※この作品はR-18です。

カラミざかり 青の季節    作:みやびまい

3 / 7
 この物語はもし山岸高成があの時飯田里帆とヤれていたらのif妄想ストーリーとなります。某所で更新していたものを大幅に加筆修正し再編集したものになります。
 
 設定も本作独自のものがいくつかあります。
 キャラクターの外見や性格についてはリメイク版と原作ごちゃまぜになってます(ハゲはリメイク版要素強めです)
 塚原の髪型は分かりやすくする為おさげで基本は統一させて頂いてます
 めちゃくちゃ長いので一気読み推奨です

 なんでも許せる方はどうぞ



Vol.2前編 茜色の夏休み編

 午後。講師は午前中に行ったテストの結果を生徒たちに返却した。高成もそれらを受け取るが、点数はどれも想定していた以上に伸び悩んでいた。

 

(うーん…点伸びてないな…)

(もしかして高2だから大丈夫というか、慢心てやつかも?)

 

 そんな高成を見て近くの席に座っていた雄也が一緒に勉強しないかと声をかける。

 

「なあ山岸くん、これから空いてる?」

「?永瀬さん…?」

「おれらと一緒に図書館で勉強会する?」

「いいんですか?」

「いいよいいよ!ぜひぜひ!!」

(よし、せっかくだし教えてもらうか!)

 

 雄也の誘いを受け高成はチャンスと捉え勉強会に参加する事に決めた。

 こうして予備校初日の日程が終わり、高成ら男子生徒5人は雄也と共に図書館へ向かう。

 

 -しかし向かった先の図書館は運悪く臨時休館となっていた。

 

「まじかー…」

「どうすっか?」

「永瀬の家は?」

「いいけど…狭くね?」

「大丈夫だよ」

 

 一行は目的地を雄也の自宅へと変更した。おじゃましまーすと雄也の自宅へと入り、彼の自室につくと教科書やノートを出しワイワイと勉強会が始まった。高成も質問やアドバイスを送り真面目に取り組む。この明るい雰囲気に高成はやっぱり男子といると気が楽だと癒されていたのだった。

 

 時は過ぎ夕方。雄也と高成を除き他のメンバーはそれぞれ自宅へと帰って行った。しばらく2人で勉強をしていると部屋にノックする音が聞こえてきた。

 

「どうぞー」

「失礼しまーす…あ、山岸くん!おつかれー!」

「入るねー」

 

 雄也の部屋にやってきたのは優里ともう1人、おさげヘアの女子生徒だった。

 

「えっと…茜谷さんと…塚原さんだっけ?」

「そうそう塚原日向ですー。君が山岸高成くんだよね?呼び方何でもいいよー」

「塚原さん…よろしく。」 

「よろしくーじゃ、ここ座るね」

「じゃあ…私もここ座るね」

 

 優里と日向も勉強する準備を始めた。雄也と日向曰く優里はクラス内でも1.2を争う優等生で、よく勉強を教えてもらっているのだと話す。そんな優里を見て高成は試しに数学の分からない部分を質問するとわかりやすい答えが返ってくる。

 

「ここをこうしてこうすると…ほらね?」

「すっすご…!ありがと、助かった…!」

「いえいえ!」

「あかねちーん次はこれお願い!」

「はいはいどれどれ…」

 

 優里は課題をこなしながら3人へアドバイスを送っていく。その姿は里帆とそっくりながらも里帆とは真逆のアグレッシブさに満ちていた。本屋では里帆を助け、今はこうして高成を助けている。その姿に高成は彼女に尊敬しつつあった。

 

(すごいなあ…光り輝いてる。1軍てやつだからか?)

 

 それから30分ほど経過した時。優里はお手洗いはどこかと雄也に尋ねた。優里は雄也から行き方を教えてもらい、立ち上がって部屋から出た瞬間タンスの角に足の指を強打しその反動で赤と白の何かがタンスから落下する。

 

「い“っっだあああああああ!!!!!…あれ、永瀬ごめん何か落とした…壊れてないといいけど」

「げっそれは!」

「あっそれ!!知ってる!永瀬持ってんの?!」

 

 優里が拾った赤と白の謎の物体に日向は尋常では無い食いつきを見せる。どうやら物体の正体を知っているようだ。

 

「えっ塚ちゃんこれ何か知ってるの?もしかして興味あったりする?」

「あ、これはねー男子が「オナる」やつ。…だよね永瀬?」

「お、オナ…?!!」

 

 日向はにやにやしながら雄也によね?と聞くと雄也は赤面しながらああ、そうだよ…とゆっくりと頷く。

 そんな雄也のどこか観念したような表情を見た日向は彼に驚きの提案をした。

 

「ね、使ってみてよ…」

「はあ?いや無理だって!」

 

 雄也は声を荒げて日向の要求を拒否する。

 そしてこの一連の流れを目撃していた高成の脳裏には貴史の家に来た時の情景がはっきりと映し出され、胸騒ぎを覚える。

 

(え、また、あの時のような…?)

 

 そんな高成の傍らで雄也と日向の問答が続く。内容を聞くにどうも日向には彼氏がいるらしかった。

 

「そういやお前さ、昼頃予備校のトイレで3Pやってただろ。そんであの彼氏はどうなったんだよ?結構束縛やばいって聞いたけど?」

「あっばれた?あの彼氏はとっくの昔に別れてるよ。えっち下手くそすぎたし束縛やばいし、まあアイツの事好きな女子が他にいたから丁度いいやーって」

「まじかよ…」

(あの時の声、塚原さんだったのか…ビッチじゃん)

「てか塚ちゃんそろそろ真面目に勉強しなよ…ふざけてないでさ。」

 

 優里が半ばあきれつつ困ったような表情を浮かべながら日向に話しかけると、日向はどうでもいいと言わんばかりに伸びをしながらゆっくりと雄也のベッドに入る。日向の目線は雄也の反応した股間の方へと向いていた。

 

「私疲れたから休憩する―あ、ベッド借りてもいい?」

「はぁ?!勝手に…」

「いいじゃんいいじゃんよ~けちーなあ…永瀬も入る?」

「なっ…」

 

 雄也の赤面した表情を日向はじっと見つめると仕方ないという表情で雄也もベッドの中に入った。

 

「ふふっ永瀬かわいいじゃんw」

「…」

 

 ベッドに入った雄也と日向を優里と高成は汗をにじませながら見つめていた。

 日向は雄也の手を掴んで自身のパンツの中へ誘導させる。すると雄也の顔がまた一層赤みを増していく。

 

「ね、触りたい…?」

 

 雄也がゆっくりと頷くと日向は雄也の手をパンツの中の奥までいざなう。指が奥まで入ると日向は微かに甘い吐息を吐き出した。その様子を高成は座ったまま見ていた。横に目線を向けると優里は硬直した状態で目線を床へと落としている。日向はそんな高成と優里の2人に構わず行為を続けているのだった。

 

「はあっ…そこっ…んんっ…」

 

 指の動きが徐々に早くなりちゅぷちゅぷと淫らな音がベッド越しから聞こえてくる。日向は雄也にキスをせがみ2人は舌を絡めながら何度もキスを交わす。

 

(飯田だけじゃない…皆動物みたいに盛って…セッ クスのどこがいいんだろうか…?)

(茜谷さんも…そういう人間なんだろうか?)

 

 高成が優里に手を伸ばすと同時に高成は自身でも予想だにしていなかった行動に出た。なんと優里を部屋の外に連れ出したのだ。優里はそれをチャンスととらえたのか急いで走りながらお手洗いの方向へ消えていった。高成は日向の喘ぎ声が聞える廊下の壁にもたれかかった。

 

「ああ~…なんだろう、大変な事になってきた気がする」

 

 その後お手洗いから優里は帰って来たが部屋の中に入るのをためらっていた。どうやら自身の荷物を取りに戻りたいようだが、日向の喘ぎ声を聞いて中に入りにくそうにしているのだった。それを見た高成は優里に声をかける。

 

「あのさ、…一緒に入る?」

「うん…」

 

 2人はゆっくりと雄也の部屋に戻ると全裸姿の日向は雄也にまたがり激しく腰を振っていた。足元には彼女の脱いだ下着と制服が乱雑に置かれている。

 そんな日向は音で高成と優里が部屋に戻ってきた事に気づくと、2人に驚きの言葉を発する。

 

「ねえっ…2人はさ…しないの?」

「えっ」

「ほらっ…あっ、はあっん…」

「あ…」

 

 日向の言葉を受けて優里はまた石のように硬直してしまった。しかも顔はみるみると青ざめてゆく。

 優里の血の気の引いたような顔を見た高成は、日向の姿に自身の股間をやや反応させながらも固まってしまった優里の代わりに彼女の荷物と自身の荷物を回収し、優里の手を引いて日向と雄也に背を向け部屋から出る。

 

「…ごめん!用事が出来たから…また明日…!」

 

 日向と雄也は一瞬行為を止めて2人が退出するその様子をしばらく目で追っていた。

 

「…帰ったみたいだね…」

「…」

「続きしよっか、…永瀬のって思ったより大きいね。」

 

 日向は激しく腰を振り続ける。雄也は日向のお腹に手を添えあっという間に快楽に果てた。その様子を見た日向はまだまだお楽しみはこれからだと言わんばかりにゴムを外して雄也のものを吸い始めた。

 

「あっ…やばいって…また…」

「私1回だけじゃ満足できないからね?」

 

 2人は体位を変え何度もカラミあう。その姿を例えるならばまるで淫らな少女のサキュバスに喰われた青年のようだった。

 

「…」

 

 高成と優里の間に長い沈黙が流れる。太陽はもうだんだん沈みかかって2人の背中をぎらぎらと照らしていた。そこで優里がようやく重い口を開いたのだった。

 

「…あの、さっきはありがと。トイレ行くタイミング失ってたから助かった。」

「…いえいえ、どういたしまして。」

 

 たどたどしいやり取りの中、優里がぼそっと呟く。

 

「私さ、ああいうの正直苦手でさ…」

 

「…塚原さん?」

「あっ塚も永瀬も全然嫌いとか嫌なやつとか思ってないよ!!勿論良い友達だと思ってる。けど…」

「けど?」

「エッチとか、ああいう下ネタは苦手かな…」

「…!」

 

 エッチが苦手。下ネタが苦手。優里のそれは高成も予想だにしていなかった事だった。そしてそれは里帆とは完全に真逆を言っている事の証左でもある。

 

「そ、そうなんだ…」

 

 高成がそう返すと優里は頬を膨らませてそれまで高成には見せなかったむっとした表情を見せる。

 

「お前地球上の女全員があんな塚ちゃんみたいにエロいとは思うなよ。苦手なんだから仕方ねーじゃねーかよぉ!」

「ごっごめん!!!」

「わっ!ついいつものノリで言い過ぎた…!マジでごめん、忘れて!」

 

 優里が慌てて謝ると場の雰囲気がどこか和やかになった。

 

「あ、あのさ…山岸くん。」

「?」

「もしよかったらこの近くにマックあるんだけど、もう少し勉強していかない?」

 

 夕日に照らされた優里の笑顔は眩しかった。

 

「いらっしゃいませ」

 

 マックにたどり着くと優里は好きだというMサイズのポテトとシェイクを注文した。どうやら高成の分も先ほどの無礼をお詫びする意味も込めておごってくれるのだという。席に着くと優里は教科書を出して何かわからないとこあったりする?と高成に聞く。

 

「じゃあ、ここ…」

「はいはい」

 

 丁寧な説明をする横顔はどことなく里帆にそっくりではあるが、どこか里帆とは違った、明るくまばゆいオーラが彼女の内から湧き上がるようにも見える。高成は先ほどの「下ネタが苦手」という話について深堀してみようと優里に尋ねてみた。

 

「その…詳しく言うと苦手と言うか怖いというかなんというか」

「そっかあ…」

「山岸くんは?どうなの?」

「えっ俺は…」

 

 エッチと言えばそうだ、飯田里帆の事ー…彼女の事を話すべきかどうか。

 

「その…飯田ってさ、好きな人とえっちしたいとか…思わないの?極論さ、やれれば誰でもいいの?」

「うーん…」

「…ごめん、わかんないや。」

 

 脳裏に里帆の言葉が浮かび上がる。

 

「なんか…その、飯田ってさぁ」

「うん?」

「変じゃね?」

 

 あの時貴史が感じた違和感。彼女は一体何を考えているのか。

 

(嫌じゃないって言ってたくせにめっちゃ震えてんじゃん…なのに…)

(強がる意味が理解できない…)

 

 あの夏祭りでの出来事で、どうして嫌じゃないと言ったのか。

 

(一体なんなんだ…?どういう事なんだ?飯田…何を考えてるんだ?)

「あのさ…ちょっと長くなるけど、いい?」

 

 高成は優里にすべてを打ち明ける事にした。

 優里は相槌を返しながら里帆や己の今の思いについて語る高成を見守る。全てを打ち明けた後優里はそっかと言った。

 

「私はその…彼氏がいるんだけど、好きな人と初めてした時は嬉しいもんだと思ってた」

「それ考えたらいけるかも?とは一瞬思うけどやっぱ怖いもんは怖くてさ…断ってしまうというか」

「けど…山岸くんは違った。好きだった彼女に抱いていたイメージと違ったというか色々まあ罪悪感とか…分からない事だらけで考えようとしたらるつぼにはまりそうになると?」

 

「うん。」

「やっぱそういうの…しんどくなかった?」

 

 優里はそう高成に尋ねる。

 

(ずっと考えながら飯田としてきた事は…確かにしんどかったかもしれない)

(そうだ…俺はしんどかったんだ…)

 

 その瞬間高成の頬から涙が伝った。

 

「っ!!山岸くん…!!」

「…ごめん、なんだか…」

「だよねぇ、やっぱそうだよね…」

 

 2人は涙を流しながら寄り添う。どこかがんじがらめになった鎖が少し割れてほどけたような、そんな感情に浸っていたのだった…

 

 そして。高成が優里とマックで話していた頃…里帆はとある場所にいた。

 

 …それは夏祭りで知り合った藤野先輩の家だった。彼の両親は大学病院で医者として勤務しており、自身もまた医者になるべく勉強の日々を送っていた。夏祭りの後連絡先を交換し後日再会したのが関係の始まりでもある。

 

「今日は夏期講習休みだから、会えないかな?」

 

 智乃と里帆にそのようなメッセージが届けばそれが「やる」合図となる。

 

「はっ…はあっ…」

「んっ…ふうっ…んん」

 

 ある者は何かから逃げるように、ある者は愛を求めるように、またある者は…

 蛇の交尾のように激しく絡み合う。それは体液が3人の身体にびっしょりとまとわりつくほどだった。交じり合った3人の体力はほぼ同時に尽き果てる。

 

「はあっ…はあっ…」

「はあっ…ちょっと疲れたね…智乃ちゃん先にシャワー浴びてくる?」

「…ありがとうございます…」

 

 智乃がシャワーを浴びに先に部屋から退出していった。その直後に里帆の手がゆっくりと藤野先輩の腹部へのびる。それを察した藤野先輩は息を切らしながら再び里帆を抱くのだった。

 シャワーを浴び終えた智乃が戻ってくると、藤野先輩は智乃ちゃんが出てきたよ。と里帆に話しかけ、里帆と藤野先輩が立ち上がろうとした瞬間。それまでの淫らな雰囲気をぶったぎるようにスマホの着信音が鳴った。

 

「…誰のかな?」

「…私のです…ああ、お母さん…」

 

 着信の主は里帆の母親だった。おそるおそる通話ボタンを押すと絹を裂くような声で叱責する声が里帆のみならず智乃と藤野先輩の耳の鼓膜をえぐるように響き渡る。

 

「ちょっと!!里帆!!遅いわよ!!!早く帰って来なさい!!」

「うん…ごめん…」

「智乃ちゃんと遊びに行くって言ってたけど、まさかお母さんに嘘ついてろくでなしな男の所へ行ってたりしてないわよねええっ?!!」

「そんなとこ行ってないよ…!!ごめん、すぐ帰るから…!!」

 

 智乃と藤野先輩は思わず絶句する。里帆は急いで服を着て荷物を片付ける。その様子に智乃も服を着ながら何も言わずに手伝うのだった。

 

「…智乃ちゃん一応送ってあげた方がいいかも」

「ですよね、行ってきます」

 

 里帆と智乃は急いで帰路に就くのであった。

 ばたんと荒々しく玄関の扉が閉まる。藤野先輩は智乃と里帆を見送るとシャワーを浴びる。浴び終えると着替えて自室に戻り虚ろな目で赤本とノートを取り出し勉強し始めた。

 

「藤野先輩、あの時手当してくれてありがとうございます。」

 

 そんな彼に聞いた事があれど誰の者かが思いだせない声が脳裏にフラッシュバックする

 

(…俺は一体何のために医者を目指そうとしてるんだろう…)

(勉強よりもセックスの方が楽しいのに、楽しんだもの勝ちなのに…)

 

 里帆を自宅のあるマンションの近くまで送ると智乃も家へと帰宅していた。両親はリビングでテレビを見ながらくつろいでいる。そんな2人を尻目に母親が用意した晩御飯を食べ終わると自室へと戻る。

 

(シャワーから出た時里帆は2人っきりで先輩とやってた…)

(あの子は…誰とでもするんだろうか。)

(そう考えると…里帆に嫉妬してしまいそうだ…)

 

 事実、智乃がシャワーから出た時。里帆は藤野先輩に激しく突かれ快楽に歪んだ表情をしていた。その直後に里帆の母親から例の着信が鳴ったのでその時は忘れていたものが、今こうして1人でいるときになって和紙に垂らされた墨のようにじわりじわりと思いだされていく。

 

「ああ、やだなあ…(私は、先輩が好き…)」

 

 智乃はパンツに指を入れ藤野先輩を思いだしながら1人、行為をしていくのだった。

 

 

「山岸くーん、昨日はごめーん」

 

 次の日。予備校にて日向は高成に謝罪をしてきた。日向の後ろから雄也と優里もついてくる。

 

「急に…どしたの?」

「ああ、昨日のね…流石に山岸くんは私達とは初対面だったしさ、あんな空気にすんのはまずかったから謝った方がいいでしょって塚ちゃんに言ったの。」

「そうだったんだ…大丈夫だよ、気にしないで。」

「マジ?山岸くん神ー!」

 

 丁度昼休憩の時間でもあったので4人は弁当を食べ始める。弁当を食べながら優里はある事を話し出した。

 

「塚ちゃーんそういや明日のライブなんだけどさ、りったん行けなくなったって」

「まじ?!」

「うん、風邪ひいて熱も高くてしんどいってライン来た」

 

 どうやら優里と日向は同級生と共に好きなバンドの結成7周年を祝うライブに行く約束をしていたのだが、その同級生が体調を崩してしまい行けなくなったらしい。そこで優里は雄也と高成に行けそうかと聞くのだった。

 

「まじかー…後でラインおくっとこ、じゃあチケットどーすんの?」

「永瀬は?」

「おれは無理ー明日オープンキャンパスだし」

「ごめん、そういやそうだった…」

「あかねちんの彼氏は?」

「邦楽興味無いのとシフトで無理だって断られてる…あ、山岸くんは?」

「えっおれ?」

 

 突然の誘いに高成は動揺しながらも行くと答える。

 

「じゃあ決まり―後でラインするね」

(茜谷さんと塚原さんの3人か…なんかドキドキしてきた)

 

 高成がドキドキしながら昼食を取っていると、雄也はせっかくだし今日も3時過ぎに終わるから何か歓迎会でもしないか?と3人に問いかけた。

 

「いいね!山岸くんの歓迎会いいと思う!」 

「場所はどこにする?また永瀬の家?」

「いや、今日は両親居るから無理。…近くの水族館でナイターやってるからそこは?カフェもあるし食うもんには困らんと思う。」

「でも明日ライブ行くんだよね?時間大丈夫かな?」

「あ、ごめん。言い忘れてた…明日のライブは15時開場17時開始だからまあ大丈夫な筈」

「そっか。ならいけるか」

 

 そして予備校が終わり4人は近くの水族館へと歩いていった。その水族館は今年リニューアルオープンしたばかりで、外観はシックでおしゃれな雰囲気を漂わせている。客もよく見てみると子供より大人の方が多いようだ。

 一行は受付を済ませて入場すると様々な種類のクラゲを展示している部屋を見つける。灰暗い部屋にパステルカラーのライトアップはどこか幻想的だ。

 

「すごーい…」

「写真とっとこ…」

 

 その中で高成はある二つのクラゲの水槽に目が留まる。

 

「…こっちはアカクラゲ。そしてこっちはカツオノエボシ。か…」

 

 その名の通り赤い縞模様と触手のあるアカクラゲと、青い触手のあるカツオノエボシは高成の目の前でゆっくりと浮かんでいる。どちらも毒を持つクラゲだ。

 

「山岸くん…それ2つとも毒クラゲだね。刺されたらめちゃくちゃやばいやつ。」

「うん。よくテレビとかでやってるやつだよね。」

「よく見るとこっちが赤でこっちが青か。」

 

 高成は水槽の中を漂うアカクラゲと水槽の上でヨットのように浮かんでいるカツオノエボシ、2つをどこか対照的に見ていた。

 

(対照的だなあ、水の上と水の中…)

「そういえばさ、私小さいときにクラゲに刺された事あるんだよね。」

「そうなの?」

 

 優里は幼い頃のある思い出を思いだしたようで、高成に語り始めた。

 

「家族で海水浴行ってたの。そしたらクラゲに刺されてさ。」

「砂浜になんか打ち上がってたの触ったら刺されて…確かこのカツオノエボシだったと思う。すんごい痛かったしその後救急車に乗って病院行って色々処置したりで大変だったの覚えてる。」

「そうなんだ…」

 

 優里は水槽を見ながらおぼろげに呟く。

 

「美しいものには棘がある…みたいなやつかもね。」

「…」

「あとこっちのアカクラゲはなんか色が制服のこの辺と似てるかも。」

「あ、確かに。」

 

 優里の言う通り、彼女の着ているセーラー服の赤い部分はアカクラゲの傘の縞模様の色と似ている。

 

「美しいものには棘がある、か…」

 

 高成はその言葉を反芻するように唱えると一瞬脳裏に里帆の姿がよぎる。

 

(飯田…)

 

 その後一行はイルカやペンギンといった海の動物たちがいる水槽を巡って、レストランのビュッフェを食べて帰るともう辺りはすっかり暗くなっていたのだった。

 翌日の昼過ぎ。駅にて高成、日向、優里の3人は集合し新幹線へ乗り込む。日向はもうテンションが上がっているようだった。

 

「うわー楽しみ―!」

 

 席に座ると日向は優里に声をかける

 

「そういえばさ、あかねちんの彼氏ってどういう人?」

「写真見る?」

 

 そういった優里はスマホを開き彼氏の写真を日向と高成に見せる。茶髪にピアスとその姿はいかにも不良と思わしき怪しげな姿だった。日向と高成はしどろもどろになりながらこういう人なんだね…と言葉を返す

 

「そ、そのさ…なんというか」

「え、かっこよくない?」

「色々気使ってくれたりとか、意外と優しい部分もあるというか…」

「…あかねちんそういう趣味だったの?」

「はあ?!」

 

 日向と優里はたわいのない会話を繰り返したのち、何かを察した日向は優里にこう忠告する。

 

「あかねちん…その彼氏マジで気をつけたほうがいいよ」

「?」

「なんか…怖いというかさ、うん、マジで気をつけたほうがいいと思う」

「…」

 

 一瞬の冷たい間が流れ、新幹線は目的地へとたどり着いた。

 ライブ会場。ライブを楽しんだ3人は未だ興奮と熱気がこもった客席を離れて、会場の出口へと向かう。会場を出た後近くの駐車場で日向は母親に連絡し、そのまま優里と高成に挨拶をして去っていった。

 

「山岸くんは?電車?」

「うん」

「乗せてもらおうか?」

「えっいいの?」

「いいに決まってるじゃん!」

(これは有り難い…助かる)

 

 しかし待てども待てども優里の迎えは来ない。焦った優里は電話をかける。

 

「ねえまだー?え、お酒飲んだの…?お父さんもお母さんも…?はあ?!嘘でしょ…?」

 

 姉と両親はお酒を飲んで運転が出来ないという衝撃の知らせに、優里はブチッと荒々しく電話を切ると高成にこう質問する。

 

「山岸くんとこ…お願い出来る…?」

「うちは車自体無くて…」

「はあ…」

「とりあえず、駅行こうか」

「…!そうだね…!」

 

 2人は慌てて駅へ走るも終電はとっくに出発した後だった。周辺にはタクシーも見当たらない。

 

「…どうしようか…」

「うーん…いやでもなあ…」

「あのさあ、山岸くん…ホテル泊まる?」

 

 優里の驚きの提案に高成はえ…?といまいちのみ込めていないようだ。

 それもそのはず、優里には彼氏がいるのだ。そんな事良いのだろうか?と高成は考える。

 

「でも…彼氏さんが…」

「部屋2つ空いてたら大丈夫でしょ?…多分。」

「…」

 

 このまま駅にいても仕方がないので優里と高成は近くのホテルへ行くことにした。幸いホテルはあったが空き室は1つしかない。高成は茜谷さん1人で泊まるよう進言するが優里は多分大丈夫だからと笑って断ったのだった。その時日向の言った言葉が高成の脳裏に蜃気楼のように浮かぶ。

 

「なんか…怖いというかさ、うん、マジで気をつけたほうがいいと思う」

(大丈夫…大丈夫だよな…?)

 

 受付を済ませ部屋に入ると優里はテレビをつけた。するといきなり男女が絡み合う場面が映し出された。それを間近で見た優里は引きつった顔でピッとテレビを消す。

 

「これは…なんだ?…コ」

 

 どうやらベッドの横にあるゴムを優里は見つけたようだ。優里はそれを投げつけるようにゴミ箱へ捨ててしまうと肩で息をしながら高成にこう尋ねた。

 

「もしかして…ここ、ラブホテル?」

「あ~やっぱり…」

(なんか受付とかスタッフ見かけなくて変だと思ったけど、やっぱり…!!)

 

 優里はがっくりとうつむく。高成は自分は外で適当に時間をつぶすからと優里に1人で泊まる事を再度進言するも優里は何かあったら怖いし…と高成の提案は飲まなかった。優里がベッド横のテーブルに目をやると、そこにはメニュー表が置かれてあった。どうやら食事が楽しめるようだ。

 

「あの…良かったら、おごろうか?」

「えっ、いいの…?」

「だって泊まろうって言ったの私だし…」

「お金は大丈夫?」

「だいじょぶ!沢山持ってきたから!なんか頼んで!」

(…申し訳ないけどお願いしようか)

 

 その言葉に甘えて高成はハンバーグ定食を注文したのだった。優里も高成と同じものとたこ焼きとフライドポテトを注文する。

 

「結構食べるんだね。」

「へへ…走ったりしたしお腹すいちゃった。」

 

 2人はたわいのない会話をしながら遅めの夕食を食べ終える。ハンバーグの味はしっかりとしていて、デミグラスソースも濃厚。フライドポテトとたこ焼きも中々の美味さだった。食べ終わりしばし休憩した後優里は高成に話しかける。

 

「ああ、そうだ。シャワー浴びる?」

「えっ…ああ…」

「先に浴びて来な。私もうちょい休憩したい」

「うん、わかった…」

 

 高成はシャワーを浴び、ちゃぷんと湯を張った浴槽につかる。外からは優里が彼氏らしき相手と電話している声がとぎれとぎれに聞こえてくる。

 

(やっぱ彼氏さんかな?)

 

 声の様子は高成からすると楽しそうに聞こえた。高成は充実しているんだな、と感じながら鼻の近くまで潜る。

 

(茜谷さん…いっつも明るくて元気で…しかも優等生で…飯田とは全然違う)

(なんか、こう…オーラ?雰囲気?が違うんだよな…光属性というか。すごいよな、色々尊敬するよマジで)

(きっと、幸せになれそうなイメージ…)

 

 高成は優里を尊敬しているのはまぎれもない事実だ。だが何かそれ以外に心の中にひっかかるような気がしないでもない、とふと高成は考えた。

 

(なんだろう…?)

 

 ここまで考えた所でさすがに長湯はいけないと感じた高成は急いで風呂から出て、備え付けのバスローブに着替える。シャワールームから出ると優里がそばに立っていた。

 

「おっ出てきた」

「あ、お風呂にお湯入れといたから」

「ありがと!助かる!」

「さっきの人…彼氏さん?」

「うん!じゃ、入ってくるね」

 

 優里は上機嫌でシャワールームへ入っていった。

 1人になった高成は暇潰しにとテレビをつける。すると里帆と似たAV女優が男優とキスをする映像が映し出された。どうやらAVの内容は恋人が愛し合うごく普通の純愛もののようだ。

 

(恋人ってリア充というかまあこんな感じなんだろうな…でも茜谷さんは…)

(というかこの人飯田とそっくりじゃん…飯田も今頃…)

(いや、これ以上考えるのはやめておこう…)

 

 リモコンをよく見ると「戻る」ボタンがある事に気づいた高成はそのボタンを押すと、画面がチャンネル選択画面へと切り替わる。

 

(サッカーでも見るか)

 

 チャンネルを選択し、高成はベッドでサッカー観戦をする事にした。見始めて2.30分くらい立った所で優里が高成と同じく備え付けのバスローブを着てシャワー室から出てくる。

 

「ただいま~、あ、サッカーかかってる。すきなの?」

「まあね…見る専だけど」

「丁度良かった。テレビあれしかかかってないもんだと思ってたから。これなら時間つぶせそう」

「…お隣いい?」

「あ、どうぞ」

 

 優里は高成の隣に座り、一緒に観戦する事にしたようだ。その顔は蒸気にあてられた影響かほんの少し赤くなっていた。

 テレビを見ながらたわいのない会話すると時間が過ぎ去るのはあっという間だ。優里がちらっとベッド横の時計に目をやると、時刻はもう深夜にさしかかっていた。

 

「そろそろ寝よっか。」

「…そうだね。おれソファで寝るから。」

「…硬いよ?」

「いいから。大丈夫だって」

 そう言って高成はソファで横になった。その姿を見届けて優里はベッドで横になる。しばらく静寂の間が流れる

 

(茜谷さん…寝てるかな)

(強がり言ったかもと思ったけど、この硬さなら朝まで行けそうか?)

「くん…山岸くん…起きてる?」

 

 考え事をしていると優里が高成を起こす声が聞える。優里はごめんと高成に謝った上でこう話しかけてきた

 

「寝れなくてさ…一緒に夜景でも見ない?」

「うん、いいよ…」

 

 白いカーテンをばさっと開けると、眩い光が宝石箱のように点在する夜景が目の前に広がった。大きく輝く満月に星々、工場やビルディングネオンライト。実家で見るものとはまた違った光景に人2は目を丸くする。

 

「綺麗だなあ…」

「折角だし撮っとこ」

 

 優里はスマホで夜景を撮影した。おっ綺麗に写ってる!と嬉しい様子だ。写真を撮り終えた優里は夜景を見ながら高成に向けて話し出す。

 

「あれ見て。大きな満月。」

「うん。綺麗だよね」

「ねえ、月が綺麗ですねって言葉あるじゃん?山岸くんは知ってる?」

「えーと…確か愛してます的な意味の言葉なんだっけ?聞いた事ある。」

「そうそう。夏目漱石のやつね。」

 

 月が綺麗ですね。といえば夏目漱石が「i love you」をそう訳したエピソードで有名だ。優里は窓に手をやりながら高成に語り続ける。

 

「でもさ、なんで「月が綺麗ですね」なんだろうね?それとOKの返事を返す時の言葉も知ってる?」

「あー…それは知らないかも」

「「死んでもいいわ」らしいよ。なんでかは私もよくわかんないけど。」

「そうなんだ…」

「ふふっなんかすごいよね。恋って色々あるんだ。」

 

 優里はそう言って起こしてごめんね。と言いながら高成に戻るよう指示をする。そうして2人は夜明けまでゆっくりと寝たのだった。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 …一方その頃、ある場所にて。日向の悪い予感が的中しようとしている。

 

「お前の彼女ラブホテルにいんのかよ。どー見ても浮気じゃんそれ。」

「っ…!いや、あいつに限ってそんな事は…」

「あ~あ。お前も舐められてんじゃねーか。ほら、ヤキ入れに行くぞ。」

 

 2人の不良が高成と優里の元へ向かっていたのだった。

 

 

 

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