2025年6月中旬。
色んな季節がある中で俺がはっきりと嫌いと言えるそれは梅雨。つまりレイニーシーズンである。
梅雨の何が気に入らないかと言うとひたすら長い間雨が降り続ける事だろうか。濡れるし、ジメジメするし、地味に蒸し暑いかと思えば18°以下まで冷える事もあるから困る。
後…、俺は髪が長いからうねるし、広がるし、おかげでこの期間中に周りの男子共は俺をワカメ頭なんて呼ばれたりもした。最悪である。早く過ぎてくれないかな~。
ちなみに一部の女子からは似た悩みを持つ者同士として俺に梅雨でも髪がうねらないシャンプーの事を教えてくれた。優しい。
ただ紹介してくれたシャンプーの気になるお値段は市販でも売っているちょっと高めの奴よりもその2倍の値段をしていて俺のお財布的にはあまり優しくなかった。どうやら梅雨期間中はワカメ頭で過ごすしかないようだ。
なお、解決策として髪を切るとういう方法もあるが俺は片目隠れの長髪がお気に入りだから我慢することにした。せっかくのイケメン顔がよく見えないなどと女子達に髪切ってなんて言われた事もあるが余計なお世話である。
ただ悔しい事に短髪にして顔がよく見える様にするだけで男子の魅力が15パーセントもアップするらしいからモテたいならどの男子も喜んで短髪にするだろう。俺はやんないけどな。でもモテたい。
それにしても雨強い。いわゆる豪雨というやつだろうか。そういえば台風来たーっ!って誰かが騒ぎながら言ってた気がする。祭りかな?
台風だとしたらこの勢いのままだったらその内洪水になるだろうか。東京は洪水対策はしっかりしている方だって聞いた事はあるけど本当に大丈夫だろうか。
まぁ、我が国の政治家は時々やらかす事もたまにあるが皆基本的に優秀そうだしやれば出来るって信じてる。つまり大丈夫だ、うんうんそう信じようビリーブ。
ていうか雨強すぎて帰れない。もう一時間以上も正面玄関で立ち往生してる。傘は持ってきた筈なんだが傘立ての方を何度見ても俺の傘が無かった。悲しい。
もう覚悟を決めるしかないだろうか。正直濡れたくないが雨が弱まる気配が全くないからいくしかないようだ。マジで誰だよ俺の傘持って行った奴はふざけんな。
とりあえず濡れるとまずい紙類だけを自分の下駄箱に入れた。鞄の中に残った物は携帯と財布と宿題用の数枚のプリントだけになった。鞄が身軽になるのってなんかいいな。
こうして帰宅準備を終えた俺はダッシュで正面玄関を飛び出した。
ーーー
ーー
ー
「大雨舐めてたわ」
今現在俺は電話ボックスの中で避難していた。ダッシュでそのまま正門を超えた辺りまでは良かったが風が強すぎてまともに身動きが取れなくなっていたのであった。
正直そのままアニメみたいに突風で飛ばされるかと思った。
少しづつ前進して何とか駅方面まで歩みを進めた。が、先に体力の限界が来てしまったので偶然見つけた古いボロボロの電話ボックスの中へと入った。
電話ボックスとか今時珍しい。携帯電話の台頭によりこういった物は少しずつ数を減らしていたがよく生き残ったものである。
ていうかここは普通に通学路だし今の今までその存在を認知していなかったわ。どんだけ無関心なんだよ俺。
「…はぁ、帰れねぇ」
雨が学校でいた時よりもさらに強くなっていた。さすがにこれだけ雨が強いと出歩く人もいなくなってしまったようだ。通り過ぎる車以外に人が見かけない。まるで世界から自分だけが取り残されたみたいだ。
どしゃぶりがより強くなる。どうやら学校で時間を潰していたのが裏目に出てしまったようだな。雷はゴロゴロうるさいし、征服は濡れてて寒いし、あとさっきから電話ボックスが風でガタガタしてて怖い。さすがに大丈夫だろうな? この電話ボックスさすがに吹っ飛ばないよな?
とりあえず風邪をひくとまずいので俺は濡れた征服を脱いだ。勿論上半身だけ。下着が無茶苦茶水で濡れてて気持ち悪いが俺は露出狂の趣味はないので下は脱がない。後、一応ここ野外だしな。
脱いだ征服とインナー用のシャツをいったんぎゅうっと水を絞って後はそれらををタウンページの上…、に乗せるとまずいので本をいったん電話の上に置いてからタウンページがあった場所に上着を雑に置いた。本を水で濡らす訳にはいかないからな。
大雨で人の通りが無いとはいえ外で裸はやはり恥ずかしいな。
俺は電話ボックスの中で雨が少し弱まるまで大人しく待った。
ーーー
ーー
ー
15分が過ぎた。まだ雨は強いままだった。
俺は電話ボックスのガラス張りに頬をくっ付けながら雨音を聞いていた。スマホで遊ぶ気分でもないので俺はずっと耳を澄ましていた。
狭い空間に独りぼっちで嵐が過ぎ去るのを待つ。なんとなく今の状況が『あの場所』でのある出来事を思い出させてしまった。…思い出して余計嫌な気分になった。もう忘れよう。俺は頭を振って何とか過去のトラウマを払う。
あの後はちゃんと助けてもらえたんだ。現実に戻っても身体に影響は無かった。だから…、もう平気なんだ。過ぎた事を頭の隅に追いやり再び雨音を聞いた。
雨は大嫌いだが雨音は好きかもしれない。静けさの中に聞こえる雑音が居心地いい。それと気のせいか先ほどまでの嫌な気分が雨音と共に洗い流されるようだ。雨にリラックス効果なんてあったのだろうか。俺はあると思います。
ていうかこんな風にじっとしながらぼーっとしていると眠くなるな。雪山で遭難者がついつい眠ってしまう気持ちがちょっとだけ分かった気がする。どうせ暇だしいっそこのまま本気で眠っちまおうかと考えたその時だった。
電話ボックスの扉が勢いよく開いて誰かがいきなり入ってきたのだ。
「「あ」」
はたしてその『あ』にどんな意味があったのだろうか。驚き、予想外、或いは困惑。
雨に濡れた目の前の人(三つ編みのハーフアップで束ねた栗色のロングストレートが特徴の髪型をした同級生)はそうかもしれないが俺の場合さっきまでのブルーな気持ちが残ってたから意味が少しだけ違ってくる。
その子は扉を閉め忘れたまま俺を見て固まっていた。無理もない話だ。偶然入った電話ボックスの中に水に滴る半裸の男が待ち構えていたのだから。
いや、別に構えてなんていないが。まぁ、もし逆の立場だったら俺も同じ反応をするだろう。
状況的にやばい。普通なら携帯出して通報です。だがきっとまだ致命傷ではない。まだ通報案件ではない筈だ。何故なら俺は半裸だからだ、まだズボンがある。全裸なら変態として警察にしょっ引かれても文句は言えないが今なら雨宿り目的で服を脱いだと言えば誤解されずに済む!
…いや、事実雨宿り目的で風邪をひきたくないから上着を脱いだがそこまで彼女に伝わるかどうかも分からん。
とりあえず俺はポーカーフェイスを作りまるで何事もなかったかのように無言で佇んでいた。
マネキンのものまねをしてみた。そう、俺はマネキンだ。半裸型の動かないマネキンなのだ。見た目は怪しいが普通に無害な動かないかかしのようなものなんだ。だから通報しないでお願い100円あげるから!
…と心の中でなんとか穏便に済む方法を探してみたがあまりいいアイデアが思いつかなかった。てか何だよ半裸型のマネキンってふざけてんのか俺は、ふざけてるなうん。むしろテンパってるな少し落ち着こうかKOOLになれ俺。
ていうか黙ってないでさっさと事情を話した方が通報されないまであると思う。やはり対話って大事だね。でも緊張しすぎて上手く喋れないのだ。こういう時こそトランザムバーストが欲しくなる。
ふと、目の前の同級生の子がずっと静かなのが気になった。
俺を見ながら硬直したままだった。
そう、ずっとだ。
通報もせず叫びもしない、ただ俺をじっと見ていた。おいおいそんなに見るなよ興奮するじゃないか(例のアレ)。
まぁ、興奮したところで何もしないけどな。紳士? いいえ、ただのチキンです。
ところで彼女の視線は俺の下…、ではなく俺のお腹辺りに集中してたのに気づく。何だろう…、ムダ毛でもあったのだろうか。それとも筋肉? でもおかしいな、別に腹筋とかないんだが…、いや、ちょっとだけあるか。
でも本場のボディビルダーと比べたら大根とトウモロコシぐらいの差はあるよ? ムキムキマッチョマンの腹筋と違って凸凹が薄いよ? それとも少しでもついてたら全部マッチョって認識だろうか。
知ってる人だけど知り合いじゃない同級生の女の子…、閃光のアスナさんこと結城明日奈さんは筋肉フェチだろうか。
いや無いな、ナイナイ。
プールの授業で彼女の彼氏を見た事あるけど筋肉どころか細マッチョですらなかった。だからといってガリガリに痩せ細っている訳でもない。飯はちゃんと食ってる感じで運動もそこそこしているそんな普通の体つきだった。うん、筋肉フェチは無いな。多分だけど。
―――ただまぁ。
「あー、あのさぁ」
思わず声が裏返った。女の子に話しかけるなんて滅多にないからね。めっちゃ緊張するもん。
ていうか結城さんいつまで見るつもりなんだろうか。別に減るもんでもないがさすがに長い間女子に視姦されるのは恥ずかしい。
俺の視線に気づいたのか彼女は思わず目を逸らす。
「…ぁ。ご、ごめんなさいっ。ちょっとの間だけ雨宿りさせて」
慌てながら謝罪しつつ結城さんは傘を畳み電話ボックスの扉を閉めて中に入った。
ーーー
ーー
ー
狭い。
初めて知ったけど電話ボックスの中って人間二人がほぼギリギリ入れるスペースしかない。満員電車程ではないがそれでも十分キツイ。
今お互い向き合っている状態だが息が届く位の距離しかない為俺は後ろのガラス張りに肌をくっつけて彼女の顔を見ない様にそっぽ向いた。
気まずい空気はない。あるのは気まずさではなく気恥ずかしさとでも言えばいいのだろうか。それというのも結城さんが事あるごとに俺の裸を何度もチラチラ見ているからだ。いや本当何で見てるの!?
ちょっと頭を動かして目が見えるようにすると結城さんがさりげなく顔を逸らす。
…今度は考え事のふりをして顔を横に動かすと彼女は直ぐに目元だけを動かしてチラッと俺の体に視線を戻す。それでバレてないつもりだろうか。
俺の顔は横に向いてて長い前髪で俺の顔が見えない状態になってる。結城さんからは顔の様子が伺えない状態になってるが俺の方からは彼女が俺の体をチラ見してるのがバッチリ見えている。
ちょっと楽しい。少しだけぷちマジックミラー号てきな気分を味わった。片目隠れの特徴を使ったちょっとした応用だ。
う~ん、にしても俺の裸を見て何が楽しいんだろうか。彼氏ので散々見てるだろうに俺のを見ても面白くもなんともないと思うぞ? 頬を赤らめながら初々しい態度とかしちゃってさぁ、…ハッ!? まさか結城さんって実は処女…、な訳ないか。
彼氏持ちだもんなぁ。そりゃあ普通の男女中ならヤることやってるだろうし別に不思議じゃないよなぁ。早い奴らなら中坊の時に既に経験してあるし。
ていうかいかん。彼女に何度も見つめられると本気で興奮してあそこが熱くなりそう。前髪の隙間から彼女の様子が伺えるのが逆に仇となった。むしろ嫌でも意識してしまう!
なんとか意識を逸らさなくちゃ。このままでは興奮しすぎて大変な事になってしまう、俺が!
俺は視線をあっちこっちに巡らせていたが狭い電話ボックスの中に見るものなんて電話とタウンページと濡れた俺の上着と結城さん…、あ、夏用の制服が濡れててブラが透けて見え…、ってちげえ!
俺は慌てて視線を逸らし電話の線の部分に引っかかっていた結城さんの傘を注目した。折り畳み式の奴で今は畳んでいる状態なんだがよく見ればシャフト部分が少し折れ曲がっていた。何と呼ばれているかは知らんが真上の細い部分が布を突き破っていて傘を開いたら見るも無残な見た目になっているだろう。もはやこれでは傘としての役割を果たす事はもう無いだろうな。
ふと、盗まれた俺の傘を思い出した。
結城さんの傘の惨状を見て俺の傘が無事とは思えない。きっと今頃ボロボロになってどこかに捨てられているのであろうか。可哀想に。
俺の手元に戻ることはもう無いだろうがせめてお前の最後を祈らせてくれ。南無。
「ふぉあっ!」
目を瞑りここにいない900円もした俺の愛用の傘に黙祷を捧げていると結城さんが突然俺の腹に触れた。ちょっ、何してんの!?
そして彼女はそのまま円を描くように手を動かして俺の腹を撫で回した。一通り撫で回した後、俺の腹…、腹筋の線の部分をゆっくりと指でなぞる。
「ちょっ! く、くふふっ」
今の指の動きはさすがにくすぐったくて笑うのを堪えきれなかった。
俺の反応を見て何を思ったのか。結城さんは手を上に動かして俺の胸板に触れた。そして何を考えてるのか、彼女はそのまま俺の乳首を軽く摘まんだ。全身に電流が走り鳥肌が立った。あぁ、気持ちいい…、じゃなくて! これじゃあ触っているんじゃなくただ愛撫しているだけじゃないか!
「ちょ、ちょっと待てって!」
「あ」
俺は彼女の両肩を掴み強い力で強引に引き剝がした。よくエロ漫画とかで男がやめてくれと言いつつ抵抗しないで最初から期待してたってシチュエーションとかあるのを思い出した。いわゆる逆くっころって奴。
今の状況だと普通の男子ならそれと似た期待を結城さんに寄せてたかもしれないが残念ながら俺は初心なクズではないので普通に抵抗する。桐ケ谷に対する義理なんて端から無いのだがさすがに彼氏持ちの女の子に手を出すのは気が引ける。後、俺そっちの趣味とかないし。
結城さんも俺がここまで強く拒絶するとは思ってもみなかったのか唖然としていた。目を見開きながら少し動揺しているのが見える。だが直ぐ気を取り直して今度は俺の脇腹を優しく摩る。
「あ゛、ふ、ぅん♡」
男の喘ぎ声ってなんか嫌だな。俺のだけど。
かなりマジに引き剥がしたつもりなのだがそもそも電話ボックスの中はお互いの肌がギリギリ触れ合う距離感しかないのだ。つまり超近いのだ。
それに結城さんは女性ということもあって少し前に屈むだけでそのハリのあるおっぱいが簡単に俺に触れるだろう。彼女のおっぱいと俺の肌が触れる距離僅か2センチである。超近ぇ。
脇腹を上下に摩られて思わず手の力が抜けた。それを見逃さなかった結城さんは前進して俺に凭れ掛かかった。おっぱいを押し付けつつ俺の右胸板に顔を埋めたまま俺の右乳首にキスをした。
「ちゅっ♡」
「はっ、んふっ!」
何度も言うが男の喘ぎ声ってなんか嫌だな! 俺のだけどさ!
「ん、ちゅっ、んむ、ちゅるっ、ちゅるるっ」
「ぁ、あっ、あっ…、あ」
キスしつつ俺の乳首を美味しそうに啜った。
されるがままとはこの事を言うだろうか。俺の乳首にキスした後は乳輪を舐め回した。左手で右脇腹を摩りつつ右手で腹筋を撫で回した。
何で俺は結城さんに体をエッチに弄られているのだろうか。
意識がトロトロになったところで彼女は腹筋から手を下に移動してそのまま俺の股間を摩った。抵抗しなきゃいけないのに思いと裏腹に手と足に力が抜ける。悔しい。
…けど気持ちいい。
「ちゅっ、ちゅっ、ん、ん、む、ぅん」
俺は何もしていない。何もできない。抜け出せない。
別に最初からこのようなことを期待してたわけじゃない。それは本当だ。でも…、何故か嫌じゃない。エロい事をさせられて嬉しくない訳じゃない。相手が結城明日奈でも嬉しい。いや、嬉しくて当たり前だ。でも…、俺は…。
「ぅん、は、ぅ、れろ、れろ、れろ、ちゅっ」
きっと普通の男ならたとえ相手が彼氏持ちでもラッキーぐらいに思ってて喜んで彼女と気の向くままにエッチな事をするだろう。ゲスな奴らならこれを機会に桐ケ谷から彼女を寝取るようなことをするかもしれない。
馬鹿だなと思う。きっと馬鹿になった方が楽だし楽しいだろうと思う。
俺は…、まだ馬鹿にはなれない。馬鹿は嫌じゃない。でも、出来ないのだ。だって…、俺が簡単に馬鹿になれたらあの『地獄』を抜け出すなんて出来る訳が無いからだ。
台風とか言ってないでもう逃げ出すべきだろうか。逃げ出そうとしても扉は結城さんの後ろにあって両脇も彼女によって遮られている。無理やり暴力で抜け出す手もあるが俺は別に彼女を怪我させたい訳じゃないので諦めた。
ふと、いつの間にか彼女の愛撫が止まっていた。俺が考え事をしている最中にもう行為は終わったのだろうか。…いや、なわけないか。
彼女は顔を俺に近づけて耳元に小さな声で呟く。
「ねぇ。いい感じに出来上がっているしそろそろしましょ?」
彼女はいったん離れて俺に背を向く。扉に手を付いて上半身を少しだけ前に傾く。空いた右手でスカートを後ろからたくし上げて純白の布を晒す。そしてショーツを横にずらし、他人に対して簡単に見せてはいけない場所を俺に見せつける。
「きて♡」
顔を後ろに向けて俺を誘うように目を合わせた。
正直もう何が何だかもうさっぱり分からない。何故彼女は俺に迫ったのか。何故あんなにもいっぱいエッチなことをしてくれたのか。何故彼氏がいるのにこんなことをしているのか。何故彼氏でもないのに簡単にまんこを晒すのか。何故彼氏でもないのに…、彼氏がいるのに俺とセックスする気まんまんなんだろうか。
疑問は沢山ある。だが正直もうなるようになるしかなかった。気持ちが完全にそうなってた。女の子がここまでヤる気を出しているんだ。俺だって男だ、ここまでされて今更逃げようなんてもう思わない。
…思わないがここで一つだけ問題がある。
結城さんは早く欲しいのか、可愛らしいお尻を左右に振って俺を誘った。
「………」
ここからどうするんだ? 入れればいいよな? でもどうやって?
俺…、童貞なんだが。