部屋から差し込んでくる光があまりにも眩い。
広大な一室が幻想的な光景に見えて、これが現実だとは思えなくなる。
いつかと同じ一室で、上条凪は不安そうに座っていた。
以前と同じく源しずながそこに居る。
向こうを向いてしまっている椅子には学園長が居る。
室内は静かで、どこか温かい空気があるように感じられる。そこに居る人間を安堵させようとしているかのようだ。それでも凪の表情は緩まなかった。
「近頃、何か問題はありますか?」
「いえ……特には」
「そうですか。何よりです」
淡々と伝えられて、しずながにこりと微笑む。
彼女の表情を確認した後、なんとも言えずに凪は顔を俯かせる。
「では聞きたいことはありますか? あなたには今も躊躇いがあるように見えます。疑問があるのなら質問して解消してください。楽に生きるためのコツですよ」
「えっと……聞きたいこと、というか、まだちょっと信じられなくて」
それだけ言えば何についてなのかは理解したのか、相槌は打たれなかった。
「俺に31人も彼女……恋人が居るって。常軌を逸してるというか、ひどい冗談にしか思えないんです、けど。そんな器量とか度量とか持ってないし、何かの間違いじゃないかなって」
「そうですか。では、実際に彼女たちと接してみてどうでした?」
「えっ、と……」
「あなたを嫌っている、無理やり付き合っている、或いは騙そうとしていると思いましたか?」
質問に対して凪は黙り込んでしまい、すぐに返事をすることができなかった。
そんな風には思えなかった、というのが本音だ。彼女たちはきっと心から自分を愛してくれていたのだろうし、頻繁にボディタッチやキスを望まれた。仮にあれが全て演技だったとしたら自分は今後誰とも付き合えないだろうとも思う。
苦悩する凪は、答えを待たれているらしいと沈黙に気付いて恐る恐る答えた。
「そんなことはない、と思います……多分」
「自分の気持ちに正直でいてください。僕は彼女たちに何もしていない。多少気持ちが大きくなっているのは事実でしょうが、何も思わなければあんな風にはなりませんよ」
これまで会話していた相手、学園長が席を立つ。
悠然と歩いて凪の前に立ったのは学生服を着た白髪の少年だった。
以前にも覚えた違和感。こんな子供が、と思った直後には思考が霞の如く消えていき、違和感を持たずに彼と向き合っている。
「あなたはあなたの思うがまま生きてください。何も心配せず、僕に全てを委ねて」
少年は凪の顔を覗き込み、頬へ手を添えて、静かな声でそう言った。
クールな見た目に反してその眼には確かな熱があり、凪には言われるまま、求められるがまま頷くことしかできなかった。