最近……同居する従妹が色っぽくなった。
「兄さん、ただいまー♪」
帰宅した七海から、妙に愛想良くそう言われる。
今日は大学の時間割的に、僕の方が一足早く帰宅していた。
「おかえり。学校お疲れさま。手洗いうがい忘れずにな」
「もう、その言い方、なんかお母さんみたい」
感染症予防のため言いつけると、七海は楽しげに笑って洗面台へ。
僕は何をしていたかというと、今日は七海の代わりにキッチンに立っていた。
いつも七海にばかり作らせるのも悪いので、曜日を決めて僕担当の日を設けている。
「兄さん、なに作ってるの?」
「ああ、ポトフだ」
男料理の定番である。
「私、兄さんの作るポトフ好き」
七海が俺の隣に立ち、鍋を覗き込む。
肩が触れる。それどころか、うっすら腕に胸が当たる。
最近の七海は、こういうボディタッチみたいなことが増えた気がする。
僕は緊張感を堪えながら、鍋にソーセージとブロッコリーを加える。
「七海から見れば、そんなに難しい料理じゃないだろ?」
なにせザク切りした肉野菜を順番にコンソメスープの素で煮込むだけだ。
『一人暮らしの男がこれで料理をした気分になってるやつ』の代表例と言える。
「そうなんだけど、自分で作るより美味しい気がするんだよね。材料同じなのに、なんでだろ?」
「それは人が作ってくれたからだろ。僕も自分で作るより、七海の作るカレーの方が好きだし」
「も、もう……」
七海は照れ臭そうにはにかんだ。
やっぱり変だ。普段なら照れ隠しにしても「なに言ってんの、キモ」くらいは言うのに。
いや、可愛いんだけどさ。
「あ、そうだ。頼んでたDVD、借りてきてくれた?」
「ああ、そこの机に置いてあるよ」
「ありがとう。頼んじゃってごめんね。お夕飯の後、一緒に見よ?」
大学からの帰宅途中、七海に連絡を受けて頼まれてレンタルしたDVDだ。
「僕たちもそろそろサブスクに移行する頃かもなー」
「んー、でもせっかくのDVDプレーヤーをお蔵入りにしちゃうのもねー」
ハードディスクに録画する工程から、なんとなく卒業できない僕たちだった。
七海にレンタルを頼まれたのは、映画館での視聴を避けていた劇場版アニメだった。
飲み物などの準備をしていると、制服から部屋着に着替えた七海が姿を現わす。
「お待たせ、兄さん♪」
「ああ……」
七海の部屋着は、夏のせいもあってか、薄着だった。
柔らかい素材の、キャミソールとショートパンツからなるルームウェア。
同じ素材のパーカーを上から着ているが、やはり真っ白な肌があちこちに垣間見える。
細い首筋に鎖骨部と胸元、上下の間から見えるおへそ、柔らかそうな太股――
思わず視線を釘付けにされた僕に、七海は何も言わず、少し頬を染めていた。
僕の視線に気付いていて、嫌がるでも隠すでもなく、心地よさそうに受け止めている。
その表情は保護欲と嗜虐心を同時に刺激して、見てもいいよというような身じろぎは蠱惑的で……
僕は、気を抜けば手を伸ばしそうになる自分を、必死に押さえ込んだ。
「じゃあ、再生するよ」
「うん……兄さん、そこ、座らせて?」
七海はそう言って、ソファーに腰掛けた僕の膝に、当然のように座った。
「ん、いいよ」
僕も、さも自然なことであるかのように、七海を膝に乗せて、胸を背もたれとして提供する。
まるで十年来ずっとこうしてきたかのように。
いとこ同士であるだけの僕と七海に、こんな習慣はなかったはずなのに。
いつからか、どちらからともなく、居間で寛ぐときはこうするようになっていた。
「ぁ……♡」
僕の膝に体重を預けた七海は、お腹に回された僕の腕に気付くと、小さく声を零す。
エッチなところはどこも触っていない。膝に乗せた従妹の腹部を包む、親愛の表れだ。
それでも――本当はそうではないことを、僕も七海も分かっていた。
股の付け根に乗った七海のヒップ、胸板に密着した華奢な肩と背中、重なりあう太股。
僕はそこから七海の女体を感じ、七海は男の体を感じていた。
「七海、頭をもうちょっと低くしてくれ。ちょっと見づらい」
「うん……こう?」
僕の注文を聞いて、七海はより深く僕に腰掛けて、気持ち頭部を下げる。
僕の鎖骨を枕にするように、七海の後頭部がよりかかる。
そしてなにより、腰を沈めたことで、七海の尻が股間に押し込まれた。
「……っ♡」
白状すると、僕はとっくに勃起していた。
ジーパンの生地越しでも、密着した七海は、お尻の割れ目にその硬さを感じたはずだ。
気付いていて、気付かないふりをしてくれた。
――このままでいいよ?
と、態度で言っていた。
それどころか、さりげなく身じろぎして、僕の逸物を服越しに愛撫してくる。
少しずつ、他意のない身動きと見せかけて、僕と七海は互いの接触部を浅く擦り合わせていた。
音量高めに再生されている劇場版アニメで、その事実を誤魔化しながら。
『――っ♡ ……っ♡』
相変わらず、近隣からは男女の盛る声が漏れ聞こえてくる。
もうすっかり聞き慣れてしまった僕たちは、いちいち気まずい空気にならなくなっていた。
それどころか……
「兄さん、ちょっと熱いから、上着脱ぐね」
七海がルームウェアのパーカーを脱ぎ、キャミソールだけになる。
僕の胸に預けられた七海の上半身が、一段と薄着になってしまった。
「あんまり薄着になると、クーラーで冷えちゃうぞ? せめてお腹にかけておけよ」
「大丈夫、お腹は兄さんが抱っこしてくれてるから……♡」
七海は僕の手をとって、両手で腹部を抱くような位置に沿えた。
すると意図的に体を丸めて、その豊満な胸の下半分を、僕の腕に触れさせる。
「じゃあ、ぎゅってしておくよ」
「うん♡」
僕は七海を抱きしめる腕に力を込めて、片腕を七海の胸に下から押し付ける。
七海は少しだけ体を震わせたが、何もいやらしいことなどされていないかのように、テレビの画面を見ていた。
――お互いの本心を、僕たちは分かっていた。
触れ合いたい、相手を感じたい、性欲を満たしたい。
周辺から聞こえる淫らな声、オナニーのときに見る奇妙な幻覚に、僕も七海も狂わされていた。
だからこうしてスキンシップをする。
仲のいい兄妹であるかのように、兄妹だから普通なんだという免罪符を求めるように。
おかしな話だ。
実際は従兄妹なのだから、言ってしまえばセックスしたって法的な問題はないのに。
それでも僕と七海は、『いとこ同士の恋人』ではなく、『兄妹』という関係を求めた。
言うなればそれは、男女の関係となる前のワンクッション。
僕たちの関係を急激に変化させないための、ギリギリ一線を越えない距離感だった。
「んっ♡ ふぅ……はぁ……♡」
僕の膝の上で、七海はいつしか声に艶を帯びさせていた。
僕の腕は気がつけば七海のお腹ではなく、胸を上下から挟むように、胴と肩を包んでいる。
豊満な双丘は腕と腕の間でプレスされ、キャミソールの生地が絞られ、乳首が浮いていた。
「ふぅ……ぁ♡」
ノーブラだ。
それは、七海からのサインであるようにも感じられた。
それを受け取った僕は、左右の下腕で七海の乳房を揉むようにしながら、首筋に顔を擦る。
「はぁ……あ……おにい、ちゃん……♡」
七海が小さく、アニメの音量に隠れるくらいの声で、僕をお兄ちゃんと呼んだ。
七海が僕をそう呼ぶのは、幼少期を除けば、オナニーをするときだけ。
二人の空気がそういう段階に入ったのだという、言外のメッセージだ。
「かわいい」
僕からも、まるで取るに足らない独り言のように、七海の耳元で囁く。
七海は聞こえていないふりをしながら、明確に体を震わせて、嬉しそうに身をよじる。
すると七海の尻が動きを増して、すっかり棒状になった僕の分身を、服越しに擦り上げる。
「はっ♡ んっ♡ ぁ……は♡ んんっ♡」
胸を手で掴むとか、唇で吸い付くとか、そういう明確な愛撫はしなかった。
あくまで距離感の近い兄妹が、たまたま胸元や股間を触れ合わせているだけであるかのように。
そういうラインをギリギリで保ちながら、しかし僕と七海は、相手の性欲に対して自分の体を提供していた。
「あっ♡ ふぅぅっ♡ んんんっ♡」
やがて、七海がぴくぴくと体を震わせる。
どうやら、僕の股間の隆起に秘所を擦り続けたことで、達してしまったようだ。
僕は気付かなかったふりをした。
七海も気付かれなかったふりをした。
アニメなんて、もうとっくに見ていなかった。
◆
そうしたスキンシップの後、僕たちは決まって同時に部屋へ戻り、オナニーをする。
特にそう約束したわけじゃない。ただ暗黙のうちに、そうするようになった。
――僕と七海が同時にオナニーすると、お互いの妄想がリンクする。
そんな、ここ数日の奇妙な現象に、僕と七海は順応しつつあった。
どころか、自分たちの意思でその条件を満たし、仮想空間めいた幻覚の中で、逢瀬を重ねていた。
「ふぁぁぁんっ♡ お兄ちゃんっ♡ 気持ちいいっ♡ 気持ちよすぎるぅっ♡」
妄想の中で、僕と七海は結合していた。
場所はリビング、さっきまで七海と『スキンシップ』していたソファーの上だ。
僕はソファーに腰掛けて、体面座位で七海とまぐわっている。
既に挿入は済んでいる。前戯はない。前戯はさっき現実で済ませたからだ。
「七海っ、ああもう、こんなにエッチになって。僕のことを誘惑するからだぞ!」
「ひゃうんっ♡ ごめんねお兄ちゃんっ♡ エッチなのっ、私、エッチになっちゃったのっ♡
お兄ちゃんを見てるとっ、エッチな気分になって止まらないのっ♡ してっ、もっとしてぇ♡」
七海は僕の首後ろに腕を回して、自ら腰を振っている。
ルームウェアと下着はリビングの床に放り捨てられて、室内には七海の喘ぎ声が反響している。
「おくっ♡ 奥いいのっ♡ お兄ちゃんのおっきいのっ、突き上げられるの気持ちいいのぉっ♡」
七海の乱れようはすさまじかった。
目の色は淫乱、声はまるで色情狂、華奢な小柄は可憐なのに、揺れる乳房は妖女のよう。
僕は理性を捨てて、七海の尻を鷲掴みにしながら、体ごと腰を突き上げる。
「あんっ♡ あぁんっ♡ はげしいっ、お兄ちゃんの動きすごいっ♡ 気持ちいいの強すぎるっ♡
これっ♡ これもっとしてぇ♡ 男の人のっ、強い力っ、いっぱい感じたいっ♡」
七海の体は軽い。体重が軽すぎて、僕の突き上げで体が跳ねてしまう。
だから僕は七海を持ち上げて落とすようにして、自分のピストン運動に勢いをつけるのだ。
子宮口まで突き上げられた七海は、そのたび喉を反らして、悦楽顔を僕に見せつけた。
「はひっ♡ イっちゃう♡ きちゃう♡ いきなりすごいの来ちゃうっ♡ お兄ちゃぁんっ♡」
「いいぞ、イケっ、七海っ! 僕とのセックスで気持ちよくなってくれっ!」
早くも絶頂を迎えつつある七海に、僕はより激しく叩き上げる。
以前は、こうしてオナニー時の幻覚を見ても、七海の処女膜より先に進めなかった。
いまは違う、七海の最奥まで、僕の肉棒が届いている。その理由は、だいたい察しがつく。
現実の七海は、きっと処女じゃない。
「くそっ、誰だっ、誰なんだよっ! 七海の初めてを奪ったのは!」
「ひあぁっ♡ お兄ちゃ、違うのっ♡ あひっ♡ だめっ、そんな、乱暴なの、ぁぁぁぁぁっ♡」
「僕が、僕が奪いたかった! 七海を女にしてやりたかったのに!」
「ふぁぁぁ♡ お兄ちゃんそれぇ、嬉しい♡ して、女にしてっ♡ お兄ちゃんの女にしてぇ♡」
七海は歓喜の声を上げて、僕の体に手足を絡めると、
「ああああイクっ♡ イっちゃう♡ お兄ちゃん私もうイっちゃうから♡ このまま、あぁっ♡
あああああぁぁぁぁぁっっっっっ♡♡♡」
急に背筋を反らすと、オーガズムの嬌声を響かせた。
「はぁぁ。あぁぁ♡ お兄ちゃん♡ 違うから、お兄ちゃん以外に、抱かれてなんて、ないから」
多幸感の表情で、七海は僕の胸板に頬ずりする。
それだけで、七海の気持ちは全て伝わってきた。
「七海、続けるぞ。そこで横になって」
「うん♡ 今度は、私がお兄ちゃんをイかせてあげるから、ね♡」
七海をソファーの座面に寝かせ、正常位の姿勢になる。
七海は嬉しそうに腕を伸ばし、僕の頭を抱き寄せると、自らキスをしてきた。
「ちゅ♡ んっ、ちゅぱっ……れろっ、お兄ちゃん好きぃ」
唇を吸い合いながら、僕は腰を動かす。
熱く狭い膣内は、締め付けも強く、それでいて感触は柔らかくて心地いい。
使ったことはないけど、どんなオナホールよりも優れた穴であると確信できる。
「あっ♡ お兄ちゃん、私のこといいからっ、お兄ちゃんが一番気持ちよくなるようにしてっ♡」
七海は僕の快楽のために、自分の体を差し出していた。
僕は七海を抱きしめると、腰を振って肉棒を打ち付ける。
「あぁん♡ いいよ、もっと突いて大丈夫だから♡ あんっ♡ お兄ちゃんの、好きにしてっ♡
私、お兄ちゃんの、従妹(いもうと)だからっ、お兄ちゃんのために、頑張るからぁ♡」
抽送の衝撃に震えながら、七海は慈母のような笑みで僕を招く。
そんな七海に甘えるように、僕はただ思うがままに腰を振るい、気まぐれに角度とリズムを変える。
これが七海に快感を生んで、七海は顔を左右に振りながら、可憐な顔を淫らに蕩けさせていった。
「ふぁぁぁっ♡ お兄ちゃんだめぇっ♡ 私ばっかり気持ちよくしちゃだめなのぉっ♡
イっちゃう! 私またイっちゃうからっ♡ 今度は、お兄ちゃんの番なのにぃ♡」
「いいんだっ、イってくれ七海っ! 僕に、もっと七海を気持ちよくさせてくれ!」
「そんな、そんなのぉ♡ ずるいっ♡ なっちゃう、お兄ちゃんのセックス好きになっちゃう♡
もっといっぱいしたくなっちゃう♡ あああイクっ、またイクっ♡ イクイクイクぅぅっ♡」
七海が深いオーガズムに襲われるのと同時に、僕の下腹部も臨界点を超えた。
ためらいなく、七海の中に射精する。
「んぁぁぁぁっ♡ 出てりゅっ♡ お兄ちゃんっ、中にっ、出てりゅよぉっ♡」
ガクンガクンっと、二度ほど全身を反らした七海は、短時間に数度の絶頂を迎えたようだった。
「ああ、七海……ありがとう、受け止めてくれて」
脱力した僕は七海に覆い被さり、お礼を兼ねてキスをする。
「ちゅ♡ へへ、お兄ちゃん、イってくれたぁ♡ ぢゅう♡ ちゅ、ちゅっ♡」
七海は恍惚とした顔でそれに応えてくれる。
そうしてしばらく、この白昼夢から覚めるまで、僕たちは甘い余韻に浸り続けるのだった。
――これがただの妄想でないことは、もう百も承知だ。
テレパシーのような超能力か、神様の悪戯か、僕たちは別室にいながら心が結ばれている。
だから、こうして僕を求めてくれる七海も、僕の都合のいい妄想ではなく、本物の七海の意思だ。
言うなれば、精神世界でのセックス。
肉体では一線を越えず、我に返って顔を合わせても『ただの妄想だった』ということにできる。
二人でいる間は過剰なスキンシップをとり、部屋に戻ると、オナニーを通じて逢瀬をする。
そんな関係が、もう何日も続いていた。
体は一度も交わっていないのに、この事象の中では、お互いの体を知り尽くす仲になっていた。
「ふぅ……」
激しいオナニーで汚れた手と逸物をティッシュで拭った後、僕はトイレに向かった。
用を足し、洗面台で素早く手を洗った後、部屋に戻る途中――七海の部屋が見えた。
少しだけ、扉が開いている。
「…………」
僕は少しためらいながらも、好奇心に勝てず、そっと七海の部屋を覗き込む。
そうして見えた七海の部屋、ベッドの上では……
「はひぃ♡ ひふぅ♡ ふぁぁ♡ あはぁ♡ おにい、ちゃん……♡」
七海が、全裸で、気絶していた。
ほとんど意識がないような状態で、うわごとのように、喘ぐような声で僕を呼んでいる。
その脚の間には、いったいどこで購入したというのか、立派なディルドローターが転がっていた。
ついさっきまで、僕のことを思って、あれでオナニーしていたのだろう。
「……っ!」
きっと、声も音も、すごかったに違いない。
扉を半開きにしていることから、僕に聞かれて覗かれても構わないとさえ、思っていただろう。
僕も自慰に夢中だったので、そうはならなかったが……
きっと七海の膣内は、あのディルドで、毎日のように自己開発されている。
(やっぱりだ……七海も、僕と……)
僕と同じようにオナニーをして、お互いを求めている。
きっと、この扉を開けて中に入れば――七海を起こして行為を求めれば、きっとできるだろう。
(でも……まだ、だめだ……)
僕は思い留まる。
もう少し、もう少しだけ、慎重であるべきだと。
曲がりなりにも兄妹同然に育ってきたのだ、お互いの機微は分かる。
急激に関係を変化させようとすれば、対人関係が不得手な七海は、きっとそれを恐れる。
あくまで、少しずつ変化させることで、七海との関係を深めていくのだ。
それこそ……七海が我慢できなくなって、自分から僕の部屋を訪れてくるくらいまで。
僕はそんな悪巧みを胸に抱きながら、自分の部屋に戻っていくのだった。
ご一読いただきありがとうございます。
私事が立て込んで更新が遅れ気味です。
気長にお待ちいただけますと幸いです。