ヤドリギの支配者 ~女を堕として拠点も落として愉しい街を作ろう!~ 作:伊井君七味
改めて十和田マンションの詳細情報を見てみる。
『十和田マンション』
制圧必要人数:3人
攻略中ヒロイン:弘前命(2/3)
*第二陥落以上で攻略済みとなります。
攻略ボーナス:毎月一定金額の付与
制圧後獲得スキル:『未公開情報』
「命さんの進行度が3分の2になってるな。これは第二陥落まで行ったことを表してるんだよな?」
『はい、その通りです。そう仰るということは分かりづらいということでしょうか?』
「あぁ、ちょっとな」
いちいちあと何人攻略するかを考えるのが地味に面倒くさい。あと進行度も分数表記だと細かくて見づらいな。
そう伝えるとアプリ画面に一瞬ノイズがざざっと走った。
『これでいかがでしょうか?』
その言葉に再度詳細情報を見てみると表記が変わっていた。
制圧必要人数:残り2人
所属ヒロイン:弘前命 ■■□
*第二陥落以上で攻略済みとなります。
「お、おお。見やすくなったよ。ありがとう」
感謝の言葉を言いながらも俺は内心ビビっていた。
サポートAIなのにゲームUIに干渉できるのか?
彼女のことは説明するだけのナビゲーションキャラかと思っていたが、俺が考えていたより高い権限を持っているのかもしれない。
(フォーの機嫌を損ねると画面を真っ白にされそうだな…)
彼女の扱い方には気を付けよう。
それはそうと彼女にある程度の権限があるということであればもう少しゲームの仕様について改善をお願いしてみよう。
「なぁフォー、もう一つ手を加えて欲しいところがあるんだが聞いてもらえるか?」
『はい、お聞かせください』
「拠点制圧に必要な人数を変えて欲しいんだ」
『それは必要な人数を減らせというご依頼でしょうか?』
心なしかフォーのマシンボイスが固い声色になったように感じる。
まずい、ゲームの難易度を下げろと言っているように聞こえてしまったか。
「いや違う。必要数を減らして欲しいというわけじゃなくて、人数じゃない値でカウントして欲しいという意味なんだ」
『…?申し訳ございません。仰っている意味がよくわかりません。詳細なご説明を頂けますか?』
「あぁ、もちろん。俺が言いたいのは拠点に所属する全てのヒロインが同じ価値を持つのはバランスが悪いんじゃないかということだ」
どう言えば伝わりやすいか考えながら口を動かす。
「例えば1vs1の対戦ゲームでお互いに3人のキャラクターが使えると仮定してみてくれ」
『はい、仮定しました』
「プレイヤーが使える3種類のキャラクターにはそれぞれ違う撃破ポイントが割り振られているとする。エースアタッカーのAは10ポイント、エースには劣るが特殊な能力を持つBは5ポイント、なんの能力も持たないCは1ポイントのようにだ」
『なるほど、キャラクターの役割や強さによって倒した時にもらえるポイントが異なるということですね。』
「その通りだ。より重要なキャラクターほどそれを倒した時にゲットできるポイントは高くなるということだ。これはゲームバランスを保つ為に必要な仕組みだと俺は思っている」
強さは違うのにもらえるポイントが同じならどのプレイヤーも一番弱い敵を倒しに行くだろう。
だが強さに比例してもらえるポイントが違えばそこの戦略が生まれてくる。
一番強い敵を倒して一気に勝利に近づくか、はたまた弱い敵を沢山倒して安全に勝ちを狙うか。
考える余地があるからこそプレイヤーの特色が出たプレイスタイルが誕生するのだ。
『つまりマスターはこう言いたいのですね。攻略できるヒロインが全員同じ1ポイントなのはおかしい、と』
「そうだ。攻略が簡単な人は低いポイント、逆に会うのすら難しいという人は高いポイントであるほうが良いと思うんだ」
俺の拙い説明はなんとか伝わったようだ。
フォーは本当に賢いAIだ。ゲーム的な概念も正確に理解してくれた。
『面白いアイデアだと思います。しかしどうしてマスターはこのような提案をされたのですか?今仰ったようにゲームバランスが調整されれば、これからは簡単に堕とせるヒロインだけでは拠点制圧出来なくなってしまいますよ?』
「…?だってその方が面白いだろ?」
ロクに考えずに遊べてしまうゲームは早々に飽きてしまうものだ。
強い敵からは価値のある報酬が得られるべきだ。
頭をかきむしる程苦労したプレイの先にこそどんなものにも代え難い達成感があるのだ。
『…承知しました。運営本部に提案をいたしますので少々お待ちください』
フォーがそう言うと画面に「Please Wait…」という文字と共にローディング画面が表示された。
言ってみるもんだな、じんわりとした達成感が俺を包む。
今俺が言った内容はアプリのUIのような見た目だけの話ではなく、ゲームシステムの根幹に関わる改善案だ。
一ユーザーの提案など普通のゲームなら採用するどころか耳も傾けないだろう。
それなのに彼女は少なくとも考慮するに値するアイデアであることを認め、ゲームに反映させるかの確認まで行ってくれている。
大人数が同時にプレイするソシャゲなんかでは考えられないほど手厚い対応だ。
(ということはプレイヤーは俺一人だけなのか?あるいはプレイヤーごとにゲームシステムが独立しているのか…)
フォーの反応から色々と考察することはできるがどれだけ考えても真実かどうか俺にはわからない。
楽しむしかない、結局はそこに落ち着く。
こうしたらいいんじゃないか?って言って通るならそれに越したことはないのだ。
『お待たせしました。先程の頂いたご提案について決議が出ました』
「思ったより早かったな。それでどうだ?俺の意見は運営のお眼鏡にかなったか?」
『はい、マスターの要望はVDの存在定義に沿うものであると判断されました。したがって只今より人数に変わる基準としてヒロイン攻略報酬【
再び画面にノイズが走る、今度は先ほどよりも時間が長い。
1分ほど経過した後に画面は再び元に戻り、新たな拠点詳細画面が表示された。
『
・所有数:10EP
・制圧必要数:30EP
所属ヒロイン
・弘前命 ■■□
攻略ボーナス:毎月一定金額の付与(未獲得)
制圧後に獲得出来るスキル:『未公開情報』
「おぉ…!」
表記ががらりと変わった。拠点を制圧するのに必要な条件が人数だったのがEPという値に変更されている。
「フォー、このEPというのはなんだ?」
『こちらの説明文をご覧ください』
彼女がそう言うと新しいウィンドウが表示された。
そこにはEPについての説明らしき文章が載っていた。
【崩我結晶について】
エゴピース、通称EP。
ヒロインの陥落度を進めると取得できるリソース。
墜ちるということ、それはつまり元々の自分のカタチを変えられるということ。
削り取られた自我の破片は堕落の蜜と混じり合い結晶と化した。
「なるほど…」
フレーバーテキストは一旦無視して考えると、EPとはヒロインを陥落するともらえるポイントのようだ。
これを貯めることで拠点の制圧を行うことができるらしい。
「ヒロイン一人当たりでもらえるEPが拠点制圧に使うEPと比べて大分多いな。制圧後は無駄になってしまうのか?」
『いいえ、制圧後は拠点を改造する際にEPをご利用頂けます。拠点改造につきましては制圧後にご説明させていただきます』
「おおっ!それはいいな!」
改造!なんてロマンあふれる単語だ。
外見や内装を変えることが出来るのだろうか、今からワクワクしてしまうぞ。
「EPは第二陥落までしないともらえないのか?」
『はい、その通りです。ただし拠点制圧後は第一陥落でも少量ですがEPが獲得できるようになります』
「なるほど、EPの役割が変わるからか」
拠点制圧はメインコンテンツなのだから創意工夫して一人一人堕とせということだろう。
反対に制圧後は拠点改造のために小狡い手を使って第一陥落を量産しても問題なしと言っているのだ。
拠点制圧までは正攻法で挑め、制圧後は効率プレイも許すというのが運営の新たな方針らしい。
(くぅ~!遊び甲斐があるな!十和田マンションを制圧してもすぐに他の拠点攻略に行きたくなりそうだ)
やりたいことが湯水のように脳内に溢れ出してくる。
ゲームを始めたての頃のようなワクワク感を今俺は感じている。
広大なフィールドを見せられて「ここから見える所全てに行けますよ」と言われたかのような解放感。
膨大なスキルツリーを見て「どういうビルドにしようか」と思考を巡らす可能性の余地。
これこそがゲームの醍醐味、未知の荒野を行く冒険感だ。
「フォー、俺の意見を聞いてくれてありがとう。すっごく面白そうで早く攻略を進めたくて堪らないよ」
『いいえ、私の方こそマスターに感謝を。既存の枠組みに留まらず更なる果てを目指す、あなたは理想的なVDプレイヤーです。その姿勢を評価して1FPを進呈いたします』
「1FP?FPってなんだ?」
『FPとは【フォーポイント】、つまりは私の好感度です。このゲームで最も価値のあるポイントですよ』
どっと二人で笑う。
なるほど、彼女は面白いAIだ。
先程の台詞からこちらが質問をしないと情報を開示しない理由もわかった。
フォーはプレイヤーに先の情報をあまり与えたくないのだろう。
攻略本を読むように先の情報を知ってからプレイするのではなく、俺自身の手で自らのゲームプレイを開拓して欲しいのだ。
それは酷く自己本位な考え方だが、ゲーマーなら誰しも理解できる感覚だとも思う。
彼女は既にゲームクリアした熟練者が今からゲームを始める初心者を見守るような感覚で俺を見ているのだろう。
まだ見ぬ強敵に膝を折って苦しんで欲しい。
見事それらを打ち破って栄光を手にして欲しい。
あなただけの冒険譚を綴って欲しい。
それを私に見せて欲しい!
きっとそんな感じだ。
ならば特等席で見せてやろう。
フォーはプレイを誘導するサポート役であってあくまでゲームを進めるのはプレイヤーたる俺だ。
望まれなくたって俺がやりたいようにやるさ。
「じゃあ改めてフォー、十和田マンションの攻略チャートを考えよう。と言っても制圧に必要な基準がEPに変わったことで誰を攻略するかは決まったんだけどな」
『なるほど、では是非私にお聞かせください。一体誰をターゲットにするのかを』
俺に発言させる為にフォーは分かっていることをあえて聞いてくる。
その期待に応えて俺は高らかに宣言する。
「次のターゲットはこの十和田マンションの管理人、十和田八重だ」
あんなスキルがあればいいな、こんな要素があるゲームをやりたいなとよく私は思ってしまいます。
しかし中々理想と一致するゲームはありません、なので今筆を執っている次第です。
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