※この作品はR-18です。

プロデューサーは人でなし   作:どろまみれ

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七草にちか④:(アイドル)→(???)

 

 七草にちか④

 

 

「どうもです、黛さん」

 

「おはようございます、にちかさん。……貴女、凄い顔してますよ?」

 

「いいんです。やる気出た証拠なんで」

 

「……やる気、ですか」

 

「はい。めっちゃやる気です」

 

「具体的には?」

 

「わっかんないです!」

 

「……」

 

「でも!」

 

「……?」

 

「めっちゃ、やる気は出たんで!」

 

「はぁ。そうですか」

 

「あの! あのですね、冬優子さん(・・・・・)!」

 

「うん……? はぁ、なんでしょう」

 

「―― だって家族の方が、他の(・・)とかよりもずっと縁切れなくて長く一緒に居られるんで、良くないですか?」

 

「……。……話が飛躍し過ぎていて、意味不明です。でも」

 

「でも?」

 

「付け足しておく。凄いイイ顔するじゃない、七草にちか(・・・・・)

 

「ありがとうございまーす! 冬優子さんも、鏡とか見てみたら良いと思いますけどーっ!」

 

「はいはい。どうせ今日は私も貴女も緋田美琴も、午前はレッスンなんだから。顔だけで無く全身見ることになるわよ」

 

 

 

 

 ――

 ――

 

 

 帰国した次の日。

 朝1番で社長室。海外遠征を無事に終え帰国したことを、天井社長へと報告した。

 

 かなりの強攻策ではあったが。

 プロモーションとして、成功と言って良いだろう。そう言われた。

 

 国内のプロダクションとしては……単純に3番目の進出でありながら、話題は得た。

 受け取られ方はマルチタレントとしての側面が大きいが、見出しは確かにアイドルである。

 緋田美琴という翼で切り拓いた前線は確かに舗装された。それだけでも大きな収穫と言えるだろう。

 

 おかげでか3月の渡航についても無事、最終の承諾を得た。

 次は欧州。そちらに合わせた伝手と準備を並べ、確認しておくことにしたいと思う。

 

 では、と考えて。

 帰国してからの懸念であった課題の消化に取り掛かろうとしたところ。

 

「―― あ、プロデューサーさん~。お待ちしていました~」

 

 書類束を抱え事務仕事中の七草はづきが、扉の外で待ち構えていた。

 国外にいる間は彼女にプロデュース業……というか。セルフプロデュース周りを任せていたりしたので、まずはお礼から話すことにする。

 

「いえいえ~。お役に立てているなら、それ以上に嬉しいことはないですから~」

 

 朗らかに笑われてしまった。

 はづきさんはこの書類は処理済みで倉庫に持っていくだけなので~、と前置いて。

 

「これはただのお誘いなんですけども~。今日の晩ご飯、七草家でご一緒いかがでしょうか~?」

 

 唐突である。

 お誘いそれ自体は嬉しいことに違いはない。が、七草はづきの家には七草にちかが同居している。

 唐突である……そして、気遣いを感じる。帰国後のコミュニケーションを図る場を設けてくれたのだろう。

 ただし聞いておくこともある。俺自身、七草にちかとの関係性は「プライベートを同道するようなものではない」と思っている。同じ食卓を囲むことに、妹からはOKが出ているのかと。

 

「勿論です~。ただし~、プロデューサーさんに車を出してもらって買い出しに……っていう体で、にちかを説得しましたので~」

 

 なるほど。

 荷物持ちの代わりならば喜んで。

 

「そう言ってくれるとありがたいです~。じゃあ、お願いしますね~」

 

 書類を抱えたままの七草はづきは器用に手を振りながら倉庫へ向かってゆく。

 こちらは海外に向けた仕事に注力できている。仕事は定時で十分終わらせられるだろう。

 ただし、帰ってきたからには各アイドル達とも可能な限りは顔を合わせておくつもりである。帰国したこと。そして本日は夕方までずっと事務所に居る旨を、公用のチェインで連絡しておく。

 

 すると。

 

「―― はいこれ。アンタが海外行ってる間に来てた雑誌の献本と、新しくなったスケジュールの写し。ストレイライトのはこっちで、七草にちかのはこっちね。1番上はふゆのヤツだから、目を通しておいて」

 

「―― ほわっ……おかえりなさい、プロデューサーさん」

 

「―― ぷ、プロデューサーさんっ! 雛菜ちゃん、が、頑張ってました……もちろん……ぴぇっ」

 

「―― やは~。小糸ちゃんもね~! 番組オーディション、だいじょぶだった~!」

 

「―― プロデューサーさんっ、お帰りなさいですっ! 今日は学校の大掃除だったので、スッゴく早く来れちゃいましたっ!!」

 

「―― おかえり……なさい。プロデューサーさん。おかげで、テスト……ふふ。お墨付き、もらえました……」

 

「―― プロデューサーっ! 海外、どがんやったと? 美味かもんば食べられたんは、美琴から聞いたばい~!」

 

「―― にへへ。プロデューサーさんだ。んしょ……1ヶ月ぶり(ひさしぶり)

 

「―― あっ、こら甜花ちゃん。いきなり足の間に寝転ぶのは……。……あ、甘奈も、いい……?」

 

 アイドルらが次から次へ。

 直接来る必要はない学生らまで、事務所に顔を出してくれていた。

 ピックアップしたわけでは無いというのに、身体関係がある彼女らばかりが訪れてくれたのは如何(いかん)ともし難いが。

 

 ともかく。

 多少なりとも顔を合わせて。帰国を報告したりこちらにいる間の予定とすり合わせたり。

 そうしている内に、仕事を終わらせることも出来ていた。

 

 夕方。

 感覚的に久し振りだが、しっかりと身体の方が覚えている事務所の戸締まり手順を終えて。

 外周りから直帰するというはづきさんからの連絡が来ているのを確認して。

 

 扉を閉め。階段を降り。

 守衛さんに挨拶をしながらビルを出て、回り込む。

 駐車場。自家用車の前。

 

「―― あー、やっと来た~」

 

 七草にちかが、扉の前でしゃがみながら待っていた。

 こちらが来たことを視認すると立ち上がり、スマートフォンをしまう。

 寒さはピークの2月の空気の中。髪色に合わせた厚着、暖色のマフラー。

 その裾を引っ張って口元に寄せながら。

 

「買い出し、手伝ってくれるんですよね? 早く行きましょうよー。私、お腹ぺっこぺこなんで。量買えるなら、しばらくはお鍋ですかね~」

 

 互いに助手席と運転席へ、乗り込んだ。

 駐車場を発つ。買い出し予定のスーパーは、団地側のよくよく利用する所。別段迷う道でも無いし、買い出しに時間はかからず終えられる。

 

「荷物、私が膝の上に持ちますんで。お姉ちゃんのお酒だけ後ろに置いときますね」

 

 どすり。積み込む。スーパーを後にする。

 帰路につく車たちと流れを同じく。既に日の沈んだ街中を分けて前へ。

 

 空は黒く。車内は暗く。街は明るく。

 七草にちかは頬杖をついたまま、窓の外を眺め……。

 

「……」

 

 ……眺め、て、いなかった。こちらを横目でじっと見てきている。

 重ねて言おう。俺と七草にちかの関係は、決して、車の中で楽しくお喋りをしながら……などというものではない。

 それは今でも同じで。空気は緩やかながらに、ぴんと張られたまま。

 ただ、普段の七草にちかの様子でないのも確かだった。どうしたものだろう。話題を探すべきだろうか。緋田美琴の海外における結果……は、直接彼女と顔を合わせて話してもらった方が良いだろうし。自身の海外渡航記に興味があるわけでも、ないだろう。

 

 目前、カンカンと鳴る踏切の警笛。ブレーキを緩く踏み込んで余裕を持って停車。

 車窓の隣の歩道の上で、母と父の間で両手を繋いで足をぶらぶらさせた子ども。家族も同様に立ち止まる。

 

「……プロデューサーさん、お姉ちゃんとは結婚とかするんですか」

 

 七草にちか。

 視線は俺と同じく、家族へと向けられたままだ。

 

 少し考えて。

 はづきさんとはそう言う関係ではないんだ、と話す。

 

「あぁ、そっかー。……じゃあ、櫻木さんとか」

 

 それもない。

 嘘は無い。彼女を筆頭とした恋人にという類いの告白は、全て断らせてもらっている。

 

「冬優子さんの専属になったりー、とか」

 

 ない。ないな。

 そういう形でプロデュースをするのは、今の283事務所が望むところ(・・・・・)ではない。

 俺自身も同じ想いを持っている。

 

「そー……、……ですかぁ」

 

 カンカン、カンカン。

 電車が通り過ぎ。ガコンと軋んで踏切があがる。

 両親の間で子どもが再び、ブランコのようにぶら下がった。

 

 一応聞いておく。

 自身と緋田美琴の海外渡航は、七草にちかを不安にさせただろうか。

 

「まぁ、少しは」

 

 申し訳ないと頭を下げる。

 顔をしっかり上げてからギアを入れ、アクセルを踏んだ。

 家族を追い越してゆく。後方に離れて、あっと言う間に見えなくなった。

 

「……」 

 

 車内には再び無言が広がる。

 とはいえ七草姉妹が住まうアパートメントは遠くない。無言でいる間は保たれたまま、駐車場へと辿り着く。

 扉を開いて。

 

「そっちお願いしまーす」

 

 後部座席にあった箱を重ねて持ち上げ。移動。

 両手で抱えたまま、七草家の扉を潜る。

 

「……」

 

 特に挨拶も無い七草にちか、その後ろをついて行く。

 お邪魔しますと声に出し、玄関で靴を脱ぐ。

 

 ……やや、違和感。

 とはいえ漠然としたものなので、今は荷物を置くことを優先する。

 

 流石にアパート上階までダンボールを抱えたまま動くのは腕が辛かった。

 特に変哲の無いアパート・七草家。部屋の中を見回しながらキッチン側に狙いを定め。冷蔵庫横に同様の空ダンボールがあったので、その上に置いておくことにする。

 

 腰を上げる。

 リビング側へと振り返る。

 

 大窓を覆うカーテン。食卓。テレビ。

 姿が無い。どこだろう。

 踏み出す。

 

 と。

 

「―― お、大声っ……出さないで、くださいねーっ!」

 

 横から抱きつかれた衝撃。

 押し倒された。

 

 ぼすり。カーペットの上。

 打撲は無い。腰も頭も打たなかった。

 

 目前、全裸の七草にちか。

 

「はーっ……はー……っ!」

 

 息が荒い。目が三角。むしろ大声を出しているのはそちら。

 乳頭は期待を隠しきれず、童貞(さなが)らに、尖り勃ち散らかしている。

 

「んふっ」

 

 観察している隙に、首元に顔を突っ込まれてしまった。

 襟を噛んでいるようだ。口の端から涎をだらだらと流しているせいで、あっと言う間に汚れが染みついてゆく。

 

「すはーっ……はーっ……!」

 

 ……。

 この状況について。未だ七草にちかより説明がない。

 視線だけで周囲をみやる。本来であれば居るはずの七草はづきの姿が見当たらない。違和感をたどり……成る程。初めから玄関には靴が1足。七草にちかが脱いだ分しかなかったのだ。

 

 だとすれば。自身は見誤っていたのだろうか。

 目前全裸の女の肩を、押し退けるではなく、触れる程度に軽く(つか)む。

 

 びくり。

 顔が上げられ、熱の篭もった吐息が口にかかる。

 

「ほんっ……。……っの。……黙って襲ってくれたりとか、しないんですかー」

 

 しない。

 それは合意が必要な行為である。

 そもそも襲われているのはこちらの方だ。

 

「……」

 

 七草にちかの視線が逸らされ。こちらの肩、首、胸、腹、下腹部をくだって股間へ。

 露骨が過ぎるが……お生憎。女性の裸を唐突に見せられた程度で反応するような代物では無い。発散先も足りている(・・・・・)

 最も、ピーキーでアブノーマルなものにしか反応しないので扱いには困っているが。

 

「じゃあどうすればいいですか」

 

 まずは説明からだろう。

 何故こんなことに踏み切ったのか。

 

 ……思えば彼女は。七草にちかは。

 スカウトの時から思い切りは良かったな、と懐かしいことを思う。

 

 彼女の視線が股間から戻ってきて。

 今度こそ正面見合う。

 

 涙目。

 

「私……プロデューサーさんが私のためにって駆け回って、泥まみれになっているの、すっごく嫌で(・・・)優越感(・・・)あるんです」

 

 そうなのだろうか。

 だとしても自身が駆け回るのは、七草にちかだけのためというワケではない。

 

「知ってますー。……でも私、気付いたんで。めっちゃやる気(・・・)出てるんです。……だからもうひとつだけ。欲しいもの、あって。……もらえたら、もっと頑張れる……って。感じなんで」

 

 何に気付いたのか。

 ……欲しいものとは何か。

 …………頑張るものとは、何か。

 

「結局私、あのステージから、裸足のまんま落ちてくるなんてこと。なかった訳じゃないですか」

 

 頷く。

 

「もしも、の続きです。今から私、今度こそ、落ちるんで。受け止めてくれるんですよね」

 

 大きく頷いたので。

 大きく、頷き返された。

 

 息を吸い込む。

 今度こそ、逡巡(しゅんじゅん)躊躇(ためら)いも無く。

 

「私の膣内にちんちんください」

 

 率直過ぎた。

 状況が状況である。七草にちかが自身を襲おうとしていることだけは、予想はとっくに出来ている。

 過程が足りない。知りたいのはそこである。

 

「……あー、もー。ちょっとだけ詳しく言うとですねー」

 

 その代わりにと言わんばかりに、七草にちかは大股で自身の上に跨がって来る。

 のしり。股間に狙いを定めて腰を当てる。

 

「私、七草にちかは。プロデューサーさんが情けなかったりすると、もっとしっかりして欲しいなって思います。仕事だって判ってても、女の人(アイドル)と仲良くされるとむかつきます。プロデューサーさんが身を削ると、私自身も削れるカンジして苦しくなります。……別に恋人でもなんでもないし、そんな関係になるつもりはないのにですよ?」

 

 にちか自身も感覚を言語化出来ていないのだろう。説明ははっきりとしていながら、内容が曖昧(モノクローム)だ。

 ……ただ。それは何故か、俺自身も七草にちかに対して感じていたモノ。

 結局の所 ―― 俺は何故。あの最初のバックヤードを経て尚、この少女をスカウトしたのか。理由は自分でも明らかではない(・・・・・・・)ままなのだから。

 

 彼女は俺を独り占めすることに勝手な優越感を覚え、(いら)ついた。

 俺は曖昧なまま、七草にちかをスカウトするとだけ決めた。

 

 各々。結果だけがそこに、床の上でごろごろと音をたてながら転がっている。

 あるいは、転がり落ちている。

 

「ずーっと、わけわかんなくて。この間なんて美琴さんにまで、こんな感じになっちゃいましたし。……でもこれ、なんかすごいアイドルだって、性欲は変わんないんだそうで。だから、ムカつくものはムカつきます。どうしようもないです。だから」

 

 股間をぐりと押し込んだ。尻が太股の上で沈む。

 身体の上で三つ指ついて、胸元目掛けて土下座する。

 

「何でもしますんで、お願いします! このムカつきを発散するの、付き合ってください! ……じぶんで理由、判ってるんです。私ってお姉ちゃんと同じで、プロデューサーさんに発情してる変態なんで!」

 

 言い方が身も蓋もない。

 もっと言えば、わざと自分を卑下しているようにすら感じる。

 

「発情です。発情。自分となんの関係でもない人が、異性と仲良くしてるだけでムカついてるんですよ? 勝手にひとりで(サカ)ってるじゃあないですか。……とーにーかーくー。してないこと(・・・・・・)が無くなれば、多分満足できるんですよー!」

 

 当然だろうとばかりに、七草にちかは自分の性欲を定義する。

 ……話は極端だが。つまりはこういうことか。

 

 七草にちかは自身(おれ)に対して性欲を覚えている。

 身体的な関係があれば、彼女がもつ所属欲のような何かが満たされる。

 そのためだけに姉の力も借りてこの場を用意した、と。

 

「はい! お姉ちゃんの許可、もらってます。私とお姉ちゃんで七草家、プロデューサーさんのものですよ!」

 

 がんがん迫るセールストーク。

 言葉で叩くように、胸元に向けて。

 

「毎日泊まっても、お姉ちゃんがいれば全部言い訳できちゃいますよ。隠れ蓑ってやつです。今ならおまけで私が着いてきて、お得でもあるんでー」

 

 姉の許可をもらったということは。自身の持つ不調についても聞いてしまった、のだろう。

 はづきさんが伝えると判断したならば否やはない。

 俺自身も七草にちかへは、いつか。彼女に託してしまった全ての重荷について、贖罪しなければならないと思っていた。

 

 苦しみの一因となった彼女を。俺は自身が楽になるために、使用している。

 罪はどこまで行ってもつきまとう。俺自身が背負うべきなのだと、今でも思う。

 

 ただ。もしも。

 他に背負ってくれる人が居るとするならば。

 それは当人をおいて、他に無い。

 

 先を飛んでいた筈の翼が。

 わざわざ空から戻ってきてまで、自分を足に抱えようとしている。

 

 ……息を吐く。両手で顔を覆う。

 諦めのようなものが胸の中に広がってゆく。

 

 あんな空虚な空ではなく。もっとアイドルとして晴れ晴れと、笑って輝いて飛んでいて欲しい。

 そうと願っていた。が。それは自分の独りよがりだったろうか。

 

「……うわっ、うっざ……」

 

 全裸の七草にちかが、待ちきれず、自身の股間に女性器を擦り付けながら言う。

 いつまでも、どこまでも、全裸自慰中でも、彼女は彼女の調子のままだ。

 

「……は~。あ、フライトチケット、私にもくださいね。私と美琴さんとでプロデューサーさん抱えて、一緒に行けば良いんです、っう。……その分の勇気、こないだもらっちゃいました、あ、あっ。……そもっ……そも! どうせっ、行くの、おっ! ……私たちだけじゃあないんでっ……しょうし」

 

 じゃあついでに皆でお姉ちゃんと社長も抱えてきますか~……と。ため息交じりに言い放つ。

 

「鳥なんてっ、どうせ、くっさいですってば。ペンギンとか、あっ、見る分には……好きですけど。飼いたく、ないなぁって、思いぃっ……ます。遠くからっ、なら。きちんと綺麗で、可愛くて。それで十分な気がしてるんです……ほ、お」

 

 ため息かと思いきや嬌声だった。

 擦り付けている内に陰核が隆起しており、刺激によって反応してきた男性器に予想外に引っかかったようだった。

 

「休んでもっ……イイ! 重かった……ら! 途中ぅっ、でっ! いっかい、降ろせばいィんッ、です! う!?」

 

 歯茎を剥き出すほど食いしばり、目は白目を剥きかけた。酷い顔だ。

 ぷるぷると肩を振るわせ、股間からどっと液体を溢れさせつつも。

 動き続けていた腰をぴたりと止める。

 

「ぉ、っぅ。……それとも。きてくれないんですか。……プロデューサー、なんですよね。私の」

 

 こちらの股座を汚しながら殊勝に問う。

 

 彼女の望みは理解した。

 彼女の言い分も理解した。

 

 それでも、と。

 引いた間合い。

 

 ずいっと。

 

「―― こうなった私はもう、お兄ちゃん(・・・・・)にしか興奮、しないと思うんで。だって他に、もう、居ないんですもん」

 

 顔が顔を覆う。

 鼻先が鼻先に触れる。

 吐息が唇を撫でて。

 

 兄では。

 

「あーぁ、そうだぁ。従兄ですらない可能性、あったんだった……」

 

 兄ですら。

 

「じゃあ……ぜんぶ、膣内射精(なかだし)希望だー」

 

 そうと笑う七草にちかの顔に。

 いつかの子どもの頃に見た誰かの、懐かしい笑顔が重なった。

 

 否定の言葉は、喉につっかかるどうこう以前に産まれてこない。

 だとすれば。そうなのか。もぞり。自身に問うより早く、男性器が反応していた。

 

「さいっこーに、興奮するじゃないですか。アイドルとか、恋人とかなんかより、家族だったって。ずっと一緒にいても、お姉ちゃんと竿姉妹とかバカみたいで、赤ちゃんとかできちゃうかもって、ダメだからって興奮して、近しいのだーれも証明できないとか」

 

 支離滅裂になってゆく言語を吐き捨てながら、七草にちかは腰を浮かす。

 膨れ上がった自身の男性器を、それより熱い手のひらで包んで。陰唇に沿わせて。上下で言うと下。

 

「はーっ……はーっ……! 行きますよ? 行きますよ?? ……い゛……ア゛!!」

 

 挿入した。

 交合した。

 

 ……それから、鼻息荒く腰を振る七草にちかが早々に力尽き。

 上下を逆転し、その膣内を貪るようになるまで半日。どころか朝まで。

 七草家のアパートの中から、嬌声が途切れることは無かった。

 

 結論から言って七草にちかは、普通では有り得ない味がした。

 別段狭いわけでも無く、外的刺激に特徴が有るわけでも無く。

 肉が付いているわけでも無ければ、腰使いは下手。

 

 それでも心地良い。内側に来る味だ。

 比べるのは失礼だが、七草はづきともまた違う。

 

 癖がある。尖った。薄く膜を張り鼻をつくような臭気。例えではあるがそういう類いのモノ。

 それすらも一晩かけて味わってみれば、ただの酒の(さかな)。珍味扱いでしかない。

 

 ぎしり。

 

「……ほ、ぉ」

 

 大興奮大満足の様相で鼻水垂らし、愛液ダダ漏れの乳首隆起しっぱなし。

 そういう七草にちかをベッドの上に転がしながら、顔を見やる。

 

 ああ、と思い到る。

 喉から鼻を駆け上がってゆく不快な臭い。

 これは、血の味だ。

 喧嘩に悲観して自棄になっていた……父親との間に割って入り。

 はたかれて出した鼻血の香りを、今も鮮明に覚えている。

 





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