『アオのハコ』
愛さえあれば、とは言えどなかなか上手くはいかないもの。
でもまあ、気持ちさえ通じればどうにかなる。
そう信じていれば、多分……きっと。

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涙拭うアオい夢

 何事も、最初はうまくいかないものだ。世の中には教わりもせずにいきなりちゃんと出来てしまう連中もいるけれど、それは天才と呼ばれる人たちの話だ。私たちの事じゃない、哀しいことに。

 痛いのも苦しいのも馴れているけれどそれはコートの中だから、あるいはコートへ向かう途中だから平気なだけ。それ以外では、やっぱり怖い。でも怖がっていたら、格好がつかない。

 そもそもの時点で私は格好悪い人間なんだけど、でもそれを受け入れる気はない。私は先輩だから、後輩の前では格好良くいなければいけない。そうでなくても、好きな人の前では格好くらい付けなければ。結果はどうあれ、道を通すのが私だ。

 ――なんだけど、なあ。正直言って、どうしていいか分からない。愛するって、愛されるって、難しすぎる。

 

 

 

 正直言って、耳を疑った。大喜くんが何を言ったか、頭が理解を拒んでしまったのだ。

「あー……ごめん、ワンモア」

 まさか、という気持ちを胸に指を振り促すと、大喜くんは決意を込めて再び口を開いた。

「先輩、好きです。俺は千夏先輩が、好きなんです」

 それはつまり、言葉の通りなのか。大喜くんが私を好きだと、そう言っているのか。回りの悪い頭をフル稼働させても、他の意味は感じ取れない。でもそれは、それは……有り得るのか。だって大喜くんには蝶野さんがいて、だからこんなことは、有り得ない筈だ。

 有り得ない筈だけど、でも目の前では大喜くんが涙を浮かべて告白してきているわけで。

 ……後は私の気持ち次第、という事だろうか。

 私が大喜くんをどう思っているか、それは決まっている。好きだ、と思う。多分きっと、恐らくは。でも誰かを好きになったことなんか無いし、正直どう返したものだろうか。こういうケースでの動き方なんか、私は知らない。

 あれこれ考えてもいられない、か。

 私は拳を握り、覚悟を固める。

「あり、がとう。嬉しいよ、大喜くん」

 ああ、そうじゃない。それが言いたいんじゃない、なのに私の口は不器用すぎる。

 これじゃまるで、断(・)ろ(・)う(・)と(・)し(・)て(・)い(・)る(・)み(・)た(・)い(・)じ(・)ゃ(・)な(・)い(・)か(・)。

 大喜くんもそれを感じてしまったのか、辛うじて留まっていた涙が溢れて頬を伝っていく。

 泣かせたいんじゃない、そうじゃないんだ。その想いだけを胸に、私は――大喜くんを抱き締めた。

「私、も。私も大喜くんが、好きです」

 ようやく形になった言葉は、ただただ目の前へと向けられて。

 伝わったか伝わらないか、それさえ分からないけれど。でも私たちはそのまま抱き合った、まるで恋人同士のように。

 いや、ようにじゃないのか。恋人同士になったんだろうか。まだフワフワした気持ちのまま、私はぼんやりとそんな事を考えていた。それから色々あって私は自分の無知さを、強く強く恥じる事になるのだけれど。

 

 それを感じたのは、初めてのキスの時。……真正面から顔を合わせたお陰で鼻を打ち、もう一回ねとやったら唇を切って。三度目の正直でようやくキスを成功させたものの、気まずいったら無かった。大喜くん的には私がリードしてくれると思っていたようだけど、そんなわけ無いでしょうに。こんなワンパクで逞しい子が、女子力という概念を母のお腹に置いてきたこの私が、そういう細やかな事が出来るわけがない。

 まあ、これも想い出かな。なんて顔を火照らせながらベッドに転がっていた私は、ふと気付いた。

 キスって、ゴールでもなんでも無いじゃないよね。むしろ途中経過だよね。

 恋人同士は、キスをして。それからそれから――そ(・)う(・)い(・)う(・)事(・)をするわけだ。一応高等教育を受けている身だからイメージはできるけど、でも実感が全く無い。

 あれこれ色んなイチャつき方をして、それで大喜くんのえー……オトコノコが私の――オンナノコに入る、と。

 ……………………いや、出来るの? それ。指だってそんなに深く入んないよ、実際。頑張ったら通るんだろうか、でも難しそう。

 人に相談するのは恥ずかしいし、何よりそんな話が出来る程親密な相手が見当たらない。花恋は多分経験済みだけど、まさかあれに相談するわけにいかない。渚なんか絶対ダメだ、あんな水素原子くらいに口が軽い女には聞かせたくない。

 ぶっつけ本番で何とかするしかないのかな、まあ習うより馴れろって言うし。

 そんな風にのほほんと構えていた私は、数日後に痛い目をみることになってしまった。

 

「…………後でひっぱたくからね」

 ベッドの上で痛む股を押さえ、涙を堪えて私は大喜くんを睨み付ける。まあ、……考えなしのまま挑んだ私も悪いんだろうけど。でも、こんなに痛いもんだとは思わなかったよ。と言うか何もかも、想定外過ぎた。

 お互い裸になって初めて知った、臨戦態勢のオトコノコというモノを。うんと小さい頃お父さんのを見て以来だし、一応前情報として観てみた動画ではモザイクかかってたから全くイメージがわかないままだった。想像より大分大きく、触れてみると熱くて硬い。第一印象の時点で既に厳しい、そんな形状。大喜くんとキスしながら身体を触りあっていても、気になって仕方がない。肌を合わせているのは安心するし気持ちいいけど、その先を考えると少しずつ怖くなっていくのが分かって段々と嫌な予感がし始めた。

 そして脚を大きく拡げて、私(・)をさらけ出す。おむつを代えて貰う子供のように、無防備な姿勢の私へと大喜くんが折り重なっていく。

 何度も上滑りしながら、それでも大喜くんの先端が私の中に入ってきたその時。

「いっ……たぁ……!」

 やって来たのは快感ではなく、ミシリと骨が軋む鈍い圧迫感と身体の芯を貫かれるような痛み。まだ頭の部分さえ入りきっていないのに、心が折れるほどに苦しい。

 これはダメだ、これ以上は無理だ。

 私の声に驚いたのかオロオロしている大喜くんを手で制し、私は強引にその下から抜け出していた。

 で、だ。私は半ば勢いだけで、ひっぱたくとか言ってしまったわけである。

 ……これは、想像していなかったな。

 だってあの動画だとすんなり入ってたし、すぐ気持ち良さそうにあんあん言い出してた。多少の誤差はあっても、あんな風にどうにかなると思ったのだけれど。

「あの千夏先輩っ、ごめん……なさい……! 俺、俺……!!」

 泣きそうになっている大喜くん、その肩にぽんと手を置く。大丈夫だよ、の意味を込めて。ひっぱたくのは、今度にしよう。ひっぱたくことはひっぱたくけど。

 だって痛かったもん、同じくらい痛がらせないと不公平だろう。……大喜くんのお尻になんか突っ込もうかな、でもそれはさすがに可哀想かも。

 まあそれはおいおい考えよう、そうしよう。

「大喜くんや、今日は私もう頑張れません。また次の機会で良いでしょうか、良いですよね?」

「えぁ、その……はいっ」

 大喜くんのオトコノコは変わらず槍のようにそそり立っているけれど、正直これから再度のチャレンジは無理だ。裂ける、っていうか壊れる。同じ意味かな、うん。

 そして後始末を終え、お休みなさいのキスをしてお互い自分の部屋に戻って私はようやく事態の深刻さを理解することになった。これは不味いんじゃないだろうか、と。

 もしかしたら私は、人と造りが違うのではあるまいか。

 だからこんな風に痛んでしまう、愛されない身体なのではないか。

 だとしたら、だとしたら。私はどうすれば良いんだろう。

 

 

 

 私は大喜くんが好きだし、愛したいと願っている。大喜くんもその筈だ。なのに、私はそれを受け入れられない。今はまだ良いだろう、でもこの先もずっとこうだったら。

 ……さすがに愛想を尽かされるかもしれないな、何しろ大喜くんの側には蝶野さんがいるんだから。このまま何も出来ないならいっそ鞍替えしよう、とか思われちゃうとスゴく困る。NTRじゃないか、そんなの。

 大喜くんは迸るほど良い子だからそんなことしないだろうけど、さ。

 でも痛いのは痛いから、どうにもならない。

 さて、どうしようか。

 あれこれ考えていても、時間は変わらず過ぎていく。夜は更け階下からの物音も消えて、二人だけの時間がやって来た。嬉しくて愛しくて、でも怖い。人を好きになるって、難しすぎる。

 モジモジとしながらも、大喜くんは期待してくれている。それは一目見れば分かる、分かってしまう。先輩としてこれに応えなければならないのに、不安ばかりが膨らんでいくのが分かる。

 ――ダメだ、考えるな。そんな風に思うな。緊張は身体を強張らせるだけだ、バスケで身をもって学んだじゃないか。

 甘く蕩けるキス、そして触れあう肌の熱。全てが気持ちよくて、幸福で。

 なのに。

 期待にはち切れそうになっている大喜くんのオトコノコを目の当たりにすると、やはり恐怖が込み上げてしまう。

 これは恋人同士なら普通の事なんだ、恐れるような事じゃないんだ。そう自分に言い聞かせながらも、何処かで腰が引けていく私。甦る痛みの記憶が、それを助長していく。

「ごめん、私……」

 こんな事を言ってはいけない、愛(・)さ(・)れ(・)た(・)い(・)と(・)願(・)わ(・)な(・)け(・)れ(・)ば(・)な(・)ら(・)な(・)い(・)。それでも、私は怖くて仕方ない。

 大喜くんに愛されるのが、怖い。

 大喜くんを愛せないのが、怖い。

 大喜くんに私を預けるのが怖い。

 結局私は、私は。――全部が全部、怖いんだ。

「ごめんね、大喜くん。……ダメだよね、こんなんじゃさ……」

 大喜くんは、セックスしたがっているのに。私はそれに応える処か、傷付けているだけだ。

 私は大喜くんを、好きになるべきじゃなかったのかもしれない。

 いっそ蝶野さんに大喜くんを任せてしまえば――。

 そんな思いに駆られてしまった私はでも、大喜くんの言葉で我に帰る。

「謝らないでください、先輩。先輩は、何も悪くないんです」

 気付かない内に私の顔を伝っていた涙を拭いながら、大喜くんは笑みを浮かべてくれた。いつものように、私を支えてくれる笑顔。私の大好きな、私を大好きな、大切な人がそこにいる。それは恐怖さえ祓うほどに、幸福な事なんだ。

 溢れる涙が止まらないのは、幸せだから。

 大喜くんは私に愛想を尽かしたりしない、ずっと寄り添ってくれる。それが分かったから、無防備に泣いても良いんだ。我慢も強がりも、もう止めて良いのかもしれない。

 だからそう、言ってしまおう。

「私も大喜くんが、好き。だから……したいけど、怖いの」

 心は大喜くんを求めていて、でも身体が怯えてしまう。我ながらワガママな話だ、本当に。

 こんな私の話を大喜くんは、黙って聞いてくれて。そして、笑ってくれた。

「大丈夫、です。先輩のペースで構いませんから、少しずつ馴らしていけば良いんですよ。俺は千夏先輩が好きですから、無理なんかしてほしくありません」

 私を気遣って真面目な顔をしている大喜くん、でもそのオトコノコはやっぱり天井を向いて期待に震えている。それがなんだか、可笑しくて。なんだか、気持ちが軽くなってきて。

 気が付けば私も、さっきまでの涙が嘘みたいに笑っていた。

 ベッドの上で二人、バカみたいに笑いあう。

 ああ、何て言うか――幸せだな。

 

「あの、……俺力加減とか下手ですよ。先に言いますけど」

「あー……うん、知ってる。なるべく優しくしてくれれば良いよ」

 大喜くんのちょっとだけ緊張した顔があるのは、私の脚の間。その目の前に位置するのは、私のオンナノコだ。……恥ずかしいにも程があるけど、でも大丈夫。大喜くんだから。

 馴らしていけば良い、と言われてふと思ったのだ。すこしずつ解していけば、痛くないかもしれないし、気も紛れて怖くないかもしれない。動画で見たけど、舌で愛するプレイもあるらしいし。そういう風に解してもらってから指、そしてオトコノコへと段階を踏んでいけば多分なんとかなるだろう。……なるといいなぁ。

 おずおずと伸ばされた舌が、私の入り口に触れた。少しずつ少しずつ舐めとるように肉を掻き分け、僅かずつ私の中へ入ってくるのが伝わってくる。

 大喜くんの顔はすぐに私の肌へと触れ、まるで――キスしているようだ。そのまま限界まで舌を伸ばし、私の浅い部分を徹底的に舐め崩していく。怖さも痛みも感じない、ただただ気持ちいいだけ。でも、でも。

 私の奥(・)が、疼いていく。もっと深く入ってきてほしい、と催促しだしているのだ。あんたさっきまで嫌がってたでしょうに、ホント持ち主の言うことを聞かない困った娘だよ。

「ね、大喜くん。……その、さ。指で……してくれるかな」

 顔をちょっとだけつついてそう告げると、名残惜しげに大喜くんは口を離した。舌が噛まれてるみたいでした、とか恥ずかしいことを言いながら。あんまり感想とか言わないでほしいけど、味の事を言わないだけマシかな。

 押し当てられた人差し指は、つぷりと遠慮がちな音を立てながら私の中へ埋まっていく。

 舌よりも深く、力強く私の内側をえぐっていく大喜くんの指。内臓を掻き分けられているのに、全く怖くないのが不思議だ。それに中で指がどう動いてるのか、見えるわけでもないのにハッキリ分かるのも不思議。

「ん、その辺……。爪が当たってる辺り、指の腹で擦って……」

「ぇあ、こうです……か?」

 半回転した指は、想像通りの場所をピンポイントで刺激してくれる。

 これは、スゴいな。大喜くんにしてもらうの、気持ち良すぎる。

 いやこれは、気持ち良すぎて不味いかもしれない。ゾワゾワと背中に上がってくる快感の前兆は、普段とは比べ物にならないほどに激しい。

 いつもなら声を殺し、絶対に誰にも悟られないように限界まで抑え込む。大喜くんに私の、そんな姿を知られたくないから。

 でも、だ。今日は、良いんだ。むしろ見てほしい、知ってほしい。

 私の絶頂を。

「お"、あっ、う"ぁ……あぁ!!」

 喉から女子失格な低い喘ぎが飛び出すと共に、背骨の中心を電撃が駆け抜けていく。溢れた潮がベッドを汚していくのが止められない、でもそれさえ気持ちいい。

 長い長い絶頂感の果てにへなへなと崩れ落ちた私、そして抱き抱えてくれる大喜くん。ああ、良いな。私がこの通りの仕上がりでも、ちゃんと寄り添ってくれる。

 こんなにも優しくて、愛してくれて。私は大喜くんが、大好きだ。

 だから――。

 

 くちゅり、なんて軽い音ではないな。もっと粘液質で重い感じの音で、私は私(・)を拡げていく。

 トロトロと透明な汁を垂れ流している、大喜くんのオトコノコを導くために。

 あの日と同じく先端が当たって、でも私が感じたのは痛みでも恐怖でもない。強く熱い、愛の力。全身から溢れている愛が、全てオトコノコに集中しているかのようだ。

 膨れた感じの頭が全て埋まっても、苦痛なんか無い。私の気持ちいい場所を、優しく擦りあげてくれるだけだ。さっき一回達して緩んだのか、それとも気持ちが解れたからか。両方、かな。

 進んでくるオトコノコの圧力で中がゴリゴリと押し拡げられる事さえ、愛しくて仕方がない。

「あ、……入り、まし……たっ、全……部っ」

 小さな声にハッと気付けば、私と大喜くんの身体は完全に密着していた。オトコノコはもう何処にも見えない、全部私の中に入っているんだ。そう思うと、なんだか嬉しくて泣けてきそう。でもここで泣いたら、また大喜くんが心配してしまうな。

 それに泣いている暇があったら、もっともっと大喜くんを感じたい。きっと大喜くんも私を感じたいんだろう、お互いぎこちなく腰を動かしていく。

 あの動画みたいにぱちゅんぱちゅんとリズミカルにはいかない、ゆっくり引きずるようにしか動けない。でもそれが気絶しそうなくらい、気持ちいい。

 粘膜が癒着しあっては引き剥がされ、またくっつきあう。その繰り返しが、どれほど続いただろうか。

 さっきよりも遥かに大きい快感の波を必死で押し返しながら、抱き締めあう。この大波に押し流されたら、私はもう使い物にならなくなるだろう。もっと楽しみたい、限界まで繋がり続けたい。

 そう念じながらキスをした、その時だった。

 お腹の中で大喜くんのオトコノコが、激しく震えたのだ。そして更に奥の奥――子宮目掛けて、猛烈な勢いで何かが迸るのを感じた。不意討ちとしか思えない理外の攻撃に、耐え続けていた堤防は遂に決壊してしまう。

 最後の理性で大喜くんにしがみつき、全力で唇に吸い付いて私は押し寄せる快感の濁流に呑まれていった。

 意識が消える寸前、最後に思ったのはやっぱり大喜くんの事。

「大好き、だよ……」

 声になったかどうかはわからない、でもきっと肌が伝えている。だから私は、幸せだ。

 先の事は、後で考えよう。

 

「あー……頭痛い……」

 たっぷり朝まで気を失っていた私は、目が覚めるなり頭を抱えていた。いつぞやの打ち上げで先輩方に無理矢理呑まされて二日酔いになった事があったけど、それに近い。頑張りすぎて脳がショートしたんだろうか、股は痛めなかったけど代わりに頭痛とかどうなってるんだ私の身体は。

 今日は日曜だけど、あまり遅くまで寝ていると由紀子さんが心配する。起きないと、と思った時。私はふと、二つの事に気が付いた。

 一つは私の格好だ、パジャマがわりの部屋着姿はいつも通りだけど下着はつけていない。普段しているナイトブラもショーツもなく、直接服を着ている。多分大喜くんが「後始末」をしてくれたんだろうけど、下着まではつけられなかったんだろうな。……大喜くんにブラの付け方なんか分かるわけ無いし。そのせいで、下が大分汚れてしまっているんだけどね。寝ている間はこっちも緩むのか、白い粘液がベットリと溢れてベッドにまで染みを作っている。大喜くんの精液だよねこれ、どんだけ出したんだろう。まあ気持ちよくなってくれたんなら、何よりだけど。

 そしてその精液絡みでもう一つ気付いた事、それは私の身体の事だ。ガサツ力の高さが売りの私は基礎体温なんか付けてないけど、さすがに自分の生理周期までは忘れない。

「えっと前回終わった日がここで、それで昨日だからー……」

 念の為スマホのカレンダーも見ながら指折り数えて、私は確信する。明日明後日辺りが排卵予定日、つまり昨日はかなりの危険日だったようだと。

 ……そうなると、ちょっと厄介かもしれない。というか、大変な事態かもしれない。かもしれない、じゃなくて大変だな。

「あー……まあいい、かな。私たちだし」

 今さら私に怖いことなんか無い、どうにでもなるさ。大喜くんが一緒にいてくれるなら、股を痛める覚悟もあるし。

 朝日は何処までも爽やかで、私たちの前途を祝福するかのよう。

 さて、いい加減に起きよう。大喜くんに全部話して、由紀子さんにも頭を下げて。日曜なのに忙しいな、まったくさ。でもま、愛さえあればなんとかなるさ。きっと、多分。


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