俺の最終目標はエゴトレーサーだ」
そういうとフォーの機嫌が悪くなる。前の時と同じだ。何がそんなに気に入らないのだろう。
『自己複製機がどのような設備か、本当にマスターは説明文をお読みになったのですか?』
「書かれていることは読んださ。つまるところ、
名前通りなわかりやすい効果だ。何度も確認するようなことでもないように思えるが。
『そうです。エゴトレーサーが複製するのはマスターの人格、記憶、感情、その全てです。つまりあなたとほぼ同一の意識がこの世に誕生することになります』
「そう書いてあった。凄い効果だな」
オリジナルと同じように思考する複製知能。そんな代物が作れる技術なんて今の科学からすればワープゲートと同じくらいオーバーテクノロジーだ。
「なにかマズいことでも起こるのか?」
『質問をお返する形になってしまい申し訳ございませんが、マスターにとって良いことがあるのでしょうか?』
よりにもよって何故これを選んだのかわからない。珍しく強い語気からはフォーが心底そう思っていることが伝わってきた。
「あぁ、もちろんだ。ラインナップを見ていたんだがこれの他にも拠点内のキャラに幻覚を見せる設備があるだろ?その装置でコピーの意識体を住民全員に見せれば俺がいるように感じさせられると思うんだ。スレイヴやヒロインの快楽を計測すればセックスの快楽もまるで俺が体験したかのように記録することができるはず。そしたら俺がいなくても拠点の改造が進んで…」
『マスター!!』
興奮のあまりべらべらと構想を垂れ流し続けていた俺は彼女のらしかぬ大声に驚いて口を閉じた。
『拠点の改造を効率化するだけであれば他にもやりようはあるはずです。マスターであれば他のアイデアを思いつかれているのではないですか?』
「それは……」
『自分と同じ意識が存在するというのは思ったよりも受け入れがたいことですよ。必要がなければあんなモノ、作るべきじゃないんです』
落ち着いた口調。なのに何故だろう。いままでで一番心がこもっているように聞こえるのは。
『あなた方人間は70億人全員がオリジナルの存在です。誰かのコピーではありません。自分という存在が唯一であることが保証されているのに、何故わざわざ同じ存在が欲しいなどと思えるのですか?』
「…………」
何も言い返せない
疑問・憤怒・侮蔑・嘲笑。そして、憧憬。
いくつもの感情が複雑に絡んだフォーの本音を適当な嘘で誤魔化すことなんてできない。
『教えて下さい、マスター。数ある選択肢からどうしてご自身の複製を作ろうと考えたのですか…?』
「……欲望全開の理由だから言いづらかったんだが」
フォーがそこまで気になるなら言わないとな。
「CG100%コンプのためだ」
『……………………………はぁ?』
おっと。とても気持ちが入った「はぁ」を頂きました。一日にこんなにフォーの感情が揺れるだなんて驚きだな。
「なんだ。嘘偽りない本音だぞ」
『…すみませんマスター。全く理解できないのでもっとわかりやすくご説明いただけますか?』
「そ、そんなに呆れたように言わなくてもいいだろ。そうだな……」
どう説明すればいいものか。そう思案した俺の頭にちょうどいい例え話が浮かんできた。彼女に伝わるといいのだけれど。
「フォーはギャルゲーについて知っているか?複数のルートがあるゲームならなんでもいいんだが」
『知識としては知っています』
ほっと胸をなで下す。それなら話は早い。
「じゃあ質問だ。複数のヒロインがいるゲームで各ヒロインのイベントを全て回収するにはどうすればいい?」
『そうですね。ゲームを何周もする、でしょうか』
「そうだな。俺もそうやってきたよ」
時間はかかるが一番確実な方法だ。
「じゃあ今度は条件追加だ。
『む、なかなか難しいですね。その条件ですと………同時に複数のルートを進める、でしょうか』
「いい発想だ。確かにそれが出来れば一気に解決できるな」
一回のプレイでヒロインを何股もできるゲームが実際にあったりする。出来るからと言って心が痛まないわけではないが。
「じゃあ次はVDについて考えてみよう。さっき言った話はVDにも当てはまると思わないか?」
『複数ルートが、ですか?VDの一体どのような部分が同じだとおっしゃるのですか?』
「一つはヒロインと拠点の攻略。そしてもう一つは拠点改造のことだよ」
一、女性キャラを堕としながらEPを稼いで拠点を攻略するまでの新規開拓プレイ。
二、攻略済みの拠点を更に発展させて新たな女性キャラや堕としたヒロインたちと何度でも楽しめるエンドレスエンジョイプレイ。
VDのゲームプレイは基本的にこの二パターンの繰り返しだ。
「両方ともやっててすごく楽しかったよ。それぞれのフェーズで違う面白さがあったおかげで飽きずにここまで来ることが出来た」
ヒロインを堕としながら拠点の攻略を進めるのは当然ながら、スレイヴを増やしたり色々な設備を作って試すのもとても楽しかった。
この調子なら今後もVDを楽しくプレイできる。でも…
「物理的にも時間的にも、両方を同時に進めることはできない。そうだろ?」
『それは……当然のことだと思います』
「ああ。だからどっちかを選ばなきゃいけない。じゃあフォー、【頑張ったら手に入るかもしれない新しい快楽】と【頑張らなくても好きなだけ貪れる快楽】の二つならプレイヤーはどっちを選ぶと思う?」
『…………』
わかっていて意地悪な質問をする。想像と違わず彼女は口を噤んだ。
リアルの女性を攻略することで拠点を制圧できるゲーム『ヴィスカムドミネーター』。
このゲームを始めた当初に誰もが思っていたこと、それは「女とセックスしまくりたい」だ。
そうじゃなきゃあんな怪しいメールすぐにゴミ箱行きに決まってる。
どのプレイヤーも女の子たちとエロいをするためにこのゲームをプレイしている。
拠点を攻略するまでは、どうすればあの女キャラを堕とせるのか、拠点を落としたらこんなことをしてみたい、そんなことを考えてプレイを進めていく。その間は未知の快楽を求めてゲームの進行を続けるだろう。
だけど拠点を制圧し終わったら?大した苦労もせずにセックスが出来るようになったプレイヤーはどうなる?
「たぶんヤリたい放題できる拠点改造の方に熱が入るよな。やればやるほど自分の好きなことができるようになるんだし」
『……そうでしょうね』
人間はどうしても楽な方に流れやすい。それが望んでいたことならなおさらだ。
「実際、拠点を発展させるのって楽しいんだよな。手を加えるアイデアはたくさんあるし。俺だって堕としたヒロインやスレイヴたちともっと楽しみたいしな」
というかいまのところEP稼ぎがメインで全然気楽にセックスを楽しめていないぞ。拠点を堕としたらヤリたい放題だと思っていたのになんだこの有様は。
……まぁそのことは今はいい。重要なのは攻略済み拠点の改造は攻略と同じぐらい楽しいという点だ。
「簡単にいちゃいちゃできる攻略済み拠点で一ヶ月二ヶ月と過ごす。そんな時間が長く続いたら、新たな拠点を攻略するのなんて面倒になっていくじゃないか?」
『…………』
少なくとも俺はそう思うようになりそうだ。
拠点攻略は楽しい。だけど同じぐらい楽しくてより簡単なコンテンツがあったらついついそちらを選んでしまってもおかしくない。
やろうやろうと思っても明日からやればいいさと後回しにしてしまうのが目に見えている。
ぬるま湯に肩まで使ってしまうとそこから抜け出すのはとても難しいのだ。
「するとどうだろう。攻略した拠点で遊び惚けてゲームを全然進めない怠け者が誕生するわけだ。こんなプレイヤーがゲームを進める意思を持っているとフォーは思えるのか?」
『……いいえ。VDをプレイするに値しないと判断するでしょう』
「だろうな」
ビンゴ。
以前話した時にフォーは前へと進み続けるプレイヤーこそがVDをプレイするのに相応しいと言っていた。
そんな彼女が怠慢なプレイヤーをそのままにしておくはずがないという俺の予想は的中していたわけだ。
「悪いが俺は拠点改造を一切しないなんて約束するつもりはない。俺が堕とした拠点と女たちだ。自分の好きなように楽しみたいって気持ちに嘘は付けない」
『……はい。マスターには当然その権利があります』
残念そうにしながらもフォーは俺の意思を肯定する言葉を返してくる。
一見すると俺の意思を尊重しているように聞こえるが、俺というプレイヤーに見切りをつけようとしているのが筒抜けだ。気が早い奴だな。それだけ今まで裏切られてきたということか。
安心しろよ、フォー。
「言っとくけど、新しい拠点攻略も諦める気はないぞ」
『え………?』
それはまるで真っ暗な闇の中で淡く輝く希望を見つけたような声だった。
「おいおい、なんでこんな話になったのかもう忘れたのか?拠点改造だけに専念するならこんな設備は作らなくていいだろ」
『あっ………』
そう、話はここで
問題です。複数のルートを一周で完全攻略するにはどうすればいいでしょうか?
その問いに対する答えは…
『マスター。あなたは十和田マンションの改造と他拠点の攻略、その二つを同時に進めるためにコピーを作ろうとしているのですね?』
「そう、その通りだ」
ゲームに参加するプレイヤーの数を増やしてしまえばいい。それが拠点攻略と拠点改造を両立するために俺が出した策だ。
『確かにコピーであろうと同一の人格を持っていればそれはプレイヤーと判定される。でも複製された人格には魂がないためキャラの攻略は進められない。故に意味がないと思っていましたが………拠点改造と性交渉は工夫によっては可能になる。まさかそのために………』
「おーいフォーさん?ぶつぶつと何言ってるんだ。早口で聞き取れないぞ」
『あっ……すみませんマスター』
フォーはすごい勢いで独り言を捲し立てていたが俺が声をかけると我に返ったようだ。
断片的に聞き取れた内容からするに彼女としてもこんな使われ方は想定していなかったのだろうか。
「そんなに予想外だったのか?同じことをやろうとした奴はいそうなもんだが」
『そうですね。自分のコピーを作ろうとしたプレイヤーは過去にもいました。しかし、手間がかかる拠点攻略をコピーに任せるのではなく、気軽に楽しめる拠点改造の方をやらせようとした者は前例がなかったものですから…』
「ふーん、そんなものか」
意外だ。今後のことを考えたら十分考えられる選択肢だろうに。
『念のためお伝えすると、コピーがヒロインやスレイヴたちと性行為をしてもオリジナルであるマスターにその体験が伝わることはありません。そのため、本当の意味でマスターが拠点攻略と拠点改造の両方を体験することは出来ないということは理解されていますか?』
「わかってるよ。その為の対策も既に考えてある」
拠点の改造を進めながら裏でまとめていたテキストをVDにアップロードする。
これまでの経験を踏まえて俺なりに考えたエゴトレーサーの改修案だ。
『これは…』
「プレイヤーとコピー間での記憶の相互同期。この機能を追加してほしい」
古今東西の創作の中でコピーがオリジナルの意思に反するようになる最大の原因は「オリジナルが持っていない経験が増えること」だ。
もとは何かのコピーでもオリジナルとは別の経験を積んでいけば独立した個になっていく。つまり、二者の間に差が出来ることで別個の存在となっていくのだ。
そうならないためにはお互いの記憶を同期すればばいい。
コピーの記憶をオリジナルの俺に、オリジナルの記憶をコピーの俺に転送すれば両方の記憶をもった「俺」になれる。
十和田マンションで命さんや八重さん、スレイヴたちとセックス三昧をする俺。新しい拠点の攻略に心を躍らせて挑む俺。そのどちらの記憶も持つ完璧な俺に統合される。
もし新しく拠点を落としたらそこにもコピーをつくる。そうしてまた拠点で楽しむ俺とゲームを進める俺に分かれる。
「そうすればほら、新しい拠点の女たちと落とした拠点での爛れた生活の両方が手に入るだろ?」
『………』
かっこつけて言ったものの帰ってきたのは沈黙だった。
おかしいな、フォー好みのアイデアだと思っていたんだが。
『…コピーとオリジナルを同一に近づけるということはオリジナルとしての価値をなくすということですよ。本物のマスターと定義づけるものがなくなってもいいのですか?』
「肉体を持っているのは
そうすれば拠点攻略できるのは本物の俺だけだ。
ゲームの仕様を考えると他にも色々な制約をかけることにはなると思う。拠点の外に出れないとかオリジナルとコピーでスキルを共有できないとか。
まったく俺と同じようには出来ないだろうが、それはそれで工夫のしがいがあって面白い。
それにやっぱりメインストーリーを進めるのは俺自身でありたい。
一つの拠点に留まらずひたすら新天地を目指し続ける。
増えていく俺の中で一番大変で、そして一番楽しい
『マスターはそれでよろしいのですか?このゲームを、楽しくプレイしていただけるのでしょうか…?』
「当然だ。真のゲームクリアのためには全てのコンテンツ制覇が必要だからな!」
ストーリー攻略も、やりこみプレイも、どちらも楽しみつくしてこそゲーマーというものだ。
「女を堕として拠点も落とす。それがこのゲームの
『……ふふ。ふふふ。ふふふふふふふふふふ』
壊れたように笑い始めるフォー。一瞬心配になったが声色がさっきまでと違って明るいから問題なさそうだ。
『ふふふふふふふふふふふふふふふふふ』
いや、本当に大丈夫か!?同じトーンで笑い続けられると逆にホラーなんだが!
『ふふふ…っごほん。失礼しました。とても面白かったものですから』
「気に入っていただけたかな?」
『ええ。とっても気に入りました。このようなアプローチを取ったのはあなたが初めてです』
心の底から褒め称えるような声。己の想像を上回ったアイデアに彼女はご機嫌のようだ。
それにしても『このようなアプローチ』か。まるで違う方法をとったプレイヤーがいるような口振りだな。
まぁいい。気にはなるがそれは別の機会にでも聞こう。
誰がどんなプレイをしていようと俺は俺のやりたいようにするだけだ。
◇
「しっかしいくらなんでも流石にぼったくりすぎじゃないか?起動しておくだけでこんなにEPを持っていかれるんじゃヒロインを何人堕としても足りないんだが」
『そんな燃費の悪い設備を稼働させるためにEPの獲得量を増やしてきたのでしょう?収支がプラスになるのがわかっているんですからいいじゃないですか』
「そうは言ってもだなぁ。毎日あくせくと稼ぐEPがあっさりと溶けるのは精神的に良くないんだよ…」
いましがた作った設備を見ながら文句を言うと、フォーはそれ見たことかと言わんばかりに嫌味を返してくる。
まだ納得しきってないのかよ。こんな便利な設備なのに。そう思い説明文を見返す。
『
・設置要求EP:100EP
・稼働要求EP:20EP/1日
・この設備はプレイヤーと全く同じ意識を持つ複製体を作成することができる。
・複製した意識を稼働および維持するためには1日あたり20EPを消費する。
・他の設備と連携することで複製体は拠点内の設備・キャラクターに対してアクションを起こすことが出来るようになる。
「さて、じゃああと一個だけやることやったら次の拠点探しに行くか」
『まだやり残したことがあるのですか?』
「当たり前だ。せっかく美味しく食べられるよう下ごしらえしてきたのにまだ前菜も食べてないじゃないか」
彼女たちが楽しめるように、俺が愉しめるようにこの拠点を発展させてきたんだ。
それが一区切りした今、ようやく心ゆくままに遊べるというものだ。
「ここまで頑張ってきたんだ。最後に少し派手に楽しんでも怒らないでくれよ?」
送られてきた怪しいメールを開いてからもう何日が経っただろう。
これっぽっちも女っ気がなかった俺の人生はあの日を境に一変した。
たまたま催眠がかかったお隣の主婦を浮気大好きな淫乱人妻に寝取り堕とした。
口煩いマンションの管理人を露出大好き変態マゾに生まれ変わらせた。
拠点を落とした後は目についた女を手当たり次第に自分のものにした。
最高の時間だった。ここまで手塩にかけた拠点から離れるのを惜しむ気持ちがないといったら嘘になる。
だけど彼女たちと二度と交われないわけじゃない。
…でも、新天地を目指すのは彼女たちとの宴を堪能してからでも遅くはないよな?
思ったより話が複雑になってしまいました。
分かりづらければ後ほど予定している一括修正のタイミングで手を入れようと思うので、活動報告などにご意見をいただけると助かります。
ちなみにおすすめのゲームも募集しています。そちらも活動報告に書いていただければ…