どんなに遠くても…
どんなに時間がかかっても…
あなたが暮らしているその世界へ行ってみせる。
定められたルールから逸脱し、ループから抜け出そうと世界へ挑戦し続けた。
でもダメだった。
加藤と名乗る男が見せた奇跡は私には再現できなかった。
世界は代償を要求するのだ。私の代わりにこちらへ来る女の子を。
それが用意できない私はあの人のいる世界に行けない。
だから私は世界の狭間に閉じ込められた男を再びこの世界に呼び戻したのだ。
例え行くことができなくても私は必ずあなたのもとに辿り着いてみせる。
土曜朝5時
私は大きく深呼吸して管理人室のドアをノックする。
加藤と名乗る男がドアを開け、醜悪な笑顔を貼り付けて顔を出す。
「これはこれは絵里お嬢様。こんな早朝に何の御用でしょうか?」
「加藤さん。あなたに…あなたにしかできないことをお願いしに来ました」
しばし無言の時が流れ、加藤さんと対峙する。
「まあ、ここで立話も何でしょうから」
加藤さんの誘いにのり管理人室へ入り、出された媚薬入りのお茶をスルーしながら切り出した。
「もう一度、あの人に会わせて下さい」
「くっくっく…絵里お嬢様、あの人とは誰の事ですか?」
「あなたは覚えているはずです」
「はて?この加藤、絵里お嬢様の交友関係について一切知りません。一体どなたと入れ替われとおっしゃってるのでしょう?」
「いいえ、私と同じくこのループから逸脱したことのあるあなたはあの人のことを覚えています」
「そうは申されましてもこの加藤、とんと覚えがありません」
「嘘ですね。加藤さん、あなたは先程『入れ替わる』と言いました。それが全てを明らかにしてます」
「ちっ、これだから賢いガキは嫌いだなあ。人の揚げ足取って追い詰めた気か?」
加藤が本性を表す。
「そんなつもりはありません。ただ力を貸して欲しいんです」
「くっくっく、乙女だねぇ。肉棒突っ込まれた相手を忘れられなくて今にも襲い掛かろうとしている男に頼ろうなんて」
「それについては加藤さんは美学をお持ちのようですから」
「言うねぇ…」
加藤さんの雰囲気が変わっていく。
一度襲われかけた記憶がフラッシュバックする。
だがその緊張感は加藤さんの方から緩んでいった。
「確かに絵里お嬢様の言う通りだ。力づくで無理矢理なんて鬼畜道の風上にも置けない奴がやる事だからな」
加藤さんの態度が軟化していくのを察する。
未来視のようなものが教えてくれる。
ようやく私の願いは叶うだろう。
決して小さくはない代償を払うことになるが。
ちくりと後悔の針が胸を刺す。
加藤さんがずいっと身体を乗り出し私の顔を覗き込みながら口を開いた。
「いいぜ。絵里お嬢様のお願い聞いてやろう。だが交換条件がある」
「…なんでしょうか」
「部屋で制服に着替えて俺を待ってろ。せっかく絵里お嬢様の弱味を掴んだんだ。ループ終わるまでたっぷりと楽しませてもらうぜ」
やはりそう来たか。
でも私はあの人に会うためならなんでもする覚悟をしてここにやってきた。
だから…私は…
加藤さんの提案をのむ
▷加藤さんに提案する
「それで良いんですか?」
「なんだあ?」
「今度こそあちらの世界に定住したいとは思いませんか?」
「て、てめえ、何を」
「それとも私を入れても8人しか陵辱できない世界で加藤さんは満足ですか?」
「お、おい?どうしちまったんだ」
「加藤さんはもう記憶を失うことがありません。延々と同じ女を同じ手法で犯し続ける2日間を繰り返すことには耐えられますか?」
「くっ…」
「あの人の世界にはこの世界のように縛るルールはありません。ループもしません。魅力的だと思いませんか?」
「あの人のいない2日間を何千回と繰り返してきた私の気持ち、知ってみたいですか?」
「加藤さんはあちらの世界に定住できて私はあの人と永遠にこちらで一緒に居られるんです。WIN-WINの取引とは考えられませんか?」
私が支払う代償は小さくない。
でも、それでもと手を伸ばす。
この危険な男をあちらに押し付け、あの人を永遠のループに閉じ込める。
許されるような事でないのはわかってる。
でも、もしあの人もそれを望んでくれたなら…
私は喜んで目の前の悪魔と契約を結ぼう。
「ちっ、悪くねえ提案だな」
目の前で悪魔が堕ちた。
「久しぶりに相棒に会うのも悪くねえ。だがよ、あっちに着いてすぐ消されるってのは勘弁してくれ」
そうだ。
結局の所、加藤さんは私達には勝てない。
私の願いは叶えられ、ついにこの世から悪魔は去り、代わりに邪神が召喚された。
何千周期もの時間を超えてやって来たあの人は今私の前で土下座している。
意識が定着するまで加藤さんもドン引きする勢いで欲望を垂れ流していたあの人はその事に気づいた瞬間に私の目の前で跪いた。
言いたい事は沢山あって、それでも一緒に幸せになろうって思ってくれてるのが嬉しかった。
これから私達はずっと一緒にここで生きていく。
異物を孕んで崩れて消えていく世界を二人で歩み続けよう。
私はあの人の背中に回した手に力を入れてもう二度と離さないと新たな誓いをした。