目の前に広がる田園風景。
ある種ノスタルジックな光景に暫く目を奪われた後に大きく深呼吸をすると、体中の怠さが消えている事に気が付く。
体の手足、胴の細さは相変わらずだが病気に蝕まれている感覚は無く、むしろ若い頃を思い出させる体力を感じる。
健康な体に笑みがこみ上げる。体を動かしたくてしょうがない。
自分が部屋ぎで裸足である事すら忘れて農道を走る。
体を思うまま動かす。視界の端で何かが動いたと思えば、光が行くべき先を指し示す。
光に誘われるまま、導かれるままに走り続ける。流れる風景と体に感じる風が体力が切れかけても尚、快感となり足が進む。走れる事がこんなにも嬉しい事だという事も忘れてしまっていた。
どれほど走ったか。走り疲れて道なりに進みながらも体の疲れを心地良く感じる。緩やかに歩き木々の切れ目から出れば唐突に広がる街並み。
光は町の中へと続いており無意識に光を追って歩を進める。
気が付けば足音は土を踏む音から「ぺたりぺたり」と舗装された道を踏む足音と変わっていた。
気持ちよい疲労を感じながら光を追う。
やがて光は道路の先に居る女へと吸い込まれていく。
女は少し茶色の混じった金髪のショートヘア。
肩にかかる程度のその髪をかき上げようとしているその仕草。
少し焼けた肌は薄らとかいた汗を弾き、衣服に吸い込まれ。汗ばんだ衣服は軽く透けており、傍目から見ても分かる豊満なプロポーションをより一層艶めかしく際立たせている。
疲労で感じる心臓の鼓動とは違う。久しく忘れてしまっていた、興奮による心臓の痛み。
目線が外せずに女にくぎ付けとなる。あの女を抱きたい、組み敷きたい、思う様に蹂躙したい。そんな獣性が心の奥底から込み上げてくる。あの柔らかな肌に触れて我儘に形を変えたい。力づくに唇を奪い押し倒したい。雄の本能のままに動きたい。
そんな本能が訴える反面、理性的な部分が異変を伝えてくる。
目の前の人物は何故動いていない?
何故周りに人が居ない?
ご都合主義の様な状況に違和感を感じていれば、アノ光が女から飛び出し目の前に広がりるソレはメッセージとなる。
『汝、思いのまま動き、獣性を解放せよ。
この町は汝の狩場。
我が本能の呼び水となる事を願う』
メッセージが目に入り、文字を読み、意味を理解した瞬間。理性は獣性の前に屈した。
目の前で静止している女性がその瞬間から自分の中で貪り食う『雌』へと変化した。
そこからは早かった。
直ぐ様彼女へ近寄りその唇を奪う。
唇をこじ開け、口内を舌で蹂躙していく。雌を貪っているという感覚が下半身に血を送る。
どうしようもなく抑えられない欲望が自分という肉体を通して目の前の名も知らない彼女を食らっていく。
柔らかな唇を割りながら片方の手で腰を抱き寄せ、その重みを感じる。
腕の中に居る雌の存在を触覚と嗅覚で感じる事で嘗て無い程に下半身へ血が集まる。
衝動に駆られるままに彼女の口内を侵し、奪う事で更に四肢へ力が入っていく。
洗い息と共に彼女の唇から離すが直ぐに彼女の唇を再び貪る。
まるで野生の獣が数日ぶりの餌にありついたように。
誰にもコレを奪わせないと主張するかのように女性の唇を貪る。
男が彼女の口内を存分に舐り、楽しみ、満足する頃には男の体は健康で丸太の様に太い手足と分厚い胴体を取り戻していた。
男の僅かに残った理性は自身の体の異変を確かに感じ取っていたが、本能のままに動いている体は異変よりも雌に対する優先順位が高かった。
四肢に入る力は腕の中の雌を軽々と抱え、脚は彼女の体重を全く感じずに彼女の体を持ち上げる。
彼女の体を持ち上げ彼女の唇を楽しみながら彼は動き出す。
移動中でさえ彼女の唇を侵す事を止めずに町を練り歩き、光に誘導されるまま目当ての場所へとたどり着く。
ぺたりぺたりと人一人抱えているとは思えない軽い足取りで辿り着いた先は宿だった。