しばらくの静寂の後、例の刀モブからはみ出てくる『助けてやったぞ、お礼をいえ』というような空気がどうにも気に食わない、助けに来るならもっと先だろう、てか…
「ふざけた紙つけやがって」
そうボソッと呟くと刀モブは勢いよく
「なっ!?なんだその恩人に対する態度はぁ!!?」
と叫んだ、しかしながら怒ってない、ふざけている。そうとわかるような声の出し方だった。あぁ…もう出口はねぇのか?歩を進めつつ周りを見るが、特にそれらしきものは見つからない。
「おい刀モブ、僕、さっさと帰りたいんだが」
そう本音を言うと、刀モブはガクッとしたように頭を後ろに倒し、ため息をついた。
「あのなぁ…まぁいいや、風月様に会えば簡単に出れるだろうし。それと、永夜な、刀モブ言うな。」
それに対して僕が舌打ちで返すと、ボソッと刀モブは「なかなか鍛え甲斐がありそうだ…」とか言っていたかもしれない。
それにしても改めて確認するこの世界は、黒く、何も無い。
もしかしたら、いわゆる人の住む世界ではない場所なのかもしれないな。足音だけは響いており、それなのに自分達付近以外の音を寄せ付けない。あそこだけが世界の全てじゃないなら、僕とあのおっさん以外の音が聞こえてもいいと思うのだが、それでも1度も聞こえてきたことは無い。
歩き始めてどのくらい経ったのか、ふと気配を感じた。きっと、人じゃない。
「よく帰ってきてくれた、永夜…そして、よく正気で居てくれた、外の世界の者よ。」
後光が刺して見えるような気がした、この真っ黒の世界で、黒髪なのにも関わらず、輪郭がハッキリと見えている。
「お前が、風月ってやつか?」
さっき永夜が言っていた『風月様』ってやつならばかなり助かるのだが…もう、ずっとこの空間にいた気がする、明けない夜といった感じだった、ならば早く夜を明けさせて欲しい。
戻ったって砂漠だろうしお母さんも、お父さんも居ないけど、咲や陸が居るだけまだマシだ。
「…」
…どうしよう、目の前の黒髪のヒトが返事しないんだが?呼び捨てNGなのか?それとも風月とやらじゃないのか?
焦ってそんな考えが頭をかけたが、どうやら違ったらしい。
「私の事を呼び捨てにする者は久しぶりに会ったな、そうだ、私は冷時風月、この風月丸内部、刀界の管理者だ。」
ふふっといった笑みを含みながらそう語った。大層綺麗な姿は、一切を寄せ付けないような、いわゆるクールな感じだが、なんだか優しそうに見える。
「まぁ、まず帰る前に話を聞いて言ってくれ。」
「あ…あぁ。」
…僕は美人に弱いし、可愛い子には弱いのだ。色々頭が冷静になってきたせいか、僕の本来の性格を思い出してきた気がする。
…もう1人の僕とかいうあの半霊の子、可愛かったな。