※この作品はR-18です。

プロデューサーは人でなし   作:どろまみれ

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幽谷霧子②:(アイドル)

 

 

 幽谷霧子②

 

 

 

 

 早速ではあるが、行動は早いほうが良い。

 選出された各個人のレッスンは『 Meteor//Swarm 』に向けられたものへとシフトしてゆく。

 

 本人の希望もあり、幽谷霧子はアンティーカでの学園祭ライブを含めた歌唱・ダンスのレッスンを重点的に行う。

 恐らくだが。今フェスにおいては流行がどうこうというものはない。競われるのは単純で率直なアピール力だ。

 

 ではアピール力とは何か。

 誰かに。民衆に。審査員に。強く訴えかける、創造力のこと。

 (ある)いは総合力と言い換えても良いだろう。

 

 アイドルにおいては単純な個性とニアリーイコール。

 (みが)かれた歌唱力、整容力、笑顔力、バラエティ力、ダンス力ともニアリーイコール。

 専門的にも、広くも、深くも訴えかける魅力を放つこと。

 そういうのを、アピール力として考えている。

 

 283の事務所で芹沢あさひが強いのはここだ。

 よく言えば突出した個性。悪く言えば物珍しさ。

 そういうのは民衆の中で際立って、よくよく目立つ。

 

 今回選出したメンバーは、そういう意味でどちらも強い。

 ……いや。どちらにも対抗しなくてはならない、と言うべきか。

 765プロダクションはオーソドックスかつ個性的な。

 346プロは個性的かつ地力も高い。

 961プロは全てが。

 それぞれ持ち味・実力を備えているからこそ。アイドルランクは高まるのだから。

 

 そう言う意味で、幽谷霧子は個性とダンス、歌唱力と曲を合わせて行く方針だ。

 レッスンもそう言う形に(かたよ)らせている。そのための衣装化粧(ヴィジュアル)も、怠りはしないけれども。

 

 もちろんユニット単位でのレッスンも行うが……個人的なものが多くなるだろう。

 ちなみに、選出されなかった他メンバーからは、むしろ期待の声が寄せられていたりする。

 野球でオールスターを見る感覚というか。アベンジャーズというか。そういう風なロマン的な何かを感じる……とは、三峰結華の言。

 

 まぁ言わんとするところは、判る。

 「見ていて楽しいもの」は、俺達参加側からしても期待を感じるものだ。

 観ている側からしてみれば、言わずもがな。

 

 そのために行う業務の量は増えたけれども。目指す場所を提示できた分、やりがいはある。

 搾取はされていない。と、思う。七草はづきさんに付き合って貰う時間はやや増えた気がするが。

 

 総合演出は765のセンパイと、俺で行うことになっている。

 961側の演出にも口を出せるのはセンパイくらいのものなので、俺としては気楽なつもりでいる……し。

 そもそも1人で指示を出すわけでもない。各分野から出して貰った意見から良い感じに(すく)って集めて寄り立てる、というイメージでやり繰り。

 

 昨日は家に帰れず、別宅のベッドに直に飛び込んだ。

 シャワーは朝に浴びた。シャツと下着は仮眠室に幾つか置かせて貰った。

 実績がこれだけある他部署、他グラウンドのアイドル達が一挙に集うのだから。夢を見ない方が失礼というもの。

 

 ……いつしか夢を見ていた。

 

 飛び立っていった鳥が、旅の中途で羽を折り、赤い血を吹き出しながら、それでも翼をはためかせ。

 呪うような顔で落ちてゆく夢だった。

 

 自分のせいで羽を折り。

 それでも鳥は、呪う。

 心境としては理解出来てしまうから。

 俺は、支えたいと願ってしまうから。

 

 手のひらを突かれながらも、暴れられながらも鳥を手のひらの上に乗せて。

 上を見上げる。

 さて。何処を目指したのだったか ―― そこは。飛ばねば届かぬ場所か。

 上を見上げる。

 見上げて。(まぶ)しさに。(くら)んで。

 

 ……目を、覚ました。

 

 見上げた天井は、暗かった。

 どうやらソファで仮眠を取った後、予定を超過して眠ってしまっていたようだ。

 暗いままの室内と。身体の上の重み。

 

 誰かがタオルケットでも掛けてくれたのだろうか。

 ……いや。それよりも重くて、生暖かい。

 

 首をもたげて胸元を見ると。

 

「……すう」

 

 全裸の。

 幽谷霧子が。

 

 タオルケットの内側で、俺に覆い被さるようにして眠っていた。

 絆創膏はお腹。包帯は腕にふた巻き。いやに白い肌も、暗さに映える(かす)かな髪質も、寝息も。

 確かに幽谷霧子のものだ。見間違いでは、ない。

 

 同時に。

 薄く上下する胸も。胸の先で腫脹する桜色の乳首も。

 薄い陰毛も、なだらかな尻も……全てが見えてしまっている。

 

 どうしたことだろう。どうするべきか。

 起きて戸惑ったままで居ると、もぞり。

 

「……あ。……おはようございます……こんばんは?」

 

 こちらも挨拶を返す。ふたつとも。

 

「……ふ……わ」

 

 動じていない。うつ伏せに、自身の上で、あくび。

 

「……ふふ。あの……暖かい……ですか?」

 

 暖かいには暖かい。

 秋口に差し掛かった頃合い。暖房は薄くつけているとはいえ、喉にダメージが出ないよう最低限だ。

 タオルケットだけでは足りなくなる……かも、知れない。布団も出しておくべきだろうか、と思う。

 

「ですね……。……だから……わたし、霧子おふとん……です」

 

 そう言いながらずり上がり。

 身体全部をなすりつけるように。

 膝を脚の間に入れ。

 胸を鎖骨に当て。

 上からしなだれかかるように、首に手を回される。

 

「……どう……でしょう? ……その」

 

 大胆な行動だ。

 しかし、まだ俺が一線を守ることができる程度ではある。

 幽谷霧子に向けて。裸は寒くないか、と問いかける。

 

「……はい。……くっついていれば……暖かくて。……暗いのも……明るいです」

 

 動かない。そうか、とだけ返して起き上がろうと……すると。

 とすり。顔の横に腕を2本。目前に隆起した乳首と、整った顔。押さえつけられてしまった。

 

「……あの」

 

 困った顔だ。可愛げのある、顔だ。

 相手方が願望を口にしないのであれば。俺の行動は決まっている。

 ……幽谷霧子にそれが出来るか否か。して欲しいかと言われれば……判らないが。

 

「……その」

 

 二度目の逡巡(しゅんじゅん)

 待つ。待つ。デジタル時計の気配と、窓が冷える音と、鈴虫……さんの声。

 そういう周りに満ちたものたちに負けないように。

 声を張って、幽谷霧子は伝える。

 

「……わたしを……プロデューサーさんの……。……おふとんに……。して……もらいたくて……。あと……してもらってから……」

 

 言葉が続く。

 お布団にして……までは、理解出来るというか、現状況というか。

 求めるところは何なのか。待つ。

 

「……して、使ってもらって、使ってもらって。……愛されて……どこまでも……使い古されて……」

 

 彼女の瞳に(よど)みはない。

 迷いもなく、喜び。

 

「使い古されて……ぼろぼろに、なって……。それでも……。プロデューサーさんは……古着屋さんみたいに、仕立て直して、使ってくれる。……そう……思うので」

 

 真っ直ぐに、真っ暗に、夜闇と一緒に、俺の中に入り込んでくるように。

 かくあれ(・・・・)と許しを願う、乞食(こじき)のような卑屈(ひくつ)さで。

 

「わたし、プロデューサーさんの……ううん。プロデューサーさんの、家の……雑巾(ぞうきん)さんに……なりたいん……です……」

 

 ……中々に想像がし難い。 

 幽谷霧子の独白が、願いが、告白が続く。

 

「ハンドタオル……汗ふきの……雑巾。……ずっと、鞄の中で……一緒に、居られると思うから……」

 

 自らを卑下(ひげ)し。

 襤褸切(ぼろき)れになりたいと。

 

 自身の中の、琴線(きんせん)に触れてくる言葉だった。

 汚したいという願望に、直接的に、幽谷霧子が乗り込んでくる感覚がある。

 土足ですらない。足は着いていない。浮いているような、ふわふわに。

 

みんな(・・・)から……教えて……もらったんです……。プロデューサーさんには……こういうわたしなら……愛してもらえる、って」

 

 ずい、と突き出される身体。

 抗う術は、自身にはない。

 

「やっと……反応して……くれました」

 

 股間をさすられる感触。

 既に張り詰めていて、苦しいほど。

 

「まずは……ものにして……もらって……」

 

 男性器を外へ出される。

 事務所の中は静まりかえり。幽谷霧子が自ら陰唇をかき回して濡らす音がいやに響く。

 

「それから……ずっと……使って……もらって……」

 

 膣口に当てられる。

 最後に、幽谷霧子が微笑む。

 

「ずっと……一緒に……ずっと……最後(・・)の、最期(・・)まで」

 

 抗う筈はない。理由もない。

 まっさらなこの白地の布を、汚して良いというのだから。

 逆らわず求め。沈んだ。

 






 next:幽谷霧子③


 ・・・


 その人の……足元には。薄暗さを、感じていました。
 わたしを……褒めてくれた人。アイドルに……してくれた人。
 そして……皆の翼を見てくれる(・・・・・)人……です。

 だからという訳では……ないのですけれども。
 すわっと落ちてしまいそうな……その暗い穴を。……塞いでしまえば良いのかな……なんて。
 そういうことを、考えていました。

 どう塞げば……良いんだろう……。そうやって……ひとりで……考えているうちに。
 ……他の人が……多くの人が……身体を張って、支えて。
 ……その人を、引っ張り上げてくれていました。

 けれども。
 めでたし、めでたし……とは。……なりません。

 その人は……影を腕に抱えたままで……。
 影そのものに……翼を見出そうと……頑張っていて。

 どうしようかな……と。
 その人を、その人を……と。
 考えているうちに……いつの間にか、手は伸びて。
 そして、自慰を繰り返す……。
 そんな毎日が……始まっていました。

 枕に顔を埋めて……。
 乳首をくりくりして……。
 尖ってきたらクリトリスを弄って……。
 最後まで……いけたら……少しだけ。悩みも晴れた気分に……なれたから。

 そうしていたら……嬉しい事に……その人の方から。……わたしを、頼りにしてくれました。
 お仕事……だったけれども……。お仕事だからこそ……張り切って……。

 ……。
 ……。

 そのまま……近づいてしまえ、って。
 後ろにいた、わたしが……言います。

 どんなに大変でも……アイドルでいれば。
 この人は一緒に……居てくれる、って。
 後ろにいた、わたしが……言います。

 あれは……こころ、人ならず……な、ものだって。
 事務所で……見ていた……ものたちが言います。

 だから……。うん……。
 答えはきっと……簡単で……。

 わたしも……人じゃなければ……じゃあ、一緒にいられるね、って。

 笑われちゃった……けれども。
 心配された……けれども。

 わたしは……わたしを支えてくれた人を……支えたいから。
 だから……ちょっとだけ……勉強して。
 こういうので……近づいてしまおうかなって……。

 ……そんな。
 ずるいことを……考えたのでした。

 そして……あわよくば。
 深く……深く……沈んで……。
 溶けて……混ざって……しまえれば……。

 ……。
 ……。

 いいなぁ。
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