「千束…………?」
雨の降るとある日。いつものようにリコリスの仕事に出ていた二人は、予想以上の敵の多さに苦戦を強いられた。それでも、何とか敵を振り払い、脱出まであと一歩の所で、待ち伏せしていた敵に弾丸を撃ち込まれた。
たきなを庇い、目の前で倒れた千束。自分の手についた千束の血。床に広がる血。
「あ……あぁ……」
まだ何も伝えていない。
作りたい思い出もあった。
もっと一緒に居たかった。
私が殺した。
私の千束。
…………
「っ!?!!」
寝起きとは思えない速度で体を起こす。
酷い寝汗と激しい動悸。確かめるように自分の胸に手を当てる。
「夢……?」
辺りを見回す。紛れもなく自分の部屋だった。
「夢……か……」
目の前で起きた光景が現実でなかった事に安堵する。あまりにもリアルな感覚の夢。まだ少し手足が震えている。何度か深呼吸するも、震えだけは止まらない。
「とりあえず、シャワーだけでも……」
ベッドから降りて、フラフラと浴室へ歩き出す。
…………
「おはよう、先生」
「あぁ、おはよう」
元気な挨拶と共に千束はやってきた。
「たきなはもう来てるぞ、早く準備してこい」
「ほ〜い」
トテトテと更衣室に入ると、既にたきながリコリコの制服に着替えていた。
「おはよう、たきな」
「おはようございます。千束」
千束もすぐさま着替えを始める。と、ここまではいつもの通りなのだが……。
「…………」
「…………」
凄い視線を感じる。たきなから凄い視線を感じる。
視線が痛すぎて、少し距離を置きたくなるぐらいだ。こっちを向いていないのは分かるのだが、意識どころか視線が向けられているような気がしてならない。
「な、何かな〜? たきなちゃん」
「いえ、別に」
そういって視線を棚へ戻す。なるべく普通に質問したつもりだったが、たきなは全く意に介さず返してきた。
「……」
喧嘩をしているわけではないのだが、最近たきなと千束はこんな調子だった。お互いを牽制し合っているような、確かめ合ってるような。たきなが前のたきなに戻ったような。仕事中はいつものように振舞ってはいるつもりだが、更衣室を後にするたきなを見ると振り出しに戻ったような感覚がへばりついてくる。
「たきな……」
心配して、何度か声はかけてみたのだが、たきなはいつも通りに返してくる。何か隠しているわけではなさそうだ。千束は頭を搔きながら、唸り考える。別段思いたあたる節はないし、たきなも二人きり以外ではいつも通り。二人きり以外は。
「どうしたもんかね……」
千束は天井を見上げた。
…………
「ふぅ……」
お昼のラッシュも終わり、皿洗いもひと段落着いた。千束は何故か買い出しに行ってしまった。今日も仕事中以外まともな会話をしていない。せいぜい、『おはよう』と『ありがとう』ぐらい。
「千束……」
呟くように呼んだ。
彼女を失う夢を見てから、彼女と話すのが怖くなった。
この膠着状態はいつまで続くのだろうか。幸い、リコリスの仕事も今まで入ってきていない。でももし、次の仕事が来たらと考えると、また手が震えてくる。自分で自分の腕を摩る。こんなにも、彼女を失う事を恐れているとは。
「こんなリアルに感覚って残るんだ……」
夢の感覚なのに、いつまでも体にまとわりついて離れない。想像が止まらない。千束が死ぬ。今までもそんなピンチはあったし、巡ってきた。それなのに、いざイメージとして見せられるとこれ程までに怖いものだった。
「こんなにも、あの人の事……」
思い過ぎだろうか、それともこれが正常なのか。
入り交じった感情は、体を熱くするし、冷汗をかかせる。この胸の鼓動の速さはなんなのか。この事を彼女に話したら、全部ダメになってしまいそうな。皿洗いで使った水面に映る自分を握りしめる。
「それでも。貴方を失いたくない」
今自分が思った事を口にした。
誰もいない、リコリコの中で。
千束が帰ってきたら謝ろう。こんな自分勝手に思い込んで悩んで避け続けた事を。自分の思いを打ち明けよう。
大切な相棒だから。
そう瞳に意志を込めると、リコリコの入口の鈴が鳴る。
「ただ〜いまっと」
千束だ。たきなはすぐに彼女の元へ向かい、目の前に立った。
「千束!」
「たきな……」
すると、そんなたきなに驚いた千束がいた。そんな千束も一瞬真剣な眼差しになると、口を開いた。
「あの……!」
「ねぇ……!」
同時だった。全くの同時。
お互い、何かを言おうと思っていたようだ。すぐに二人は「あ……」と固まった。
「ぷっ……」
「ふっ……」
顔を見合わせると、二人は揃って吹き出した。
「あははっ、なぁに? たきなもなんか話そうとしてたの?」
「ふふっ、はい。また少し聞いて欲しい話ができまして」
「そっか〜。じゃあ今日家に来ない?」
「はい。もちろんです」
即答だった。彼女が笑って話してくれた。それだけでたきなは嬉しかった。それだけで、この不安が無くなってしまいそうだった。
よっしゃ! 、と喜ぶ彼女は買い物袋を一つ、更衣室へ運んだ。
「それって……?」
「ん? 今日私もたきなの事泊まりに誘おうと思ってたの、だからそれのお菓子〜」
にひひ〜、と歯を見せて笑いかけてくれた。
「食べ過ぎはダメですよ?」
少し嬉しそうにだが少し呆れ気味にたきなも呟いた。
「は〜い」
…………
帰り道、大きな買い物袋を揺らしながら、千束は何も聞かずに家まで歩いてくれた。一度道中で無理矢理にでも話そうとしたが「ゆっくりでいいよ」とのこと。たきなはすぐに納得して、千束の隣をまた歩き始めた。
「お邪魔します」
「は〜い。いらっしゃい」
久しぶりの千束の家。何も変わってない。テレビの前のテーブルに置かれた数々の映画。同居する時に決めた家事分担表。何も変わらない。彼女の家だ。
椅子に自分のバッグを置いて、千束へ目線を移す。
「ココアでいい?」
「はい」
たきなの返事を聞いてすぐにコップなどを出す千束の背中。
「……」
「ん? どした〜たきな」
なんともなしに、千束の背中に触れる。手を添える。
彼女は振り向いてはくれなかったが、それでもいい。
この手には千束がしっかりと感じられるから。
「いえ、なんでも……」
本当にただ触れたかっただけ。摩るわけでも、抱き締めたいわけでもない。千束の体温を感じるように、手を触れさせただけ。きっと今の自分は小さな子供のようにも見えているだろう。
「んも〜、甘えん坊だね〜たきな」
千束は振り向いてたきなの頬を優しく抓る。その子供らしい表情もたきなの口角を緩くする。
うりうり〜と抓った指を少し揺らす。それだけなのに、こんなに彼女が愛おしく感じてしまう。たきなは胸の奥が暖かくなるのを感じた。きっと、心が暖かくなったんだ。胸に手を置いて微笑んだ。
…………
「はい。じゃあ何があったのか話せる?」
入れてくれたココアを飲んでしばらく。
千束は気持ちを切り替えるように質問を出した。
たきなは少々驚いて、目を丸くするが、俯きつつも話をした。
「この間、夢を見たんです」
「夢……?」
「はい。千束が私を庇って撃たれる夢」
「っ」
千束は息を飲んだ。そんなまさか誰かがたきなの目の前で、ましてや自分が死ぬ夢だとは思っていなかった。千束は少し俯いてココアのマグカップを撫でる。
「本当にそんな事になったらって思うとなんでか体が震えて、上手く話せなくなるんです」
「そっか…………どうなんだろうね。私も、同じ事はしちゃうかな」
「え……」
「だって、たきながピンチだったら私は絶対助けたいって思うし、命大事にって言ってもそれが通用しない状況に陥る事だってあるでしょう? だから、きっと……」
「だめなんですっ!」
「っい!?」
たきなは立ち上がり前のめりになって千束を遮った。千束を見るたきなの瞳には嘘が入っていないように見えた。
「私は貴方を……失いたくない」
「たき……な」
瞳が潤んで声が上ずる。泣きの一歩手前だ。そう見えたのだがたきなは俯きながら座り直す。
こんなにも千束の事を思っているのが不思議でたまらなかった。千束を見ていると心が暖かくなる。そばに居たいと、手を引きたいと、自分の近くにいつまでもと。
ガサツな事があって、健康にも気を使わず、やりたい事を優先して、時に失敗して、それでもそんな千束を見ていると、こんなにも閉じていた心が簡単に開けられているような。曇った空を澄み渡る青空へ変えてしまうような。だから、この気持ちはきっと……。
貴方を心配するこの気持ちはきっと……。
「私は……千束が好きです」
「え?」
突然の告白に千束は驚いて停止してしまった。
「こんな風に、誰かを好きになるなんて私には分からなくて……、でも、最近クルミやミズキさんから、ずっと千束の事を目で追ってるって言われて、その理由を考えるためにも千束の事を考えてしまって、そうやって千束と一緒に仕事をしたり、一緒に過ごして、一緒にいると、千束の事が好きだって、好きなんだって分かってしまってっ……」
止まらない。
「手を繋いだ時だってっ……!」
想像以上だった。
「心配されて怒られた時だってっ……!」
こんなに、言葉にするだけでこんなにも。
「君に会えて嬉しいって言われた時だってっ……!」
これが、きっと本物の自分の想いなら。
「私は、全部……嬉しかったっ……!」
自分でも泣いてる事は分かっていた。また正面を向いたたきなの顔は酷く歪んでいた。胸が苦しいのか、心が苦しいのか、何も分からないのにいつの間にか自分の胸に手を当てていた。握りしめていた。服にシワが出来るぐらい。心も胸も両方がグチャグチャになっているような。人に想いを伝える事がこんなにも苦しくて、怖くて、恥ずかしくて、聞いて欲しくないと心から願う事だとは思わなかった。
「だからっ……居なくならないで、千束っ……」
「たきな」
「っ……!」
抱きしめられた。
慰めだったのか、心配されたのか、慈悲だったのか。
想いに答えるように強くではなく、包み込むように、千束はたきなを抱きしめた。
「その気持ち、すっごい嬉しい。私もね、お店にたきなが居ない時とか、たきなって何してんだろな〜って考える事が多かった。リコリスの仕事をしてる時も、リコリコで働いてる時も、ずぅっと、たきなの事見てたんだ。仕事してるたきな、綺麗だし可愛いし、それになによりも……」
「……?」
「私も、たきなの事が好きなんだってわかったから」
たきなの頭を撫でながら千束はしっかり言葉を紡ぐ。
「千束も……?」
「そ、私とたきなは両想いだよ」
千束とびきりの笑顔で答えた。
たきなは泣いていた顔をもっと歪ませて、子供のように泣き叫んだ。嬉しさと恥ずかしさ、そしてなりより千束の暖かさを感じ取れたから。
包み込むように抱きしめた千束とは逆にたきなは思い切り抱きついて泣きじゃくった。
「はいはい、泣かない泣かない」
「だって……千束と……両想いだったのが、こんなに嬉しいなんて……っ」
「なんだか、そこまで言われるとこっちも凄く恥ずかしいな〜っははは」
…………
「落ち着いた……?」
「はい……」
泣いているたきなを慰めて10分ほど、千束はたきなの顔を自分の腕の中で確認した。まだ、少し涙が出ている。
千束は微笑んでたきなの涙を袖で拭う。
「まだ泣いてるじゃん。目も赤いし」
「全く……誰のせいですか」
そんな、たきなが愛おしい。いつも以上に。
何度も抱きついたり、くっついたりしてはいるけれど今日ほどたきなを可愛く思えた日はない。子供みたいに泣いている。頬へ落ちる涙が何故だか愛おしい。
「たきな」
「はい、なんで……ん」
何をされたかは理解出来た。だが今されるとは思っていなかった。大好きな人からなんの前触れもないココアの味のファーストキス。千束は目を閉じているが、たきなは思わず目を見開いてしまった。そんな一瞬のような、永遠のような、時間はゆっくりと千束が離れて終わった。
「うん。可愛い」
恥ずかしそうに頬を染め、千束はまた笑顔で答えた。
さながら、男子のイケメンのような台詞。恥ずかしさが増したのかたきなは千束の胸に顔を埋める。
「いきなりです、千束」
「うん、ごめ〜ん。ほんとにたきなが可愛くて〜」
宥めるようにたきなの背中にリズムを送る。少し左右にユラユラ揺れながら。子供をあやす時はこんな感じなのだろうか。お互いの抱き心地が良すぎてこれだけでも幸せで胸がいっぱいだった。
「千束……」
「ん〜?」
「その……もう一回……いいですか?」
顔を上げたかと思えば、涙で濡れた瞳で上目遣いのお願い。その顔を見た瞬間、胸の奥が引き締まるような感覚に陥る。動かない心臓が少しだけ、早くなった気がした。頬をすくうように手を添えて、千束はゆっくり顔を近づける。
「もちろん。何度でも」
「ん……」
重ねる唇は、初めての感覚。している事は理解してるつもりだが、それでもキスだけでも体は熱くなる。柔らかくなる。溶けてしまいそうに。足にも力が入らなくなり、千束が抱き抱えてくれて彼女から離れられない。
離れるつもりもない。千束の首に腕を回してこれ以上落ちないように彼女を感じる。啄むような口の動きは止まらない。千束のたきなの背中を撫でる手はいつの間にか腰辺りまで下がってきている。
「んッ!? ……ん……んふ……」
腰を少し撫でられただけで、自分でも驚く程の快感が襲ってきた。
「っ……」
「おっと。大丈夫? たきな」
快感による足腰の限界が来ていた。
千束はしっかり倒れたたきなを受け止めて抱き抱えた。力が抜けて、だらしなく開いた口からは先程までのキスの唾液が垂れている。いつの間にか肩で息をするぐらい呼吸も荒くなっていた。蕩けて濡れた瞳が千束を更に昂らせる。
「ベッド、行く?」
「はい……」
ヒョイと軽々お姫様抱っこされて、寝室へ。
とても丁寧にベッドへ寝かされると、千束が覆いかぶさってきた。顔にかかったたきなの髪を撫で下ろし、うん、と確かめるように頷いた。そんな千束がそばに居ると、そんな千束がまた自分を見ていると、たきなはまた自然と涙が零れてきた。すると千束も急に焦り出す。
「ちょ、どどど!? どしたんたきなサン!? もしかして嫌だった?」
「いえ、こんなに千束が近くにいるって思ったら……。貴方を失う怖い夢みたんです、だから、千束。慰めてください」
涙を拭いながら、真正面からのお願い。
薄い紫の濡れた瞳が宝石のようにも見える。微笑んでいるたきなの顔がこれまた愛おしい。頬から髪をかき分けるたきなの手は妙にいやらしく心地よく感じてしまう。
「もちろん」
「んっ……んむっ……」
再びのキス。今度は啄む訳ではなく、ただ押し付けるようなキス。だが、先程から煽られている千束もただのキスではすまなくなってきている。キスの最中少し目を開けると、たきなはどうやらキスに夢中のようだ。向こうは目を閉じていた。そんな、たきなに心で謝りつつ、欲望全開で舌を忍ばせる。
「んんっ!? ……んちゅ……んん……んむ……」
舌が入った瞬間驚いてたきなは大きく体を弾ませたが、すぐに受け入れて更には舌を絡めてきた。
「んちゅ……れろ……」
チロチロと小さく舌を這わせてきた。慣れていないのはお互い様だが、たきなは本当にしたことがないだろう。
得意げなディープキスを嫌ってか千束の舌に弄ばれる感覚にたきなは少しムッと頬を膨らませる。
「なんだか手馴れてますね」
「えっ……そう? まぁ、イメトレのおかげかな〜」
「イメトレ? なんのですか?」
「ん〜、たきなとキスするイメージトレーニング」
「っ……」
たきなは顔を赤くして千束の肩を拳で弱く叩く。それを見て千束はケラケラと笑う。
「なんですかそれっ……」
「あっはは、でもホントだもん。好きな人のこんな所とか……」
「んっ……やっ……ちさ、と……」
背中から撫でるように手を滑らせてたきなの胸に触れる。服の上から撫でられているだけなのに体がビクビクと反応してしまう。
「服……脱いじゃおうか」
「はっ……あ……はい……」
耳元でゆっくりと囁かれる。声だけでも快感を感じそうになってしまう。
「は〜いじゃ脱がすよ〜」
脳天気な声を上げ、慣れた手つきでリコリスの制服を脱がしていく。あっという間に下着だけにされてしまった。千束が選んだ水色の下着。
「私選んだやつ、着けてくれてんだね」
「はい。自分でも気に入ってますから」
やった、と小さいガッツポーズを取る千束。だが、たきなはまだ恥ずかしそうにモジモジと身を捩っている。そんなたきなもお構い無しに千束はまた胸に触れる。最初はブラの上から撫でるように揉みあげる。
「んっ……ちさ、と……手つきがやらしいです」
「そりゃぁね……」
綺麗な形のたきなの胸は千束をそれ以外見れないようにしてしまう。なんともなしにブラから見えてる胸に唇を着けてしまう。それはまるで王子が姫にする手の甲へのキス。とは、ちょっと違う。唇を付けるだけじゃ収まりがつかない。
「んっ……ちょっと千束、吸いすぎですっ……んんっ」
「〜っは」
吸い続けた唇を離すと、そこに出来たのはほんのり赤い千束が刻んだ証。いわゆるキスマークだった。たきなは意味が分かっていないのは知っている。だから、あえて千束は何も言わない。たきなは不思議そうな顔をしているが、構わずその水色のブラをずらす。
「あ……」
ずらしたブラから出てきた形の整った綺麗な二つの丘。
小ぶりだが手に収まる良いサイズ。頂上にはツンと立つ突起もある。思いきりむしゃぶりつきたいぐらいだが、今はグッと堪えて、指で突いて転がす。
「乳首、綺麗だね」
「や……言わないでっ……ぁ、んっ……」
「なんで? 美味しそうだよ?」
「ちょっと……ちさとっ、あっ」
片方は転がしたまま、もう片方の突起を口に含む。ちぅ……と確かめるように吸う。乳首を吸われる初めての感覚にたきなは体をビクビクと弾ませる。
「これ……んっ……変な感じ……っ……ですね」
「っは、でも、気持ちいいでしょ?」
「えぇ……まぁ……」
納得言ってないの顔を赤くして逸らした。
そんなたきなも愛おしくまた抱きしめる。
「初めての事だってあるもんね。大丈夫。私が着いてるよ」
「……」
暖かい温もりがたきなを包んでいる。体の体温がまた高くなった。もうこれで何度目か。千束の聞こえない鼓動、たきなが確かめたのも何度目か。私が着いている。
夢でいなくなった千束もたきなの隣にいた。冷たくなり消えていった。でも、現実の千束はこんなにも暖かく、隣にいてくれる。
「千束……その……下の方、がなにか変な感じなのですが」
ゴニョゴニョと恥ずかしそうに言う。千束は得意げな笑顔になるとたきなの両腕を頭の上へ持っていった。
「千束……?」
「痛かったらちゃんと言ってね」
千束の優しい声と共にその手が下腹部からゆっくりと下着の中へ侵入していく。直ぐに洪水を起こしているたきなの秘裂に触れられる。
「んあっ!?」
体に電気でも流されたかのようにたきなは弾む。
「声は出てた方が楽になるからね」
その後、割れ目をなぞるように上へ下へと手を動かす。
「やんっ! ……っふぅ……あっ! ……んんっ……」
ゾワゾワとよく分からない感覚と気持ち良さが合わさってたきなの体を巡る。見られて恥ずかしい。でも、千束に触って貰えて嬉しい。穏やかな笑顔の千束が逆に怖くなる。あまりにも未知の感覚が襲ってきて、呼吸も上手く出来ない。
「はっ……ちさ、っ……わたっひ……」
「そのまま感じてて。たきな」
「は……い……!」
ぐちゅぐちゅと自分から鳴っているとは想像も出来ない水音を聴きながら、千束の手が早くなる。なぞるようにではなく、引っ掻くような、擦るような動きに変わっている。心做しか千束の呼吸も少し早くなっているような気がする。泣きそうなたきなをしっかりと見つめながら、千束は名前を呼ぶ。
「たきな、可愛いよ。もっと見せて」
「千束……! ちさとっ……! これ……やだっ、なんですかこれっ……!」
「そのまま受け入れて、私が着いてるから」
「ちさとっ! ちさとっ! っ〜〜〜〜〜〜!!!!!」
たきなは一際大きく体を仰け反らせると、そのまま果てていく。余韻がまだ体を巡っているのか、時々ピクピクと痙攣を起こしている。肩で息をしながら自分に何が起きたのかようやく理解し始めた。だが、ベッドのシーツを汚した自分の潮を見て顔が青ざめる。
「千束……私……漏らし……」
「ちちち、違う違う! これはそういうやつだから! 大丈夫! 体の正常な反応だよ!」
たきなの腕を固定していたを離し慌てて両手を左右に振る。
「じゃぁ……これって……」
「んー、そーだね。エッチしちゃったね」
また得意げな顔でたきなの隣に横たわる。
「うぅ、こんないきなり……」
「んなははは、ごめんごめん。私もちょっと理性飛んでたわ」
「なんだか、手馴れてますね。他の人とした事があるんですか?」
そういうたきなは少しむくれている。千束はその様子を見て、バツが悪そうな顔をした。
「あ〜……、実はその……私も人にするのは初めてでして……」
「え……」
「その……ね? 自分でした事はあるんだけど……その人にやってあげるのは初めてだったと言いますか……なんと言いますか……」
今更ながら千束が顔を赤くして明後日の方を見る。
「じゃあ、私の初めては千束に奪われたと」
「ぅぇ!? いや、正確に言えばこれは女の子同士の行為であってですねそりゃぁ確かに初めてだったかもしれないけど本当の意味での初めてって別な……」
たきなの一撃に千束は大慌てで訂正しようとする。
だが、そんな彼女の様子を見るとたきなは……
「ふふふふっ、あははははっ」
吹き出して笑ってしまった。
「ちょいちょいちょい、たきなさ〜ん? 私真剣なんだよ〜?」
「はい。すみません。慌ててる様子が可笑しくて。でも、これで私と千束はいついかなる時も一緒でもいいんですよね?」
とても美しい微笑みとたきなからの遠回しの告白。千束は気付かされたように目を見開くと、応えるように微笑んで頷いた。
「うん。そうだね。これで私とたきなは一緒に居られるね。まぁ、結局リコリコに行けばいつも一緒だけどね」
「っふふ、そうですね」
確かめ合うように手を絡めて、また見つめ合う。
「たきな。今更だけどこんな私でもいい?」
「千束。もちろんです。ダメな所は私がカバーしますよ」
「ありがとう、たきな。大好き」
「はい。千束。私も大好きです」
誓いのキスは、優しく唇を合わせるだけの静かなキス。
だが、それはたきなに千束の存在を確かに感じさせた。
いつまでも、どんなときも、最後まで二人で。
リコリコに完全に頭をやられました。
一週間全てリコリコのことを考えるようになってしまい私生活に支障をきたしております。
ご愛読ありがとうございました。
ご感想お待ちしております。