改造天使と狂科学者~異世界に改造技術を持ち込んだ男は美少女剣士を魔改造~ 作:gazerxxx
Dr.マッドネスは、エメーシャとパーティーを組むことにするが、その矢先にエメーシャが義憤から引き受けたのは、高難度で忌避されているボス級2体以上の討伐クエスト。
しかし、Dr.マッドネスは、敢えてこのクエストを引き受けて、名を上げようともくろむ。
人物紹介
Dr.マッドネス
サイボーグの身体で異世界に転生してきた男。
瘦身に白衣を纏い、目元を完全に覆うバイザーを着けた科学者然とした風貌。
物語は彼視点で進む。
エメーシャ
15歳 T145/B 78(D)/W51/H76 体重39キロ
ロングの金髪をハーフアップにした碧眼の美少女。
貴聖剣サルヴァトラーを振るい、身軽な高速剣技で戦う。
命がけで戦いに身を投じ、人の命を案ずる高潔な性格。
そうして、私たちは西の町を訪れた。
先ほどの中心街と比べれば、明らかに人通りがなく、家の門戸は固く閉ざされている。
なぜなら、日が暮れ始めて、魔物が争いだす魔の刻だからだ。
日が沈む方角からは、鴉の群れを率いた影鴉が2体も飛んでくる。
ギャアギャア鳴き声を囀る鴉の群れは沈みゆく太陽を背景に広がり、この地を暗闇に染めようとしている。
その反対側からは、丘向こうから尾が二股に分かれた黒猫たちが、ゴロゴロと唸り声を上げて集まって来る。
その二股猫を率いているのは、もはや身の丈ほどある2本の尾を振り回す、影鴉に負けない図体をした漆黒の大猫。
「早速お出ましか。エメーシャ君、ボス級魔物とは、アレのことかな?」
「はい、左の群れが影鴉が率いる
町の開けた中心地で、私とエメーシャは早速魔物の群れに囲まれる。
「カカッ?今夜の客は、ノコノコと出て来たな?」
不気味な白目の影鴉が、鋭い嘴を開いて囀り出した。
「コソコソ様子を見ている冒険者を狩るのも楽しみだったけどねえ、カカアッ」
下まつげが伸びた影鴉が、細長い嘴を開いて笑う。
ボス級の影鴉が2体揃ってるのを見て、私はエメーシャに確かめる。
「この影鴉たち、つがいなのか?」
「たぶん…。あのつがいから群れの数が増えて、またボス級に成長し始めたら、手が付けられなくなってしまいます!」
つがいの影鴉は、バサバサと周囲を旋回したかと思うと、屋根の上に止まって尋ねる。
「他にだーれもいないねえ、あんたたちも、つがいだけだねえ」
「えっ?つっ、つがいって…私たちは違います、2人パーティーですっ!」
つがい呼ばわりされて見る見る頬を夕焼け色にして否定する純情な剣士娘に、雌の影鴉は雄と一緒になってあざ笑う。
「ほーら、やっぱり二人だけだあ、つまんないねえ、カカアッ」
「誘導尋問に引っかかったなあ、小娘」
「はっ、今のって、そういう…ずるいですっ!」
「これ以上挑発に乗らないことだ、エメーシャ君。私たちに伏兵など必要ない、そうだろう?」
頬を熱くしたエメーシャをフォローする一方で、私は敵の数を気にしながら取り囲む魔物の言動に不気味さを感じていた。
すると、影鴉と対立してるはずの大闇猫が、馴れ馴れしく話しかける。
「にゃはっ。それじゃあ、いつも通り多く殺した方が勝ちだあ。今夜は負けないよ~」
「カカッ、今回は二人だろう?1人ずつ殺したら、引き分けになるし…」
「どっちが二人とも殺すか、早い者勝ちってわけねえ、カカアッ」
八百鴉や猫又の群れも、同調して勝鬨の鳴き声を上げて、夕闇を揺るがす大合唱だ。
私は、この2つの群れが一つのルールに合意していると気付く。
「今まで町の住民や冒険者を、縄張り争いの的にしてたと言うことか?」
「にゃはっ!その通り。縄張り争いだけど、戦ってお互いに数減らすのも馬鹿らしいから」
どうやらギルドの冒険者が想定していた魔物の潰し合いは、全く起きていない。
縄張り争いと言っておきながら、標的は人間だけ。
魔物の潰し合いから漁夫の利を狙っていた冒険者も、結託して殺してしまった。
ギルドで冒険者が語っていたリアリスト思考が、奴らには付け込まれている。
「なるほど悪質なのだな、ボス級魔物という連中は…」
「そんな理由で毎日のように人の命をっ…許せないっ!」
私が分析して危険視すると、事情を呑み込んだエメーシャもまっすぐに剣を向けて、碧眼に怒りを燃やす。
「にゃはっ、これ聞いた奴は、全員殺しちゃうんだけど」
軽いノリで口封じを宣言する大闇猫は、ニパッと口角を三日月状に釣り上げて、真っ赤な口を見せる。
「カカッ、狩りの始まりだ!」
空から襲い掛かる鴉の群れ、地上から前足の爪を剥き出して襲撃する黒猫又の群れが、上と下から挟み撃ちだ。
しかし、私たち二人は、多勢に無勢でも動じなかった。
「数に任せて突っ込んでくるとは…。光輪を使ってみたまえ、エメーシャ君」
「はい。輝いて、私の光輪!」
エメーシャの頭上に浮いた光輪が、強烈な光を放った。
夕闇を照らし出す光は、闇に棲む魔物の眼を射抜いて、眩ませてしまう。
「カカッ!?目がぁっ、目がぁ!」
「にゃはっ?見えない、何も見えない~っ!」
「ひいっ、何が起きたのぉ!」
鴉は地上に墜落してもがき、黒猫又は爪を伸ばした手足をブンブン振って、眩しさを振り払おうとする。
「夜に行動する魔物たちは、エメーシャ君の新装備に、面白いように引っかかるではないか」
魔物の連合軍が大混乱に陥ってる姿を、私はニヤニヤしながら見届けている。
光源となっているエメーシャに閃光を効かないように調整しているのは当然のこと、私もバイザーで防御して、視界は確保してある。
魔物を動けなくする光という武器に、エメーシャも目を丸くしていた。
「魔物相手に、こんなに効くのですね…」
「さあ今だ、狩ろうエメーシャ君」
「はいっ!」
「
私はマシンガンを放ち、100匹にも及ぶ魔物の頭数をバンバン減らしていく。
そして弾幕が途切れると、しなやかに宙返りして身を躍らせたのは、光を放つエメーシャ。
エメーシャは強化された脚力で身の丈以上に跳び回り、魔物たちを次々と切り裂いていく。
今までは当身で魔物を倒していた剣技の威力が強化されていて、エメーシャは驚いたようにつぶやく。
「私、こんなに力がついていたのですねっ…」
「そう、私が強化改造したエメーシャ君なら、身軽なスピードはそのままに、魔物の身体も一刀両断できるのだよ!さあまた跳ぶんだ、エメーシャ君!」
私はマガジンを再装填して、エメーシャに指示を飛ばす。
近づいてきたエメーシャに、闇雲に反撃しようとする八百鴉からエメーシャが飛びのき、私がマシンガンをお見舞いする。
ビキニアーマーの美少女がアクロバティックに動くたびに、光を受けて黄金に輝く髪が、ファサッ、となびく。
宙返りして跳ぶと、ふわりっ♪とDカップのバストが風船みたいに浮かんでは、白銀の胸当てが魅惑的に揺れる。
細腰を捻ると、腰肉がキュッと絞れて、目を引くしなを形作る。
空中では腰巻の内側も垣間見えて、ビキニパンツが食い込む肉感的な太ももと、鼠径部も魅せてくれる。
露わな美白肌を輝かせ、しなやかな成長期の肢体を惜しげもなく晒してくれる少女剣士は、私にとって絶景だった。
カッコ可愛い彼女を目で追っていられるなら、ずっと援護していたい。
エメーシャが切り込み、私が援護射撃する連携攻撃に、虚を突かれた魔物たちは次々に倒される。
だが、20秒で70体ほどに数を減らしたところで、その快刀を影鴉が脚で受け止めた。
さらに、私の左腕を伸びてきた二股のしっぽが絡めとったかと思うと、ガクンと銃口が地面に向けられてしまう。
大闇猫が、ギラギラした黄色い目に細くなった瞳孔で、私を睨みながら、尻尾を伸ばしている。
瞳孔を自在に開け閉めできる猫の魔物は、もう対応してきたか。目くらましは20秒程度か。
「ほう、ボス級はもう対応してきたのだね?」
「カカアッ、お前たち目じゃない、耳を使えばいいねぇ!」
「カカッ、そうだっ、羽音で集まって、靴音を立てる奴を攻撃しろ!」
「にゃはっ、狼狽えるな!下手に近づかず、遠くから攻撃するんだぁ!」
目の利くボス級魔物が態勢を立て直したことで、残りの魔物たちが一斉に反撃してきた。
屋根より高く飛んだ影鴉たちがエメーシャを上から包囲し、大闇猫たちが私を囲む。
ジャンプでも追いつけない高空から、八百鴉たちが、一斉に黒い羽手裏剣を飛ばしてくる!
「させないっ!」
その時、光輪を輝かせて、金髪の乙女が天使に変身した。
四方八方から襲い来る羽手裏剣は、エメーシャが広げた両翼によって、すべて吹き飛ばされた。
さらに、天使の翼で八百鴉たちと同じ高さに舞い上がると、一閃した剣で切り裂いた。
靴音に頼っていた八百鴉たちは、ひとたまりもない。
「ぎはあっ!」
「何だっ、靴音が、聞こえなかった…」
「カカッ!人間の分際で、飛べるだと…」
「チッ、チッ、チッ、ただの人間じゃない。改造天使なのだよ」
狼狽する影鴉に、私が指を振りながら教えてやる。
「こうなったらっ…お前たち、鳴き声を合図にして、小生意気な小娘を狩るよ、カカアッ!」
影鴉のつがいは意地になって、エメーシャを目の敵にする。
夜の空に、神々しく白肌を輝かせ、白い羽をまき散らす天使少女は、私に呼びかける。
「Dr.マッドネス、私も飛んで、いいですか?」
「行ってきたまえエメーシャ君。君も私も、一騎当千の力がある!」
エメーシャは、八百鴉たちを空中戦に持ち込む。
分断したところで、今の彼女は心配ない。
地上にいる私の相手は、黒猫又たちだ。
毛を逆立て、目をギラギラさせた黒猫又が、尻尾で動きを封じようとしてくる。
「
「にゃはっ、これは危ない!」
レーザーメスを使って左手の拘束を解こうとすると、大闇猫が軽々と尻尾を丸める。
伸びて来ては絡みつこうとする黒猫又の尻尾を、闇に光るレーザーメスで切断する。
繊細に動く私の指先は、夜闇にブルーライトの軌道を描き、狙いを外さない。
「ぎゃっ、尻尾が熱っ!」
「にゃはぁ、慌てるな、我々は漆黒の毛並みと、音もない足取りで、闇に溶け込むんだあ…」
尻尾切りでダメージを減らしつつ、闇に乗じてヒット&アウェイを仕掛けてくる大闇猫たち。
鞭のようにしなる尻尾が、頭上から何本も襲ってくる。
「夜目が効くのは猫だけではないのだよ。
五指から放った5本のレーザーで、頭上から降り注いできた尻尾をすべて断ち切る。
「そして本体は…後ろにいると見た!
私は左手を右脇に回して、背中越しに銃撃する。
背後に回って射線を避け、私の頭越しに尻尾で攻撃しているのも気づいていた。
切断されて慌てて引っ込めた尻尾だろうと、その戻る軌道は予測できた。
「ぐぎゃああっ!」
「ごふっ、バカなっ…」
尻尾でかく乱しながら背後で爪を研ぎ、攻撃のチャンスを伺っていた夜の暗殺者たち。
ばらまかれた散弾で、黒猫又たちが次々に撃ち抜かれる。
もはや尻尾を使った奇襲攻撃も私には通じない、と確信したその時。
「にゃはあ…」
大闇猫が、私の正面を大きく横切った。
右手は頭上の尻尾を、左手は背後を狙っていて、大闇猫のマークが外れていたからだ。
しかし、攻撃にも参加せず、数メートル離れた先で、ただ歩いただけ、のはずなのだが…。
とっぷり日が暮れた闇の中で、ギラリと見開いた黄色い目と、三日月の笑みを浮かべた赤い口だけが浮き上がって見えて、何か嫌な悪寒がする。
「知ってる?黒猫が横切ったものには、不幸が訪れる…」
「ふはっ!何だ、天才科学者の私が、迷信に怯むとでも?」
不吉とされている言い伝えを、私は笑い飛ばす。
だがその瞬間、私の手足が動かなくなった。
あり得ない…サイボーグであるワタシは、メンテナンスさえしっかりしていれば、体の不調など怒らないはず。
ましてや全身痺れて動かないという事態は…。
動かせるのは、首から上だけ…。
「動けない…何をした?」
「金縛りの術だぁ。前を横切る私を通したものは、もう動けなぁい…」
「迷信かと思っていたら、魔術だったとは。これは笑えないな…」
「にゃはぁっ、この奥の手を受けて、生きて帰った人間はいなぁい!」
意識はあるが、全身が1枚板となっていて、両手の武器も使えない。
身体スペックでは圧倒していたが、金縛りの術か…だてにボス級魔物と呼ばれていない。
「さぁて、手足が動かなくても頭ははっきりしてるから、殴られたらきっと痛いなぁ?」
動けない私の前で、悠々と尻尾を伸ばして、2個のハンマーを取り出し、振りかぶる大闇猫。
殴られると目に見えているが、指一本動かせない。
ズガンッ、とハンマーで殴られ、脳天に響く重い衝撃、私は顔を歪め、額にはベットリした血が流れ出す。
続けてもう一本の尻尾がこめかみを殴り、そこからも血を噴き出す。
「にゃはぁっ、動かないもぐら叩きは楽しいなあっ!」
今までのうっ憤を晴らすように、嗜虐的に歯をむき出して、リズムよく殴打する大闇猫。
さらに黒猫又も群がって、爪で私の身体を引き裂き、白衣は血に染まっていく。
「Dr.マッドネス!やめてっ!」
「ぐっ、来るなっ!私ならば心配いらないっ、気にせず戦いたまえ!ごふっ!」
エメーシャが気付くも、既に離れた上空まで飛んでいる上に、八百鴉たちに囲まれている。
背中を見せて戻ろうとすれば、エメーシャが危ない。
そんな空中戦の最中で戻って来るな、と頬を殴られながら私は叫ぶ。
そして、私は血しぶきが飛んだバイザーの奥から大闇猫を、じろり、と見る。
「おい、大闇猫。金縛りを解いてみろ、そうすれば10倍にしてお返ししよう」
「…にゃはあ?お前が死ぬまで解かないに決まってるなぁ!さっさとくたばるんだぁ!」
殴られても脅しつける私に、一瞬怯んだ黒猫又たちが、引っ掻きをやめてじりじりと後ずさりする。
大闇猫は、恐怖をごまかすようにハンマーで殴りつける。
「にゃはあっ、じゃあ今日は私の先制点だぁ!」
大闇猫は私をガンガンと殴り続け、10発目で私はバランスを保てずに石のように倒れ伏した。
「にゃっはあーっ!死んだ!ずいぶん手こずらせたけど、この攻撃で死ななかった人間はいなぁい!」
「そんなっ、Dr.マッドネスっ!!」
エメーシャの悲鳴が、空の彼方から耳に響いた。
エメーシャの装備
・
太陽光を吸収して動く、光輪型浮遊ユニット。
溜め込んだ太陽光を放出して、ミニ太陽並みに発光する。
飛行の際には、回転してジャイロ方式で姿勢を制御。
光を使った光学迷彩で、普段は光輪と羽を隠しておくこともできる。
今回の登場魔物
・
影鴉をボスとする魔物の群れ。
目は白か赤に濁っている鴉で、飛行速度はまだ遅いが、動体視力に優れる。
視力に優れる反面、強い光に弱い夜行性。
鋭い爪と、翼からの羽手裏剣が武器。
・影鴉
今回はつがいの2匹が登場。
白目で騒がしい方がオス、赤目で群れを鼓舞する方がメス。
どうやら「カカア天下」らしい。
・
二股尻尾を持つ黒猫といった魔物。
尻尾は伸縮自在で、ダメージを受けても伸ばせばすぐに再生する。
黄色い瞳は適応力が高く、瞳孔を調節して夜目が効く上に、強い光を浴びてもすぐ回復する。
闇に溶け込んでの戦いを得意とする。
・
身の丈ほどある二股の尻尾を持った漆黒の大猫で、
自在に伸びる尻尾はDr.マッドネスの腕を絡め取り、ハンマーを振り回すパワーもある。
敵の前を横切ることで、金縛りの術をかけることができる。
一度相手に賭けた術は殺すまで解かないので、この術を受けて生きていた者はいない。
女王タイプのボスで、彼女一匹から
Dr.マッドネス危機一髪!タイトルが逆転フラグです。
術中にはまった彼にも、まだ策があります。だからエメーシャに来るなと叫びました。
次回、逆転の時です。
読了ありがとうございました。
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