※この作品はR-18です。

プロデューサーは人でなし   作:どろまみれ

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七草はづき①:(事務員など)

 

 七草はづき①

 

 

 多忙な春も終盤に差し掛かる。

 各々(おのおの)新たな環境に慣れてきて、連休などもある時期だ。

 283プロダクションのアイドル達も、連休中はあちこち働き歩くことになる。

 

 先日の内に色々と予定を組んだおかげもあってか、アイドル達はユニット・個人それぞれで大忙し。

 営業も合わせ、誰1人としてイベントにあぶれることなく過ごしている。

 

 ああ……過ごしていることだろう。

 晴れやかな空を、室内。窓の内から眺めて思う。

 

 そう。

 現在事務所には俺ひとり。全員が出払っている状態だった。

 プロデューサーとしての業務は多々あるが、全員が各個動いている状況では、送迎は基本的には行わない。プロダクションの現場責任者として、事務所の中にいた方が便利(・・)だからだ。

 

 正直に言えば、仕事を取ってくる。営業を行う。そういう部分の事務的な部分には俺などの力も必要になっているだろうけれども……セルフプロデュースという点では、アイドル達にほとんどを任せても問題なくなっていた。

 

 俺が行うことと言えば、基本的にはトラブルバスターだ。年長者、保護者、責任者としての活動である。

 つまりは「なにかあった」と連絡が入った時に現場へ向かうのが好ましい。だからこその事務所待機なのである。

 

 ……ふぅと息を吐き、モニタから目を離す。

 そのままもうひとつ ―― 七草はづきさんのデスクに手を伸ばす。

 

 伝票の処理ではなく、まとめ。スケジュールやアポイントメントといったものは俺が引き取って自身のデスクに移す。

 レッスン所、経費別などの会計票……を入れるクリアファイルが古くなっていたので、テプラで新たに作り直す。

 各種クリップを補充し、社用ボールペンの新箱を倉庫から引っ張り出して、ついでにリングファイルのための保護円テープを追加。

 

 しばらく事務作業の方を行う。俺の側でも処理できる部分は多いからだ。こういうのは手が空いているなら、はづきさんにやってもらうまでもない。

 

 名刺を新たに印刷し。封筒の宛名書きの原本データに、先日新たに提携した会社の名前のものを新調して加える。社名を書き換えるだけだが、誤字がないかどうかだけには気を払わなければならない。

 

 そういう作業をしながら思う。事務員の彼女 ―― 七草はづきさんの事を。

 

 俺よりも幾つか年上。現シーズに属するアイドル、七草にちかの姉。

 朗らかで、穏やかで、優しげで。でも妹に対しては少しだけ辛辣な人だ。

 昨年の始めくらいまでは、ここの事務員とアルバイト等を掛け持ちしていたらしいが……事業が軌道に乗ったこともあり、社長が正社員として勧誘を開始。

 最終的にはアルバイト等を含めた全ての報酬を超える金額を基本給として提示し、専属として勝ち取ったという経緯があったりする。

 

 正式な同僚として彼女が居てくれることは、とても頼もしく思う。

 ただ、可愛らしいアイマスクなどをして仮眠を取っている姿などをあまり見れなくなったのは、少しばかり残念に……思えない事もない、だろうか。

 

 シャワー室や仮眠室を使う回数も減っている。

 基本的には撮影が長引いた後の整容のために使うくらい。だからこそ、この間の冬優子の醜態(・・)が見つからなかったとも言えるのだが。

 

 ……考えていると、どうしてもふつふつとこみ上げる性欲(もの)がある。

 

 理由は簡単だ。自身(おれ)のオナホ1号はアイドルであり。仕事を投げ出すような女性ではないからだ。

 ストレイライト間の奇妙な距離感も、あれはあれで、今では重荷ではないらしい。和泉愛依や芹沢あさひ。彼女らとの活動を経て、アイドルという活動そのものに活路を見出せるのであれば、俺としても喜ばしい。

 

 喜ばしいが。仕事に押される事態は(まぬが)れず。

 性欲を処理する方法が、限られてしまっているのもまた事実。

 

 冬優子もたまに気を遣って事務所や別宅へ来てはくれるが、学業と仕事を両立させた上での事だ。

 そもそも自身が冬優子の喉を使い倒している自覚はある。

 それがアイドル業に影響は……今のところは、していないというだけだ。いつ影響が出てもおかしくはないのだから。

 

 完全には解消できない欲求。

 多少仕事漬けになったところで……と、言うのもあるが。

 今となっては、とても有力な策がひとつある。

 

 内ポケットからスマートフォンを取り出した。

 仕事用、アイドル連絡用、そして完全プライベート用。

 3つ目の完全プライベート用を指紋ロックであけて、パスを入力した上で点ける。

 

 ―― これまでのオナホ1号がそこに居た。

 

 (うつ)ろな顔で横になりながら、陰部を顔に乗せられている絵面。

 真正面から男性器をほおばり、鼻の下を伸ばして頬をこけさせ、よくある同人誌の様に顔の横でピースをしたままオーラルセックスをする動画。

 誰も居ない事務所のど真ん中で素っ裸のまま脱力、失禁し、大の字に寝転んで惚けている写真。

 

 どれもこれもが、実際に行った性行為だ。

 造り物ではない。だからこそ自身に染み渡る。専用(オーダーメイド)アイドルオナホール(オートクチュール)

 俺が本当に求めていた快楽を与えてくれた。その献身に。今でも感覚を思い出せる。

 

 そしてそれは、相手方(まゆずみふゆこ)も同様だ。

 彼女はプライベート用途のスマートフォンから、自撮りなど(・・)を送ってくるようになった。

 ただ裸だということはなく、趣向が俺に寄ったもの。

 

 家の中を深夜、無駄に裸で徘徊させたり。

 アイマスクをして、喉に梁型(はりがた)をぐいぐいと押し込みながら、擦り付けさせたり。

 乳首をクリップで挟み、局部を見せびらかすようなポーズで写真を撮らせたり。

 

 趣味嗜好をがっつりと抉ってくれるこれらのおかげで、俺は今を保てているのだろう。

 彼女には感謝しかない。

 

 たまにはお礼を ―― と、持っていたスマートフォンを弄る。

 連絡先。家族友人欄などとは別ページ。

 一行目には『オナホ1号』、フェラ顔ダブルピースのアイコンで登録された黛冬優子。

 そして ――

 

「―― 帰りました~。お変わりありませんでしたか、プロデューサーさん?」

 

 七草はづきさんが、外回りから帰って来た。

 俺はスマートフォンをうつぶせにデスクに伏せると「おかえりなさい」と返しながら、トラブルの連絡は今の所ないこと。業務を適当に進めていたことを告げる。

 

「そうですか~。それはよかったですー」

 

 昼前に外回りが終われば、午後は緊急の対応も滞ることなく出来る事だろう。

 はづきさんを労いながら、コーヒーを甘めに入れておいて。

 

「……あ~っ」

 

 何かを咎める時のあー、が出た。

 相手は俺だろう。俺しかいない。ただ、咎められるような事をした覚えがない。

 

「プロデューサーさん、事務仕事は無理にやらなくて良いんですってば~。少しは残しておいてくれないと、今日は暇になっちゃいますよ~」

 

 仕事がない、と。頬を膨らませてご立腹のようだった。

 アイドルがいれば、はづきさんは送迎にレッスンにと引っ張りだこになるだろう。

 ただ、今はそれがない。

 

 対して本業の事務仕事はというと……ああ。確かに俺が結構な部分を終わらせている。

 とはいえ、資格を持つはづきさんが処理しなければならない部分も結構あったと思うのだが。

 

「はーい……。これで終わっちゃいました~」

 

 こんな会話をしている内に、本当に印鑑処理だけで終わらせてしまったようだ。

 

「電子決済とかは~、出先でもタブレットで出来るように権限を付与してますからね~」

 

 それはそうだ。というか俺もそうしている。

 

「社長は……いらっしゃいますかねー」

 

 いない。今日はプロダクションの上の人達が集まる、業界全体の会合が催されている。

 月に何度もやる奴だ。オーディションのランクとか、ポイントの振り分けとか、ティアとかを話し合って決めるらしい。

 

「なるほど~……それだともう、出先でホテル泊でしょうねぇ」

 

 だと思う。

 ……つまりは。

 

「……あ~……」

 

 無言の中で、はづきさんのやや間延びした声がふわりと漂う。

 事務所には居るとして。それ以外の……電話番以外の仕事がない、という事だ。

 

 どうするか。

 こうなるんだったら、近場の現場にでも足を運ぶ方が有益だろうか。

 アポイントメントなしで出向くと、大概は現場の方に人員を割いて対応させてしまったりするので、好ましくはないけれども……。

 そう、俺が考えていると。

 

「ん~、いい機会ですし……」

 

 はづきさんは顔の右側で掌をゆるく握り、指をさすさす、すり合わせながら。

 前かがみに。視線を送る。こちらに。

 

「プロデューサーさん~……わたしと少し、お出かけをしませんか~?」

 

 数年間勤めていて、初めてのお誘いだった。

 いや。正確に言えば数年前に。約束をすっぽかされたという(着飾った)はづきさんと、クリスマスの買い物に帯同した覚えはあるが……。あれは結局、アイドル達への差し入れの買い出しに近い形に収まっている。

 先ほどのプライベート用スマートフォンの、そして ―― の後に続く(くだり)

 オナホ1号の下には、その際に交換した「七草はづき」の連絡先が記されているのだ。

 

 ただ……そもそも。まて、まて。

 外回りは終えてきている。電話番という仕事は存在する。

 

「外回りは~、予定を繰り上げれば幾らでもあるんですよ~。それに~、タブレット。あるじゃないですか~」

 

 はづきさんが袖下でタブレット、スマートフォンの二刀流をぶらぶらとかざして見せてくる。

 ……論破された。確かに。電話に転送。タブレットでメール対応。どちらも出先で可能だと、さっき認めたばかりである。

 断る理由は、確かにないか。理由があるのならば、不謹慎だとも思わないし。

 

「ふふ。なら、行きましょう~」

 

 外は春。

 事務員とプロデューサー。

 事務所の警備装置をしっかり作動させ。

 ふたりで街へ繰り出したのであった。

 






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