柿崎美砂はエロに多大なる好奇心を持つ少女だ。
何が彼女をそうさせるのか、クラス一のエロ番長だと自称しており、その手の話題には事欠かないほど豊富な知識を持っている。
常にエロいことばかり考えている、というわけではない。
ただ時折発作のようにエロいことをしなければ気が済まないというだけだ。
「ねぇ凪さん……これ見ない? 評判がいいらしいんだけどさぁ」
にやりと笑って、ドキドキしながら言ってきた彼女は鞄からDVDを取り出した。パッケージを見れば隠しようもなく裸体の女性が写っていて、つまりそれなのだろうと察する。
珍しい行動ではない。楽しげな美砂の姿を見て凪は呆れて無表情だった。
「またお前は、どこから手に入れてくるんだ?」
「いやーそれはちょっと、乙女の秘密ってことで。まあいいじゃん。とにかくいいのが入りましたよって話ですよダンナ」
「まったく……危ないことはするなよ」
「はーい」
呆れている一方で心配もしていて、凪が苦言を呈するように言えば美砂は悪びれもせずに笑顔で返事をする。
それはそれとして、いそいそと準備を始めていた。
颯爽とテレビの前へ移動した美砂は放り投げるようにして鞄を置き、DVDをセットして、自身がソファに座ると同時に早く早くと凪を手招きで呼ぶ。
「私ね、最近巨乳でぽっちゃりの女の人が気になってしょうがないんだ」
「すごいカミングアウトだな」
「うちのクラスってさー、おっぱいおっきいしスタイルがいいし可愛いしって子が多いじゃん。でもさぁ、ぽっちゃりの人ってこう、もちもちってして柔らかそうでしょ? おっぱいとかお腹とか揉みたいなー……って無性に思うの」
赤裸々に、悶々とした顔で、微笑を湛えて話す美砂の態度に凪は言葉を失った。
「それはいいけど……迷惑かけたりしてないよな?」
「そ、そんなわけないじゃんか! 全然五月ちゃんのこと狙ってないし!」
あっと声を漏らした美砂は、思わず本音を吐露してしまった様子だった。
凪の視線が冷たくなったのを感じた途端にたじろいで、見るからに狼狽する美砂はあわあわと視線を彷徨わせる。
「ちがっ、なんかその、変なアレじゃなくて……! 嫌われるようなことしてないから! ただちょっとハグしてるだけだから!」
「ハァ……頼むから本人が嫌がることは無理強いするなよ」
「そんなのするわけないよ。でもほら、女の子同士で抱き合ったりおっぱい触ったりするくらいは別に普通のことだし」
多少慌てていたが主張は変えず、隠し切れない下心が興奮した面持ちで明かされた。
頭を抱える凪は他の少女を気にかけておこうと密かに決意する。
「まあそこはほら置いといて。今はこれでしょ、これ。人妻で巨乳でぽっちゃりでソープだよ? 絶対どうしたってエロいじゃん」
「俺はお前の将来が心配だよ」
「平気だってば。女子が下ネタで恥ずかしがるなんか都市伝説なんだから。みんな本音で話せばこれくらい平気で言ってるからね」
「それは美砂だけの偏見だと思う」
決して同意はできないが言い合っても仕方ないのだろう。
会話はそこそこに、美砂の隣に座った凪はテレビに目を向ける。
映像が流れ始めていて、律儀にオープニングから見始めるつもりらしい。わくわくしている様子の美砂の横顔を時折気にしつつ、凪も不満を言わずに視聴した。
「ソーププレイとかもやってみたいよねー。凪さんも興味あるでしょ?」
「いやまあ、ないと言ったら嘘になるけど」
「でもやっぱりできればプロの人にお願いしたくない? そういう授業ないかな。大人の女の人とえっちしてみたい」
「また恥ずかしげもなくそういうことを……でも女の人でいいんだ」
「当ったり前でしょ。男の人は凪さんだけだよ。じゃないと嫉妬しちゃうもんねー」
にやにやした笑みを浮かべて顔を近付けられ、多少むっとするものの、図星であったために否定する言葉などない。
開き直る凪は自らも美砂へ顔を近付け、鼻先を触れ合わせながら呟いた。
「嫉妬するよ。女同士ならまた別だけど、他の男と抱き合ったりしてほしくない」
「その言葉、そっくりそのまま返したいな」
「うぐっ……」
「別にいいけどね。もう慣れちゃったし、結局愛してはくれてるしさ」
美砂は穏やかに笑い、しなだれかかると凪の下腹部へ手を伸ばした。
「ね……してあげよっか」
色っぽい声と目つきで魅入られる。
表情を変えた凪は頷き、彼女の手に触れられると体がぴくりと反応した。