プロデューサーは人でなし 作:どろまみれ
system:
競技会①~③は成人向けシーンなし。
代わりに一斉投稿なので、ご了承の上でお読みください。
その後はいつものに戻る予定となっています。
競技会①:星が輝くはなし
空は澄んで高く、秋も深くなり始めたころ。
『
全ての事務所どころか大小の垣根すらなく ―― だがアイドルの頂点に立てるのはただひとり。
審査方法を均一化して行われる初の試み。アイドル達による
それもそのはず。今回はこれまで区分けにより分断されていたオーディション内容が統一され、全領域で「アイドルとしての力量」を問うことになる。
つまりは「アイドルの全国1位を決める大会」に最も近いとされているのが、今競技会なのである。
何を持ってトップとするか。それはまた、色々と物議をかもしそうなのだが。
少なくともこの競技会で1位を取得したという結果には意義がある。
オーディションでもなく、ティアも存在しないが、誰しもがそこに夢を見る。憧れる。
そういう大会であろうとする心意気をこそ、受け取りたいと俺は思う。
宣伝も大々的に成された。ありがたくも、俺が属する283プロダクションはその一角を担っている。
駅中に張られたポスターの右側にふたり。
それぞれ宣材写真ポーズで並べられているのは、芹沢あさひと市川雛菜。
これは俺たち事務所が決めたものではなく。運営側が単純に各区分のグレード順で選定したものだ。
だから……そのポスターの隣には。
765プロダクションから天海春香、如月千早、星井美希。
346プロダクションから渋谷凛、島村卯月、高垣楓、橘ありす、等々。
961プロダクションから、(黒井)詩花。
凄まじい面子が並んでいたりする。この競技会に期待してしまうのも無理からぬことだろう。
市井の人々の気持ちも、同ファンとしてよく理解できる。
ワクワクさせられてしまって悔しいので、煽るのが上手いと言い換えておくことにするが。
もちろんポスターに並んでいない人員も数多く。それこそ等級上位の星の数ほどには参加がされている。
零細事務所から中堅事務所、果ては大手の事務所まで。この競技会で勝ち上がること
346プロのお家芸。とはいえあそこも、所属人数が業界一だとはいえ敷居は並以上に高い。灰は被れど、姫となるには、
当の『 Meteor//Sworm 』は週末の2日間を2週間。合計4日を通して催される。
1週目は予選。2週目は本選。本選は全登壇で配信も成され、後日特集も組まれる予定。
倍率から考えれば、2週目に残った時点で注目度としては十分とも言えるだろう。
……などと考えてしまうのは、裏方故の業なのだろうが。
少なくとも我が283プロダクションから参加したアイドルらは、この競技会に焦点を合わせて調整をしてきた。
悔いのないように。力を出し切れるように。輝くことが出来るように。
そうと願うばかりである。
……。
会場へと向かう道中、
765でプロデューサーを務める、公私共に関わりのある先輩と。
346でプロデューサーを務める、何度も仕事で協働したことのある先輩だ。
どうやらふたりとも、現場での演出確認を早めに終えて一息入れに来たらしい。
ステージに登ってしまえば、俺たち裏方は祈ることしか出来ない。
目を離す猶予はなく席を立つ隙はなく息をつく暇もない。ここで休憩を挟んでおくのは丁度が良い。
なので俺自身も、缶コーヒーを買って隣に並ぶ。
会場を行き交う人を見やりながら、各々所属のアイドル達に想いを馳せる。
想いを馳せるなどと表現するとロマンス増しましになってしまうが。
『 Meteor//Sworm 』とかいう名を冠しているのだから、星に願いを呟く程度は許して欲しい。
765の先輩からは現トップティア競技会の制覇者である天海春香の展望と、星井美希の扱い方。
……それと(交際相手である)黒井詩花の調整が上手くいっているらしいこと。もひとつ惚気。
961プロの先達にして、海外で圧倒的な結果を残している玲音に比べられるような国内成績を誇っている。
当の彼女は、あまり海外に興味はないようだが。海外から来た側であるので仕方がない。
346の先輩からは高垣楓の完成度の高さと、ミステリアスさのギャップ。島村卯月らが持つアイドルとしての根幹的な魅力。
ついでにコネで強制参加させたとある新人アイドルの話。346お得意の驚かし、
フェスの盛り上げ方がうまい。あるいはバラエティシーンにも強い、346だからこそ出来る空気感であるとも言えよう。
そういうことを語られたので。こちらも所属するアイドル達の魅力を
実績は流石に2社には及ばないが。283プロだとて、各々アイドル達の所属するグレードは遜色ない位置。
だからこそ今回の場で、どのように評価されるのかには興味がある。評価基準は上役クラスの間で取り決められており、事前には明かされていない。
それでも誰かを虜にしてくれると。必ずや魅力を発揮してくれると。
……何より自身が惹かれているのだ。誰より近くで見てもいる。疑う余地は、始めからない。
語り終えて。
先輩方には呆れられてしまった、ような気がする。
いずれにせよ競技会で結論は出る。その結論を楽しみに……というのは少々
あくまで地面に立ち上を見上げ、今回の流星群を観測する側として。
一世一代。夜空を彩る輝きたちを目に焼き付けておきたいと、そう思う。
最後に互いの健闘を祈って、軽い煽りをかまして。
頑張るのは俺達じゃあないけどな、と自虐もかまして。
先輩方と別れたのだった。
そしていよいよ、競技会の幕が開ける。
――
――――
舞台が大きい。
中心にぽつりとひとり。扱いに慣れないアイドルは、広さの生かし方に困っているようだ。
音響が豪華だ。
リズムを取るのは容易だが観客も多い。音階がずれないよう注意を払って。
照明は最低限。
演出は要所を踏まえつつ控えめ。審査員の顔もよく見える。緊張がこちらにも伝わってくるようだ。
そんな浮遊感と閉塞感と、ずっと遠くまでひとりきりの闇の中で。
笑顔をみせて、歌って踊れるアイドルだけが、光を放つことが出来る。
……。
……。
大舞台における活動経験が少ないアイドルの多くは、この環境では地力を発揮出来ないだろう。
第一段階のふるいと言った所か。
キュートだとかパッションだとかクールだとか。
ボーカルもダンスもヴィジュアルも、個性も性格もメンタルも。
どれがという垣根はなく。軒並み数値化されて加点となる。
減点を恐れるよりも。
加点を重ねて昇るほうが、より高くへと近づくことが出来るだろう。
……。
……。
標準的な歌と踊り。課題曲のようなものはなく、フリースタイル。
それだけに最も慣れたものが選ばれる。持ち歌や事務所を代表する曲だ。
あえて過去のアイドルや、審査員の年代に合わせた曲を選んでくる者もいる。
アピールとしては悪くないが、先達の
こちらとしては順当にグループ内から曲を選んでゆけばいい。
事務所としての下地が少しでもアイドル達の助力となるのならば、これ以上の嬉しさはない。
……。
……。
順当に勝ち進む者。
前評判を覆して勝利を掴む者。
惜しくも力を発揮できず敗退した者。
そういう競技会特有の雰囲気が、俺は嫌いではなかった。
他人事だからとか。裏方だからとか。やんやと騒がれる諸々とは関係がない。
アイドルをプロデュースすることを
彼ら彼女らの輝きの発露を見られることは、俺にとってこれ以上ない喜びで。
暗くても。自ら。光る。
恒星にはなることは不可能。既にこの星系に存在し、名を日高舞と言う。
だから、流星であっても。彗星であっても。
その身を削って、燃えて、一瞬の軌跡を描いて。
見上げた人の脳裏にだけ、輝きを焼き付けるのだ。
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