※この作品はR-18です。

リコリス・リコイル SSまとめ   作:扇 漱真

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ただ単に模擬戦してるちさたき


リコリコ want to kill love you 殺したいほど愛してる

弾丸が撃ち込まれる音。

薬莢が落ちる音。

誰かが駆け抜ける音。

ここはDAの模擬戦場。

今日もリコリス達が互いを高め合い戦っている。

 

「チっ…!」

 

吐き捨てるような舌打ち。弾の切れたマガジンを取り捨ててリロードし直して、再度弾丸を撃ち込んだ。虚しくもM&Pから放たれた弾丸は届かない。『避けられる』。

有り得ない。弾丸を避けるなど有り得ない。だが、相手はそれをいとも簡単に行ってしまう、最強のリコリス。

 

「っぶね〜、またギリギリだったに」

 

別に余裕なセリフ。息切れもせずに走り続ける。飛んでくる弾丸は実に正確に自分を狙ってくる。それ故にわかりやすい。弾丸が着弾する所に自分がいなければいい。それは相手をよく見れば分かること。他の人は意味がわからないと言ってるが自分がやってる事はそういう事だ。見りゃいいんだ見りゃ。んなもん誰だってできる。

弾なんて見えてない。相手の撃つ場所を予測してるだけだ。他の人は焦って出来ないだろうけど。

 

「っ!」

 

曲がり角で鉢合わせすると、挨拶がわりに弾丸を三発撃ち込まれる。角待ちで仕留めるつもりだったのだろうが、もうそこには誰もいない。虚しくペイント弾が壁に三発破裂する。

 

「っほい!」

 

お返しにちゃんと三発返す。だが、相手もそこには居ない。物陰に隠れた。判断が早い。当たらないと分かってて撃ってるのか、それとも、こちらを誘い出す作戦か。まぁ、このまま避けてるだけじゃ暇だし誘いに乗ってみる。たきなが消えた曲がり角へ駆け出して、体を晒す。

 

「うぉ!?」

 

轟く銃声と共にやってきたペイントの散弾。ご丁寧にスピンコックまでやってのける。たきな用にカスタムされたウィンチェスターは突然にやってきた。どこに隠し持ってたのかは知らないが、散弾は射線は予測出来ても大袈裟に避けないといけない。

一発、また、一発と、しっかりちゃんと狙って撃ってくる。レバーアクションのスピンコックから出てくる薬莢が地面に5発ほどならんだ所でたきなも片手間に持っているM&Pを撃ち込んで再度移動する。正確な射撃を得意とするたきなにとってはショットガンは意外な選択に見えた。千束はにひひ、と嬉しそうに笑うと自分もたきなを探しに行く。

 

「なんで当たらないんですかね…」

 

嫌味ったらしく言って、ウィンチェスターに弾を込める。本当はベレッタM93Rを本命に隠していると言っても、千束には効きはしない。どうせ避けられる。だから散弾のウィンチェスターに替えてみたが結果は同じだった。全く、イライラさせてくれる。こっちは戦法や銃を替えているのに千束は相変わらずストライクウォーリアのままだ。自分の弱さにはため息が出そうだった。

 

「?」

 

足跡が止んだ。壁越しに体を隠しつつ角から顔を出し周囲を見る。誰もいない。後も追われてない?そんな事が有り得ない。千束も何処かに隠れている。たきなはM&Pを構えつつ角から体を晒す。正面はクリア。右も左もクリア。なんなら気配すら感じない。

 

「何処に…」

 

感じ取れない気配に神経を張り巡らせて少しの殺気も見逃したくない。敵地に侵入するとはこういう事だ。何時何処から殺されてもおかしくはない。目の前にある曲がり角やドアからも殺気を感じない。

 

「っ!?」

 

不意に足元が暗くなるのを感じる。上を向くと、壁を乗り越えてきた赤い眼光がたきなを捉えていた。

 

「み〜っけ」

 

ストライクウォーリアを構えてすかさず弾丸を撃ち込んでくる。

 

「ちっ…!」

 

ギリギリ射撃が自分の体を掠める。服にできたペイントのかすり傷を見てたきなは少しジグザグに走る。狙いを絞らせないための動き。壁を乗り越えて落ちている千束には少し狙いを絞りづらかった。地面に着地して、たきなを追おうと立ち上がる。

 

「んあっちゃー、逃したか〜…おぉっと?」

 

たきなの反撃。ウィンチェスターを撃ってきた。大股に一歩避ける。すぐにウィンチェスターのレバーを軸に回転させて薬莢を吐き出させる。すかさず二発目。これもまた外れる。避け先に撃ち込んでも、また逆に避けられる。ウィンチェスターの残弾は三発。千束もしっかりと反撃。ストライクウォーリアを構えて、たきなにペイント弾を撃つ。三発、二発。惜しくも外れる。逃げ足だけは速い様だ。千束は得意げに舌なめずりをして、たきなへ接近する。至近距離はウィンチェスターを持っているたきなの間合いでもある。

 

「この距離なら…っ!?」

 

予想以上の千束のスピードにたきなは反応しきれず、構えようとしたウィンチェスターは千束の足によって踏みつけられて拘束される。余裕の笑みを浮かべる千束に苛立ちを隠せないたきな。

 

「クソっ!」

 

片手のM&Pを千束へ向けるも、すぐに取り押さえられて、ストライクウォーリアを突きつける。

 

「はい残念……あれ!?」

 

千束がトリガーを引くと、ストライクウォーリアは虚しく空砲を鳴らす。弾が切れた。

 

「っ!!」

 

その隙を逃さず、たきなは千束の顔面目掛けて蹴りを繰り出す。千束はしっかり目で見て余裕のバク転回避。だが、回避するために拘束していたたきなの武器をフリーにしてしまった。すぐにたきなはウィンチェスターを拾って千束へ向けて撃つ。一発撃つ事にレバーを引き戻す遠心力で薬莢を捨てる。それでも千束には当たらない。

揺るがぬ表情で弾を避ける。ウィンチェスターが弾を切らすと、すぐに捨てて、M&Pに持ち変える。

すぐさま、二発三発とペイント弾を撃つ。

それでも当たらない。

当たらない。当たらない。当たらない。

当たらない!!!!!

千束が予備マガジンを取り出した。リロードされる訳にはいかない。たきなは千束へ駆け出した。

 

「!?」

 

太ももに仕込んでいたナイフを取り出して千束へ向けて振るう。千束はしっかり躱すが、千束も乗り気になってしまった。そして千束も同じように仕込んでいたナイフを取り出してたきなへ振るう。たきなは受け止め、受け流す。千束の体勢を崩すように流して、後ろから振りかぶり斬撃を繰り出す。千束はなんとか凌いでたきなの斬撃を振り払う。リロードために距離を離す。そうはさせまいと、たきなは詰めてくる。

地面を蹴り、勢いをつけた一撃。千束も応戦するが、たきなの勢いに押される。ナイフ同士がぶつかり合い、火花を散らす。縦に横にたきなは千束を殺すつもりでナイフを振るう。

 

「っ!」

 

千束は一際強くたきなのナイフを弾くと、がら空きになった腹に蹴りを食らわせる。

 

「がっ!」

 

少し吹き飛ばされ、地面に手をついて体勢を戻す。顔を上げると千束のリロードが終わり、すでに銃口がこちらを向いていた。たきなは突きつけられた銃口に意識を集中させると、引き金を引いて飛んできた弾丸に向けて自分のM&Pのトリガーを引いた。ストライクウォーリアから飛んできたペイント弾はM&Pから撃ち込んだペイント弾をぶつけて、相殺する。

 

「うそ!?」

 

千束が驚愕していると、たきなは一気に千束へまた駆け出した。そしてナイフを振るう。一撃一撃が重い。左右そして突きの三連撃。千束の受け止めるナイフを振り落とそうと力を込めるも、そうはいかない。

 

「ふっ…」

 

つい口がニヤケてしまう。たきなが自分の動きに着いてきている。模擬戦でもこんなに切羽詰まった戦いをした事がない。たきなはそんな千束の表情を見て、段々と動きを鋭くしていく。鋒に殺意を乗せて自分の相棒へ振るう。

突き、払い、上から下に、下から上に、斬撃を繰り返す。千束も捌くのがやっとになってくる。

 

「っ…このっ!」

 

回し蹴りをするも、たきなはしゃがんで回避。振り向きざまにストライクウォーリアを構えるが、たきなもM&Pを構える。

 

「くっ!」

「っ…!」

 

同時に撃つ。同時に避ける。

たきなが弾丸を至近距離で避けた。千束の動きに着いてくるようになってしまった。千束は少し焦りを感じる。それと同時に嬉しさを感じる。たきなが自分に着いてこれる人材になってきている。相棒としては嬉しい限りだ。歴代最強などと呼ばれて良い気はしなかったが、たきなと戦っている時だけはそれは違った。

それは、たきなも同様だった。やっと、着いて行けるようになった。今まで後ろでしか戦えなかった自分が、ようやくここまでやれるようになってきた。ナイフを握る手に力が入る。どれだけこの人の隣で、この人の戦い方を見てきたと思っている。

 

だから、千束はたきなへ駆け出した。

だから、たきなは千束へ駆け出した。

 

 

激しくぶつかるナイフの火花と時折混ざる銃撃音。

ナイフの斬撃を捌いて、ペイント弾を一発。

互いに残弾すら気に出来ないほどに激しい戦いになる。

ナイフを振るう感覚が楽しい。

銃口を向ける感覚が気持ちいい。

千束は久しぶりに互角の戦いを味わっている。

少しだけ狂っているような気がする。

が、そんなことはどうでもいい。

切羽詰まった表情だったたきなですら口角が上がり始めた。

飛びかかるようにナイフを突き出す。それをちゃんと受け流して、千束はたきなの顔に向けてナイフを振る。たきなはすぐに体勢を整えて、自分の腕を引いて千束のナイフを上に弾く。強く弾き過ぎて、お互いにナイフがどこかへ飛んでいく。

すぐに目の色を替えて、

たきなへ向けるストライクウォーリア。

千束へ向けるM&P。

狙うは心臓。実践なら即死。互いに狙いを定めて、トリガーの指に力を込める。

 

『そこまでだ』

「っ!?」

「ぇ!?」

 

当然聞こえてきた、楠木の声に驚き二人はトリガーを引いた。そして、鳴るのは弾切れの空砲。

 

「弾…」

「切…れ?」

 

残弾を全く気にしてなかった二人は、お互いのトドメのタイミングで弾切れを起こしてしまった。

空中で舞っていたナイフが二人の間で床に突き刺さる。

二人の模擬戦は楠木の命令によって、引き分けになった。

 

・・・・・・

 

「楠木さん!邪魔しないでよ〜!いいとこだったじゃんよ!」

「ペイント弾を予備マガジン弾切れになるまでは撃たないだろ普通は。お前も射撃の精度が落ちたんじゃないのか?」

「だぁって……たきなが避けるから…」

「ペイント弾だってタダじゃない。少しは考えろ」

「えぇ〜〜〜…………」

 

ぶーたれる千束を尻目に楠木は自分の執務室へ戻る。去り際にたきなへ視線を向ける。

 

「お前も、段々千束に似てきたな」

「え…?」

「まぁ、いい。戦力としてはこの上ないくらい良い動きだ。これからも励めよ」

「はい。ありがとうございます」

 

たきなは綺麗なお辞儀で楠木を見送る。

むくれた顔のまま千束はたきなの元へやってきた。

 

「たきな。最近動き良くなってんじゃん」

「あんまり嬉しくない褒められ方ですね」

 

むんつけた言い方だった。鏡を見ながら、自分の頬に着いたペイント弾の飛沫を拭いている。

 

「私の相棒としては最高のパフォーマンス発揮してると思ったんだけどなぁ…」

「あなたに一本取れるようになるまではなんとも言えませんよ」

 

こっちを見てくれない。そうとう模擬戦の結果が響いている。意外にも負けて悔しかったらしい。ボードゲームの時もそうだが、たきなは想像以上に負けず嫌いだ。

たかがゲームでも、たかが模擬戦でも。

ふ〜ん、などと千束は素っ気ない返事を返すと、ありえないことを言った。

 

「私を殺せるのはたきなだけかもね」

 

たきなは呆れたため息を吐く。まだペイントは拭えない。

 

「変なこと言わないでくださいよ。そんな時なんてこないでしょ」

「え〜、いやなんかそう思っちゃったんだも〜ん」

 

も〜ん、で壁に寄りかかりなんともなしにたきなを見る。まだ取れないのかそのペイント。そんなに必死に擦ったら肌が傷ついてしまう。そんな鏡の前で戦うたきなに向けて、指で銃の形を作ってたきなへ向けようとする。たきなの意識は鏡へ行ってる。目線も鏡へ行っている。普通なら気づかない。ゆっくりと腕を上げる。

その指先は足に。

 

「…」

 

その指先は腰に。

 

「……」

 

その指先は胸に。

 

「………」

 

その指先は……。

 

「っ!?」

 

たきなと目が合った。だけじゃなかった。

指先が顔に行くと同時に、たきなも指で銃を象って千束へ向けていた。

 

「んだよ、気づいてんじゃん」

「それだけ視線を向けてたら、気づきますよ」

 

ちぇっ、と千束はまた壁に寄りかかる。

 

「やっぱり千束を殺せるのは私だけですね」

 

今度は得意げに言う。鏡に向かったまま、得意げに。

 

「お、言うね〜。んじゃあ、そんときは頼もうかな」

「だから、縁起でもないこと言わないでください。まぁでも…」

「ん?」

 

たきなは自分の胸に手を置く。自分の命を鼓動を聞く。さっきの戦闘じゃない。これは今。千束と一緒だからこの鼓動は早い。

私は愛している。この人を。

 

「その時はちゃんと、私が殺しますよ」

 

 

want to kill love you

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