プロデューサーは人でなし 作:どろまみれ
櫻木真乃④
まだ、雨の降る季節。
それからも櫻木真乃への
冬優子からは「貸し1ね」と言われてしまったが。それはいずれ、真乃も含めてお返し出来ると良いと思う。
現場からの帰り道。
今回は小型のバスタイプの送迎車を用意してもらっていた。
「ありがとうございましたーっ!」
「ありがとうございました。またよろしくお願いします」
めぐると灯織がそれぞれスタッフに頭を下げ、俺と真乃も揃って礼。
振り返って、イルミネーションスターズのふたりと一緒にバスへと乗り込む。
……乗り込むと。
「真乃とプロデューサーはそっちね!」
八宮めぐるがにかっと笑いながら指さす。
小型バスの後部座席は、横2席の列が2つ。合計4つ席があるタイプのものだった。
横に追加で席を引き出すことは出来るが、そちらのシートベルトは腹部だけのもの。背もたれもない。
そもそも、俺か真乃は助手席でも良いのだが。
風野灯織の側を見る。「余計なお世話でしたでしょうか……」と視線に書いてあって、すぐさま逸らされた。
露骨なのは避けるべきである。
俺が一度外に出て、助手席を見ると。
……差し入れの飲み物類が、足元に敷き詰められていた。
運転手の方に頭を下げられる。ぎゅうぎゅうだ。仕方がない。真乃の隣をペットボトルにするのも気が引けるので、俺は後部座席へと戻ることにする。
「あの……ど、どうぞ」
奥の方 ―― 窓側に座った、真乃の隣に腰かける。
シートベルトを締めたことを伝えると、バスは発車した。
……BGM代わりのラジオでは、876さんで繰り広げられたある「親子対決」の後日談がバラエティ交じりに語られていた。
めぐるがうっわーと半分引きながらリアクションを取っているが、まぁあの日高さんであればそのくらいはするだろうという妙な信頼感もある。
小型バスでの送迎は、事務所までではなく、各々家に近い場所で降ろしてもらう事になっている。
寄りたい所があるという灯織の側へ先に回って、1番。めぐるが2番。真乃が3番目の降車となった。
こういうのはいつもは俺がバスを運転すれば事足りるのだが……用意してくれているというのであれば、別段に断る理由もないだろう。
それに。
こうなったからには、この状況を生かそうという思惑もある。
時を待つ。
天気予報の確率を信じていると ―― バスの窓に雨粒がぶつかり始める。
「あーあ、また降ってきちゃった」
「そうですね……。あ、私用は降雨でも大丈夫なので。順番は変えずにいてくれると助かります」
ざぁざぁと。
雨粒が窓にぶつかるのを。フロントガラスでワイパーが躍動するのを。それぞれ見入っているようだ。
そして。俺の隣はというと。
「……。……あ」
櫻木真乃が、窓越しに雨を。雨粒を。雨の音を……それらを通して、何かを連想している。
あるいは、想像は容易につく。
数日前。そしてその前々日 ―― 真乃は、雨中であの痴態を繰り広げたのだから。
「……っは、っは。……く、う」
吐息が喘ぎに
窓の雨粒からは視線を外せず、外さない。
口は半開きのまま固定され、湿った吐息が自由に出入りする。
両腕で身体を掻き抱き、もぞもぞと、両太腿をすり合わせ。
それ以外の外的要因にはまるで反応を示さず、自らの回想の中に閉じこもっている。
……雨による条件付けか、それに近いものだ。
あれは犬での実験だったか。真乃の場合はどうだろう。
そんな風に発情し始めた真乃の様子を見守りつつ、周囲を観察する。
めぐるは運転手とラジオの内容について語っている。灯織はその様子を片手間に聞きながら、手元でスマートフォンを開いて明日の天気を確認している。
つまりは、こちらに意識はない。
決まるや否や。
「……! ……ん、ふぅっ」
慌てて真乃が自らの口をふさぐ。
自身が右手を真乃の腿に入れ込んだからだ。
此方を見上げた真乃と、しばらく目線を合わせる。真乃の瞳は
そしてそのまま、目を閉じて頷いた。
受け入れるように両足をぱかりと開く。
タイツはある。しかし下着は穿いていない。現場から帰る時などは、全て着用しないよう伝えているからだ。
そこへ直接、手を入れる。
柔い感触。
むわっと解放された湿気は、雨によるものだけではない。
擦る。摘まむ。タイツ越しに沈めて、上下に揺する。
「……ん、ふっ、くふっ……んあっ!」
雨音が大きい。ラジオの音も大きい。エンジン音は言わずもがな。
直前に居る灯織の反応を
ぼつぼつ、ざあざあ、ばしゃばしゃ。車の中に満ちた音に紛れるように、真乃も
「……ほっ、ほっ……ほぁっ……ほっ、ぁっ……」
唇を
子どもが汽車の真似をしているようで
指がより深く入れ込めるようになった。十分だろう。
タイツの内側に腹側から腕を突っ込む。バッグから取り出した、小型のディルドごと。
「ん、ほっ」
タイツの上から確認していた膣口からずるりと入れ込む。
そして、自身は手を離した。真乃から震えた視線が寄こされる。
「……あ、ふぁっ。……その」
自分でしろと。仲間がいるバスの中で、ただ雨が降っただけで発情したご身分で。
浅ましく自慰をして見せろ、と。
「……あ」
困ったような笑み。
困ったような笑み……が、崩れて。
崩れて、よれて、再び、滑稽な表情になって、笑う。
「あ、はっ……」
頬はひくついて。涙目で。
その右手は、股間のディルドへと迷いなく伸びる。
股間の上は、自らの鞄で隠したようだ。
「……んっ……はっ……っ、んっ、んっ……!」
うつむき加減に、タイツの上からディルドを動かす。
水音が増して、耳に心地よい。
車が走る ―― ドン。
「ん゛んっ!?」
車が段差のある場所で跳ねたようだ。
ディルドで子宮の口を叩いてしまったらしく、真乃が俯く。
流石に気づいた。八宮めぐる。
「どうしたの真乃? 酔っちゃった?」
灯織も「そうなの?」と振り返る。
真乃は涎が垂れていた口元を袖で拭うと。
「だいじょうぶ、です。ちょっと跳ねた拍子に肘をうっちゃって……」
「ああ、痺れるよね……それは」
「怪我、なさそ?」
「はい。だいじょうぶです」
どうやら誤魔化せたようだ。ふたりが再び前を向く。
バックミラー越しに、運転手とも視線が合う。すいません ―― 大丈夫です、と目線で会話をし、頷く。
……同時に、あのミラーの角度では足元は確実に見えていないことも確認できた。
続けるよう促そうと横を見る。
……が、既に再開されていた。
「……ふぅっ、んっ、んぉっ、おっほっ」
真乃は待ちきれない、という様子でディルドを性器で貪る。
多少慣れ過ぎたか。刺激を与えてやる。
腰を上げたタイミングで、ディルドを掴んで座席に固定した。
「……あ、ふ」
戸惑う視線は僅か、すぐに腹側へと向けられる。
タイツの中で直立したディルドに、真乃は膣口を慎重に合わせ、擦り付ける。
つまりは。自分の手で動かすのではなく ―― 腰を振れ、ということだ。
前の座席の手すりを掴んで。腰を持ち上げ。
……降ろす。
「ん、お゛っ」
豚声が出た。灯織は振り向かず、視線は手元。めぐるは未だ会話の最中。
続ける。バスの中で。友人、仲間の後ろで。
櫻木真乃はただの動物まがいに、性欲を貪る。
「ほっ、ほ、ぉっ。ん、ほっ、ほぉぉわぁ……」
腰は動く。愛液がタイツをひたひたに浸す。
鳴き声は既に動物のそれだ。真乃という動物の。
それでもバスは滞りなく走り続ける。
まずは、順番通りに風野灯織がバスを降り。
「ありがとうございました。……またね」
次に、八宮めぐるがバスを降り。
「じゃあねーっ!」
そのどちらをも、ディルドを膣内に入れたまま、櫻木真乃は手を振って見送った。
友人への挨拶よりも、自慰を優先した。
仲間への礼儀よりも、快楽を優先した。
あの櫻木真乃が、だ。
「ほっ……ほっ……ほっ……ほっ」
たんたんと膣をディルドに。尻を自身の腕と座席に。リズミカルに打ち付ける真乃。
視線は既にこの世にない……かのように、遠くを見ている。光の消えた瞳だ。
自身は運転手に声をかける。隣の真乃は意に介さず、腰を止めない。
運転手がどうしました、と返すので。雨が酷いので真乃もより近い事務所で降ろし、俺が後に車で送迎する旨を伝える。
手間はかかるが、運転手の負担は減る提案だった。運転手はしばし悩んだのち、プロデューサーさんがそういうならと承諾してくれた。
事務所に着く。水分を含んでひたひたになったタイツのまま。ディルドを咥えこんだまま。櫻木真乃の腰を掴んで立たせ、その背を押してバスを降りる。
バスの運転手に手を振り、遠ざかる。
雨に濡れ切るその前に ―― 事務所のガレージへ。
「……ふぅ、はぁ、ふぅ……ふぅ」
すっかり瞳孔の開いた様子の真乃を連れて、最近購入した自身の車の中へ連れ込む。
助手席に真乃を座らせる。エンジンを点ける。スマートフォンで、雨が強いので自身も直帰する旨を事務所へ伝える。事務員から了解しましたとの返事が来ると同時。プライベート用の方に、ドラム式洗濯機に全裸で上半身を突っ込み、『淫乱』と書かれた尻が丸出しの写真が送られてきた。
ありがたく受け取って、ズボンを脱ぐ。チャックを開ける必要もない。下着も脱いで、後部座席に放る。
シートベルトはしたが ―― すっかり目が男性器にくぎ付けにされた真乃。
掌を眼前に抱える。ステイ。
「ふっ、ふっ、ふっ……ほわっ」
掌をどけると同時。待ちきれないとばかりに、男性器を口いっぱいに頬張った。
オートマなのでギアはない。車を発進させる。
さっきよりも小さな車だからこそいっぱいに響く、雨の音。
真乃がオーラルセックスをしながら、ディルドを自ら抽挿する音。
たまに運転の邪魔になるので、尻を叩く音。
叩かれて絶頂する
しばらく走って郊外まで抜けて。
誰もいない公衆トイレの駐車場に車をつける。
ドアを開けて、真乃にだけ雨を浴びさせる位置で。
「―― あああ゛っ! お゛っ! お゛ッ! ほぉぉぉぉオオオ゛っ! あぁぁああっっ!」
本番をした。腰を突いた。何度も何度も射精をした。
それらは、いつしか大粒の雨にうたれ。愛液も尿も一緒くたに、流されてゆく。
……。
……。
開け放たれていた車のスピーカーから、ラジオの天気予報が
近くの週末。何号目かの台風が、日本列島を縦断するらしい……と。
櫻木真乃④ → 櫻木真乃⑤
・・・
この人と恋人になることが出来れば、幸せだろうなぁ……と。
私はそんな風にぼんやりと考えていました。
プロデューサーとアイドルながらに。
夢想、と呼べるものだったでしょう。
それがこらえきれなくなったのは、やはりあの人を「支えたい」と強く願うようになってから。
あの人が、弱く見えるようになってからのことでした。
―― 私の初陣。W.I.N.G.は、予選すら突破できませんでした。
めぐるちゃんが準決勝敗退。灯織ちゃんが、決勝戦敗退。
それからしばらくも、結果は決勝戦どまり。
283のアイドルが初めて優勝したのは、しばらく後。
志願して他のユニットよりも早期に挑戦した、ふゆちゃんでのことでした。
私は背中を押される側でした。
前を見て、翼を広げて、空を見て、歌を届ける。
いつか公園で繰り広げていたそれらを、もっと遠くまで。
そうやって届けられるようになるのが、アイドルというお仕事でした。
私自身はその後も、ずっと、プロデュサーさんと二人三脚で。
イルミネのふたりも加われば、4人5脚で。そうやって、進んできたつもりです。
だからこそ段々と……少しずつ。活動実績を積み重ねられたおかげで、今では事務所の看板……いえ。プロデューサーさんがそう言ったので自信をもって。看板ユニットとして、283プロダクションに在籍出来ているのですから。
だから。今はプロデューサーさんを支えたいと思って。
それは、公私共に、という私の願望欲望も入り混じっていて。
断られると思っていました。
けれどそれは、私としては「許容できる範囲」で……受け入れられました。
夢のようで。夢ではなくて。
これからもこの人の隣に居られる……というよりも。
告白だなんてことをしてしまった、溢れてしまった私を……拒絶されなかったことこそが嬉しくて。
そう思っていたのも束の間。
いつの間にか私は、性の味を覚えてしまっていたのです。
これはきっと、プロデューサーさんと一緒だからこそ。
何もわからない中をふたりで進んでいた時と一緒で。
手探りで、驚く事ばかりで。―― でも、嬉しい事もあって。
だからこそ。プロデューサーさんから
私はきっと、何にでもなれるのだと。そう思うのです。
それが、凡人であっても。
それが、翼をもつアイドルであっても。
それが、七色以上の色彩に輝く宝石であっても。
それが、歌や踊りや輝きで夢を届ける
それが。
それが、翼なんて捨てて地面に
それが、かつて歌を聞いてくれていた鳩に陰核をつつかれ、最高の絶頂をする動物であっても。
それが、友人仲間。公の場。一度発情すれば、所構わず性を貪る獣であっても。
きっと。私は。プロデューサーさんの示すままに、染まることが出来る。
染まりたいと、自分自ら、願うのです。