多分、俺みたいな人生を送る奴はそうそういない…と思う。
「澤村さん、工場長から今すぐ来るようにと連絡がありました」
あくびを噛み殺しながら検品作業を行っていた澤村鰆(さわら)は、工場長に呼び出された。
「あ、はい…今行きます」
何かミスでも仕出かしたか?…と、首を捻り考えてみる。
入社して以来「優秀ではないが目立ったミスも無い、人間関係も良くはないが悪くも無い」無難な勤務態度と自負している。
自評だけではなく、上司や同僚も同じ様に鰆を評価していたので、突然の呼び出しに仲間も首を捻る。
「まぁ、何や知らんが行って来い。検品のフォローはしとくから」
「すいません、お願いします」
生まれてから26年、鰆の人生は大きなトラブルとは無縁だった。むしろ「平坦過ぎる」と言うべきか。
大きな悲しみや辛い出来事が無い代わりに、大きな感動や幸せも無い…そんな人生。
「今回も特に大した事ではないだろう。この前の慰安旅行費の過払いか何かだろう、きっと」
…そんな軽い気持ちだった。
「澤村君、君達を呼んだのはだね…あー…まっこと言い辛いのだが……」
応接室には神妙な面持ちの工場長と、見慣れない男が並んで座っている。
バッヂを見るに本社の関係者だと思われるが…何故わざわざこんな田舎まで出張ってくるのか。
「はぁ…」
…どうやらあまりいい話では無い様だ。
しかし、何度振り返ってみても仕事や人間関係に落ち度があったとは思えない。
「何をマゴマゴしとるかね、ササッと言えばいいだろうに。『クビだ』と」
…は?
「い、いえ…ですが、やはり納得が…澤村に不備は……」
「知らんよ、そんな事。私は人事部の決定を伝えに来ただけだ」
…へ?
「澤村…何て読むんだ?…あぁ、「さわら」か。…澤村鰆、本日をもって解雇とする、以上」
読み上げた書類一式を工場長に押し付け、麦茶を一気に飲み干すと本社の男は帰り支度を始める。
「ちょ、ちょっと待って下さい! 何ですか!いきなりクビって!! いくら何でも……」
「何度も言うが私ゃ知らん! 文句は上に言いたまえ! …それでは車を待たせてあるので失礼する」
バタン!!
…鰆は頭が真っ白になった。
いや、真っ赤だったのかも知れない。
生まれてこの方、味わった事が無い程の怒りと理不尽さと悲しみで放心状態になっていた。
「あー…そのだね、本社からの人員削減計画の一環でだね……」
「扶養家族がいないのは君だけで……」
工場長が何か言っていた気がするが、今の鰆には届かなかった。
ただ、一言。
「…すみません、今日は…早退させて頂きます」
何とかその一言口にすると、力ない足取りで工場へと戻って行った。
「しかし……」
書類一式を見ながら工場長が漏らす。
「しかし…何だこの扱いは? こんな重要な事を突然言って来るものなのか? …そもそもクビにする必要があるのか?」
ぬるくなった麦茶を啜り、もう一度書類に目を通しながら呟く。
「まったく…まるで狐につままれたようだ」
と…。
二昔…いや、三昔は前のデザインのアパートにしか見えない建築物の二階。
その真ん中の部屋の四畳半に、「それ」はいた。
古き良き時代の真空管テレビの「様な」物体を、満足そうに眺めている。
「様な」と表現したのは、そのテレビ画面が真空管ではありえない美しいフルカラー映像であり、コンセントやアンテナ線に該当する物が何も無いからだ。
更に視点を引いてみると、アパートが建っている場所は周りには何も無く広い広い空間であり、日本…いや地球上に存在しないであろう物件だと理解出来た。
『管理人、あれでよかったのですか? 今まで大きな不幸を味わった事が無い分、耐性も無く相当堪えた様ですが?』
日本語ではない「何か」で鴉天狗面の人影が「それ」に問い掛ける。
「あぁ、エエんよ。まぁ…アレや、スイカ食う時に先に塩振ったらもっと甘なるやろ? そんなカンジや」
『西瓜の甘さを味わう前に世を儚んで…とならなければ良いのですが。打たれ弱くて当然という人生を送らされた故、意外にあっさりと……』
「うっさいなぁ! …悪かったって。せやでコレからエエ思いさせたるんやんか」
『自分の失敗でこうなった事…忘れてませんか?』
「わぁっとるゆうねん! 黙っとれ」
時折、話し込んでいる者とは別人(?)の鴉天狗面が持って来る帳簿に、○だの×だの付けながら「それ」…管理人と呼ばれる人物は考え込んでいた。
もっとも管理「人」と言っても、その姿はどう見ても狐にしか見えなかったのだが。
家路に就く鰆の足取りは…重かった。
いつもは慣れた石段も、今日は死刑台の十三階段の様だ。
鰆の自宅は山の中腹の住宅地にあるのだが、昨今の高齢化に伴う過疎で空き家が目立ち始めている。
だが鰆にとっての大事は、テレビの放送局が一定数確保出来て、インターネット回線があり、宅急便が来るエリアである事。
日常生活が少々不便でも特に困らなかった。
むしろ人が少なく静か、尚且つ広い家が安く借りられるこの住宅地は理想の住処だった。
色々言葉を捜せば、もう少し格好の付く良い呼び方もあるかもしれない。
だが敢えて平たく言うと…鰆は俗に言う「オタク」と呼ばれる人種であった。
きっかけは約13年前。
人付き合いが悪いわけでもないのだが、色恋沙汰については今まで一度も縁が無い。
「不思議と不満は感じないのだが、なんとなく寂しい」と言った感情を、二次元の住人と付き合い、癒して貰っている。
自分の人生では決して得られない感動、興奮、絶望、涙。後は…イヤーンバカーンな感情を、キャラクターを通し代償行為として得ていた。
自分では得られぬ感情を与えられているだけだが、それでも楽しかった。
他所様の世界から「英雄」としてお呼びが掛かり、そこで仲間達と共に悪の組織の幹部や人為らざるモノと闘う。
仲間と冒険をしたり、ヒロインと夜の決闘をしたり…そんな妄想を叶えてくれる世界がゲームやアニメの中にはあったのだ。
ただ…流石に異世界からの「お呼ばれ」を期待するには、鰆もそろそろ薹が立ち始めていた。
鉄骨が釣り下がってる工事現場を巡り、首都の電波塔に登り…と異世界に思いを馳せるのもそろそろ厳しくなってくる。
最近はオレ様主役妄想はせず、ただひたすら情報を「呑む」事に専念し、現実の疲れを癒しているのが現状である。
しかし、今回の衝撃は…その癒しの手を持ってしても支えきれなかったようだ。
「ハァ…とりあえず今日は寝よう…」
確かに仕事をクビになった事はショックであったが、それ以上に今迄の人生で味わった事の無い様な「感情の大波」が堪えたようだ。
そのショックに振り回され過ぎて、本来ならば「この解雇はどう考えてもおかしい」という極々常識的な思考すら出来なかった。
「もう風呂に入るのも面倒だ、動きたくない…」
鰆はソファーに倒れ込むと、そのまま深く深く眠りに落ちる…。
「ったく…これしきの事で。ホンマ貧弱やのぉ…コイツは」
『…彼が誰のせいでこう育ったが、ご存じですか?』
眠っている鰆の頭上に、光の輪が現れた。
中から管理人と呼ばれる狐と、鴉天狗面がヒョッコリ顔を出して周囲を窺う。
もっとも、広いこの家には鰆以外は誰も住んでいないのだが。
「とりあえず…コイツの好きそうなモンを片っ端から調べるで。記憶も引っこ抜いて調べるんや」
『了解』
「今回の仕事の想定時間は?」
『探索に0.8、分析に0.4、改竄に2.7、作成に3、試験に0.3…この辺りで可能と思われます』
よもやこの単位が「秒」だとは誰も思わないだろうが、そもそも誰も聞いてないので些細な事だ。
「休憩1足しとけ。さて、んじゃ始めるで」
『了解』
一瞬だけ家内が眩しく輝き、周囲が水飴を流し込んだような粘度の高い空間で包まれる。
約8秒間、澤村家の時間の流れは「通常の」時間から切り離された…。
「ふぅ…こんなカンジかねぃ…」
『管理人、悪戯が過ぎませんか?』
「なぁに、せっかくエエネタを見付けたんや。コッチに抱えてた案件も解決、コイツはウハウハ、更にワシも楽しい。サイコーやないか♡」
『…知りませんよ?』
二人が光の輪に消える。
その場には、タイマーの付いた金具で口を縛られたずた袋が残っていた。
ずた袋の中身がモゾモゾと動いた気もするが、やはり確かめる事が出来る人間はそこには誰もいない。
朝が来た。
辛かろうが楽しかろうが、同じ様に朝は来る。
鰆は目を覚ました。
「…そうか、いつも通りだったら今日は…早番だったな」
ぼんやりカレンダーを見て、「早」のチェックの入った今日の日付を確認する。
「…もう関係ないけどね」
呟きながら玄関へ向かう。
一晩眠りはしたが、いまだ感情は落ち着かない。
有給申請だの、退社の為の書類だの、その様な事に思考を向ける余裕も無い。
鰆の朝は、配達された瓶牛乳を飲む事から始まる。
お気に入りのアニメのキャラの好物で、美味しそうに瓶牛乳を飲んでいるシーンを見て以降、ずっと契約している。
セミの鳴き声が響いてきた…今日もまた暑くなりそうだ。
ガララッ…
少々古めかしい引き戸を開け、外へ出ようとした途端…鰆は自分の目を疑った。
「…アレ? 俺、まだ寝てるのか?」
確かに夢としか思えないし、こんな夢をチョイスした自分を誉めてやりたい。
夢なら大歓迎だからだ、…夢ならば。
そこには…全裸の小さな女の子がチョコンと正座していた。
ガララ…ピシャッ!!
「待て! …こういう時は何だっけ? ヒッヒッフーだっけ? いや、トントンツーか?」
頭が上手く働かない。
とりあえず、目の前の事象を単純化しようと試みる。
玄関前に全裸の女の子がいた気がする→確実ではない→全裸の女の子が玄関前にいるわけがない→夢
「なーんだ夢かぁ…夢だよなぁ。流石にエロゲーやアニメみたいな事は……」
ガララッ…
「!?」
やはり、いる。
しかも、先程は慌ててすぐ引っ込んしまい気付かなかったが…頭にはビーグル犬のような垂れた耳がある。
「俺…クビになったのがそこまでショックだったのか? もう見えないモノが見える気の毒な人になっちまったのか?」
「…いっくちッ!」
犬耳の少女が、小さくくしゃみをする。同時にふさふさの尻尾もぴんと天を突く。
「…生き物……?」
一縷の望みだった「等身大のジョークグッズの類」という比較的現実寄りな説との繋がりをバッサリと断ち切られた。
「え、えと…どちら様でしょう?」
日本語が通じるかどうかは分からないが、とりあえず尋ねてみる。
「ボクは疾風丸(はやてまる)といいますわぅん!」
待ってましたといわんばかりに、元気に犬耳少女が答える。
「は、はやてまる…さん?」
「本日より澤村家のお世話になりたく早朝よりこち…くちゅんッ!」
小さな鼻からつつー…と鼻水が滑り出して…
ズズッ!
引っ込んだ。
「と、とにかく家の中に入って! ご近所の人に見られたら…何言われるか分かんないよ!」
一気に問題が積み重なったが、まずは目の前の問題を解決せねばどうにもならない…と鰆は焦った。
「はい! 失礼しますわぅ!」
「あ! 足足! 汚れてるから! …ちょっと待ってて、足拭き持ってくるから」
「かたじけないですわぅん!」
色々な疑問や不安、そしてほんのりとした期待がどんどん湧いてくるが、今は敢えて考えない事にした。
「じゃあ…拭いてあげるから、ここに座って」
「はい、あるじどの! かたじけないですわぅん」
全裸の犬耳少女を玄関框に腰掛けさせ、足の裏を拭こうと試みる。
(まずは目の前の事だ、目のま…え……)
犬耳少女の右足の踵を左手で持ち上げ、右手に持った湿らせた手ぬぐいで拭こうとして…鰆の動作が止まる。
全裸の相手の足を上げたら「見える」…色々と。
それはもう…クッキリと。
「こ、これは…マズい、非常によろしくない…」
一応「口先だけ」でも常識ある大人として振舞えた鰆を、誉めるべきかも知れない。
引き締まった、しかしまだ年齢相応の柔らかな肉で包まれた脹脛は、鰆の触れた事のない未知の感触であった。
そんな脚から太股にかけてのライン、そして二本の脚の繋がる付け根に見惚れてしまう。
「…くちッ!」
ビクリ!と我に返る。
夏とは言え、早朝から全裸で表に居たのなら、それなりに身体は冷える。
「うーん…こりゃお風呂の方がいいかもなぁ」
「ふぃ?」
そのまま疾風丸を抱き上げると、風呂場へ向かう。
「ホントに冷たいな…」
(この子は一体、どれ程の時間玄関先にいたのだろう?)
犬耳少女の身体の心配よりも、まず自分の世間体を気にし、その後も色欲に塗れた目で見ていた自分が恥ずかしい…と鰆は反省した。
きょとんと自分を見つめる少女の瞳が、余りにも真っ直ぐだったから…かもしれない。
「おぉー!!」
延々と湯を吐き出すシャワーの前で、目を輝かせて疾風丸は直立不動である。
「シャワーがそんなに珍しいの?」
「はいですわぅ! 噂には聞いておりましたが…細かい湯の糸が切れずに続いて出て来ますわぅん!」
(ヘンな事に興奮するんだなぁ…)
苦笑しながらも風呂の準備を始める。
「もうすぐお湯一杯になるから、ちゃんと暖まるんだよ?」
鰆は親戚の子を預かった様な、何とも微笑ましい気分になっていた。
…次の疾風丸のセリフを聞くまでは。
「あるじどのは入らないわぅ?」
「…え?」
「ボクはあるじどのに精一杯ご奉仕する様に仰せ付かっているのですわぅん!」
「ご…ご奉仕?」
ゴクリ…
ふと、先週読んでいたハーレムモノの漫画を思い出す。
その漫画の主人公の、冴えなくて運動も出来なくとも天と運に愛された眼鏡の少年に向かい、イメージの中で叫んだ。
「貴様の様な若造とは年季が違う!エロさが違う!俺は…機会あれば即突撃、ラッキースケベを待つだけの男ではないのだ!」
「よよよよし!今!今入る!!」
「ふぃ?」
鰆が服を脱ぐのがこんなにもどかしく感じたのは、今回が初めてだった。
服を脱いでいる最中に、ほんの少しだけ意識がクールダウンする。
少し照れ臭くなった…が、目の前の勇気の扉を開かないわけにはいくまい。
先程のままじっとシャワーヘッドを見つめていた疾風丸が、くるりとこちらを振り返る。
「あるじどのー!」
「え、えと…そそそそれじゃあその…ごごご奉仕ってのをだね…?」
「はい! ちゃーんとあるじどののお背中をお流ししますわぅん!!」
…鰆は自分の脳のピンク具合を恥じ、同時にやり場の無い憤りを感じた。
「わぅ?」
幼い瞳の純粋さが、再び鰆を苦しめる。
結局、疾風丸に背中を流して貰う事となった。
がっしがっし…ざばー
「あ゛ぁ~」
「あるじどの、気持ちいいわぅ?」
ご奉仕する!と言い出すだけあって見事なスポンジ捌きである。
「あぁ、上手だね。気持ちいいよ」
(久々の朝風呂で、しかも可愛い女の子に背中流して貰えりゃそりゃ天国だよなぁ…)
と幸せに浸る鰆であった。
(…あれ?そう言えば俺って何の為に風呂を用意したんだ…?)
そもそも疾風丸の為に風呂を用意した事を思い出す。
(背中流して貰いっぱなしじゃ…悪いな)
「ホイ、交代。疾風丸、コッチに来なさい」
百均で買ったシャワーチェアをカポカポと叩いて促す。
「そ、そんな! あるじどのにそんな失礼な事はさせられないわぅ!」
鰆は伊達に何年もギャルゲにエロゲ、ウスイホンにて研鑽を積んでいたわけではない。
この手合いのキャラを従わせるのは至極簡単である。
「主が命令しても断るの?」
「…うぅ…分かりましたわぅう」
シャワーチェアにちょこんと座り、ぺたんと尻尾を伏せる。
「それじゃ、汚れてた足からね」
スポンジにボディソープを染み込ませて、軽く握り込む。
「はいわぅ!」
疾風丸は素直に鰆の目の前に足を差し出す…ただし、両足同時に。
玄関の時よりもずっと大胆に股を開かれ、鰆は虚を突かれ呆然となった。
幸か不幸か鰆は近視なので眼鏡無しでは細部がよく見えなかった。が、その事自体はあまり問題ではなかった。
何故なら鰆の知っている「女性」の9割は、細部が黒塗り、もしくはよく見えない仕様だったのだから。
ただ、ボヤけて映ってようが…「現実」で「実物」を突きつけられたという動揺が頭を真っ白にする。
「Be Cool… Be Cool…」
どうにか心を落ち着けながら、疾風丸の足を洗って行く。
その後、改めて触れた疾風丸の肌はまだ冷たかった。
早く風呂に入れてやらないと可愛そうだ。
急ぎ、丁寧に洗ってやる。
時々…さくらんぼ色の二つの突起や、尻尾の生えた張りのいい双丘に見とれてはいたが、まぁ役得の範疇である。
「さ、お風呂に入ろうか」
と、疾風丸に声を掛けて風呂桶を見てから思い出した。
そこまで澤村家の風呂桶は大きくないのだ、と。
しかし、鰆が風呂に入らないと疾風丸が入浴を遠慮するのも想像に難くない。
「よいしょお!」
「ふぇ!?」
疾風丸を抱き上げ、一緒に風呂桶に入る。
ざぶーん!
いつもより多くのお湯が溢れ出し、洗い場のマットを浮かばせる。
「あ、あるじどの?」
「あったかいね」
「わぅ…」
冷えていた疾風丸の身体が、徐々に鰆の体温に近づいてゆく。
「ぬくぬくぅ…」
世にも幸せそうな疾風丸の顔を見ると、鰆も嬉しかった。
(そうだよな、エロ展開じゃなくても凄い幸せだよ…犬耳少女とお風呂なんて、そうそう味わえないもんな)
優しい気持ちになりながら疾風丸の頭を撫でてやる。そうすると嬉しそうに身体をモジモジと捩る。
そんな様子が可愛くて、耳も撫でてみる。
…ぴくぴくっと疾風丸の全身が震えた。
「ん? 耳を触られるのが好きなのかな?」
ぺらりと垂れた犬耳を捲って、中に指を入れてくすぐる様に撫でる。
…なんとなく、の行為だった。
「ふみぃ…♡」
「ん? ってコラ!」
耳を…正確には耳の中を撫でられる度に、頬を赤く染め、身体を鰆の身体に擦り付けてくる。
湯に浸かった尻尾は鰆の腋から胸を撫で上げる。
疾風丸が身体を捩る度に、鰆の未使用新品の相棒が、尻尾の付け根にあるであろう窪みに押し付けてられてゆく。
「うゆぅ…あるじどのぉ…♡」
湯船の縁にかけていた鰆の腕に、先程の魅惑のさくらんぼがつんつん当たる。
疾風丸が身体を捩れば捩る程、腕に擦り付けられてさくらんぼ色の突起がますます硬くなる。
「みみは…なでなでしちゃだめなんですわぅ…まだボク…子供……♡」
疾風丸は湯船の中で身体をターンさせ、鰆の正面からギュっと抱き付く。
…華奢な身体のサイズの割りに、凄い力で振り解けない。
ざばぁと水面から尻尾が上がり、振るわせて水気を切った後もブンブンを尻尾を振り続ける。
「あー…疾風丸…さん?」
抱き付かれてからというもの、鰆の相棒は疾風丸の尻尾の付け根にある後ろの窪みから…前の渓谷にかけて挟みこまれたままである。
…身体と身体の触れ合いが皆無な鰆(と相棒)には刺激的過ぎた。
更に、すりすりと身体を上下させて甘えてくるので、当然相棒には縦方向の運動も加わる。
時折触れる前髪は、嗅いだ事の無い様な甘く魅力的な香りを放っている。
「わうぅ…♡」
感極まったのか、それとも鰆の相棒に対する止めなのか…より一層強く抱き付かれた。
ぎゅううぅぅぅう♡
視覚・聴覚に加え、慣れない触覚と嗅覚をフルで刺激されて…鰆に耐えろというのは酷であった。
「はっ…はっ……♡」
鰆の胸部に擦り付けられる、硬くなったさくらんぼの先端…
絶妙な上下運動に晒されて、渓谷に摩り上げられる相棒…
「やば…こら! 止めなさい! いやマジで! …やめ…うぐ……ッ!」
相棒が、溜まっていた感情を暴発させる。
びゅるるっ!びゅぶっ!…びゅるるる……
ぶるる…という放出感と、それに次いで心地よい疲労感。
そしてその後、意識は聖者の域まで急速に高まり…大きな罪悪感を生む。
(俺は…こんな無垢な犬耳少女に対してなんという事を……)
「ふあぁ…わふ…ぅ♡」
「ん?」
まだ潤んだ瞳で惚けている疾風丸が気に掛かり、胴を掴み湯から持ち上げたその瞬間…
じょぼぼぼぼぼぼぼ…
鰆は、自分の腹にたっぷりと疾風丸の縄張りを主張されてしまった。
ちょろろろ…ちょぼ…ぴちゃ…
疾風丸の縄張り主張が撃ち止めになった事を確認すると、そのまま湯船を見る。
「…とりあえずもう一度身体を洗い直しだなぁ、二人とも」
力なく「くてん」とへたり込んだ疾風丸を抱き上げて、鰆は風呂桶の栓を抜いた。
ミーンミーンミーン…
鰆は、今まで生きて来た中で最悪の夜と最高の朝を終えて、呆けていた。
隣にはバスタオルで包まれた犬耳少女が眠りこけている。
「まだ…信じられん。昔ならいざ知らず…最近のラノベでも、もう少し設定に凝るぞ?」
よく分からない引き合いを持ち出しながら、ラノベではなく現実に存在する…人間に犬の耳と尻尾を付けただけの少女を眺める。
「しかし、一体どこから来たんだろう?」
もう一度顔を覗き込もうとしたその時、疾風丸と目が合う。
「…わふっ!?」
「お、目が覚めた?」
「あ、あるじどの! …あ、あの…その…疾風丸は大変失礼な…そ…粗相を…きゅううん……」
「い、いや、そのアレはまぁ…お互い様だし…」
「ふに?お互い様?」
座布団を被って頭を伏せこむ疾風丸が「?」という顔で見上げてくる。
「ま、まぁとりあえず!それは置いといて」
箱を横に置くジェスチャーをして、話を変える。
流石にこんな少女に男性特有の達成感を細々と説明する程、鰆の神経は太くない。
「疾風丸は…何処から何しにここに来たの?」
「ふに…実はよく思い出せないんですわぅ…」
「…へ?」
意外な答えに驚く鰆。
「あれだけご奉仕がどうのとか言ってたのに?」
「はいわぅう。ただ「ここに居てこの家の主に仕えろ、それがお前の望む修行になる」と言われたような気がするんですわぅ」
「誰に?両親かい?」
「それも分かんない…ごめんなさいわぅ」
いや、怒ってないよ。と頭を撫でてやると、気持ちよさそうに目を細める。
耳の裏に手を出さなければ大丈夫…かな?と鰆が微笑む。
「そうわぅ! 修行わぅ! お掃除わぅ!」
「何!?」
突然大きな声を上げる疾風丸に驚く鰆。
「お願いわうぅ…ボクをこの家で使って欲しいわぅ。理由はよく分からないけど、ここにいなきゃいけない気がするわぅう…」
土下座して懇願する疾風丸。
「いや、住むのはいいよ。どうせ俺一人しかいないし…だけど」
「だけど?」
「…まずはその…服を着なさい」
「ふにぃ! あ、あるじどの…すけべぇわぅう♡」
(…玄関前で全裸待機しておき、風呂で身体を洗いっこした挙句、色々致して更にマーキングまでされたのに…今更だな)
と思っていても、そのまま口に出す程気が回らぬ性格ではない鰆だった。
「えーと、洗濯済みのはその籠の中だけど?」
「了解わぅ!」
ズボッ!と上半身を籠に突っ込み服を選ぶ…のはいいのだが、ぱたぱた揺れる尻尾の下のぷりんとした双丘に目のやり場が困る。
(いや、それをどうにかする為に服を探しているのは分かるんだけどね…)
「あるじどの、「かったーしゃつ」という服は無いわぅう?」
「カッター? んー…探せばあるだろうけど…」
鰆にとってカッターシャツというシロモノは、中高生時代と大学の始業終業式、あとは成人式に就職活動時位しか縁が無かった。
「…しかしなんでまたそんな物を?」
「んー…「素肌にカッターシャツを一枚着てこそ最初の一歩だ!」…と言われた記憶があるような、ないような…」
「…そうだね、まぁ基本だもんね……また探しておくよ」
力なく答えると、疾風丸は嬉しそうに尻尾を振った。
「あるじどの、これを履いてもいいわぅか?」
その手には、纏め買いしたボクサーパンツが握られている。
「いいけど、気に入ったの?」
「ホラホラ! 尻尾用の穴が開いてて便利わぁうぅ!」
そういいながら、左手を社会の窓に突っ込んで喜んでいる。
「…そういう考え方もあるのか」
早速履かせてみると、やはりウエストがゆるゆるではあったが…その上から紐を結んでベルト代わりにするといい塩梅になった。
社会の窓を通した尻尾も、それなりにはちゃんと動くらしい。
その上にランニングシャツを着ると、ようやく鰆の相棒がリラックス出来る日常の風景が帰って来た。
「まずはご飯! ご飯わぅ!」
着替えを済ませた疾風丸は、慌しく走り出す。
キッチンに篭り、せわしなく動く疾風丸をテーブルから眺める。
最初は何かヘマをやらかさないかドキドキしながら注視していた鰆だったが、すぐに杞憂だと理解する。
「…いい匂いがする。フフッ、待ってるだけで飯が出来るなんて何年ぶりだろうな…」
「あるじどのー! 出来たわぅー!」
結論から言うと、疾風丸の調理スキルはかなり高かった。
「一応料理は出来なくはない」という程度の鰆では敵わないレベルの見栄えの料理が食卓を彩る。
そして味の方も、見栄え相応の良さであった。
「…自分の家でこんなに旨い飯が食えるなんて思わなかった」
ついポロリと出た、鰆の正真正銘の本音である。
「あるじどの…ボク照れちゃうわぅ!」
「…そういや冷凍のハンバーグが焼いてあったけど、疾風丸はタマネギ大丈夫なの?」
「あの挽肉の塊の事わぅ? 疾風丸は何でも食べるわぅ!」
「まぁ本人が大丈夫なら…いっかぁ」
その後、鼻歌を歌いながら洗い物をする疾風丸を見て微笑ましくなる鰆であった。
「晩御飯も頑張るわぅう♪」
…その時はまだ知らなかったのだ。
鰆は疾風丸の作った晩御飯を…食べられない事を。
その後、鰆は掃除に張り切る疾風丸を自室から何とか遠ざけたようと奮戦していた。
何故か「ベッドはないのか」と聞いてくる疾風丸に「俺は布団派だ」と答える。
「じゃあ何処に隠してるわぅ?」と聞かれて
「…何の事?」と一生懸命はぐらかしたり、ドタバタと楽しい午後を送っていた。
「もうすぐ16時か…」
こんなに時間が過ぎるのが早いのは久々だった。
(賑やかな乱入者のお陰だな)とクスリと笑う。
賑やか…
「…ん?…ずいぶん静かだな」
さっきまで廊下でドタバタ音がしてたが、妙に静かだ。
「まさか!?」
慌てて廊下へ向かう。
…すぅ……すぅ……
疾風丸はそこにいた。決して幻ではなかった。
…ただ、全力で眠っていた。
「おーい…疾風丸ー?」
頬をプニッと突いてみる。
起きない。
「夏とはいえこんな所で寝ちゃダメだぞー」
身体を揺すってみる。
…起きない。
「うーん、疲れちゃったかな?」
かなり深く眠っている様だ。
起こすのも忍びなく、仏間に布団を敷いて寝かせる。
…随分とよろしくない寝相が相棒の興味を引くが…ぐっと堪えて仏間を去る。
「疾風丸、今日は頑張ってくれたもんな…そんな子が寝てる間にってのは、流石に…なぁ」
18歳未満にしか見えない少女が、18歳以上を自称して色々致すゲームを嬉々としてやる男のセリフとは思えなかった。
(しかしまぁ…いざ現実にそんな子が現れても…手なんて出せるわけないしなぁ、普通は)
無警戒で眠る疾風丸を眺め、ゆっくりと仏間を離れる鰆だった。
「今日は…本当に色々あったな」
鰆はいまだクビを受け入れられないし、ずっと尾を引いている。
しかし、突如現れた疾風丸と楽しい時間を過ごせたのも確かだ。
「…もしかしたら、明日からもどうにかなるかもしれない、な」
少し寂しくなった食卓で一人夕食を終えると、鰆は自室に向かう。
(よもや本物の犬耳少女に出会えるとは思わなかった…幸せな記憶を反芻しよう。)
何時もの様に相棒とゆっくり過ごす静かな夜も悪くない…ハズだった。
カララッ
「ふにッ!?」
ピシャッ!
「…あれ?」
(…おかしい。何故…俺の部屋の布団の上にお姉ちゃんがいたんだ?)
しかもまた全裸だった様に見えた。
(流行ってるのか全裸? いやいやそんな事…)
意を決し、もう一度襖を開く。
カララッ
「…何よ?」
白く透き通った美しいおし…もとい、肌。
そこに、三毛斑の尻尾が伸びて、ユラリユラリと揺れている。
頭頂部ではひこひこっと同じく三毛斑の耳が慌しく動く。
「あ、あのう…どちら様で?」
「アタシ? …息吹(いぶき)だけど」
あまりにも堂々とした猫耳の侵入者が、面倒臭そうに答える。
「あのー…この部屋とそのお布団と、今食べていらっしゃるサラミ棒は俺の……」
「知ってる」
「でしたらその…ねぇ?」
「何よ、お金払えってワケ?」
やはり面倒臭そうにこちらを一瞥した。
「お金なんて持ってないナー…払う気も……あ、そうだ。フフン♡」
気が変わったのか、急にこちらに食いついて来る。
「アンタってさ、アタシみたいなケモミミの女の子で興奮するタチなんでしょ? ネットにUPしないなら特別に撮影させてあげてもいいわよ?」
「え! マジで!!……いやいやいや! そう言う事じゃなくて!」
「…なーんだ、撮んないんナー」
サラミ棒を食べ終わり、チロチロと指を舐めると再び面倒臭そうにゴロゴロと布団で転がる。
確かに澤村鰆26歳、ケモミミの女の子キャラが大好物である。
奥に鎮座しているデスクトップパソコンには何千何万枚のケモミミ少女絵が存在し、
戸棚を飾るフィギュアの8割はケモミミ少女である。
薄くてバーコードの無い高額なウスイホンはエロ非エロを問わずケモミミオンリー。
そんな男の目の前に全裸のケモミミ少女が寝っ転がっているのである…が。
「おっかしいなぁ…どう考えても嬉しいハズなのに……」
そろそろ「何故ケモミミ少女が現実に存在するのか」という問題がどうでもよくなってる辺り、鰆の適応力は高い様だ。
しかし、この猫耳少女にピンと来ない理由がよく分からない。
「…いつまでつっ立ってんのよ? どうせ立ってるなら何か飲み物頂戴。麦茶とか」
「へ? あ、あぁ…持ってくるよ」
「1分以内!」
…とりあえず急いだ方が良さそうだ、と鰆は速足でキッチンへ向かった。
「んぐ…んぐ…プハァー! たまにはビール…といきたいけど、太っちゃうからナー♪」
ちなみに、先程まで息吹が齧っていたサラミスティックが約200キロカロリーである。
転がっている包装パックを見るに、2本は既に息吹の胃の中であろうと思われる。
「…何よ?」
「い、いや、何も」
「…何も…しないんだ……本当ナ?」
「う、うん…」
「ふぅ~ん…そうなんだ」
少しだけ俯き、不機嫌そうな表情を見せる息吹。
(え?どういう…)
人付き合いが浅く、他人の感情の機微に疎い鰆は戸惑うばかりであった。
「こぉ~んなにフィニッシュポインツ丸分かりのエロ同人そこらに広げっぱなしのクセに…本物の猫耳相手だと興奮しないんだナ♡」
息吹は満面の笑みで、自然と折り目の付いた鰆の夢と癒しの経典をバサバサと乱雑に並べる。
「コラー! 俺の青春に何するんじゃー!」
(コレガ…イカリノカンジョウ…!!)
「だーってさぁ…紙に描いたご同輩に負けるって…なーんか癪だしナー」
息吹は尻尾を巧みに動かし、際どい部分は鰆の視点から巧みに隠す。
(謎の逆光さんに仕事をさせぬ試合上手だ…おのれ!)
「…ホンモノでアソびたいナー?」
鰆には先程から立て続けに「突然の出来事」がスタックし続けている。
(…それなら解決は常に「最新のモノ」から、だ!…そもそも相棒に火が入っちまって止まらん!)
「ぜ、是非!」
息吹が再び鰆をチラリと一瞥。
「うーん…やっぱ止ーめたっと♪」
「な、なんだってー!?」
先程から翻弄されっぱなしの鰆である。
「まぁ気が向いたら交尾の一つや二つやったげるナー。とりあえず何か甘い物食べたいナー♡、5分以内!」
「…ふぇい」
(色々悲しくなってくるが…この状況で一時たりともリラックスしない俺の相棒の素直さが悲しいよ)
歩き辛そうに再びキッチンへと向かう鰆であった。
「ハァ…。まぁ、夢にまで見たケモミミ少女がいるんだ、それだけでも奇跡だろ…」
箱入りのバニラアイスをガラスの器にそれっぽく盛ると、自室へと運ぶ。
「遅ーい!」
相変わらずリラックス状態の息吹だが、今度は何処から取り出したのか携帯ゲームで遊んでいた。
うつ伏せになっているので、結構豊かと思われる胸は布団に押し付けられていてここからは見えない。
「早く持ってくるナー!」
ゲームに夢中でも鰆には容赦が無い。
「へーへー、只今持って行…っと!」
鰆は床に撒かれたウスイホンを踏みかけてしまい、懸命に足の軌道を変更する。
体勢は維持出来た。
が、運んでいたアイスはそうは行かなかった。
ぺと
「ふぃにゃあぁぁぁああぁぁぁああああぁ!!」
息吹の腰の下部辺りにバニラアイスが見事な着地を決める。
「ちょっと!早くどうにかしろナー!」
「あぁ、分かった分かった! 動いたら床に落ちる!じっとしてて!」
はむ
「ひぃいぃぃぃい!!!」
腰に乗ったバニラを口で確保する鰆。
「アンマ~イ! …とと、垂れる垂れる」
べろぉー…
「んはぁ♡…こ、こらぁ!」
鰆は腰から尻尾の付け根辺りに垂れたアイスを舐め取るが…どうにも息吹の様子がおかしい。
先程まで罵倒やら軽口の類が飛んでこないのだ。
「やめ…やめなさ……っん…あッ♡」
尻尾の付け根の近い部分を舐め始めると…息吹の腰が浮き始めている。
「こ、コレは…「ご主人様ぁ…尻尾は弱いんですにゃあ♡」ってヤツか!?」
「ち、ちがう! ちっがぁーう!!」
(そうは言っても…さっきより随分と後ろのガードが緩くなっているな…)
「このまま下に…ム! そういえば猫と言えば…!」
「ふへ? な、何よ…」
ゆっくりと尻尾を持ち上げると、息吹の荒くなった息に合わせて収縮を繰り返す菊門が露になる。
「…あ、アンタ! なな何考えてんのよ!!」
「猫はココを舐めるクセが…あるんだろ?」
「止ぁーめぇーろぉー!!」
ぺろっ…ちろちろ…
「んッ…♡」
ほんのり香ばしい菊の花弁を、一枚ずつ丹念に舌先で沿う様に舐める。
最初は「変態!」だの「止めろ!」だの罵っていた息吹が徐々に静かになり、その内に息遣いしか聞こえなくなる。
気になった鰆が息吹の顔を覗き込むと…
「…何よ…止めないでよ!! …その…もっと…ナ♡」
と、顔を真っ赤にしながら目を潤ませている。
(こ、これは…ッ! 今まで物足りなかったモノが…ペイバックタイムで!倍返しぃ!!)
「でもさぁ、俺だけご奉仕って言うのも…ねぇ?」
鰆はお返しとばかりに少しだけ意地悪な口調で言い放つと、尻尾を掴み扱き上げる。
「止めろナー! うぅ…しょ…」
「しょ?」
「しょうがないにゃあ・・」
鰆の新品の相棒に頬ずりすると、じれったそうに相棒の皮を剥く。
息吹の張りのあるしっとりとした頬や指先が触れる度に、鰆がピクリと身体を振るわせる。
はぁんむ……かぷっ
息吹は一気に相棒を頬張ると、少しザラつく舌で裏筋に沿い、舐めあげる。
「おうぅ…こ、コレはぁ…」
「ほは! ははしはっはひひゃはい! (コラ!アタシばっかりじゃない!)」
猫耳少女のご奉仕に感激していた鰆だが、自分もご奉仕中なのを思い出す。
「…まぁ、俺にとっちゃ両方御褒美なんだけどね」
再び息吹の白い双丘に顔を埋め、舌の腹で菊門を嬲る。
菊門を優しく舐めれば優しく、少し強く吸えば同じ様に強く相棒に奉仕してくれる。
さっきまでの傍若無人な態度を知っているので、余計に可愛く感じてしまう鰆だった。
「少ーしサービスをば…」
ふやける位に舐めあげた菊門から一度舌先を離し、今度は力を入れて穴の中心にぐっと力強く挿し込む。
「ナぁあン…♡」
限界まで押し込んでは引き抜き…また押し込む。
「ふぅう!…ふぅぅ……♡」
「うぐ…凄ぇ…うぅ……気持ちいい…!」
息吹もザラつく舌先で相棒の鈴口をぐいぐい突いてくる。
「息吹…ゴメン……出るッ!」
「ナぁ♡…アタシも……ふぅぅ…なぁぁぁあぁあァ♡♡♡」
びゅるるる!びゅるっ!…ぶびゅるるる!
ぷしっ!…ぷしゃあぁぁぁ…
息吹の咥内にたっぷりと射精した後、少し時間を置いてから喉から胸の辺りをグッショリと濡らされた。
お互い呼吸が落ち着いたが…息吹はしばらくの間、口を聞かなかった。
(調子に乗っちまった…怒ってるのかなぁ。怒るよなぁ…)
何故、初手で前ではなく後ろに行ったのか…と自分に問う鰆だった。
少し時間が経ち、息吹がポツリと語った。
「…よくもまぁ、いきなりあんな所舐めたわね…エロ同人の見過ぎナー…」
「我ながら…そう思う…でも思ってたよりはずっと奇麗だったし…」
げしっ!
「そういうトコだかんナー! だからモテないんだこの童貞!!」
「…すんません」
「ったく…」
「でも本当に好きなんだね、舐められるの。「あんな所」って言うなら…普通ならもっと抵抗するだろうに」
「しょーがないでしょ! 小さい頃からお母さんによく舐め…アレ?」
「ん?」
「アレ? アタシって…小さい頃から猫耳だった…わよねぇ?」
「いや、俺に聞かれても困るんですが」
「…お風呂入ってくるナ」
「へーい」
風呂の順番待ちの間、鰆は庭先で惚けながら空を見上げる。
(昨日今日で…信じられない事が三連荘だよ…)
「…何かに運命でも操作されてるのかね、ったく」
鰆がそんな軽口を叩いた途端…
「ほぅ、もうバレたんか。つーか察しがエエやんか」
「い!?」
夜の空に光の輪が現れ、ゆっくりと降りて来ると…中から例の管理人が現れる。
「…きつね?」
「左様」
「左様って…」
「まぁ…基本やな」
「?」
「で、貴方は神様か何か…なんですか?」
「ほう…「動物が人間の言葉話しとるー!」とか、慌てんのか?」
「普通の人生では会えないケモミミ娘に、一日で二人も会えば…こうもなりますよ」
首を竦めて苦笑する鰆。
「ま、そらそうやな」
「で、【?神様】が何の用です?」
「神様やと思うんなら不確定名で呼ぶなや! …せやなぁ、「管理人」でエエわ」
「管理人…ですか?」
(管理狐じゃないんだ…)
と、突っ込むべきか悩んでる間に、管理人が口を開く。
「うーん…あのさ、お前さんさぁ…この歳まで感動とか絶望とか恋とかそういう激しい感情の起伏、経験無かったんちゃう?」
「は、はい。でもなんでそれを……」
「それワシが原因。堪忍な♡」
…庭先にチェーンソーでも常備しておくべきだったが、無いなら無いで致し方ない。
どうにか持てそうで、尚且つ一番重そうな庭石を持ち上げて「自称」神様っぽい狐に投げつけようとする鰆。
「わー! 待て待て! 悪いと思とるって! せやで色々軌道修正してやったんやろが!」
「…話を聞きましょう、狐鍋はその後です」
…ドスン!
「感情が半分位死んどった割りに妙に手が早いな…」
管理人が語った内容はこうだった。
管理人は人の人生の方向を操作するのが仕事だが、当時は慣れない激務でついウトウト居眠りしたらしい。
それが丁度「澤村鰆」その人の番だった。
人生の方向を決める…と言っても結構アバウトで、「いい人生」ならプラス方向に何ポイント、「悪い人生」ならマイナス方向に何ポイント。
それを方向が変わる時期、数字を記入するだけの簡単なお仕事…と、そんな按配だそうだ。
(「細かく説明したら4、5日じゃ足らん」と言われたので、詳しくは聞かない事にした)
しかし…居眠りでチェックをスルーされた鰆は…そこが空欄、即ち「0」だった。
「せやから大きな感動も、辛い絶望も無い人生を歩んだんや」と。
「でも…それだと恋愛に縁が無いのは関係ないんじゃないですか? つまり純粋に俺がモテなかっただけ…?」
「いや、ちゃう。恋はな、良ぉも悪ぅも人生を変える。プラスにもマイナスにも進まんお前さんは恋に関れなんだんや」
「…で、俺の人生は可及的速やかに修正して頂いたんでしょうね?」
鰆は再び庭石に手を付ける。
「ハッハッハ!! …何言うてんねん、盛大な利子付けたったハズやで?」
二人のケモミミ少女の顔が浮かぶ。
「そういう事ですか…でも会社は…」
「あぁ、あのクビの件か。それはワシがお前さんの人生をこう…チョチョイといじっといたわ」
「…ほう?」
庭石にが静かに持ち上がる。
「待て待て! お前会社に出社しながらアイツら二人とイチャイチャ出来るんか?」
「…って、まさか!?」
「無職なら一日中一緒におられるやろ? 更に会社クビになるショックのお陰で…ケモミミに会えるお楽しみが二倍! エエ事づくめやろ?」
「はぁ…まぁ、分かりました。確かに普通じゃ得難い人生を送れるのは間違いなさそうだし…フフフ!エロゲなんてレベルじゃない!!」
余りにも景気のいい人生大逆転具合に、つい本音が飛び出る鰆であったが…
「何言うてんねん、エロゲのフラグやで。しかもルート二つ同時進行の、な」
「…どういう事ですか?」
「疾風丸、夕方に熟睡しよったやろ?息吹も朝方辺りに熟睡するハズや」
「…つまり、二人分のルートを同時に攻略をせよ、と?」
「ま、そゆこっちゃな。今まで寂しい思いしとったんや…嬉しいやろ♡」
「加減しろ馬鹿! …じゃなくて! 一人でいいですよ! なんで二人なんですか!?」
「ワシが面白いからに決まっとるやんか…大体、今更どっちか一人なんぞ選べるんか?」
「う…」
(コイツの性格上、二人ともコマしてハーレム…って単純な展開にゃなりそうにないし、面白そうやからなぁ…♡)
ニヤニヤと笑う管理人だが、鰆はそこまで気を回す余裕が無い。
「しっかしまぁ…折角美味しいチャンス作ったったのになぁ…。いまだ童貞とかある意味逸材やわ、お前さん♡」
「うるせぇー!! 俺だってなぁ! 俺だってなぁあ!!」
「ま、ワシも今は結構暇なんや。ちょくちょく見に来るで。ほなな」
狐が光の輪の中に消える。
「こんな時間に何怒鳴ってんナー! さっさと風呂に入りなさい!」
「え?あ、あぁ…」
「でないと…その…アタシの布団の中に入れたげないわよ! 20分以内!」
「あぁ! 待って待って!! あと…あれは俺の布団だよ!」
…多分、俺みたいな人生を送る奴はそうそういない!いるもんかよ!!