※この作品はR-18です。

この素晴らしい違和感に祝福を!   作:大軍

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第一話 この素晴らしい異世界

 

 俺は天井を見上げていた。

 昨日も今日も、俺は天井をみた記憶がある。

 いつも通りの天井だ。

 

 昨日も今日も、クエストに行って、報酬を受け取って。6割は借金返済に消え、残りの2割は生活費に消え、残りはパーティメンバーの誰かが借りに来る。

 

 俺の懐はいつもすっからかんだ。

 

「だあああああああ!なんで金がねえんだよ!いつから俺は江戸っ子になったんだよ!!」

 

 床に寝転びながら俺は叫んだ。

 

「うっさいわね!騒ぐんなら自分の部屋でやんなさいよ!!このヒキニート!なに!?性欲でもたまりすぎておかしくなったの!?」

 

 アクアが暖炉の前のソファから叫んだ。

 

(こいつ……さっき酒代がないからって金借りにきたくせに……!!)

 

 アクアのこの態度は本当に理解できん。

 

「はぁ……おい駄女神」

 

「ああ!?なによ、発狂オナニー狂いのクソニートのカズマさん?」

 

「…………明日もクエストだからな。準備しておけよ。俺は寝る」

 

 頭の玉を引きちぎって口に詰めてやりたくなったが、不毛な争いを望まない平和主義の俺は部屋に戻った。

 

 俺は天井を見上げていた。

 今度はベッドの上だ。

 

「なんか違うぞ……俺の異世界……」

 

 サキュバスのサービスを使おうにも、クエストの前日にやると精力が足りなくて仕事にならない。

 アクアにあそこまで言われた手前、気持ちよくオナニーもできない。

 

(クソが……)

 

 明日になったら絶対あの駄女神に復讐してやると心に誓って、俺は眠りについた。

 

 

////////////////////////////////

 

 

 

 俺たちはクエストを終えて、ギルドに戻っていた。

 服は所々焦付き、ほつれ、髪の毛は跳ねているという、なんとも見窄らしい。

 

「見ましたか!?この私の崇高なる爆裂魔法を!!深淵から湧き出る紅蓮の炎がモンスターの体液を沸騰させ焼き払う姿を!!」

 

「お前が消し炭にしたのは、保護対象の希少モンスターだけどな」

 

 クエストは半分成功、半分失敗。

 報酬は賠償金を引かれて、予定していた金額の6割が俺たちの手元に支払われた。

 下手したら裁判沙汰になるレベルの失敗だった。

 二度とあんなクソ裁判受けてたまるかと誓ってるのに、こいつらと来たら。

 

「まあそういうな、カズマ。少し失敗はあったが、こうやってみんな無事に戻って来れたのだ」

 

「お前の攻撃は全く当たってなかったけどな」

 

 クエストは、新たに生息地を移動したモンスターが、希少なモンスターの生態系を壊す危険性があるため、その調査と在来種モンスターの保護が内容だった。

 

 ところが、新たに移動してきたというモンスターが思いのほか凶暴で、戦闘状態になったというわけだ。

 

「しっかし、私は今日も大活躍だったわね!戦場を駆け回り、傷ついたパーティを癒し、モンスターにトドメを刺す!完璧な女神とは私のことね!!」

 

「お前が転けなかったら、モンスターの巣を荒らして、戦闘になることはなかったけどな」

 

 めぐみん、ダクネス、アクア、三者三様の冒険をなさって来たらしい。

 聞いてる限り、こいつら一人一人がとんでもない英雄級の活躍をしてくれたらしいが、現実はいつだって金が教えてくれる。

 

 俺はギルド嬢から受け取った報酬から借金返済分を引いて、四等分した金額を計算する。

 

「はぁ!?なんで私の報酬がこれっぽっちなのよ!!これじゃあ今日お酒飲めないじゃない!!お酒がなかったら私何を楽しみに生きたら良いのよ!?」

 

「そ、そうですっ、これじゃシュワシュワがぁ!」

 

 なんとも貧しい人生を送っているのだろうか。

 俺は報酬の入った袋を握りしめた。

 

「だああああまああれええええ!!お前らのせいで報酬が減ってるんだよ!我慢しろや!!」

 

「カズマはシュワシュワがなくていいのですか!?」

 

 確かに酒がないのは俺も不満だ。

 しかしこいつには今日そんなことを言われたくはない。

 

「第一、めぐみん!報酬減ったのは、保護モンスターがお前の無駄に高火力な魔法で消し炭になったのが原因だってわかってるんだろうなっ!?」

 

「ムムっ!今私の爆裂魔法を侮辱しましたね!?流石の私でも許せません!」

 

「こら、仲間割れはやめるんだ二人とも!」

 

 ダクネスが割って入るが、勢い止まらず横移動をしてダクネスを無視する。

 めぐみんはジリジリと俺との距離を詰めながら、両手を構えて戦闘状態に入ろうとしている。

 この頭のおかしい爆裂娘が……この俺を徒手空拳で伸すつもりか。

 

 目にものを見せてやる。

 

 俺の雰囲気の変化に気づいたのか、めぐみんが身構える。

 

「な、何をするつもりですか!?カズマ!!」

 

 俺は報酬の入った袋を投げ捨てると、右手を握りしめ、腰を落とし、溜めを作って、勢いよく右手を頭上へ掲げてーーーーーー

 

 叫んだ。

 

「スティーーーーーーーールッッッッ!!!!!!」

 

 魔力の奔流がめぐみんと俺の周りを包み込む。

 右手が魔力によって光り輝き、辺りを強く照らす。

 

 魔力が収まり、場に静寂が訪れる。

 

「く、くふふふふふふっ、はは、はははははははっは!!!」

 

 静寂を破る気持ち悪い笑い声の主は、俺だった。

 魔法は成功した。

 

 俺の手には布状の何かがあった。

 

「……あ、あ、ああ!?!?」

 

 めぐみんは服の上から股間を押さえると、目を見開いて口を戦慄かせる。

 スカートの裾を引っ張り、俯く。

 

 俺の手にあるのは。

 そう、めぐみんのパンツだ。

 

「どうだぁ!?誰に逆らったか理解したかぁ?めぐみんっ」

 

 俺は、自分で自覚するぐらいのゲス顔で、右手に持った黒いパンツを人差し指に引っ掛けてクルクル回してみる。

 

「うわっ、本当にクズね、こいつ……」

 

「さ、流石だカズマ……こんな公衆の面前で少女の下着を剥ぐなんて……」

 

 アクアからは軽蔑の目。

 ダクネスはなんか勝手に赤くなって悶えている。

 

「な、なんだよ?これは正当防衛であって……ん?なんだめぐみん?」

 

 気づいたらめぐみんが俺のすぐ傍まで来ていた。

 めぐみんはスカートの裾を押さえながら、モジモジして俺の袖を引っ張ってくる。

 

「(…………カズマ。こんな所で、本気ですか…………?)」

 

 予想と違う反応が来た。

 もっとこう、喚いて俺の事を罵倒してくる感じだと思っていた。

 

 聞こえてきたのは、俺にしか聞き取れない程小さな声だった。

 上目遣いで目が潤んでいるめぐみん。

 

 後ろでアクアとダクネスが何か言ってるが、めぐみんの様子が何やらおかしい。

 内股で、モジモジしてるのはわかるが、なんでこんなに顔真っ赤にしてるんだろうか。

 まるで俺がエロいことを白昼堂々要求してるみたいな反応だ。

 

(……)

 

 それにしても、めぐみんの反応は違和感がある。

 俺はいつもと違う状況に困惑することしかできない。

 

「な、んのことだ?めぐみん?」

 

「(何って……これは、いつものアレですよね?あと声をもっと小さく!)」

 

 めぐみんは、わかってますよね?と表情でも伝えてくる。

 この感じだと、めぐみんと俺は知っていて、この話を聞かれたくないアクアとダクネスは知らない事って事だよな、と思考を巡らせるが、全く身に覚えがない。

 

 俺がポカン、と間抜けな顔を晒していると、察しの悪い俺に我慢できなくなったのか、めぐみんは怒りの表情へと変化する。

 

「もう!いいです!パンツ返してください!」

 

 めぐみんは俺から黒いパンツを引ったくると、ギルドからガシガシと足音を立てて出て行ってしまった。

 

「めぐみんは怒って当然よ!この変態ロリヒキニート!!」

 

「色々連結するな駄女神」

 

 釈然としない状況に舌打ちしそうになる。

 ふと気配を感じて顔を上げると、柱の影に見慣れた人影があった。

 

「あ、あの……」

 

「あら、ゆんゆんじゃない。めぐみんならもう行っちゃったわよ。この変態性欲ロリヒキニートがめぐみんのパンツを剥ぎ取ったせいで」

 

「そ、そうなんですか?え、ええと……」

 

 ゆんゆんだった。

 相変わらず友達がいないのか、一人だった。

 そして、めぐみんと同い年にも関わらず、良いスタイルだ。

 

 軽い挨拶もそのままに、俺は彼女の奔放な胸元を凝視していた。

 仕方ない事なのだ。

 俺も男だし。

 

 こういう無防備にエロい格好してるゆんゆんみたいな美少女を覗き見るのが、妙に達成感があるのだ。

 

「あの……」

 

 ゆんゆんがこちらを向いたので、急いで彼女と目を合わせる。

 まずい、流石にバレたかもしれない。

 14歳の少女の胸を凝視してるなんて、バレたら他の連中になんて言われるかわかったものではない。

 

 ゆんゆんは、警戒心のかけらもない表情で、俺の顔に近づいてくる。

 直近で見ると紅魔族だけあって整った顔をしている。

 

「?今日は見るだけでいいんですか……?」

 

「おい、ゆんゆん。まるで俺が普段は見る以上のことをしているような……」

 

 ゆんゆんは頭上に?マークを浮かべながら、俺の顔をまじまじ眺めている。

 

(なんかすげえ違和感)

 

 ゆんゆんは何か思い出したように、俺の方を向き直った。

 んん、と喉を整えるゆんゆん。

 

「あ、明日はずっと家にいるのでっ!」

 

 至近距離なのに無駄に声がでかい。

 

 ゆんゆんは明日家にいるらしい。

 そんなこと報告されることってあったっけ?と俺は混乱する。

 

「あの、その……今日はこれで!」

 

 ゆんゆんは、言うことは言ったとばかりに、早足にギルドから出て行った。

 

「なんだ、一体……」

 

 めぐみんといい、ゆんゆんといい、なんかいつもと違う。

 俺の事を揶揄ってるのか?と疑ってみるが、そういう軽い感じでもない。

 

「ねえ、カズマさん。本当に私たちの報酬はこれだけなの?」

 

 俺が唸っていると、アクアにちょんちょんと肩をつつかれる。

 手には俺が先ほど投げ捨てた、報酬の入った袋が握られている。

 

 当然あっている。

 借金返済の金額は把握している。

 ギルドから受け取った金額から、俺が直接返済するのだから、今袋に入っている金額は俺たちが全額自由にできるものではないのだ。

 

「残念ながら間違ってないぞ」

 

 アクアの眉が八の字になる。

 本当に不可解そうな顔だ。

 不可解も何も、本当にこの金額になるのだ。

 

 変な空気が流れる。

 助けを求めて、このメンバーの中では公正な立場であるダクネスを見ると、彼女も同じような表情を浮かべていた。

 

「うむ、しかしこれでは本当にタダ働きみたいなものだぞ……」

 

「カズマさん、あんたもしかして報酬のピンハネしてるんじゃ無いでしょうね?」

 

 事もあろうに、こいつら俺を報酬を盗むコソ泥扱いしてきやがった。

 

「お前ら……そこまで俺の事信用してなかったのか……」

 

 悲しくなってきた。

 涙が流れている気がするが気のせいだ。

 

 ギョッとしたのはアクアの方らしく、オロオロした後、女神風に慈愛に満ちた声で俺の肩を摩ってくれた。

 

「な、何泣いてるのよ。と、取り敢えず、どう言う内訳なのか教えて頂戴。ね?それなら大丈夫でしょ?元気出して?」

 

「うん……」

 

 俺は半べそを描きながら、急に優しくなったアクアに促され、内訳を答えた。

 借金分の金額を正確に提示したところで、アクアに胸ぐらを掴まれた。

 

「やっぱりピンハネしてたのね!この変態性欲ピンハネクソヒキニート!!!」

 

「な、何言ってんだよ。借金の返済があるのは本当だぞっ!」

 

 俺は間違ってないんだが。

 

 アクアは、はぁ?と田舎のヤンキー瓜二つの風体を見せながら、掴んでいた俺の胸ぐらを離した。

 

「借金ならとっくに無くなってるでしょ!こんな嘘で私たちを騙せると思ったの?」

 

(借金がない?)

 

 俺の頭は『借金』という文字でいっぱいだ。

 色々な事件を起こしては膨れ上がって行った借金がないなんて事あり得るのか。

 アクアのことだ。

 何か変な薬でも飲んでるに違いないと俺は思った。

 

「やだっ何その顔っ!超ウケるんですけどぉ!」

 

 しかし、横のダクネスを見ると、彼女もまたアクアの言う事を肯定するような表情をしていた。

 俺と目があうと、にまっと笑って自分の体を抱きしめた。

 

「か、カズマ……金のために仲間を騙そうとするなんて……相変わらず鬼畜だな……はぁ、はぁ」

 

 鬼畜?鬼畜だと?

 急にムカっ腹が立ってきた。

 

「ああ!?ダクネスっ!お前は今晩覚悟しておけよ!!人には言えないすっごい事してやるからなぁああ!!!」

 

「ひゅひぃぃぃっ!!しゅ、しゅごいこと!?しゅごいことってなんだぁぁ!?」

 

 借金がなくなったというアクアとダクネス。

 一瞬でもそんな事が現実に起きていると妄想してしまった俺は、テンションがおかしくなっているのだろう。

 まともに思考できない。

 俺は鼻水を垂らして顔を真っ赤にしながら、ギルドを後にした。

 

 

 

 

 

 

 俺は余った報酬で高級シュワシュワをお供に夕飯を食べてから、屋敷へと戻っていた。

 とっぷりと暮れた夜空が俺を見下ろしている。

 今日、俺の身に起こったことを思い出す。

 違和感だらけで酒の味も覚えていない。

 

(一体どう言うことだ?)

 

 パンツを盗っても、いつもと違う反応。

 胸をチラ見しても、いつもと違う反応。

 罵倒したら、……こいつはいつもと同じか。

 喧嘩を売ってきた駄女神の相手をしても、いつもと違う反応。

 さっき確かめたが、昨日まであった借金がほぼ完済している。

 

 ドッキリにしては手が混みすぎているし、あいつらの反応は本物だった。

 さっき確認したが、借金の手形も本物だった。

 

(夢でも見てるのか?)

 

 考えても堂々巡りだ。

 何も進展はない。

 

 石造の廊下を歩く。

 

 俺はダクネスの部屋へと向かっていた。

 なんだかんだ言って、冷静に話ができるのはダクネスだったりするからだ。

 夜中に部屋に行ったらそれはそれで騒ぐかもしれないが、こちらが真剣だとわかれば話は聞いてくれるだろう。

 

「ん?」

 

 ダクネスの部屋に近づくにつれ、微かだが変な声みたいな音が聞こえる。

 

「………………ぁ………………ぅ………………」

 

 段々と大きくなる。

 その音の源は、俺の目の前、ダクネスの部屋から漏れ出ていた。

 

(流石にやばいか?)

 

 ダクネスも年頃の娘だ。

 普段から変態発言をしていることも相まって、性欲盛んなイメージがある。

 しかし、真に初心なやつでもある。

 一体なんの音かわからん。

 いや、想像はできるのだが。

 

 俺は好奇心を抑えきれずに、ドアノブを捻ってゆっくりと扉を開けた。

 

ギギギギギ!!!

 

 ド派手な音が鳴り響く。

 なんでこんなに音が出るんだよ!くそ!

 

「す、すまんダクネス!実は話が……!」

 

 俺は半ばヤケクソで扉を開いて、部屋の中に入った。

 ダクネスのことだ。

 きっと、目をまん丸にして、口をパクパクしてるダクネスがいるはずだ。

 そんで、俺を殺しにくるに違いない。

 俺は覚悟を決め、ダクネスを目で探した。

 

「か、カズマ!」

 

 ダクネスに名前を呼ばれた。

 

 まただ。

 俺の知ってる、「いつもの」じゃない。

 

 ダクネスは、ベッドの上にいた。

 俺の予想を尽く外して。

 

「はぁ❤カズマっ❤遅いぞっ!こんなに待たせるなんてっ❤相変わらず私のツボをわかってるなお前は……❤」

 

 そこには、手錠で手足を繋いで、股を開いている全裸のダクネスがいた。

 

 




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