※この作品はR-18です。

いやし屋 なきり   作:ナルキケーネ(ハーメルン支店)

3 / 8
現実の泡姫と夢の泡沫

 せっけんとヒノキの香りがする浴室は、旅館にある個室の風呂のようにしっかりした広さを備えているらしい。視界がそれなりに封じられている状況でも、わりと広々とした余裕を感じた。

 

 粒の大きな石が並ぶタイルを足裏で感じながら、ぺたぺたとした感触の滑りにくいマットの上まで誘導される。

 

 そのまま、風呂椅子に座らせられたのだが……なんだか不思議な感じだ……。普段は陰部が椅子の上に乗るような、支えられている感触を覚えたものだが……この椅子はイチモツが乗る部分がごっそりと取り払われて、〝宙ぶらりん〟になってしまっている。

 

 ……これは、かの有名なスケベ椅子というものではないだろうか……。風俗に行ったことは何度かあるのだが、いわゆるソープランドは未経験だったために、初めて味わう心許なさに興奮が加速する。

 

 ただ、タオルを巻いたままでは、このスケベな空間から股間をニュルニュルと弄ぶことなどできないだろうし、そもそも露出行為は禁止されているはずだ。うっすらと見えるこの浴室にも、わかりやすい風俗店っぽさを感じない……『よくわかんないけど、エッチに関連してそうなものをとりあえずそろえてみました!』と言わんばかりにチグハグな様相だ。

 

「それじゃあねぇ、お風呂に来たってことで、そろそろお湯なんかを出そうかと思うんですけどねぇ……人間様、あっつい方が好き? それとも、ぬるぅいのがよい?」

 

 ヘンな気を起こさないように『熱めで』とお願いしようとしたが、たしかあやめは母なきりの影響で熱い湯舟に慣れていたはずだ。シャワーの温度はさすがにわからないが……用心するに越したことはない。

 

 ここは冒険せずに『ほどほどで』と伝えると、あやめは「ほどほど……ニンゲンのほどほどって、どんくらいだ……? でもあやめ、わかんなくても泣いちゃダメよ……それはドンクライ……あはっ……♪」と楽しそうに呟きながら、ぱちゃぱちゃと手で温度を調整してくれた。

 

 程良い温かさになったシャワーを俺の手で確かめてから、肩口から胴体をお湯で濡らして、手で撫でながら汗を流し始めた。

 

 自分の素肌を、女の子の――それどころかあやめの白魚のような手指で弄られると、くすぐったさに加えて気恥ずかしさを感じてしまう。

 

「寒くない? あっつくない? だいじょぶ?」

 

 大好きなあやめの声を耳元で聞きながら、身体を洗われる感覚は……これまで味わった快感を全て忘れてしまうほどに、とにかく心地よかった。

 

 身体をひとしきり濡らした後、あやめは「人間様ー、おめめつぶっててー」と告げて、おもむろに髪の毛を濡らし始めた。

 

 ……こういうプレイをするときに、頭を洗うものだと聞いたことはないが……。

 

「あっ! 頭って洗わないんだっけ……やっちった……!! ごめん人間様、ちょっと間違っちゃったよ……不慣れでごめんね……!」

 

 あやめは濡れた手をペチンと鳴らし、慌ててタオルで俺の頭を拭いてくれる。焦っているせいか、俺の背中にぷにぷにとした肌が当たっており……蒸気と汗で生じた、女の子の生温かいヌメリを感じられた。

 

「あぶないあぶない……すぐに気づけてよかったぁ……! 人間様、また間違えてたらすぐに余に言ってね……? 余もいろいろ調べたんだけども、こういう作法はあんまり詳しくないんよ……!」

 

『俺もあまり詳しくないので大丈夫だ』と伝えて彼女を安堵させたはいいが、別のところが大丈夫ではなくなっていた。

 

 髪が少し濡れた程度なので、そこはまったく問題ないのだが……微妙に流れてきたお湯のせいで、目隠しが濡れて透け感が増してきた。朧げだったお風呂の光景が鮮明さを増し、近くにある浴槽が高そうなヒノキの香りの元だとわかるほどに悪化したのだ。

 

 あやめはそのことに気づかず、「えっと、あわあわのアレはどこだろ……?」と棚のアメニティを漁っている。するりと光を滑らせる魅惑の背中や、ぷりんっ♡と張り出したお尻のナマ曲線……そして、桃尻の影から覗く淫靡な丸みを無防備に晒している。

 

 自分のために準備をしてくれている彼女に悪いと思いつつも、ほとんど産まれたままの姿で女の子の色香を振り撒く肢体から目を離せない。全身の血流が滾る脈動に、思わず身震いをしてしまう。

 

 スポンジを見つけたあやめが帰ってきて、鼻歌をうたいながら、俺の目の前でボディソープを泡立て始める。その圧倒的な広さの肌色と、申し訳程度に局部を隠す白布のコントラストを感じられるほどに、視界はハッキリとエッチに彩られていた。

 

 浴室の湯気で布地が湿っているせいか、トップスとフンドシが肉の膨らみに張り付いているような……しかも若干透けている気配すらあった。股間に向かう内ももの溝が、インモラルな曲線美を陰影だけで描いている。美彫刻に負けないほどに芸術的な光景だった。

 

「あわあわ、失礼しちゃいますねー……くすぐったかったら、すぐに言うんだよ? 約束だぞ?」

 

 緊張した様子のあやめは、俺の正面に立ち、開かせた脚の隙間まで踏み込んで洗体を始めた。高そうな使い捨てボディスポンジが、羊の毛のようにモコモコできめ細かな泡を作り、ふんわりと肌に塗り広げていく。

 

 首筋から肩、胸板と、表面を撫でるように白い夏雲の絵を描かれていく。普段自分でやっているような、垢を落とすための洗い方ではなく……肌を傷つけないようにしながら、汗だけをさっぱりと流すためのマッサージのような……なんともくすぐったい感触だ。

 

「……むぅ……人間様のここ、ちっちゃくて羨ましいな……」

 

 胸板の硬さを確かめているときのことだった。クニクニと乳首を執拗にスポンジで転がしながら、あやめがボソリと呟きを漏らした。

 

 たしかに……あやめの白いトップスがギリギリで隠していた部分は、赤ちゃんが吸いつきやすそうな大きさのぽっちを浮かせていたが……乳首や乳輪の大きさを意外と気にしているのだろうか……。

 

 そこまで目立つほどに大きいわけではなさそうだが、まあ、なんというか……おっぱい全体のフォルムの可愛さよりも、乳首のエロさが際立ってしまうような存在感はありそうだ。

 

「……人間様は……おっきいのって……ど、どう思う……? いやいや、ちょっと、余はいったい何を聞いとるんだ……!? ごめん、今のナシ!!なしです!!おっぱいの話とか一個もしてませんよ!?」

 

 慌てたあやめはポンポンと泡を飛ばして、俺の身体に小さい泡の山をいくつも立ててきた。手の動きに合わせてぷるんぷるんとおっぱいが暴れて、いつトップスがズレてしまうのかとドキドキ&ハラハラしてしまう。昔のテレビで見た、水着の美女だらけの運動会を思い出す……中高生のような若々しい滾りを股間の内側から感じた。

 

 そういえば、以前エッチなあやめのイラスト制作を依頼したとき……俺が妄想していたあやめの乳首は、可愛らしさ全振りの小さくて薄い突起だったはずだ。一回だけヌいて凄まじい罪悪感に駆られたが、以降は癒やし目的の精神安定剤として毎日摂取しているためによく覚えている。

 

 しかし……そう考えると、今見ているこの夢世界は俺の妄想をそのまま具現化した淫夢ではないのかもしれない。乳首と乳輪のエロさだけでなく、あやめの反応があまりにも生々しすぎるのも気になる……が……考えすぎだろうか……?

 

「あっ、すいません……えーっと、なんだっけ……? やっばい、余なんも覚えとらんのだけど……!あっはははっ!!」

 

 その弾けた笑声と屈託のない笑顔から、あまりにも大きすぎた〝あやめらしさ〟が破裂するように溢れた。

 

 ずっと推し続けてきたあやめと、目の前の淫夢じみたあやめの姿が――ぴったりと重なる。目の前に居るあやめが見紛うことなき〝本人〟だと、あやめを求める本能が強く認識してしまった。

 

 建物に入ってから何度も感じていた〝不気味なほどのリアルさ〟が、過度に理想的すぎない状況やあやめの生々しさと合わさって……この欲望と夢想に満ちた時空が、色濃く現実味を帯びてくる。

 

「んーとねぇ、まだ洗ってないところ……足とか腕もなんだけど……あ、先に腋だ!さきにわき! 人間様、ばんざいして!せーのっ、ばんざーい!」

 

 生きる世界の次元を隔てていたはずの存在と、どうして生身で触れ合っているのか――そう戸惑いながらも、あやめに悟られないように、何にも気づかなかったフリをして両手を上げた。

 

 なんとなく、ではあるが……イヤな予感がした。目隠しが機能していないことがバレるのも怖かったが、それよりも……違和感を口にしてしまえば、この夢が終わってしまうような気がして……言いだせそうになかったのだ。

 

 自分勝手だとわかっているが……まだ、あやめと過ごせるこの時間を捨てたくなかった。

 

 ずっと、この時を待っていた。やっと会えた……やっと、その声を聞いて……肌の温もりを感じることができたのだ……!

 

 もう少しだけでいい、あやめと過ごす夢のひと時を楽しま――。

 

「さーて……えっ!? 人間様、腋のお手入れしとるの!? 女の子みたいにつるつるですが!?」

 

 ――……なんか……物事を真剣に考えるのが一気にアホらしくなってしまった。永久脱毛をした腋に全てを持っていかれた。

 

 脱力した俺は、あやめに腋窩や脇腹を弄られて、緊張してかいていたはずの汗をすっかり泡に吸われてしまう。血管が集まっている人体の弱点からゾワゾワと走り抜ける微弱な快感に身を捩ると、あやめは「んふっ♡腋、くすぐったい? かわいいねぇ、もっと洗いたくなっちゃうな!」と頭の鈴を鳴らしながら笑っていた。

 

 腋を洗い終えたあやめは、腕を抱くように密着し……腕っぷしの太さを確かめるように、ゴシゴシと強めに洗い始めた。

 

「ん、しょっ……♡ あんまり動かないでね……ちょっと、ね……今……その……アブない、から……♡ ん、はぁっ……♡」

 

 ぷにっ♡ぷにっ♡と腕に魅惑の肉感をチョイ当てしながら、腕の隆起に沿うように汚れを落としていく。お腹と胸の肉感の違いがわかりづらいが……透けた視界から、たまに当たっているものがあやめの乳房であると確認できて、一安心ならぬ一興奮だった。

 

「……はぁっ……♡ 目隠ししておいてよかった……こんな姿の余、見られたら恥ずかしすぎるからなっ……くすくすっ……♡」

 

 俺の想像力を掻き立てるために、わざとそんなことを呟いているのだろうが……お湯の蒸気で朱が差し始めたカラダも、ぷるりと弾ける膨らみを伝う汗の雫も、マイクロビキニからちょっとこぼれるほどに膨らんだ乳輪も……本当に恥ずかしそうに、浮いた股間の布をギュッと押さえつけた仕草も、全部見えてしまっていた。

 

 額の汗を拭ったあやめは、奉仕をするように丁寧な洗体を続ける。両手首までぐるぐると洗ってから、おもむろにスポンジを俺の脚に置いて――。

 

「これ、ちょっと懐かしいアレなんだけども……手のあらいっこ!」

 

 ――恋人繋ぎのように絡み合わせた手指の隙間で、ぐちゅ♡ぐちゅっ♡ぬりゅんっ♡と泡を淫らに滑らせる。

 

 手を握るスキンシップは、友人間でもできる最も気軽なものだったはずなのに……お互いにヌルヌルとした泡を混ぜ合い、手の平の凹凸を重ね合い、手の甲よりも敏感な谷間をまさぐり合う……まるで、ローションを使った激しいセックスのような……初体験すぎる、センシティブなヌメリだった。

 

「あ、あははは……♡ 今やるとね、さすがに恥ずかしかったかもだけど……人間様は好きみたいだなっ……♡」

 

 頬の紅潮で、あやめも同じようなことを考えていたのだと察した。彼女はその照れをごまかすように、水平に上げさせた俺の脚を、しゃがんだ状態で手早く洗っていく。

 

 ふくらはぎからかかと、足の甲、足裏までキレイにする。足指の先は、素手で一本いっぽん包むように、ぬちゅぬちゅっ♡ぐちゅんっ♡とひねりを加えて、ぎゅぽ♡ぎゅぽっ♡と握って搾るように擦り洗う。

 

 そのあやめの淫靡な手つきと、俺の視点から見る彼女の姿は……まるで、屹立した陰茎を慰めるようなエロスに満ちていた。

 

「……ん、あっ……こらっ……! 人間様……めっ!だぞ!」

 

 ギョッと身体を硬直させたあやめが――俺のタオルの裾を掴んで引き下ろす。おそらく、下半身を覗き込めてしまう角度から……鬼のツノのように硬く滾った、タオルを持ち上げるほどに勃起したイチモツが見えてしまったのだろう。

 

 しかも、怒張は直されたタオルに引っかかっても収まる気配がなく、さらにメリメリと帳を上げようとし……その御霊の荒ぶり方を強調してしまう。

 

 汚いブツを見せてしまったことを申し訳なく思うし、あやめが困惑して唇を尖らせていることもわかっているが……こればかりはどうしようもなかった。

 

「…………故意じゃないし、セーフかもだけどさぁ……。もぉ……人間様のえっち……!」

 

 そうブツブツ言いながらも、あやめは足の指を洗う手も止めず、鎌首をもたげる肉棒が見える位置を離れない……むしろ、さっきより丁寧に泡を塗りたくっているような気がする。しかも、俺から見えていないと思い込んでいることもあって、タオルの下のイチモツをチラチラと覗こうとしているのが丸わかりだった。

 

 可愛らしいレベルのムッツリ具合は少しだけ意外だったが……あやめは清廉なアイドル生活も長いし、周囲に脳内ピンクの同僚も多いため、ちょっとムラムラしている時期なのかもしれない。年中発情期な船長や団長もいるぐらいだ、あやめの〝それ〟などむしろ健全な部類だろう。

 

 足の指だけ明らかに長い時間をかけて洗い終えたあやめが、俺の手にスポンジを渡して「おシモは自分で洗ってね!」と告げて、立たせた俺の左腕を掴んで支えてくれた。

 

 この後のことをある程度予測した俺は、タオルの隙間からスポンジを差し込み、勃起して洗いにくい陰部から尻までしっかりと洗う……のだが……。

 

「………………し、シルエットクイズみたいになっとるんだけど……えへっ……♡」

 

 ……洗う様子も、タオルをゴリゴリに持ち上げる勃起の具合も、なにもかもをマジマジと見られていたために、とにかくやりづらかった。

 

 手早く済ませてあやめの手をタップすると、温度を調節したシャワーを用意してくれた。自分で下半身の泡を流してから、再び椅子に座るように促され……肩から、優しい温もりの雨が降り注ぐ。

 

 あやめの髪の香りが増した浴室内で……素手で撫でられる肌から、無数の雫たちが泡を乗せて流れていく。

 

 攫われる泡沫の末路は、どこか儚げで――まるで、この華やかなひと時の末路を暗示しているようだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。